地震の物理学 ー 地震予知はなぜ難しいか? 川村 光 大阪大学 宇宙地球科学 地震は、しばしば甚大な被害をもたらす災害である一方、物理学の法則に則って 起きる大規模な自然現象の1つである。即ち、物理現象としての地震現象の性質や、 地震に先立ってあるいは地震破壊の際に起きる様々な物理プロセスを、 物理学の法則に基づいて理解することは、地震予知に向けても極めて重要である。 地震は、普段は固着した断層がプレートの運動によって溜め込んだ歪を一挙に 開放すべく急激に滑る、いわゆる「固着‐すべり不安定現象」で、駆動系が示す 動的不安定性や摩擦現象の物理学に支配されていると考えられる。 それでは、こういった物理学の基本法則に基づいて、物理プロセスとしての 地震現象は、現在、一体どの程度理解できているのであろうか?予知が可能な レベルに達しているのであろうか?残念ながら、我々は、まだそのような地点には 到達していない。勉強会では、地震の物理学、とりわけ講演者が手がけている 統計物理学的な地震のモデル化と数値シミュレーション研究の観点から、 「何が解っていて、どこに困難があり、今後どのような方向が考えられるのか」に ついて、私見も交えて、お話ししてみたい。
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