第1回通訳案内士制度のあり方に関する検討会

第1回通訳案内士制度のあり方に関する検討会
(2014 年 12 月 24 日開催)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
概要
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●本検討会の目的
本検討会の想定される論点・課題の筆頭に、「資格制度の法的位置づけ=業務独占」を挙げてい
ますが、通訳案内士制度の肝は、この業務独占にあります。
この業務独占の廃止は、大量のヤミガイド(無資格ガイド)を安く使って大儲けをしてきた JTB グル
ープの長年の悲願であり、今回、JTB グループの総力をあげて、業務独占廃止を実現することを目
的に、本検討会を観光庁に開催させたものと考えられます。
●本検討会開催の準備
JTB グループ(特に、JTB グルーバルマーケティング&トラベル)、JTB 総合研究所、観光庁が、委
員の選定、資料作成、「出来レース」の進め方などについて、事前に綿密に打合せをし、開催の準
備をしたものと考えられます。
●JTB グルーバルマーケティング&トラベル吉村久夫部長の役割
この検討会の陰の主催者である JTB グループを代表して、JTB グルーバルマーケティング&トラベ
ル グローバルマーケティング部吉村久夫部長は、委員として、冒頭のヤラセ質問をするとか、本検
討会の「出来レース」の進行具合を監視することをその役割としていると考えられます。
●結論ありきの検討会
事前に、結論ありき(=通訳案内士法から、通訳案内士の業務独占を剥奪すること)ではありますが、
観光庁としては、「アリバイ作り」のために、詳細な資料を JTB 総合研究に作成させて、開催している
というわけです。全部で 7 回開催する予定になっているようですが、「ヤラセ」と「出来レース」の推移
をしっかり見ていただきたいと思います。
●第1回検討会の議事進行
(1)冒頭に座長の選任があった。(シャンシャン)
(2)観光庁観光資源課・長崎敏志課長
JTB 吉村久夫部長の「この検討会はゼロベースからやるのですか」とのヤラセ質問に対して:
長崎敏志課長からの回答(後述)があって、その後、事務局の準備した資料(たたき台)の概要
を説明した。
(3)参加した委員全員が 3 分程度の発言をした。
-1-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
観光庁観光資源課・長崎敏志課長の概要説明
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●JTB 総合研究所が作成したと思われる資料
http://hello.ac/kentousubete.pdf
●4部構成の資料(想定される論点・課題)
(1)資格制度の法的位置づけ=業務独占、資格区分、国と地方の役割
(2)資格付与のあり方=試験基準、免除科目、在外試験
(3)資格付与後の品質確保方策=一定期間の毎の研修制度の導入の可否
(4)資格取得者の利用促進方策=旅行者への情報提供、旅行業者等の取り組み
●「観光立国実現に向けたアクション・プログラム 2014」(2014 年 6 月 17 日)の中でうたわれた通
訳案内士の見直しの基本
「総合特区制度等に基づく特例ガイドを増加させるとともに、旅行者が通訳ガイドにスムーズにアク
セスできるようにするため通訳案内士・特例ガイド・ボランティアガイド等を養成し、民間業者との連
携によりその積極活用・ネットワーク化の仕組みを構築する。構造改革特区制度を活用し、自治体
が実施する研修を終了した場合に、観光タクシー等による有償での通訳案内を可能にする通訳案
内士案内士法の特例措置を検討する。
●通訳案内士の現状
通訳案内士登録者数 2014 年現在1万 7736 人。都市部 75%、地方部 25%。英語が約 67%。
現在の通訳案内士は3種類。
(1)通訳案内士法に基づく通訳案内士(1万 7736 人)
(2)地域限定通訳案内士(6 道県計 379 人)
(3)特例ガイド(福島、沖縄、奄美群島、小笠原諸島)計 395 人
通訳案内士の資格取得者は資格を活かしていない。地域限定案内士は資格が活用されている。
(1)通訳案内士の 75・7%が未就業、専業は 6%
(2)地域限定案内士は 59・0%が未就業
(3)特区ガイドの 80・0%が未就業
<解説>
長崎課長は、「通訳案内士の資格取得者は資格を活かしていない」と他人事のように言っているが、
実際のところは、多数の安いヤミガイドを使っている JTB グループの違法行為を黙認、保護し、JTB
グループの大儲けを支援するために、高い通訳案内士が資格を生かすことができないように観光
庁が誘導してきたということが真実である。
-2-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
各委員の発言要旨
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●座長・佐藤博康・松本大学教授
通訳案内士制度ができてから 60 年経ち、制度疲労を起こしている。立て直しが必要か、それともリ
フォーム程度で済むのかを話し合いたいが、私は、改革しなければ、時代に適合していかないだろ
うという気がしている。今日は、事務局が用意した、たたき台を前提に参加者全員が3分程度発言
する場にしたい。
●全日本通訳案内士連盟(JFG)
(委員代理)原田智子
私達は、会員すべてが国家資格をもつ通訳案内士の団体である。
今回のアンケートでは丁度秋の繁忙期ということもあり回答できなかったガイドもいると思う。
資料で6~7割がリピーターという報告があったが、それには、お客を満足させる通訳案内士が必
要。そのために JFG では研修を重ねている。
資料から、通訳案内士が足りないといわれているが、通訳案内士では生活が成り立たないと辞めて
いく通訳案内士もいる。それが改善されない限り、いくら通訳案内士を増やしても同じことである。通
訳案内士の積極的な活用をお願いしたい。
アジア言語の通訳案内士が少ない、地方の通訳案内士が少ないといわれているが、現実には中国
語、韓国語の通訳案内士には仕事がこない。地方で、例えば秋田で韓国語の通訳案内士には仕
事は皆無という報告も受けている。詳細は今後改めてお伝えしたい。
●観光庁観光資源課・長崎敏志課長
(JTB 吉村久夫部長の「この検討会はゼロベースからやるのですか」とのヤラセ質問に対して)
初めからゼロベースからやる、ガラガラポン(下記の説明をご参照)でやるというわけではないが、そ
れを排除しない議論をしてほしい。われわれは、ふたつに分けて考えている。ひとつは法律改正が
必要なもの(業務独占廃止のことと考えられる)、これは中長期的なプラン。もうひとつは運用ででき
るもの。
(運用でできるものとして)通訳案内士の合格率を上げているが、これは政策としてやっている。な
ぜなら数が足りないから。来年以降、筆記試験免除の枠を増やし、志願者の裾野を広げる。特区の
特例通訳案内士は増やしていく。構造特区法改正法案で自治体の要望に応じて限定的な通訳士
の認定制度をできるようにしたかったが、衆院解散で廃案になった。頼みの綱は登録しているボラ
ンティア 5 万 8000 人だ。この人たちと通訳案内士を活用してマーケットを広げる必要がある。
※ガラガラポン:複雑になってしまった問題を、一度ゼロにして考え直してみることの意味。
●(株)JTB グルーバルマーケティング&トラベル グローバルマーケティング部
吉村久夫部長
通訳案内士の制度改革(業務独占廃止のことと考えられる)ともに、どのような通訳案内士が求めら
れるかということを論議したい。通訳案内士には、もっとガイディングとホスピタリティのスキルが必要
だ。九州のクルーズのツアーで雇った通訳案内士が、冒頭で二言しゃべってあとは何もしなかった
という例がある。きわめて不評だった。先日、京都の嵐山に行ったが、ライトアップが非常にきれい
だった。FIT が多く、通訳案内士をつけているツアーは見かけなかった。外国人観光客は日本の歴
史、文化より今、日本で、はやっているものを見たいのだ。沖縄特区のガイドの研修はしっかりして
-3-
いる。九州も増えている。
渡された資料を見ると、50 代の通訳案内士が一番多く、若手が少ない。収入を高くし、若い人にも
興味を起こさせる必要がある。日本にマレー語、インドネシア語の通訳案内士が何人いるのか。実
際には通訳案内士とは名ばかりで、土産物販売人というようなガイドもいる。
●日本旅行国際旅行事業本部海外営業部
三好一弘営業部長
海外のエージェントからの依頼を受けてツアーを組む仕事をしている。繁忙期に通訳案内士が足り
ない。地方で適当な通訳案内士が調達できない。欧米語の通訳案内士は何とか足りているが、タイ
などの東南アジアの言語の通訳案内士が足りない。建築、祭りなどに限定したツアーに使える通訳
案内士がいない。日本の歴史、文化の専門知識よりもスムーズにツアーを行える通訳案内士がほし
い。今、日本で流行しているものを見たい、知りたい、良い買い物をしたいというような外国人観光
客の要望に応えられる通訳案内士がほしい。
●(株)はとバス国際事業部開発課
森嶋敏夫・次長
外国人向けの「はとバス」では通訳案内士にバスガイドをやってもらっている。通訳案内士は、なく
てはならない存在だ。インバウンドが 2000 万人来ることになるので倍増したいと考えている。
通訳案内士の 4 分の 3 が通訳案内士として働いていないということを今日の資料(たたき台)で知っ
て驚いた。増やすことが本当に必要なのか。食べていけないといこともある。だめなのは、人との交
流ができない通訳案内士。
自分のペースで楽しむ個人旅行者(FIT)が増えたことに、「はとバス」の国際事業部としては、危機
感を感じている。ところで、日本人のバスガイドにアルバイトの通訳をつけてツアーをすることは、い
けないことなのか教えてください。
●京都市産業観光局観光 MICE 推進室
三重野真代・振興課長
京都市は今、欧米の富裕層を対象にキャンペーンを実施している。訪日したジャーナリストで京都
観光を希望する人たちのツアーにも力を入れている。京都市には約 700 人の登録通訳案内士がい
る。これらのツアーに通訳案内士を活用しているが、足りない。仕事を依頼してもことわってくる通訳
案内士もいる。年間 300 万人の外国人旅行者を誘致することが目標。そのために京都の知識に詳
しい通訳を育成したい。また、京都限定の通訳案内士をつくり、専門職ガイドを育成したい。そのほ
か通訳の人材バンクをつくりたい。たとえば、京都のお祭りを見たいというだけの外国人観光客に対
して必要な通訳案内士を確保できない。外国人観光客を対象に新しいビジネスをする人がいる。た
とえば料理教室とか。そういう時に対応できる通訳案内士がいない。
●東京都産業労働局観光部
鈴木のり子振興課長
外国人観顧客の 4 分の 3 が東京経由。観光ボランティアの育成、中高生の活用を考えている。
●和歌山県商工観光労働部観光局観光交流課
櫻井紀彦・課長
和歌山県「高野・熊野」文化・地域振興総合特区(平成25年4月運用開始)の利点を生かして特区
-4-
ガイド(81 人)を活用している。通訳案内士試験の問題には和歌山県に関する問題がほとんど出な
い。地元の深い知識を伝える通訳士ということで平成 25、26 年と 2 年間やってきた。感じることはス
キルアップの必要性だ。知識、経験の蓄積が必要ということを痛感している。通訳案内士との連携
ができないか。国が支援をしてくれるよう期待している。
●(株)トラベリエンス
橋本直明代表取締役
通訳案内士と FIT(Foreign Independent Tour)=海外個人手配旅行者=をつなぐプラットフォーム
をやっている。当初は、英語の通訳案内士と東京の案内に限定していた。今は、対象を全言語に
広げ、案内士に商品を作ってもらい FIT にマッチングさせることをやっている。
●(株)ハナツアージャパン国際事業部
李光守・次長
弊社では今年約 23 万人の中国人、韓国人を顧客があった。来年は 27 万人を見込んでいる。東南
アジア向けの情報が少ない。タイ、マレーシアのビザ免除、ベトナム、インドネシアのビザ免除でそ
れらの国からの観光客が増えている。東南アジアの人のためのガイドが足りない。
●日本商工会議所流通・地域振興部
谷脇茂樹課長
着地型の観光振興を考えている。そこにガイドが必要かというのが重要な問題。その地域に詳しい
人が必要ということになれば、ボランティアの育成が望まれる。その中で通訳案内士がどれだけの
役割が果たせるかということだ。雇用の創出という観点から考えて、特区の通訳案内士を増やすこと
を検討したい。
●日本旅行業協会国内・訪日旅行推進部(JATA)
山田和夫
今年のゴールデンウィークすぎに通訳案内士についてヒアリングをした。その結果、1番目に通訳
案内士の絶対数が足りないという声が多かった。渡された資料でもそれが裏付けられている。2番
目に旅行の形態が違ってきたという声が多い。FIT が主流だ。リピーターを増やさないと、インバウ
ンド 2000 万人は達成できないだろう。顧客満足度を向上させることがリピーターを増やすことにつ
ながる。そのために優秀な通訳案内士は欠かせない。
●日本観光振興協会事業推進本部観光地域づくり・人材育成部
斎川昭雄・担当部長
ボランティア組織をつなぐ仕事をしている。通訳案内士の 4 分の 3 が稼働していないという事実にシ
ョックを受けた。通訳案内士とボランティアのセットでやるのが良いのではないか。京都はそういうケ
ースが多く、それで成功している。
●日本観光通訳協会
萩村雅代・会長
通訳関係の組織で唯一の社団法人で 70 年の歴史がある。会員 700 人。当協会で行った通訳案内
士新人研修を受けた人は 9000 人に達する。通訳案内士の数と質がポイントだ。首都圏と関西圏に
集中しているが、地方には仕事がこないというのが現実。それなのに通訳案内士が足りないという
-5-
のは解せない。優れた大変優秀な通訳案内士が必要とされている。ダメな通訳案内士は必要な
い。
●通訳ガイド&コミュニケーション・スキル研究会
松岡明子・副理事長
昨年当たりからガイドの需要が右肩上がりで増えている。地域限定ガイド、特区ガイドは機能してい
る。かれらは点の仕事、われわれは点と点をつなぐ線の仕事をしている理解している。ボランティア、
トップガイド、通訳案内士の棲み分けが必要であると思う。
●東京 SGG
石関文昭・会長
会員 165 人が都内 5 拠点でボランティアの通訳・案内をしている。女性7割、男性3割、年齢は 20
歳から 80 歳まで。1か月の稼働時間は約 1000 時間。英、独、仏、中国語の対応ができるが約 80 か
国の人を対象にして、ほとんど英語で過不足なく対応している。1人で最大10 人を引き連れていく。
浅草では定番の案内のほか、美術館から案内を依頼されている。大型クルーズ船の客の観光案内
も頼まれており、最近は多様化している。通訳案内士の多くが稼働していないのに、足りないとはど
ういうことなのか。地方で通訳案内士が増えないという状況は今後も変わらないだろう。
●検討会終了後、ある参加者の質問に対して長崎課長は次のように答えた。
衆院解散で廃案になった構造特区法改正法案は、来年再び国会に提案され、可決される見込み
である。そうすれば地域限定の通訳案内士を増やすことができる。たとえば京都市が、研修だけで
通訳案内士を認定し、当該の通訳案内士は有償で京都市内において通訳案内士の仕事をするこ
とができるようになる。(←事実上の通訳案内士制度の崩壊を示唆している)
●参加委員(代理の場合もあります)
松本 美江 (全日本通訳案内士連盟(JFG)理事長)
吉村 久夫 (JTB グローバルマーケティング&トラベル グローバルマーケティング部長)
三好 一弘 (株式会社日本旅行国際旅行事業本部 海外営業部長)
森嶋 敏夫 (株式会社はとバス 国際事業部 開発課 次長)
興津 泰則 (日本旅行業協会(JATA)国内・訪日旅行推進部長)
小堀 守 (国際観光振興機構(JNTO)統括役)
櫻井 紀彦 (和歌山県商工観光労働部観光局観光交流課長)
佐藤 博康 (松本大学 総合経営学部 観光ホスピタリティ学科 教授)
鈴木 のり子 (東京都産業労働局観光部振興課 課長)
谷脇 茂樹 (日本商工会議所 流通・地域振興部 課長)
橋本 直明 (株式会社トラベリエンス 代表取締役)
三重野 真代 (京都市産業観光局観光 MICE 推進室 担当部長)
矢ケ崎 紀子 (東洋大学 国際地域学部 国際観光学科 准教授)
萩村 昌代 (日本観光通訳協会(JGA)会長)
ランデル 洋子 (NPO 法人通訳ガイド&コミュニケーション・スキル研究会理事長)
石関 文昭 (東京SGG会長)
以上
-6-