学生アンケートのデータベース化に向けて

学生アンケートのデータベース化に向けて
石川工業高等専門学校
○青山義弘,福井工業高等専門学校
1.はじめに
我が国おける自殺者は,平成 10 年ごろにおおよそ
1.5 倍に増加した.しかし近年,自殺者は減少の傾
向にあり,未成年者の減少の度合いは少ないものの,
これも減少傾向にあった.
(図1参照)
しかし,それに反して全国高専における自殺者は
漸増傾向であった.
そこで,その対策を検討するため高専機構本部は
平成 25 年度から,「こころと体の健康調査(自殺予
防のためのチェックリスト)」を年 2 回実施するよう
指示してきた.福井高専では学生相談室が中心にな
り,カウンセラー,学生主事団,クラス担任等と検
討した結果,これまで行っていた Q-U テストと,数
年前より導入しすでに実績のある明石高専方式のア
ンケート調査をこれにあて,学生の動向の調査を行
った.
本報告は今回行ったアンケート結果解析のために
作成した EXCEL の処理方法と過年度調査に対応する
ためのデータベース化に関する報告である.
2.Q-U と明石高専方式アンケート
福井高専では,これまで,学生の動向調査,クラ
ス運営への参考のため,Q-U を行っていた.
Q-U は,学校生活意欲と学級満足度の2つの尺度
で構成され,学級経営のための有効な資料が得られ,
学級診断アセスメントとして利用でき,いじめや不
登校などの問題行動の予防と対策に応用できるもの
であった.また,良いと思われる点は以下のとおり
である.
・ 学生の自尊心やプライドを傷つけない質問内容
であること
・ 集計結果が図表化され結果を理解しやすいこと
図 1 自殺者の年度推移(S53~H25)1)
中谷実伸,荒川正治
・ これまでの実績があり Q-U の活用例の紹介等が
数多くあり,教員が Q-U の結果を活用する際に
も,心理学の専門的な知識を必要しなくてもよ
いこと
明石高専方式アンケートも同様の特徴がある.明
石高専では,学生の自殺予防への取組の一環として,
学科全学生を対象に「高専生活に関するアンケート」
を平成 20 年度より継続して実施している.明石高
専では,アンケートは専門の大学教授の助言を得て
作成したものを記名で実施し,自殺親和性の高い学
生を拾い上げ,非常勤カウンセラーや,同精神科医
と相談,対応願うとともに,問題を抱えていそうな
学生については,学生相談室員を中心にフォローし
ている.
特に,アンケート文に関して福井高専でも考察,
検討を行い,追加,変更等行った(福井高専版).今
回,アンケート結果に関する報告は行わないが,学
生の自由記述の中に,
「アンケートに答えていく間に,
気分が悪くなった」とか,
「憂鬱になる」等の意見が
あった.真剣に答えてくれる学生の精神的負担は大
きいものと窺われる.今後も検討の余地がありそう
である.
また,明石高専方式では,アンケート結果を EXCEL
で処理し,統計を行いグラフ化による見える化まで
の処理を外部委託することなく学校でできる(図2).
このような理由から,福井高専では「こころと体
の健康調査(自殺予防のためのチェックリスト)
」で
はなく,Q-U と「高専生活に関するアンケート(福
井高専版)
」による学生調査を行った.
図2「高専生活に関するアンケート」の流れ
【連絡先】〒929-0392 石川県津幡町北中条字タ1 石川工業高等専門学校 電気工学科
青山義弘 TEL: 076-288-8122 FAX: 076-288-8014 e-mail:[email protected]
【キーワード】高専アンケート,自殺予防,データベース(5 つ以内)
図3
OMR で読み取り EXCEL 化されたデータの例
図4
クラス集計の例
4. 学生アンケートのデータベース化の検討
今回,EXCEL による簡易データベース化を行い,
心配な学生のピックアップに有用であったが,クラ
スや学年の横断的なチェックにはまだ人力に負うこ
とが多く,大変な作業であった.そこで今回,EXCEL
による簡易データベースではなく,データベースソ
フトによる管理を行う(図6).年度ごとの学籍簿デ
ータベースと,年度ごとのアンケートデータベース
を作成し,それらのデータベースから以下のような
抽出,計算を行う機能追加する.
① 支援要学生の自動抽出
② 指定年度,指定クラスの状況
③ 指定学籍番号学生の経年アンケート結果
その他,個人別集計結果やグラフ化はこれまで同様
できるものが必要である.現在,EXCEL による集計
計算は確立しているといえる.そのため,今回はデ
ータベースソフトとして,MS-Office の ACCESS を用
いる予定である.完後は昨年度福井高専で行ったア
ンケート結果を入力し,学科,学年横断した,検索
抽出,および集計計算,グラフ化を連動して行える
ようにし,学生支援に役立てるようにしたい.
図5 個人データの集計と
グラフ化による見える化
3.福井高専による変更点
基本的なアンケート処理の流れおよび集計方法は
明石高専において確立していた(図2,3,4,5)
.
そこで,福井高専では,アンケート文の見直しのほ
か,現在の学生の問題と考えられる,インターネッ
ト,携帯,スマホ,ゲームに関する質問等を追加修
正した.そして,学生支援を行うため,学籍簿デー
タを別シートに登録し,番号で学生データを閲覧で
きるような,簡易データベースを作成し運用した.
また,抽出し,支援を行いたい学生の基準値を 3.5
とし,それを超える項目には着色する機能により,
クラス一覧表上で心配な学生を見ることができるよ
うにした.そして,クラス全員ではなく,出席番号
を入力することにより,個人データの参照をしやす
くした.以上のような変更を行い,心配になる学生
をピックアップした.
特に,自殺親和性,自尊感情のポイントに注目し
た.また,自由記述により相談や感想も書いてもら
ったので,そちらも学生相談室で全部読み,気にな
る学生をピックアップした.そして,それらの学生
に学生相談室,保健室,あるいは相談員の教員の居
室に来てもらい,カウンセラーや相談員がいろいろ
話を聞くなどのフォローを行った.
図6
過年度アンケートデータベース
5.おわりに
平成 25 年度福井高専において,明石高専方式のア
ンケート調査「高専生活に関するアンケート(福井
高専版)
」を行った結果,保健室や相談室に訪れる学
生と一致するなど,非常に関連深い結果が出ており,
未だ保健室,相談室に来ていない学生にも声をかけ
ることができた.
これが全てではないが,不安を抱えている学生の
減少に役立っており,今後も続けていきたい.その
ための省力化と確実化を目指すため,データベース
化と機能追加を行っていきたい.また,データベー
ス化により,どんどん変化していく学生への対応も
できるようにしていきたい.
参考文献
1) 内閣府自殺対策推進室警察庁生活安全局生活安
全企画課作成「自殺者数の年次推移」
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei
/pdf/h25joukyou/zuhyo1.pdf