2014/8/26 ISOBUSゼミナール ISO 11783/ISOBUS の概要 農業情報設計社 濱田安之 そもそも ISO 11783/ISOBUSとは • ISO 11783は農業機械の内部、あるいはトラクタと作 業機等の農業機械の間で、走行速度やPTO回転数 等の情報を送受信する際の通信プロトコル(通信手順 の規定)を規定した国際標準 • ISOBUSは、国際標準ISO11783を基に、実装や適合 試験(対象の機器が規定に合致するかどうかを確認 する試験)に関する項目を業界団体(AEF:Agricultural Industry Electronics Foundation≒農業電子工業財 団)が規定したものをISOBUSと呼んでいる • 適合試験に合格した電子制御ユニット等にはステッ カーが貼られており、ISOBUSに準拠しているかどうか がわかる 1 2014/8/26 ISOBUSゼミナール ISOBUSステッカー 要注意! • ISO 11783のISOと11783の間には空白がある。 • ISOBUSのISOとBUSの間には何も入らない (ISO-BUSやISOバスは間違い) • ISOBUSと名乗るためには認証機関における 認証試験にパスする必要がある 2 2014/8/26 ISOBUSゼミナール ISO 11783/ISOBUS • ISOBUSにおいては、トラクタ等の農用車両や 作業機に搭載された電子制御ユニット(ECU)、 あるいは作業者が使用する情報表示・操作 装置、GPS等のセンサー等のISOBUS対応機 器が、それぞれインプルメントバス(作業機バ ス)と呼ばれる1組の配線に接続されてネット ワークを構成し、これらの機器が相互に情報 通信・連携することで必要な機能を提供する ISO 11783/ISOBUS • 作業者はバーチャルターミナル(VT)と呼ばれる様々な作 業機に対応可能な情報表示・操作端末を用いて、各種情 報を確認するとともに、作業の開始・停止や投入資材の施 用量の調整といった必要な操作を行う。また、タスクコント ローラ(TC)と呼ばれる自動制御装置を用いてほ場内の場 所や作物の生育状況に応じた適切な施肥管理や関連す る情報の収集・保存を行うことができる。 • TCはVTにあらかじめ内蔵され、画面を切り替えて使うよう になっていることが多い • ほとんどのVT/UT・TCは専用機であるが、ノートPC上で動 作するソフトウエアとして提供されている場合もある • その他、簡易なリモートコントローラも市販 3 2014/8/26 ISOBUSゼミナール ISO 11783/ISOBUS • 作業機はVT/UTに表示する画面のデザイン や,TCと通信するために用いる作業機の情報(施 肥、散布量の値等)に関する情報を保持 • トラクタに作業機が接続されるとVT/UT・TCを ネットワーク上で探した後、これらの情報を送信 することでVT/UT・TCによる作業機の操作が有 効になる仕組みになっている • 様々な作業機に付け替えた場合でも、その都度 必要な情報が作業機から提供され、VT/UT・TC を汎用的に使用可能 ISO 11783/ISOBUS • 作業時には、VT・TCからの操作指示やトラク タからの情報を受けて必要な制御を行う • VTに表示するデータやTCで記録するための データ、必要に応じてトラクタの制御に必要な データが作業機からネットワークに送信され る 4 2014/8/26 ISOBUSゼミナール 農業機械の制御に必要な大部分の 情報が規定されている • ISOBUS対応機器間で通信される情報は、速度、 エンジン回転数、PTO・ヒッチ情報等のトラクタ・ 車両に関する情報、作業開始・停止、資材施用 量、生産物の収量や水分等の作業機に関する 情報、VTを用いた作業機や車両情報の表示と 操作に関する情報、TCによる精密農業、自動操 舵等の自動制御に関する情報、外部記憶装置 を用いた情報の保存・読み込みに関する情報、 故障診断に関する情報と多岐にわたる • おおよそ農業機械における計測・制御に求めら れるほとんどの情報が規定 現在も拡張中 • 現在でもISO 11783は拡張・修正が続いてお り、その中の一つとして、複雑な操作(複数の 作業機を適用した作業における回行時の作 業機の昇降、ブームの折りたたみ等)を簡単 にするための作業者の操作の記録・再生機 能(シーケンス・コントロール)に関する新たな 規定が検討されている 5 2014/8/26 ISOBUSゼミナール ECUとCF • ECU(電子制御ユニット)とCF(コントロール ファンクション) ECU(電子制御ユニット) • ISO 11783-1において、ECUは「基本的な部品や サブアセンブリー、アセンブリーを組み合わせて 構成され、物理的に一体となっている電子部品 (electronic item consisting of a combination of basic parts, subassemblies and assemblies packaged together as a physically independent entity)」と規定されている • 実体として目で見て数えることができる、という のがECUであり、ISO11783ネットワークに接続さ れた「ハードウエア」 6 2014/8/26 ISOBUSゼミナール CF(コントロール・ファンクション) • ECUが「実体を持つ電子制御ユニットのハー ドウエア」である一方、CF(コントロールファン クション)は「ISO 11783及び他の互換性のあ るプロトコル(SAE J1939, NMEA2000)におい て、ある制御を行う“機能”の最小単位」を指 すものとして規定 • 言い方を変えると「仮想のECU」 CF(コントロール・ファンクション) • 1つのECUには“ひとつまたは複数”のCFが 内包され、これらのCF間で情報通信が行わ れる • この「機能」はISO 11783-1のAnnex E, Fに記 載あり • 記載された機能ごとにCFとして動作する必要 がある 7 2014/8/26 ISOBUSゼミナール CF(コントロール・ファンクション) • 1つのECUには“ひとつまたは複数”のCFが 内包され、これらのCF間で情報通信が行わ れる • この「機能」はISO 11783-1のAnnex E, Fに記 載あり • 記載された機能ごとにCFとして動作する必要 がある CFの例 8 2014/8/26 ISOBUSゼミナール 関連情報のオンラインデータベース化 • 現在オンラインデータベース化 実際にアクセス方法を確認… CFの識別 • ネットワーク上のCFが相互に通信して機能を 形成 • CANインターフェースはすべてのCFが1対の 配線に接続 • 相手を指定する・自分を識別してもらう必要 がある 9 2014/8/26 ISOBUSゼミナール CFの識別方法 • • • • NAMEと呼ぶ64ビットの値で識別 ISO 11783ネットワーク上のすべてのCFは 「一意のNAME」によって識別される CFとNAMEは一対一で対応 NAMEのビット配置その1 10 2014/8/26 ISOBUSゼミナール 補足(バイト配列について) リトルエンディアン! NAMEのビット配置その2 11 2014/8/26 ISOBUSゼミナール もうちょっとくわしく • 先程ダウンロードしたファイルで確認 WS(ワーキングセット) • 作業機、トラクタなど機械としてのひとかたまり • 実際にオペレータ・ユーザーが見た最小単位 • WSの中で、ひとつまたは複数のCF(ECU)が連 携して機能 • スプレーヤーにおける複数ECUによるバルブの 制御など • 1つのワーキングセットマスターと呼ばれるCFと 0または1つ以上のワーキングセットメンバーと 呼ばれるCFから構成される 12 2014/8/26 ISOBUSゼミナール WS(ワーキングセット) • VT/UT・TCはWS単位で取り扱い アドレス • • • • 通信は自分と相手先を指定して送受信 本来であればNAMEを用いて指定 毎回64ビットは.... 8ビットのアドレスと呼ぶ値を使用 13 2014/8/26 ISOBUSゼミナール アドレス • ネットワーク上のNAMEとアドレスは一対一で対 応 • 8bitなので256個、このうちグローバルアドレス (0xff: ネットワーク上のすべてのCFを送信先とし て指定)とNULLアドレス(0xfe: アドレスを確定で きなかった場合に送信元として使用)を抜いた 254個(0x00-oxfd)がアドレスとして利用可能 • 1ネットワーク上に存在可能なCFは254個(CAN ノード(≒ECU)としては最大30個) アドレスの決定方法 • アドレスはネットワーク上で一意でなくてはいけない • ISO 11783ネットワークが開始されたとき、あるいは ISO 11783ネットワーク上にCFが追加されたときに、ア ドレスクレームと呼ぶ手順に基づいて、CFによるアド レス使用の可否とその使用するアドレスが決定される • 固定アドレス(Non-self-configurable Address)、非固 定アドレス(Self-configurable Address:ISO11783ネッ トワーク上のCFを確認してから重ならないアドレスを 設定)の2種類がある • アドレスは消滅あるいは変更される場合がある 14 2014/8/26 ISOBUSゼミナール 固定・非固定アドレス • 固定アドレス:あらかじめISO 11783で使用す るアドレスが規定(主にトラクタ関連のCF) • 非固定アドレス:ある一定の範囲のアドレス 中からまだ割り当てられていないアドレスを 使用(主に作業機関連のCF) • アドレスクレーム (アドレス宣言・決定)の方 法はだいたい一緒 固定(既定)アドレス • ダウンロードファイルを確認 15 2014/8/26 ISOBUSゼミナール WSのアドレス • ワーキングセットに対してメッセージを送信す る際には、ワーキングセットマスターのアドレ スに対してメッセージを送ることで、すべての ワーキングセットメンバーにメッセージが送ら れる。 • ワーキングセットメンバーはワーキングセット マスターのアドレスに送られたメッセージは自 分のCFに送られたものとして処理を行う アドレスのまとめ • アドレスはネットワーク上で通信対象のCFを指 定するためにある • 固定・非固定アドレスの2種類 • アドレスは途中で変更・消滅する可能性がある • 送受信先のNAMEとアドレスの対応を把握してお く必要がある • 特定のCF(主にトラクタ関係)は使用するアドレ スがあらかじめ規定されている 16 2014/8/26 ISOBUSゼミナール メッセージの送受信 • ISO 11783ネットワークは「ハードウエア層」に 「CAN (Controller Area Network)プロトコル」 を用いて通信する • CAN-H,CAN-Lの2本の線を各ECUに接続し て通信 • 次世代のネットワークも検討中 CANインターフェース 17 2014/8/26 ISOBUSゼミナール メッセージの送受信 • 29ビットのID(データの種類を識別するための 値)と0-64ビットのデータを1メッセージとする • 通信内容はネットワーク上のすべてのECUが 受信することができる ISO 11783におけるメッセージ • 29ビットのID(データの種類を識別するための 値)と8-64ビットのデータを1メッセージとする 18 2014/8/26 ISOBUSゼミナール ISO 11783におけるメッセージ • 29ビットのID(データの種類を識別するための 値)と8-64ビットのデータを1メッセージとする ID(29ビット)の設定方法 • 送信元のCFのアドレス(=SA:ソースアドレス、8ビット)、 相手先アドレス(DA:デスティネーションアドレス、8ビッ ト) • PGN(パラメーターグループナンバー: データの種類を 識別する番号、24ビット) • プライオリティ(3ビット、優先順位:0-7を指定、数値が 少ない方が優先) • PGNの番号が大きいもの(0x00f000以上)については DAが無効(存在しないことになっている→送信先は全 CF) • 19 2014/8/26 ISOBUSゼミナール 先日のISOBUSセミナー資料で確認 • P30-32 データ長とメッセージ • 1-8バイト長の場合 – 通常のCANメッセージとして送受信 • 8バイト以上の場合 – TP(トランスポートプロトコル、 7*255=1785バイト まで)、ETP(エクステンデッドTP、 7*255*255*255=約116Mバイトまで)が規定 – 送信先がグローバルアドレス以外の(送信先CF を特定する)場合、一定数のメッセージを送信す るたびに確認を行い、問題なければ継続する仕 組み 20 2014/8/26 ISOBUSゼミナール 先日のISOBUSセミナー資料で確認 • P32-38 規格文書で確認 21 2014/8/26 ISOBUSゼミナール アドレスクレーム • ISO(JIS)本文を確認 • ISO 11783-5(2011) P19 4.5 Network initializationから • JIS XXXX-5 P20 WSの宣言 • 本文で確認 • ISO 11783-7(2009) P122 • JIS XXXX-7 P115 22 2014/8/26 ISOBUSゼミナール インプリメントメッセージ • インプリメントメッセージとは? – ある程度共通的な情報(トラクタに関連する情報が多 い)の規定。1つのメッセージに複数の情報が内包さ れる。ISO11783-7で規定 • データ長は8バイト(1メッセージ以内) • 内包される情報(パラメータ)はほとんどが2ビッ ト以上のフラグ(状態を表す数値情報)と 8/16/32ビットの数値情報で構成される • 複数のパラメータで1メッセージが構成されるの でPG(パラメータ・グループ)と呼ぶ パラメータの値(フラグ) • フラグの大半を占める2ビットのフラグは • 情報送信を行うフラグは「オン」「オフ」「エラー (センサーの故障やデータが取得できなかっ た)」「無効(センサーが搭載されていないな ど)」 • コマンド受信用のフラグは「オン」「オフ」「その まま(何もしない)」 • ビットが増える場合はこれに追加する格好と なる 23 2014/8/26 ISOBUSゼミナール パラメータの値(数値) • 以下のとおり区分される – 有効な数値(上位8ビットが0x00-0xfa(=250)) – パラメータ拡張(上位8ビットが0xfb) – 将来の拡張用(上位8ビットが0xfc-0xfd) – エラー(上位8ビットが0xfe) – 無効(上位8ビットが0xff) • 演算時に注意する必要がある 規格で確認 • ISO 11783-7(2009) P5 • JIS XXXX-7 P6 24 2014/8/26 ISOBUSゼミナール 再度注意事項 • バイト配列はリトルエンディアン • ビットの並びがバイトをまたぐときに注意する 必要がある(ISO 11783-7(2009) P3) インプリメントメッセージの例 25 2014/8/26 ISOBUSゼミナール インプリメントメッセージの例 インプリメントメッセージの例 26 2014/8/26 ISOBUSゼミナール インプリメントメッセージの例 インプリメントメッセージの例 27 2014/8/26 ISOBUSゼミナール インプリメントメッセージの例 インプリメントメッセージの例 28 2014/8/26 ISOBUSゼミナール インプリメントメッセージの例 TECU VT/UT TC 先日開催されたISOBUSセミナーの資料を基に 説明 29 2014/8/26 ISOBUSゼミナール TECU TECU 30 2014/8/26 ISOBUSゼミナール TECU TECU 31 2014/8/26 ISOBUSゼミナール TECU TECU 32 2014/8/26 ISOBUSゼミナール TECU TECU 33 2014/8/26 ISOBUSゼミナール TECU TECU 34 2014/8/26 ISOBUSゼミナール TECU VT • ISOBUSセミナー資料P60-93 35 2014/8/26 ISOBUSゼミナール TC • ISOBUSセミナー資料P110-132 36
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