負極だけでなく正極の反応挙動も解明 電池関連の深耕

EJ14年2月号-P.070 14.2.18 10:03 ページ 70
特集
PV EXPO/バッテリージャパン
レーザーテックの Liイオン電池向け検査装置
負極だけでなく正極の反応挙動も解明
電池関連の深耕と他分野への展開も図る
厳しく、安全性も高いレベルが求められる。特に
●車載向けで高まるニーズ
温度の変化による反応挙動を見たいというニーズ
約30年にわたり不明だったLiイオン電池における
がある。このため、オプションとして温調システ
負極材の反応挙動を解明したレーザーテックの電
ムを用意、−30∼80℃の間で温度を変化させるこ
気化学反応可視化コンフォーカルシステム「ECCS
とが可能で、挙動の変化を見ることができる。さ
B310」が、さらに進化を続けている。
らに高い温度や低い温度のニーズもあるため、対
ECCS B310は、同社のコア技術であるコンフォー
応を検討している。
カル光学系技術をベースに、白色光源を採用する
ことでリアルカラーコンフォーカル画像を取得で
きる。また、専用設計のIn-situ観察用窓付きセルに
●「数値化」で開発の効率化を実現
より、電解液中におけるLiイオン電池の充放電中の
機能の強化と用途の拡大にも積極的に取り組ん
電気化学反応進行分布を
できた。その1つが「数値
リアルタイムの動画で可
化」で、可視化の次のス
視化することができる。Li
テップとして、動画で見
イオン電池は、正極活物
えているものの数値化に
質、負極活物質、電解液、
取り組んだ。その結果、
活物質に添加する導電助
色の変化や厚みの変化を
材の材料など1000種類以
数値化して、定量的な判
上におよぶ材料・部材が
断を可能にし、研究開発
使用されている。このた
の効率化と開発期間の大
め、変化の要因は多岐に
幅な短縮を実現した。「こ
わたるが、電解液中にお
れを応用し、次は極めて
ける状態をリアルタイム
複雑な電池開発における
指標も作っていきたい」
で見る方法がなかったた
(先端開発室長 米澤良氏)
。
め、実際の挙動を確かめ
ることができなかった。
また、電池だけでなく他
分野への展開も計画し、
しかし、2012年にECCS
B310を用いて電解液中の
すでに、腐食やめっき関
負極活物質の色変化によ
連から引き合いを受けて
▲「ECCS B310」
(上)と「TSS20」
(下)
る電池の反応挙動を可視
いる。現在、腐食やめっ
化した研究成果が学会で発表され、業界に衝撃を
きに対応するセルを用いて実験を行っている。
与えた。充電時に灰→ 緑 → 青 → 赤 → 金と変化し、
この他、電池向けでは、塗工ムラスキャニング
放電時には金 → 赤 → 青 → 緑 → 灰の色変化が起こ
システム「TSS20」の拡販も進めている。Liイオン
ることが初めて明らかにされた。さらに、正極活
電池の厚さムラがメインだが、様々な分野に応用
物質の反応挙動の観察にも成功した。負極に比べ
できる柔軟性を有している。TSS20は、A4サイズの
色変化は少ないが、青味を帯びることや明るくな
面積を短時間で厚みのマッピングが可能で、ムラ
ることを確認している。
や傷などわずか0.1μmレベルで検知することがで
アプリケーション的には、車載向けでの引き合
きる。厚さムラにセンシティブな、Liイオンキャパ
いが強いという。車載は使用される環境が非常に
シタや燃料電池などに期待しているという。
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Electronic Journal 2014年2月号