内部熱交換型蒸留塔の挙動

内部熱交換型蒸留塔の挙動
(東理大・工) (正)大江 修造*
1. 緒 言 蒸留操作は云うまでも無く塔底で加熱し
塔頂で冷却を行うため,加熱に用いるエネルギーを塔
頂で無駄に捨てている.エネルギーを有効に活用する
蒸留塔の一つに内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)がある.
化学工業で分離精製に使うエネルギーの 90%は蒸留
分野で消費されているといわれ,このエネルギー消費
量の削減が強く望まれている.HIDiC は国家プロジェ
クトにより研究開発されてきたが,実証プラントでは
60%の省エネを達成した。最近注目を浴びているエ
タノールにつき HIDiC の適用を検討した。
2. 内部熱交換型蒸留塔の理論 HIDiC の原理を Fig. 1
に示す1).HIDiC では(1)回収部からの蒸気を直接
濃縮部に送らずに加圧昇温した上で送る.(2)濃縮
部各段の蒸気は回収部各段と熱交換させる.(3)濃
縮部は回収部より高圧となっているので,液は減圧し
た上で送る.これにより,濃縮部を上昇する蒸気は上
段に近づくほど減少する.濃縮部から回収部への熱移
動を工業的に実現可能な構造にし,かつ濃縮部塔頂に
おける外部還流を不要とした.
Fig.1 内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)の原理1)
濃縮部操作線の式
ye ( i +1) =
yp
idre
xei +
1 + idre
1 + idre
rei = i × dre
回収部操作線の式
1 + (n − j + 1)drs
xw
y sj =
xs ( j −1) −
(n − j + 1)drs
(n − j + 1)drs
dre = Qk / λ / P,
rs j = (n − j + 1)drs
drs = Qk / λ / W
ここに,Qk は各段における内部伝熱量であり、これに
より濃縮部および回収部における内部還流量が決ま
る。Qk は各段で一定とする。
3. 内部熱交換型蒸留塔の挙動 エタノールの脱水に
HIDiC を適用する可能性につき検討した。エタノール
+水系の気液平衡は平衡圧力により変化する。
Fig. 2 圧力差によるエタノール脱水(従来法)
圧力による気液平衡の差異を使えば従来の蒸留法によ
ってもエタノールの脱水が可能である(Fig. 2)
.
Fig. 3 圧力差によるエタノール脱水(HIDiC)
HIDiC によれば、この圧力による気液平衡の差異を更
に有効に使ったエタノール脱水が可能である(Fig. 3)
。
HIDiC に お い て 回 収 部 お よ び 濃 縮 部 の 操 作 圧 を
101.3kPa および 200kPa とすることにより 98 モル%の
エタノールを得ることができる。
理論段数は 22 段であ
る。4.結 言 HIDiC は従来の蒸留塔とは構造が大幅
に異なっている。設計,製作,運転の各段階で,理解
と技術の確立が必要である.そのためには本報告に示
すような設計項目の影響を明らかにする必要があろう。
今後も HIDiC の省エネ効果を引き出すために主要な設
計項目の影響を明らかする必要がある.
引用文献 (1) 高松武一郎、中岩 勝、中西俊成、化学工学論文
集、第 22 巻、985-990 (1996), (2) 阿曽一正, PETROTECH, 23, 456, 2000
(3)中岩 勝,内部熱交換による省エネ蒸留技術開発,独立行政法人
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDOホームページ)
http://www.nedo.go.jp/activities/portal/gaiyou/p02020.html
*) S.Ohe, Tel/Fax:03-3221-1570 E-mail : [email protected]