高機能広汎性発達障害児をもつ母親の診断告知前および告知時の体験

Nara Women's University Digital Information Repository
Title
高機能広汎性発達障害児をもつ母親の診断告知前および告知時の体
験
Author(s)
山根, 隆宏
Citation
山根隆宏: 神戸大学発達・臨床心理学研究,Vol.9, pp.17-24
Issue Date
2010-03
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/3453
Textversion
publisher
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高機能広汎性発達障害児をもっ母親の診断告知前および告知時の体験
Theexperiencesofmothersbeforeandi
nthediagnosisofHigh-FunctioningPervasive
DevelopmentalDisorder
山根隆宏申
TakahiroYAMANE*
要約:本研究は高機能広汎性発達障害児(以下, HFPDD)をもっ母親の診断告知に至るまでの体験と,診断告
0
3名を対象に,診断告
知時の体験についてその実態把握をおこなうことを目的とした。 HFPDD児をもっ母親2
知前の体験として子どもの障害への気づきとそのきっかけ,育児ストレス,ソーシャルサポートについて,診断
告知時の体験として診断告知満足度,診断手続きへの不満の内容,診断告知の時期について調査をおこなった。
その結果, HFPDD児をもっ母親は子どもが乳幼児期のころに,主に言語面および社会性の問題において子ども
の発達上の不安を感じていたが,診断告知を受けるまで、に時間がかかっていた。また,診断告知前に母親が経験
している育児ストレスは高く,家族や専門機関からの十分なサポートを受けていないことが示唆された。さら
に,診断告知に対して不満を抱いていた母親もみられ,診断の根拠や障害の特徴について十分に説明されるこ
と,他機関への紹介,日常的な育児への助言などが求められていることが示唆された。
Midence & O
'
n
e
i
l
l
,1
9
9
9;中田, 1
9
9
5;中田・上林・藤
9
9
5;田中・丹羽, 1
9
9
0;Young,
井・佐藤・井上・石川, 1
近年の特殊教育から特別支援教育への移行により,特別支 B
r
e
w
e
r
,& P
a
t
t
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s
o
n
,2
0
0
3)。また,診断告知に対する親の
援教育の主たる対象である発達障害のある子どもたちが,教 心理的体験はその後の親の障害受容や適応に影響を与えるこ
育のみならず医療福祉の現場において注目されている。そ
0
0
2
) 障害児をもっ親の診断
とが指摘されており(中田 2
の中でも,高機能広汎性発達障害( High-Functioning 告知時の心理的体験を検討することは重要な課題といえる口
P
e
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eDevelopmentalD
i
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o
r
d
e
r;以下 HFPDD)と診断
しかしこれまでの障害受容研究の多くは,多様な障害を一
0
0
4)。例えば,杉山
されるケースが増加している(飯田, 2
括りにした検討に留まっており 子どもの個々の障害特性に
(
2
0
0
2)は,広汎性発達障害( PervasiveDevelopmental 合わせた検討の必要性が指摘されている(桑田・神尾,
D
i
s
o
r
d
e
r;以下PDD)自体が 1%前後の,罷病率であり,その
2004)。さらに, HFPDD児をもっ親を対象とした場合,
約半数が高機能群であると考えられ HFPDDが非常に身近
HFPDDの概念自体が比較的新しいため その研究は乏しい
な存在であることを指摘している。
のが現状である。そこで,本研究は HFPDD児をもっ母親を
HFPDD児に対する支援のあり方は様々な領域で模索され 対象に,特に診断告知に焦点を当てて検討をおこなう。
ているが,同時に発達障害児をもっ家族に対する支援や連携
HFPDDの診断告知に関する問題の一つに確定診断の難し
の必要性が認識されつつある。特に, HFPDDは障害の特徴
さや確定診断の遅れがある。自閉症児の場合と比較して,
が外から見えにくく,知的な遅れが目立たないこともあり,
HFPDD児をもっ親は子どもの発達上の不安を感じていた時
0
0
4)
。
親や周囲からは障害として気付かれにくい(飯田, 2
期は遅いながらも,確定診断に至るまでにより時聞がかかる
そのため,親は子どもの発達や行動上の問題を自分の育児の
訂 i
a
n
,1
9
9
9;嶺
ことが明らかになっている( Howlin& Asgh
せいではないかと思い自責の念を感じたり 障害が外から見
0
0
6
) そのため, HFPDD児をもっ親は子ども
崎・伊藤, 2
えにくいために子どもの障害について周囲からの理解を得に
の発達上の不安を感じる時期と確定診断を受ける時期との聞
くいなど,親や家族は大きなストレスを経験しやすいといえ
にタイムラグが生じ,その聞に親は自分の育児の仕方を責め
る
。
てしまったり,適切な’情報や具体的な援助が得られずに漠然
これまで障害児をもっ親や家族に関する研究は,主として
とした不安を体験したりすることが報告されている(柳楽・
障害受容研究でおこなわれてきた。障害受容研究では,親や
0
0
4)。これから HFPDD児をもっ親は診断
吉田・内山, 2
家族が子どもの障害を告知されてから障害を受容するまでの
告知に至るまでに困難な状況に置かれており,その実態把握
心理的過程が検討され特に子どもの障害告知に対する親の
の必要性が求められているといえる。
心理的反応は障害受容の最初の段階として重要視されてきた
HFPDDの診断告知に関するもう一つの問題として,診断
(
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,& K
l
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s
, 1975; 告知をいかにおこなうかという問題がある。 PDD児や
問題と目的
0
*神戸大学大学院人開発達環境学研究科博士課程後期課程
-17一
HFPDD児をもっ親の多くが診断手続きに対して強い不満
o
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,M
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,& M
y
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s
,2006) ,
を持っており( G
より早期に診断を受け,確定診断までに相談した専門機関が
少ないほど診断手続きへの満足感が高いことが示されてい
oin-Kochele
ta
l
.
, 2006;Howlin & Asgharian,
る。( G
1
9
9
9)また,診断告知において障害の説明が暖昧であること
や具体的な対応策が示されない場合,親の子どもの障害への
否認や発達への期待の助長につながることが示唆されている
(永井・林, 2004;中田ら, 1995)。以上のように,診断告
知のあり方は HFPDD児をもっ親の障害受容と関連すること
が考えられ,親が診断告知に対してどのような不満を実際に
抱いているかを検討することは重要であるといえる口また,
親の診断告知に対する不満の実際を検討することで,今後の
診断告知のあり方について有益な示唆が得られると考えられ
る
。
そこで,本研究は HFPDD児をもっ親が困難な状況に置か
れる診断告知前に焦点を当てて その実態把握をおこなうこ
とを目的とする。第一の目的として, HFPDD児をもっ親が
診断告知に至るまでの状況を調査し,親が子どもの発達に不
安を感じてから診断告知に至るまでのプロセスや診断告知前
のストレス,ソーシャルサポートについて検討をおこなう。
第二の目的として 診断告知時の状況について調査をおこな
い,診断手続きに対する親の不満について検討をおこなう。
以上を明らかにすることで 今後の研究や家族支援をおこな
う上での基礎的な資料となることが期待される
D
方法
調査協力者
児をもっ親の会に所属する母親,および特
全国の HFPDD
。
別支援学級に在籍する児童の母親464名
2008)を使用した口
「支持・助言への満足 j5項目, 「説明
不足への不満」 5
項目から構成され 診断告知時の対応に関
点)∼かなり
する満足度について「全くあてはまらない( 1
あてはまる(4点)」の4件法で回答を求めた口また,診断告
知への不満があると回答した者に具体的な不満の内容につい
て自由記述による回答を求めた D
D
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(
1
9
8
4)の TheF
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tS
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l
eの日本語訳版(北川・
9
9
5)を使用した。計1
5のサポート源につ
七木田・今塩屋, 1
いて,診断告知を受ける以前に身近にサポート源があったか
どうかを「ある」 「なし Jで回答を求め 「ある Jと回答し
たサポート源について, 「全く助けにならなかった (
1点
)
∼とても助けになった(4点
) Jの4件法で回答を求めた。得
点が高くなるほどサポート源が助けになったことを示す
(
3)育児ストレス 障害児をもっ母親の生活上におけるス
トレスを測定するために,田中( 1996)が作成した母親のス
0
項目から構成され, 「子どもに
トレス尺度を使用した。計 1
関するストレス」および, 「夫婦関係・母親自身の悩み j の
2つの下位尺度から構成される。診断告知を受ける以前の母
点)∼非常
親のストレスについて「全くあてはまらない( 1
点
) Jの6
段階評定で回答を求めた。得点が
にあてはまる(6
高いほど,育児におけるストレスが高いことを示す
(
4)診断告知に至るまでの経過子どもに対して最初に気
になる点や不安を感じた時期(以後,不安な時期),はじめ
て専門機関に相談した時期(以後,相談時期),初めて確定
診断を受けた時期(以後 診断時期)について回答を求め
た口なお, 「不安な時期」はそのきっかけの内容, 「相談時
期 jでは初めて相談した専門機関の種類とそこで告げられた
内容について自由記述による回答を求めた。
(
5
) フェイス項目 母親の年齢・性別 子どもの年齢・性
別・所属・現在の診断名について回答を求めた。
(
2
) ソーシャルサポート
D
D
調査時期
2007
年1
1月下旬から 2008
年 1月上旬。
結果と考察
基礎統計量
質問紙の配布の結果, 248名の回答が得られた(回収率
調査手続き
事前に調査内容を親の会の役員会または担任教諭に説明
し,質問項目の内容・表現に問題がないか確認をお願いし
た。その後,調査者が役員会などで調査の趣旨や倫理的配
慮,プライパシーの保護等を口頭で説明し質問紙を配布し
た。また,調査者が直接説明できない場合は,親の会の役員
または担任教諭を通じて同様の説明の文書とともに調査協力
者への質問紙の配布をお願いした。回収方法は,後日調査協
力者が調査者へ郵送するという手続きをとった。なお,回答
にあたっては,プライバシーは保護されること,研究調査以
外には使用されないこと 回答は決して強制するものではな
いことを紙面上に明記した。
調査内容
(
1
) 診断告知満足度
診断告知満足度項目群(山根,
51.1%) 。 そ の 内 欠 損 値 の 多 か っ た 囲 答 や 子 ど も が
HFPDD以外の診断を受けている回答者を除き,最終的な有
3
.
1歳
, SD=5
.
8
7)であっ
効回答者数は 203名(平均年齢4
た 回答者の年齢は 40歳代 128名(全体の 63.1%)が最も多
く
, 30歳代 56名( 27.6%) '50歳代 13名( 6.4%)の順に多
かった。子どもの性別は,男子 157名(全体の 77.3%),女
1
.
9歳 (
SD=4.48)
子42名(20.7%)。子どもの平均年齢は 1
であった。子どもの所属は,小学校94名(全体の 46.3%) '
中学校43名( 21.2%),高等学校22名( 10.8%),保育園・
.
4%)の順に多かった。子どもの診断名は高
幼稚園 17名( 8
ア ス ペ ル ガ ー 障 害 52名
機 能 自 閉 症 57名( 28.1%)
(25.6%),広汎性発達障害5
1名( 2
5
.
1%),高機能広汎性
9名( 9.4%)の順に多かった口また,複数の診断
発達障害 1
を受けている回答者は, AD/HD 10名( 4.9%) ,LD6名
D
-18-
(
3
.
0
%)であった。
あった( T
able1
)口母親の半数以上は子どもが3
歳になる前
に子どもの発達に不安を感じており 就学前を含めると約8
子どもの発達への不安
子どもの発達に不安を感じた時期
「不安な時期 j につい
割に達していた。そのため,多くの母親は子どもが就学する
て子どもの年齢の分布をみると 子どもが3
歳未満の時点が
までに子どもへの発達上の不安を感じていたといえる。しか
5
8
.
7
%
, 3歳以上5歳未満が2
1
.
9
%
,5
歳以上7歳未満が8.0%で
し学齢期以降になって初めて子どもの発達上の不安を感じ
T
a
b
l
e1 不安な時期の子どもの年齢分布
子どもの障害の特徴が気づかれずにいたケースの存在もうか
ていた親も少なからずみられ 学齢期以降まで親や周囲から
がわれる。
年齢
1歳未満
1歳以上 2歳未満
2歳以上 3歳未満
3歳以上 5歳未満
5歳以上 7歳未満
7歳以上 1
0歳未満
1
0歳以上
未回答
人数
2
6
5
1
4
1
4
4
1
6
1
3
1
0
2
%
1
2
.
9
2
5
.
4
2
0
.
4
2
1
.
9
8
.
0
6
.
5
5
.
0
1
.
0
子どもの発達に不安を感じたきっかけ
子どもの発達に不
86件の記述が得られた。自
安を感じたきっかけについて計2
由記述による回答は,
K
J法(川喜田, 1967)を援用し,筆
者と心理学を専攻する大学院生2名 に よ り 内容分類のため
に小カテゴリーを作成した。さらに 同種の内容とされる小
カテゴリーをまとめ,大カテゴリーとした( Table2)。そ
の結果,母親の回答は「言語面の問題J (
2
5
.
6
%)が最も多
く記述され,次に「社会性/コミュニケーションの問題 J
T
a
b
l
e2 子どもの発達に不安を感じたきっかけの内容と記述率
小カテゴリ←
言語の遅れ( 3
8
)
発語がない(8
)
言語面の問題(5
2
)
オウム返し( 3
)
発語の消失( 3
)
集団行動ができない (
1
4
)
他児に興味がない/一人遊びが多い (
1
2
)
1
1
)
社会性/コミュニケーションの問題(5
1
) コミュニケーションカf耳又りにくい (
同年代の子どもと遊べない (
1
0
)
人見知りがない/人見知りが激しい( 4
)
親を必要としない/親を意識しない (
1
2
)
目が合わない( 1
1
)
愛着の困難さ(3
3
)
あやしても反応がない( 6
)
抱っこを嫌がる(4
)
こだわりの強さ (
1
7
)
こだわり/常同行動( 3
1
)
奇妙な行動やしぐさ(9
)
自己刺激行動( 5
)
多動 (
1
4
)
多動/衝動性( 3
1
)
落ち着きのなさ( 1
2
)
突発的な行動( 5
)
健診による指摘 (
1
3
)
他者からの指摘( 2
8
)
学校からの指摘(8
)
保育園・幼稚園からの指摘( 7
)
かんしゃくが激しい (
1
2
)
育てにくさ( 2
8
)
感覚過敏( 9
)
寝つきが悪い( 7
)
発達の遅さを感じる( 1
1
)
漠然とした他児との違い (
1
8
)
他の子と何か違うと感じる(7
)
不登校/登校しぶり( 7
)
学校−勉強面 (
1
4
)
字を書くことが苦手( 4
)
勉強ができない(3
)
注 1 ()内は記述数
大カテゴリー
-19一
記述率(%)
1
8
.
7
3
・
9
1
.
5
1
.
5
6
.
9
5
.
9
5
.
4
4
.
9
2
.
0
5
.
9
5
.
4
3
.
0
2
.
0
8
.
4
4
.
4
2
.
5
6
.
9
5
.
9
2
.
5
6
.
4
3
.
9
3
.
4
5
.
9
4
.
5
3
.
4
5
.
4
3
.
4
3
.
4
2
.
0
1
.
5
2
5
.
6
2
5
.
1
1
6
.
3
1
5
.
3
1
5
.
3
1
3
.
8
1
3
.
8
8
.
9
6
.
9
T
a
b
l
e3 初受診時の子どもの年齢分布
年齢
人数
l歳未満
1歳以上 2歳未満
2歳以上 3歳未満
3歳以上 5歳未満
5歳以上 7歳未満
0歳未満
7歳以上 1
1
0歳以上 1
3歳未満
1
3歳以上
7
1
7
2
8
6
9
2
5
3
0
1
9
7
未回答
T
a
b
l
e4 最初に相談した専門機関
年齢
医療機関
公的な療育センター
教育センター
保健所
児童相談所
民間の相談機関
大学等の研究機関
その他
未回答
%
3
.
5
8
.
4
1
3
.
9
3
4
.
2
1
2
.
4
1
4
.
9
9
.
4
3
.
5
0
.
5
人数
8
7
3
3
3
1
2
6
1
2
6
2
2
4
%
4
2
.
9
1
6
.
3
1
5
.
3
1
2
.
8
5
.
9
3
.
0
1
.
0
1
.
0
2
.
0
T
a
b
l
e5 専門機関で告げられた内容のKJ;法結果と記述率
大カテゴリー
小カテゴリー
記述率(%)
AS (
1
5
)
7
.
4
HFA (
1
6
)
7
.
9
PDD (
1
1
)
5
.
4
LD (
1
2
)
5
・
9 3
9
.
4
何らかの診断名( 8
3
)
AD/HD (
1
0
)
4
.
9
自閉症(9
)
4
.
4
精神遅滞(4
)
2
.
0
発達障害(3
)
1
.
5
自閉傾向(2
0
)
9
.
9
AS疑い( 6
)
3
.
0
PDD疑い( 6
)
3
.
0
発達障害の疑い( 3
9
)
HFA疑い(3
)
1
.
5 2
0
.
7
AD/HD疑い(3
)
1
.
5
LD疑い(3
)
1
.
5
発達障害疑い( 1
)
0
.
5
特性の説明( 8
)
3
.
9
コミュニケーションの遅れ( 8
)
3
.
9
発達の遅れ( 7
)
3
.
4
状態像の説明( 3
3
)
1
6
.
3
発達のアンバランスさ(4
)
2
.
0
言語の遅れ(3
)
1
.
5
一生治らない( 3
)
1
.
5
問題なし( 1
1
)
5
.
4
発達障害以外の原因( 2
5
)
親や家庭環境が原因( 7
)
2
.
3
3
.
4 1
他の精神疾患( 7
)
3
.
4
様子を見ましょう( 1
7
)
8
.
4
様子を見る/わからない( 2
1
)
1
0
.
3
よくわからない(4
)
2
.
0
他機関への紹介. (
7
)
3
.
4
4
.
4
他機関紹介/検査の勧め( 9
)
検査の勧め(2
)
1
.
0
注 l AS:アスペルガー障害(症候群), HFA 高機能自閉症, PDD:広汎性発達障害,
LD:学習障害, AD/HD:注意欠陥/多動性障害
Y
王2 ( )内は記述数
(
2
5
.
1%)' 「愛着の困難さ J (
1
6
.
3
%
)
' 「こだわり/常同行
果を合わせて考えると,母親は早くには子どもが乳児期の頃
「他者からの指摘J
に,主として言葉の遅れや愛着関係の難しさなどをきっかけ
動」
(
1
5
.
3
%)の順に多かった。また,
は1
3.8%と少なく,多くの母親は自分自身で子どもの発達の
として,子どもの障害の疑いや発達上の問題への気づきが生
じているといえる。また,遅くとも就学する前には,多くの
問題に気づいていたといえる。
Howlin& A
s
g
h
a
r
i
a
n(
1
9
9
9)は,アスペルガー症候群の
母親が保育園や幼稚園での子どもの集団行動の問題や対人関
子どもをもっ親が最初に不安を感じた内容として,言語発達
係の難しさによって子どもの障害の疑いや気づきが生じてい
の問題,社会性の発達や遊びの問題が上位を占めることを示
ると考えられる。
している口本研究の結果においても先行研究と向様の傾向が
みられたといえる口
「不安な時期 Jの子どもの年齢分布の結
-20一
T
a
b
l
e6 診断告知前のソーシャルサポート状況
サポート
なし
あり
3
.
9
)
9
6
.
1
)
1
9
5 (
8 (
6
2
.
6
)
7
6 (
3
7
.
4
)
1
2
7 (
9
2
.
1
)
別
7
1
6 (
1
8
7 (
8
4
.
7
)
1
5
.
3
)
1
7
2 (
3
1 (
8
0
.
3
)
4
0 0
9
.
7
)
1
6
3 (
8
4
.
2
)
3
2 0
5
.
8
)
1
7
1 (
8
0
.
8
)
3
8 (
1
8
.
7
)
1
6
4 (
x2(1)
助けかにっなたらaな 助けになった h
白
1
7
2
.
3•••
9
7 (
4
9
.
7
)
9
8
配偶者
1
2
.
8•••
5
8 (
4
5
.
7
)
6
9
子どものきょうだい
1
4
4
.
0•••
9
4 (
5
0
.
3
)
9
3
私の両親
9
7
.
9•••
1
3
3 (
7
7
.
3
)
3
9
配偶者の両親
7
4
.
5•••
1
3
2 (
8
1
.
0
)
親戚
3
1
9
5
.
2•••
7
4 (
4
3
.
3
)
9
7
子どもを通して知り合った人
7
8
.
6•••
1
2
6 (
7
6
.
8
)
3
8
近所の人
子どもを通して知り合った人/
4
1
.
9
)
3
7 (
4
3
.
5
)
4
8
5
4
.
7
)
1
1
1 (
8
5 (
7
8
.
6
近所の人以外の人
7
8
.
6•••
9
4
.
1
)
5 (
4
1
.
7
)
7
5
.
9
)
療育・訓練などを行う施設
1
9
1 (
1
2 (
7
8
.
6•••
6
3
3
7
.
4
)
1
3 (
1
7
.
1
)
ボランティア・ヘルパー
1
2
7 (
6
2
.
6
)
7
6 (
7
8
.
6•••
5
8 (
4
3
.
6
)
7
5
保育園・幼稚園
6
8 (
3
3
.
5
)
6
5
.
5
)
1
3
3 (
3
8 (
4
1
.
3
)
1
1
0 (
5
4
.
2
)
4
5
.
3
)
5
4
医療機関
9
2 (
7
8
.
6
7
8
.
6•••
2
2
.
9
)
3
7
1
5
4 (
7
5
.
9
)
2
3
.
6
)
親の会
4
8 (
1
1 (
5
2
9
2 (
4
5
.
3
)
5
4
.
2
)
5
8 (
5
2
.
7
)
行政機関・公的な相談機関
1
1
0 (
7
8
.
6
7
8
.
6•••
1
5 (
4
5
.
5
)
1
8
宗教や私的な団体
1
7
0 (
8
3
.
7
)
1
6
.
3
)
3
3 (
注 l a:全く助けにならなかった,あまり助けにならなかった, b とても助けになった,少し助けになった
T
a
b
l
e7 診断告知時の子どもの年齢分布
年齢
3歳未満
3歳以上 5歳未満
5歳以上 7歳未満
0歳未満
7歳以上 1
1
0歳以上 1
3歳未満
5歳未満
1
3歳以上 1
1
5歳以上
未記入
人数
9
4
1
4
1
4
1
4
0
7
1
3
1
1
(
5
0
.
3
)
(
5
4
.
3
)
(
4
9
.
7
)
(
2
2
.
7
)
(
1
9
.
0
)
(
5
6
.
7
)
(
2
3
.
2
)
(
5
6
.
5
)
(
5
8
.
3
)
(
8
2
.
9
)
(
5
6
.
4
)
(
5
8
.
7
)
(
7
7
.
1
)
(
4
7
.
3
)
(
5
4
.
5
)
T
a
b
l
e8 他機関紹介,情報提供の有無
%
4
.
7
2
1
.
4
2
1
.
4
2
1
.
4
2
0
.
8
3
.
6
6
.
8
5
.
7
年齢
他機関紹介・情報提供なし
他機関紹介・情報提供あり
(内訳)
親の会
療育機関
関連する書籍
相談機関
勉強会
その他
Y
王 1 内訳は重複回答あり
人数
9
2
1
1
1
%
4
5
.
3
5
4
.
7
5
1
4
9
3
6
2
0
6
4
5
.
9
4
4
.
1
3
2
.
4
1
8
.
0
5
.
4
9
.
0
1
0
れているが, LDやAD/HDなどHFPDD以外の診断を受けて
専門機関への受診
初めて相談機関を受診した時期を
いたものも見られた口 HFPDDは他の発達障害との鑑別が難
Table3に示す。子どもが3歳以上 5歳未満( 34.2%)のとき
しいことや,加齢や療育などの教育的効果によって発達的な
が最も多く,次いで5歳以上 10
歳未満( 27.2%に 2歳以上3歳
変化がみられ, しばしば診断名が移行するという問題がある
未満( 13.9%)であった。約半数の母親は子どもが就学前に
(飯田, 2004;杉山・辻井, 1999)。そのため,当初は別の
専門機関への受診時期
は専門機関へ相談をしていたが,子どもが小学生や中学生の
発達障害の診断に該当する状態像として捉えられていたり,
時期になって初めて相談したケースも見られた口初めて相談
相談や療育等の経過の中で診断名が変更になったケースがあ
した専門機関の種類を Table4に示す。
「医療機関」 87名
ると考えられる。また, 3
割の母親は発達障害の疑いや発達
(全体の 42.9%), 「公的な療育センター」 33名( 16.3%),
上の問題の指摘にとどまっていた。さらに
「教育センタ− J31名( 15.3%), 「保健センター」 26名
の原因」
(12.8%)の順に多く,大半の母親は医療機関に初めて相談
どを告げられている場合もみられた。以上からは,母親が子
(12.3%),「様子を見る・わからない」( 10.3%)な
どもの診断を早期に得ることの難しさがうかがわれる o
していた。
専門機関で告げられた内容
「発達障害以外
初めて相談した専門機関で告
HFPDDの確定診断の難しさは 場合によっては誤診や診断
げられた内容について計210の記述が得られた。得られた記
の見過ごしにつながり,時として子どもの問題の原因が親の
述は,子どもに対する発達上の不安と同様の手続きに基づき
育児の仕方に求められるケースがあるといえる。このような
KJ法を援用して分類した( Table5)。初受診時に相談機関
場合,母親にとって援助を求めるきっかけとなるはずの専門
で告げられた内容は「何らかの診断名 J(39.4%), 「発達障
機関への相談が,再び責められる体験や傷つきを生む体験と
害の疑い J(20.7%), 「状態像の説明」( 16.3%)の順に多
なり,その後の専門機関への相談に拒否感を抱くことにつな
割弱の母親が何らかの診断名を告げら
かった。初受診時に 4
がってしまう可能性も考えられる。
-21-
T
a
b
l
e9 診断告知時の不満内容の KJ
法結果と記述率
カテゴリ一
今後どうすべきか具体的な方法を教えてもらえなかった(2
8
)
育児・接し方についての具体的な助言がなかった(2
6
)
その後のフォローがなく,診断名だけを伝えられた (
1
5
)
相談機関や親の会などの紹介が全くなかった (
1
2
)
障害の特徴をはっきりと教えてもらえなかった (
1
4
)
冷たい態度や言い方にショックを受けた (
1
4
)
診断に対して納得できる説明がなかった(7
)
時間が短すぎて十分に相談できなかった( 7
)
もっと早くに診断を受けたかった( 7
)
園や学校,他機関等と連携をしてほしかった( 5
)
将来の子どもの見通しを教えてほしかった( 5
)
診断をあいまい・はっきりしない形で言われた( 4
)
医学的な検査,心理検査などをしてもらえなかった( 3
)
ストレス」は 1
9
.
5 (SD=7
.
1
2
)
パー」( 82.9%), 「親の会 J (77.1%), 「医療機関 J
「夫婦関係・母親自身の悩
(58.7%)などが役に立っていたと回答した母親が多かっ
「親戚」 (19.0%)' 「 配 偶 者 の 両 親 j
(
2
2
.
7
%
)
' 「近所の人 J(
2
3
.
2
%)は助けになったと回答した
母親は少なかった。発達障害はその障害の特徴が見えづらい
ために周囲の人々に理解されにくい(杉山, 2
0
0
0)。そのた
め,祖父母や親戚などの家族や近隣の地域においてサポート
源が存在していたとしても 子どもの状態を正確に理解して
もらえないことで母親へのサポートにつながらない可能性が
考えられる。他の家族成員が養育上のサポートを提供してい
hapley,B
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s
i
k
a
,&
た場合に母親の精神的健康が高く( S
E
f
r
e
m
i
d
i
s
,1
9
9
7),特に夫婦問のサポートが発達障害児をも
っ親の適応に重要や役割を担うことが示されている
(
B
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l
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l
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c
h
o
p
l
e
r
,1
9
8
8;内野 2
0
0
6)ロ母親
は夫によるサポートが約半数が助けにならなかったと回答し
ており,母親にとってこのような状況はストレスの高く心理
的負担の大きい状況であると考えられる。一方で,母親に
とって当事者という同じ立場で相談できる親の会や発達障害
に関する相談機関が親にとって助けとなるサポート源である
ことが示唆され, HFPDD児の母親にとってこのような相談
の場の重要性がうかがわれる口
3
.
3 (SD=4
.
8
7)であった。田中 (
1
9
9
6)は,障害児を
みJ1
もっ母親の育児ストレスの高さについて明らかにしている
が,本研究の結果はこれに比べてより高い値を示していた。
HFPDD児をもっ母親は診断告知前に経験しているストレス
が高いことが示唆され この時期の母親への専門的なサポー
トや介入の重要性が考えられる。
診断告知前のソーシャルサポート
サポート源の有無診断告知前のソーシャルサポートの状
able6に示す。診断告知前のソーシャルサポー
況について T
トの状況を検討するためにど検定をおこなった。その結果,
x
2(
1
, N=1
9
5
)
サポート源として有意に多いのは「夫」 (
0
0
1
) ' 「私の両親」 (x2 (
1
, N=l87)
=172.3, pく .
x
2(
1
, N=1
7
2
)=
9
7
.
9
,
=
1
4
4
.
0
, p<.OOl) , 「夫の両親」 (
x
2(
1
,
p<.OOl) , 「子どもを通して知り合った人 J C
x
2(
1
,
N=l71) =
9
5
.
2
, p<.001) 「保育園・幼稚園 J (
ゑ p<.001)などであった。一方で, 「療育・
N=l33) =78
訓練などを行う施設」 (
x
20
. N=l2) =78.6, p<.001) ,
「宗教・私的な団体」 (
x
2(
l
, N=33) =
7
8
.
6
, p<
.
0
0
1
),
「親の会」 (
x
2(
1
, N=48) =
4
8
, p<.001)などは有意に少
「子どもを通して知り合った人・近所の人
「医療機関」
「ボランテイア・ヘル
「子どもに関する
母親のストレス尺度の平均値を見ると,
以外の人」
3
.
4
3
.
4
2
.
7
2
.
0
が助けになっていたかを見ると
診断告知前のストレス
なかった。また,
%
1
9
.
0
1
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.
7
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.
2
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.
2
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.
5
9
.
5
4
.
8
4
.
8
4
.
8
「行政機関・公的な相談機関 Jに
た。一方で,
診断告知時の状況
診断告知を受けた時期
able7
診断告知を受けた時期を T
は有意な分布の偏りは見られず,診断を受けるまでに医療機
に示す口 3歳 以 上 5歳 未 満 ( 2
1.4%), 5歳 以 上 7歳 未 満
関や相談機関によるサポートをすでに受けていた母親と,サ
(
2
1
.
4
%
)
' 7歳以上 1
0歳未満( 2
1
.
4
%
)
'1
0歳以上 1
3歳未満
(
2
0
.
8
%)であった。 3歳未満に診断告知を受けている母親
歳から 1
3歳ごろの範囲で多くの母親が子どもの
は少なく, 3
診断を受けていた。つまり,子どもの幼児期から学童期のい
ずれかの時期に子どもの診断を受けており,その時期は比較
的散らばっており個人差が大きいといえる。
他機関紹介や情報提供の有無 診断告知時の他機関紹介や
able8に示
情報提供がおこなわれていたかどうかについて T
す。診断告知時に他機関への紹介や情報提供がおこなわれて
ポートを受けていない母親が同程度みられた。前者の場合
は,比較的早期に子どもの発達上の問題が発見されて相談機
関につながり,子どもの療育や相談の経過の中で子どもの診
断告知を受けていたと考えられる。また,後者の場合は診断
告知までに子どもの問題が気づかれなかった場合や子どもに
発達上の不安を抱きながらも母親が相談機関を積極的に利用
していなかった場合が考えられる。
サポート源の有効度
母親が利用していたどのサポート源
-22一
いたのは, 1
1
1名( 54.7%),全くなかったのは 9
2名(45.3%)
く上での新たなはじまりになることも多い。今後は診断告知
であった。また,他機関紹介・情報提供のあった場合の内訳
を受けた後に, HFPDD児をもっ母親の適応や障害受容がど
1名( 45.9%),「療育機関 J49名( 4
4
.
1%)'
は,「親の会」 5
のように移り変わるかについて検討していくことが望まれ
る
。
「関連する書籍」 36名( 32.4%)の順に多かった。情報提供
の有無によって診断告知満足度に差が見られるかを検討する
ために t検定をおこなった。その結果,他機関紹介・情報提
文献
供のあった群はそうでない群に比べて「支持・助言への満
t(
2
0
1
) =3
.
1
7
, p<.01)。以上より,他機
足 j が高かった (
関の紹介や情報提供があった場合は,診断告知の対応に対す
る母親の満足度も高いことが示唆された。
診断告知に対する不満の内容
診断告知に対する不満の内
容について計143の記述が得られた。得られた記述は,子ど
もに対する発達上の不安と同様の手続きに基づき KJ法を援
able9)。その結果,
用して分類した( T
「今後どうすべき
か具体的な方法を教えてもらえなかった J1
9
.
0
%
, 「育児・
接し方についての具体的な助言がなかった」 1
7
.
7
%
, 「その
後のフォローがなく,診断名だけを伝えられた」 10.2%,
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Disabled andNondisabledBoys :Adaptation and
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,1
「相談機関や親の会などの紹介が全くなかった」 8.2%の順
に多かった。 HFPDD児をもっ母親は,ただ診断名の告知を
するだけではなく
その後どうすべきかについて対応の指針
や具体的な育児の方法に対する助言などを求めているといえ
る。また,
G
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「障害の特徴をはっきりと教えてもらえなかっ
たJ' 「診断に対して納得できる説明がなかった J 「診断を
あいまい/はっきりしない形で言われた jなど,なぜこの診
断名に子どもが該当するかについて十分な説明や,子どもの
特徴や障害特性に関する詳しい説明を求めているといえる。
中田( 1
9
9
5)は,障害の告知に親が望むものとして,①障害
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1
,
8
3
4
8
3
9
.
飯田順三( 2004).高機能自閉症とアスペルガー症候群にお
の説明を暖味にしないこと,②障害の説明は理解しやすい工
夫をすること,③適切な療育・親の会等の情報や,将来の見
ける診断と告知
発達障害研究, 2
6
,1
6
4
1
7
3
.
川喜多二郎( 1967).発想法想像性開発のために
通しゃ方向性を指し示す助言をおこなうことの 3
点が重要で
中公新
童
あることを示している。 HFPDD児の母親にとっても同様で、
北川憲明・七木田敦・今塩屋隼男( 1995).障害幼児を育て
あり,診断告知の場においてこれらの配慮を十分におこなわ
る母親へのソーシャルサポートの影響,特殊教育学研
究
, 3
3
,3
5
4
4
.
れることが重要であると考えられる口
桑田左絵・神尾陽子( 2004).発達障害児をもっ親の障害受
まとめ
5
,3
2
5
3
4
3
.
容過程児童青年精神医学とその近接領域, 4
嶺崎景子・伊藤良子( 2006).広汎性発達障害の子どもをも
つ親の感情体験過程に関する研究
本研究では HFPDD児をもっ母親の診断告知前および診断
告知時の体験とその状況の実態を明らかにするために,子ど
もの発達上の問題への気づき,専門機関への受診,育児スト
レスおよびソーシャルサポート状況について検討をおこなっ
ンター東京学芸大学紀要(総合教育科学系) '5
7
,5
1
5
5
2
4
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Midence, K
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た。その結果, HFPDD児をもっ母親は子どもが乳幼児期の
ころに主に言語面・社会性の問題を機に子どもの発達上の不
永井洋子・林弥生(2004).広汎性発達障害の診断と告知を
めぐる家族支援発達障害研究, 2
6
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3・1
5
2
.
安を抱いていたが子どもの問題の原因が診断によって確定
するまでには時聞がかかっていた。また,診断告知前の母親
教育実践研究支援セ
中田洋二郎( 1995).親の障害の認識と受容に関する考察−
受容の段階説と慢性的悲哀−早稲田心理学年報, 2
7
,
8
3
9
2
.
の経験している育児ストレスは高く,十分なサポートを受け
ている場合も少ないことが示唆された。さらに,診断告知に
特徴について十分に説明されることや他機関への紹介,育児
中田洋二郎( 2002).子どもの障害をどう受容するか大月書
店
への助言などが求められていることが示唆された口母親に
喜久和・
中田洋二郎・上林靖子・藤井和子・佐藤敦子・井上f
対する不満を抱いている母親もみられ,診断の根拠や障害の
とって子どもの障害を告知されることは,子どもを育ててい
-23-
石川順子 (
1
9
9
5).親の障害認識の過程一専門機関と発
達障害児の親の関わりについて−小児の精神と神経, 3
5
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杉山登志朗(2
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0).軽度発達障害発達障害研究, 2
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.
杉山登志郎( 2
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0
2
)
.Asperger症候群と高機能広汎性発達障
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.
害精神医学, 4
杉山登志朗・辻井正次 (
1
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9).高機能広汎性発達障害アス
ペルガー症候群と高機能自閉症プレーン出版
1
9
9
6).障害児を育てる母親のストレスと家族機
田中正博 (
4
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3
3
2
.
能特殊教育学研究, 3
田中千穂子・丹羽淑子 (
1
9
9
0).ダウン症児に対する母親の
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8
8
0
.
受容過程心理臨床学研究, 7
内野里美( 2
0
0
6).障がいのある子どもの両親に対するソー
シャル・サポート一一夫婦問サポートと養育ストレスに
0
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9
5
2
.
及ぼす影響一一家族心理学研究, 2
山根隆宏( 2
0
0
8).高機能広汎性発達障害の子どもをもっ親
の診断告知時の感情体験について 神戸大学大学院総合
9年 度 修 士 論
人間科学研究科人開発達科学専攻平成 1
文(未公刊)
柳楽明子・吉田友子・内山登紀夫( 2
004).アスペルガー症
候群の子どもを持つ母親の障害認識に伴う感情体験一一
「障害」として対応しつつ,「この子らしさ Jを尊重す
ること一一児童青年精神医学とその近接領域, 4
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<謝辞>
お忙しい中,調査にご協力いただきました親の会の会員様
ならびに役員の方々に心より感謝致します口
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2
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9
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.3
1受稿, 8
.3
1受理)
-24-