HVDCコンセントバー 集 HVDC整流装置 特 高電圧直流給電システム 情報通信サービスの環境負荷低減に向けた取り組み 高電圧直流給電システム導入に向けた装置開発 ほし ひでかず や じ ま 星 秀和 ば ば さ き ただとし ひ ろ せ 馬場崎 忠利 ま つ お NTTファシリティーズでは高電圧直流(HVDC)給電システムの通信ビル・ データセンタなどへの導入に加え,将来的には太陽光発電システムなど再 生可能エネルギーを直流のまま連系したスマートグリッドへの適用も視野 に入れた研究開発を行っています.本稿では幅広い領域での活用に向けた, システム開発,構築・保守などの取り組みを紹介します. ICT装置の課題 近年,サーバや情報通信装置などの ICT装置は社会に広く普及し,経済活 HVDCコンセントバー ・ 電源プラグ ひでのり 松尾 英徳 た け だ ひ ろ や /矢島 寛也 けいいち /廣瀬 圭一 のりたけ まさとし /則竹 政俊 たかし 武田 隆 NTTファシリティーズ す.電源プラグを抜く際は,機械的ス イッチをOFF側へスライドすること で,内部の接点が開き,アークを遮断 直流の高電圧化に際して課題となる *2 し, ロックを解除するため, 外部へアー 動を支えています.通信ビルやデータ 遮断時のアーク 対策として,HVDC クが発生することなく,作業者 ・ 保守 センタは,ICT装置を集中的に管理し 専用のHVDCコンセントバーと電源 者が安全に挿抜作業を行うことがで ており,ICT装置の社会への浸透に伴 プラグを開発しました(図 1 ) . きます. い,社会インフラとして重要性を増して ICT機器などの電源プラグをコンセ います.重要性の高まりとともに,消費 ントに接続し,プラグ未挿入時は動作 される電力量も増加しており,消費電力 しない機械的スイッチをON側へスラ 量の低減が課題となっています. イドすることで内部の接点が閉じ,電 *1 高電圧直流 (HVDC)給電システ 流が流れるとともに電源プラグの抜け ムは,省エネルギー効果と高い給電信 防止ロックが作動する構造としていま *1 高電圧直流:ICT分野において,直流の給 電電圧は,電気通信用として世界的に直流 −48 Vが使用されています.これに対して, 直流300〜400 V程度のなる高い電圧範囲を 高電圧直流と呼んでいます. *2 アーク:電極に電位差が生じることにより, 電極間にある気体に持続的に発生する放電 の一種. 頼性の観点から世界中で大きな期待が 寄せられており,NTTグループでは NTT環境エネルギー研究所とNTTファ シリティーズが世界に先駆けて基礎研 究から各装置開発を行ってきました(1). HVDC整流装置 HVDC整流装置は電力会社から供給 される商用の電力を直流380 Vに変換 する整流装置です(2).100 kWクラス, 500 kWクラスの容量があり,最高98% と高い変換効率を有しています.また, 冗長構成を採用しており,万一障害発 生時も継続的な運用が可能です. 図 1 HVDCコンセントバー・電源プラグ NTT技術ジャーナル 2015.1 41 情報通信サービスの環境負荷低減に向けた取り組み テム移行の過渡期には,導入予定の る直流380 Vを受電し,交流200 V, ICT装置すべてがHVDCに対応してい 交流100 V,直流-₄8 Vいずれかの電 ないことが想定されます.そのため, 力を出力するマイグレーション用電源 HVDC給電システムを導入するに HVDC給電システムの大枠を変更す 変換装置が必要となります(図 ₂ ) . あたって,HVDC整流装置やHVDC ることなく,部分的に従来の給電方式 分電盤といった装置のほか,HVDCに である交流200 V,交流100 Vや直流 S(小容量)タイプとM(中容量)タ 対応したICT装置の調達が必要となり -₄8 Vで動作するICT装置を利用する イプのマイグレーション用電源変換装 ます.しかし,導入初期におけるシス ために,HVDC整流装置から供給され 置を開発しました(図 ₃ ) .Sタイプは, マイグレーション用電源変換装置 の開発 当社は,供給先の種類に合わせて, 19インチラック 交流200 V 直流380 V HVDC整流装置 (100 kW・500 kW) 380 V対応ICT装置 直流380 V HVDC分電盤 マイグレーション用 電源変換装置(S・M) 既存交流,直流 −48 V ICT装置 マイグレーション用 電源変換装置(S・M) 既存交流,直流 −48 V ICT装置 直流380 V 蓄電池 図 ₂ HVDC給電システムの構成 マイグレーション用電源変換装置(S) マイグレーション用電源変換装置(M) 交流出力タイプ 直流出力タイプ 交流出力タイプ 直流出力タイプ W:430 × D:700 × H:43(1U) W:430 × D:700 × H:43(1U) W:430 × D:553 × H:130(3U) W:430 × D:652 × H:130(3U) 外観 寸法 (mm) 入力 電圧 出力 電圧 出力 容量 ユニット 効率 定格 直流 380 V 交流 100 V 直流 −48 V 交流 100 V,交流 200 V 1.0 kW (500 W ユニット× 2 台+ 1 台) 90%以上 93%以上 直流 −48 V 7 kW 90%以上 94%以上 ※ M タイプの寸法はユニット部 図 3 マイグレーション用電源変換装置ラインアップ 42 NTT技術ジャーナル 2015.1 特 集 商用電力 (北海道電力) 整流装置 (15 kW) 左:リチウムイオン 蓄電池充放電器 右:直流電力変換 装置 整流装置 (15 kW) 太陽光パネル (10 kW) 太陽光パネル (10 kW) 交流電力 直流電力 情報通信 直流EMS※ 6600 V/ 200 V 直流電力変換装置 (10 kW) 直流電力変換装置 (10 kW) 直流380 V リチウムイオン 充電器 電気自動車用 双方向充電器 LED照明 直流 アダプタ ノートPC 冷蔵庫 直流 コンセント 直流EMSサーバ 直流スイッチ 直流アダプタ 液晶TV BMU 電気自動車 リチウムイオン (三菱i-MieV) (25 kWh) 電気自動車 リチウムイオン 蓄電池 直流 スイッチ ブルーレイ ディスク プレーヤ 直流コンセント 直流380 V周辺機器 液晶TV+ブルーレイ 冷蔵庫 ディスクプレイヤ 直流380 V家電 LED照明 太陽光パネル(10 kW× 2 ) ※運用計画に基づいて各装置を制御する運用管理システム EMS: Energy Management System BMU: Battery Management Unit 図 4 環境省フィールド実証システム(北海道帯広市) モニタなどのコンソール系の装置で消 費電力数100W程度の装置用に開発し ています.Mタイプは,消費電力が数 kW程度のICT装置を想定して開発し ています. ■参考文献 (1) 朝倉 ・ 田中 ・ 馬場崎:“高電圧直流給電シス テムの導入に向けて,” NTT技術ジャーナル, Vol.22,No.11,pp.1₆-19,2010. (2) 宇田川 ・ 松尾:“情報通信分野における給電 技 術 ・ 空 調 技 術, ” NTT技 術 ジ ャ ー ナ ル, Vol.2₆,No.₇,pp.13-19,201₄. (3) 廣 瀬: “直 流 技 術 と 応 用 の 動 向, ” 電 学 論B, Vol.131,No.₄,pp.358-3₆1,2011. 今後の展開 本稿では,通信ビル ・ データセンタ などへのHVDC給電システム導入にお ける取り組みについて紹介しました. 将来的には,通信ビル ・ データセン タなどへの導入だけでなく,太陽光発 電システムなど直流で発電する分散型 電源や蓄電池と組み合わせて,再生可 能エネルギーをHVDCで運用するス マートグリッドへの展開も視野に入れ ています(3).環境省による地球温暖化 対策技術開発 ・ 実証研究事業におい て,北海道帯広市,山形県山形市にて フィールド検証が実施されており (図 ₄ ) ,得られた成果を積極的に活用 していく予定です. (上段左から)星 秀和/ 矢島 寛也/ 馬場崎 忠利/ 廣瀬 圭一 (下段左から)松尾 英徳/ 則竹 政俊/ 武田 隆 NTTグループでは使用電力量の削減にエ ネルギーマネジメントの推進,エネルギー 効率の高い装置の導入 ・ 更改といった取り 組みが行われてきましたが,社会的に環境 負荷低減がより重要視されている中,一層 の使用電力量削減に貢献が出来るような研 究開発に努めたいと思います. ◆問い合わせ先 NTTファシリティーズ エネルギー事業本部 研究開発本部 TEL 03-₅₆₆₉-0₇8₅ FAX 03-₅₆₆₉-1₆₅0 E-mail matsuo₅₆ ntt-f.co.jp NTT技術ジャーナル 2015.1 43
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