平成26年度第8回海外石油天然ガス動向ブリーフィング 中間選挙後の米国エネルギー政策 平成26年11月21日 ワシントン事務所 事務所長 村松秀浩 1 本日の話題 • • • • • • 1.米中間選挙 2.(1)LNG輸出⇒ (2)コンデンセート輸出⇒ (3)原油輸出 3.クリーン発電計画(Clean Power Plan)/石炭 4.再生可能エネルギー 5.原子力 6.外交 2 1.米中間選挙(1) 共和党 民主党 上院定数 合計 100議席(50州×2) 改選前 45名 53名 (無所属2名) 中間選挙後 53名(+8名) 46名(▲7名) (ルイジアナ州未確定 1議席) 大統領拒否権転覆 67票 上院議席の2/3 下院定数 435議席 改選前 233名 199名 (欠員3議席) 中間選挙後 244名(+11名) 186名(▲13名) (未確定5議席) 大統領拒否権転覆 290票 下院議席の2/3 3 1.米中間選挙(2) • Mitch McConnell上院院内総務(共和党:ケンタッキー州)再選 ⇒ 2016年大統領選挙を見据えた議会運営 • Lisa Murkowski上院議員(共和党:アラスカ州):上院エネルギー・天 然資源委員会委員長への就任 ⇒ エネルギー政策関連法案 の審議日程設定:①Keystone XLパイプライン、②原油輸出 • James Inhofe上院議員(共和党:オクラホマ州):上院環境・公共 事業委員長への就任 ⇒ ①米環境保護庁(EPA)に批判的、 ②気候変動に懐疑的、③原子力産業を支持。 • Mary Landrieu上院エネルギー・天然資源委員長(民主党:ルイジ アナ州):石油・ガス産業シンパ ⇒ 12月6日:決選投票 • Dan Sullivan上院議員(共和党:元アラスカ州天然資源局長官) 当選 ⇒ Alaska LNGプロジェクト 4 1.Keystone XLパイプラインの事例 • Keystone XLパイプライン:カナダ・アルバータ州産重質油を米メキシコ湾 岸の製油所へ輸送する。 • 米加国境を越えるパイプライン:米国務省の管轄 • 環境保護団体の根強い反対 ⇒ ケリー国務長官の反対 • Keystone XLパイプライン承認法案(S2280)上院本会議提出:改 選前57名(うち民主党12名)共同提案 ⇒ 本会議可決60票 獲得 ⇒ オバマ大統領の拒否権(veto)行使? • 共和党が大統領に署名させる作戦:①歳出法案へのKXL法 案添付、②連邦債務上限引上げ法案へのKXL法案添付 • 共和党の思惑:パイプライン建設 ⇒ 雇用創出 ⇒ 米国民に 対して“change”を見せる。 5 2.(1)LNG輸出 • ウクライナ問題:国家安全保障 ⇒ 欧州・同盟国のエネルギー安 全保障 • 共和党:米国産LNG輸出賛成 ⇒ エネルギー省(DOE)による LNG輸出承認の迅速化 • 2014年6月:国内繁栄・国際自由法(HR6)の下院可決 • 2014年11月:LNG輸出促進法案(S2638:John Hoeven上院議 員提出)の上院エネルギー・天然資源委員会採決? • LNG輸出反対:化学企業Dow Chemical、環境団体Sierra Club ⇒ 従前ほど声が大きくない。 6 2.(2)米国のLNG輸出プロジェクト LNGプロジェクト 所在州 LNG輸出量 輸出開始時期 日本企業 Sabine Pass LNG ルイジアナ州 1,800万トン 2015年 なし Freeport LNG テキサス州 1,320万トン 2017年 中部電力、大 阪ガス、東芝 Cove Point メリーランド州 500万トン 2017年 住友商事、東 京ガス Cameron LNG ルイジアナ州 1,200万トン 2017年 三井物産、三 菱商事 Jordan Cove LNG オレゴン州 600万トン 2019年 ? Oregon LNG オレゴン州 900万トン 2019年 ? Alaska LNG アラスカ州 1,500~1,800 万トン 2020年以降 ? 7 2.(2)コンデンセート輸出 • 【Lease Condensate】 • 【Plant Condensate】 • 油田/天然ガス田の生産井 (wellhead)の安定(stabilizer) 設備から抽出 • 原油と同等の扱い • 原則として輸出禁止 • 中流の処理施設・分離設備 (processing & fractionation) から抽出 • 石油製品(LPG等)と同等の 扱い • 制限なく輸出可能 • 商務省(DOC)の拡大解釈 • 2014年6月:Enterprise Products、Pioneer Natural Resourcesの輸出開始 • 他24社申請中 • カナダ向け輸出のみ例外(重 質油の希釈剤として利用) 8 2.(3)原油輸出(米経済界) • 【賛成派】 • 【反対派】 • ロビー団体(14社)Producers for American Crude Oil Exports(PACE) • ConocoPhillips、Anadarko、 Chesapeake Energy、Devon Energy、Marathon Oil、 Pioneer Natural Resoueces • 米国石油協会(API) • 米国独立石油連盟(IPAA) • ロビー団体(4社)Consumers and Refiners United for Domestic Energy(CRUDE) • デルタ航空(Monroe Energy 製油所買収) • ガソリン=米国民にとって毎 週徴収される税金 • 広告会社⇒ロビイング合戦 9 2.(3)原油輸出(米議会) • 【上院】 • 【下院】 • 賛成派:Lisa Murkowski次 期エネルギー・天然資源委員 長、John Cornyn議員(共:テ キサス州)、Ted Cruz議員(共: テキサス州)他 • 反対派:Robert Menendez 議員(民:ニュージャージー州)、 Edward Markey議員(民:マサ チューセッツ州)他 • 慎重派:John Hoeven議員( 共:ノースダコタ州) • 原油輸出法案(HR4349)提 出:Michael McCaul議員(共 :テキサス州) • 原油輸出解禁法案準備中: Joe Barton元エネルギー・商業 委員長(共:テキサス州) • エネルギー・商業委員会:2015 年公聴会開催 10 3.(1)クリーン発電計画(CPP) • オバマ大統領の遺産問題(legacy issue):気候変動 • 2013年6月25日:気候行動計画(Climate Action Plan) • 2014年6月2日:クリーン発電計画(Clean Power Plan):既設化石 燃料焚き火力発電所の炭素排出量基準(州別目標) • 炭素排出量:2030年までに2005年比▲30%削減 • 大気浄化法(Clean Air Act)第111条(d)に基づく。 • 目標達成方法=4つの建築用石材(building blocks):①石炭 から天然ガスへの燃料転換、②原子力発電、③再生可能エネ ルギー発電、④エネルギー利用効率化 • 2015年6月末まで:炭素排出量基準の最終決定 • 2016年6月30日:州別削減実施計画のEPA提出期限 11 3.(2)産炭州の上院選挙結果 州名 2013年石炭生産量 当選上院議員 共和党/民主党 ワイオミング州 3億8741万トン(1位) Mike Enzi(共) 共和党再選 ウェストバージニア 州 1億1624万トン(2位) Shelley Moore Capito(共) Jay Rockefeller引退 民主党⇒共和党 ケンタッキー州 8,310万トン(3位) Mitch McConnell (共)上院院内総務 共和党再選 イリノイ州 5,277万トン(5位) Dick Durbin(民) 民主党再選 テキサス州 4,312万トン(6位) John Cornyn(共) 共和党再選 モンタナ州 4,223万トン(7位) Steve Daines(共) 民主党⇒共和党 12 3.(3)共和党のシナリオ • 議会から行政府に対する圧力の掛け方:①歳出過程、②立 法過程、③監視過程 • Mitch McConnell上院院内総務(共和党:ケンタッキー州):①新規 火力発電所、②既設火力発電所の炭素排出量削減基準の 縮小 ⇒ 最優先課題の一つ • オプション(1):2015年6月の米環境保護庁(EPA)基準の最終決定 ⇒ 議会評価法(Congressional Review Act)によるEPA規制を 禁止する反対共同決議 • オプション(2):歳出予算法案へのEPA規制の計画・実行予算の 支出禁止の付帯条項 13 4.再生可能エネルギー • 共和党:石油・天然ガス産業の影響力増大 • 再生可能エネルギー < 化石燃料への方針転換? • (1)風力発電の生産税額控除(Production Tax Credit:PTC):延 長阻止 ⇒ Harry Reid上院院内総務(民主党):2014年内の PTCの2年間延長法案審議表明 • (2)自動車用再生可能燃料使用基準(Renewable Fuel Standard:RFS):撤廃・縮小 ⇒ 地域により賛否が異なる。 • (3)2007年エネルギー自給・エネルギー安全保障法(Energy Independence and Security Act of 2007)第526条(連邦省庁に 対する低炭素代替燃料の調達・使用義務):撤廃 • 省エネルギー:両党のコンセンサス分野 14 5.原子力 • 【(1)NRC委員長指名】 • 【(2)放射性廃棄物処分場】 • 2014年10月:Allison Macfarlane原子力規制委 員会(NRC)委員長の辞任表 明 ⇒ 2015年1月辞任 ⇒ オバマ大統領による新委員 長指名 ⇒ 委員長代行? • Harry Reid上院院内総務( 民主党:ネバダ州)による予 算削除 ⇒ 野党 ⇒ 上 院での影響力低下 • Yucca Mountain放射性廃棄 物処分場(ネバダ州):共和党 による予算配分増 ⇒ NRCの安全評価再開? • 上院議事進行妨害 (filibuster)改革法(2013年 11月):単純過半数(51票)の 反対により大統領の指名 候補を否認できる。 15 6.外交 • Bob Corker上院議員(共和党:テネシー州:穏健派):上院外交委 員長への就任 • John McCain上院議員(共和党:アリゾナ州:強硬派):上院軍事 委員長への就任 ⇒ イラク、シリア、ウクライナ危機に対する強硬 なスタンス • より鷹派(hawkish)的外交:ISIS対応、イラン核開発交渉、対ロシア 経済制裁 • 米国民の本格的軍事介入に対する懸念・躊躇 ⇒ 地上軍 派遣:時期尚早 • 11月24日:イラン核開発交渉最終合意期限 ⇒ 3~6カ月間 の期限延長? 16
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