Title ブタにおける抗インフルエンザウイルス活性に関与するMx およびTLR遺伝子群の多型と機能の解析( 内容の要旨 (Summary) ) Author(s) 両角, 岳哉 Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 乙第098号 Issue Date 2010-03-15 Type 博士論文 Version URL http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/33569 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。 氏名(本(国)籍) 推 薦 教 両 角 員 岩手大学 岳 哉(長野県) 教授 学 位 の 種 類 博士(獣医) 学 位 記 番 号 獣医博乙第98号 居在家 義 昭 学位授与年月日 平成22年3月15日 学位授与の要件 学位規則第3条第2項該当 学位論文題目 ブタにおける抗インフルエンザウイルス活性に関与する MxおよびTLR遺伝子群の多型と機能の解析 査 委 員 主査 岩 副査 授 居 在家 義 昭 帯広畜産大学 教 授 木 宏 志 副査 岩 手大 教 授 茂 克 副査 東京農工大学 教 授 本 多 英 副査 岐 阜大 教 授 杉 山 論 文 の 手大 内 学 学 学 容 の 要 彦一誠 教 鈴重 審 旨 動物は病原体の侵入,定着,増殖などに対して,侵入の探知,定着の阻害,増殖の阻 止などを行う分子レベルの感染防御機構を有しており,インフルエンザAウイルスの感 染に対してもウイルスの認識や増殖の阻止といった抗ウイルス活性に関連する遺伝子が 複数存在する0インフルエンザAウイルスの遺伝子再集合体産生の役割を果たしている ブタにおいて,このような抗インフルエンザAウイルス活性に関与する遺伝子における 多型を検出し・その多型が機能におよぼす影響を解析することで抗ウイルス活性の高い ブタの育種が可能となれば,新型インフルエンザAウイルス出現のリスクを下げる一助 になると考えられる0そこで本研究では,ブタにおいてインフルエンザAウイルス増殖 抑制能が示唆される肋ノと助2遺伝子,およびインフルエンザAウイルス認識が示唆さ れる花風え 花ガろ 花膠遺伝子について多型の検索と機能の解析を行った。 最初に,ブタ肋ノのゲノム全体を保持するBACクローンを単離するために,エキソン 14を増幅するプライマーセットを用いてブタBACライブラリーのPCRスクリーニングを 行い,0313DO7と0935EO4の2つのBACクローンを単離した。これら2つのBACクロー ンにはエキソン3も含まれることがPCRによって確認され,Mxlの蛋白質をコードする 読み枠(openreadingframe,ORF)を含むことが示唆された。さらに,BACDNAを鋳型 にして増幅したェキソン14の塩基配列を決定し,データベースに登録されていたcDNA の塩基配列(AccessionNo・,M65087)と比較した。0313DO7由来のPCR産物は,コード 配列(coding sequence,CDS)における位置で塩基配列番地2064-2074にあたる GGCGCCGGCTCの11-bpが欠失していた。この11-bp欠失配列には制限酵素胸z・Ⅰと胸eI の認識配列が含まれていた。1卜bp欠失型配列の3つのアレルが存在することが明らか となった〇3つのアレルの15品種341頭のブタにおける分布をPCRqRFLPと確認のため のシーケンシングによって決定した。通常型である舷ノaは全ての品種において高頻度で 確認されたが,一塩基変異型の肋ノbと11-bp欠失型の肋ノCの分布には偏りが見られた。 -230- 肋ノbは梅山豚を含む東洋系品種にしか検出されず,MxICはランドレースやデュロック, ハンプシヤーに見られ,特にランドレースでは調査した87頭中64頭が保持していた。 次に,肋遺伝子は様々な生物で2∼3遺伝子座が存在するが,全長の報告されていた ブタ助ノと異なり,ブタ戯クは部分的な塩基配列が報告されていただけであった。この ようなブタ肋2について,初めて全長cPNAを単離し,さらにそのゲノム塩基配列の決定 により・,ブタ励2が肋ノの上流に同一転写方向で隣接していることを明らかにした。ま たIFN刺激によってブタ政2のmRNAと蛋白質発現が強力に誘導される一方で,IFN非刺 激下でも様々な組織でmRNAが構成的に発現していること,蛋白質が核膜周辺に局在して いることも明らかにした。さらに,強制発現させたブタ肋2は,弱いながらもインフル エンザAウイルス増殖抑制能を示し,抗ウイルス活性を保持していることが明らかとな った。 最後に,細胞内小胞においてインフルエンザAウイルスのゲノム郡Aを認識すると思 われるブタの花見笑 花斤ろ 花月汐について,CDNAの単離と多型の検索,および多型の機 能への影響について検討した。多型検索では,細胞表面に局在するブタ花ガと比較して, ブタの几朋∴乱即:花彪におけるアミノ酸置換を伴う変異は数が少なく,多様性の獲得 よりも機能維持への選択圧の方が高い可能性が示唆された。リポーターアッセイを用い た機能解析では,核酸誘導体であるCLO75やCLO97等の7LR8による認識が示され,また 花見ブのリガンド認識領域によるpolyI:C認識がキメラ花見タを用いて確認された。花見ヲ のリガンド認識領域に検出されたアミノ酸置換を伴う変異およびTLR8に検出されたア ミノ酸置換を伴う変異は,それぞれpolyI‥CとCLO75認識によるシグナル伝達に影響を およぼさないことが明らかとなった。 以上の結果,本研究において肋パこ検出した11-bp欠失の排除並びに肋2にインフル エンザウイルス増殖抑制能を観察したことで,抗病性育種の可能性が開かれた。花凡ヲと 花形に検出された多型は機能に影響をおよぼさなかったことから,花β7を含むこれらの TLRの多型は,多様性の獲得よりも認識対象を変化させないための機能維持の選択圧下 にある可能性が示唆された。 審 査 結 果 の 要 旨 インフルエンザAウイルスなどの病原体の感染に対して,ブタを含む宿主側は,自然免 疫や獲得免疫などの分子レベルの感染防御機構を駆使して対抗している。そこで,申請者 は,ブタにおいてインフルエンザAウイルス増殖抑制能を示す肋・遺伝子群,およびインフ ルエンザAウイルス認識能を示す花々遺伝子群について多型の検索と機能の解析を実施し た。ブタ肋ノ遺伝子の翻訳領域■3′側において多型検索を行った結果,1卜bpを欠失してい るアレル(11-bp欠失型)を検出した。この11-bp欠失は,全ての品種に共通して検出さ れたアレル(通常型)と比較してアミノ酸の変化が予想され,それによる機能への影響が 示唆された。この11-bp欠失型が,どのような頻度でどのような品種に分布しているのか を明らかにするため,PCR-RFLPを開発した。その結果,11-bp欠失型は西洋商業品種に偏 って分布しており,特にランドレース種において高頻度で保持されていることが明らかに なった。ブタにおいても肪上の他に肋プ遺伝子の存在が示唆されていたが,塩基配列とし -231- ては5′側の欠失した部分的なcDNAが報告されていたのみであった。本研究では,ブタ肋2 について,2136-bpの翻訳領域を含むcDNAを初めて単離した。さらにブタMdのmRNAと 蛋白質の発現が,IFN刺激によって強力に誘導されることをRT-PCRと抗ブタMx2ペプチド 抗血清を用いたウェスタンプロットおよび免疫蛍光染色で明らかにした。一方で,励クは 工FN非刺激状態でもmRNAと蛋白質の構成的な発現を示した。ブタMx2の抗ウイルス活性を 検討するために,ブタ肋クを強制発現させたマウス3T3細胞にインフル畢ンザAウイルス を感染させ,産生された子孫ウイルス量を検討した。その結果,ブタ肋2はMx非導入細胞 と比較して子孫ウイルス量を半分程度に抑制することを明らかにした。次に,ブタにおけ るウイルス由来RNA認識レセプター花兄笑 花ガ7および乃訪汐について多型を検出し,花月汐 のアミノ酸置換を伴う多型全てと花見ヲの一部の変異について,その機能への影響を特定の リガンドを用いた解析を行ったが,これらの多型が機能に影響をおよぼさないことを明ら かにした。 以上の結果,本研究において肋パこ検出した1卜bp欠失の排除並びに肋2にインフルエ ンザウイルス増殖抑制能を観察したことで,抗病性育種の可能性が開かれた。アユ兄ヲと花彪 に検出された多型は機能に影響をおよぼさなかったことから,花ガ7を含むこれらのTLRの 多型は,多様性の獲得よりも認識対象を変化させないための機能維持の選択圧下にある可 能性が示唆された。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の論文とし ての十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文 1)題 著 目:Three 者 types of polymorphismsin exon14in porcine肋1gene 名:Morozuhi,T.,Sumantri,C.,Nakajima,E.,Kobayashi,E.,Asano,A., Hamasima,N. Oishi,T.,Mitsuhashi,T.,Watanabe,T.and 学術雑誌名:BiochemicalGenetics 巻・号・頁・発行年:39(7-8):251-260,2001 2)題 著 目:Molecular 者 and cloning characterization of porcine肋クgene 名:Morozumi,T.,Naito,T.,Lan,P.D.,Nakajima,E.,Mitsuhashi,T., Mikawa,S.,Hayashi,T.,Awata,T.,Uenishi,H.,Nagata,K., Hamasima,N. Watanabe,T.and 学術雑誌名:MolecularITnmunOlogy 巻・号・頁・発行年:46(5):858-865,2009 3)題 目:PolymorphismdistributionandstructuralconservationinRNA-SenSing Toll-1ike 著 者 学術雑誌名:Biochimica pigs receptors3,7,and8in 名:Morozumi,T.and Uenishi,H. et Biophysica Acta 巻・号・頁・発行年:1790(4):267-274,2009 -232- 既発表学術論文 目:Essentialrole 1)題 isolated 著 者 the of blastoderms yolk for syncytiallayer from medaka the development of embryos 名:Hyodo,M.,Aoki,A.,Ando,C・,Katsumata,M・,Nyui,S・,Motegi,N・・ Matsuhashi,M. Morozuni,T.and 学術雑誌名:Development,Growth&Differentiation 巻・号・貢・発行年:38(4):383-392,1996 目:Characterizationofdevelopmentalpotentialinisolatedmedaka 2)題 blastomeres 著 者 cultured and embryonic cells 名:Hyodo,M.,Katsumata,M.,Takagi,S・,Takada,T・,Miyajima,S・, Morozumi,T.and Matsuhashi,M. Marine 学術雑誌名:Journalof Biotechnology 巻・号・頁・発行年:6(1):23-29,1998 目:ブタ品種間に認められる戯コガ遺伝子及び且汀遺伝子の多型 者 名:奥村直彦,小林栄治,鈴木秀昭,両角岳哉,濱島紀之,三橋忠由 学術雑誌名:日本畜産学会報 3)題 著 巻・号・頁・発行年:71(8):J222-J234,2000 目:Structureofthepig 4)題 sterol14α-demethylase(CYP51)geneandits 著 者 testis the expressionin and other tissues 名:Kojima,M.,Morozumi,T.,Onishi,A・andMitsuhashi,T・ Biochemistry 学術雑誌名:TheJournalof 巻・号・貢・発行年:127(5):805-811,2000 5)題 著 目:Polymorphisms 者 antiviralproperty andthe ofporcineMxlprotein 名:Asano,A.,Ko,J.H.,Morozumi,T・,Hamashima,N・andWatanabe,T・ Veterinary 学術雑誌名:TheJournalof MedicalScience 巻・号・頁・発行年:64(12):1085-1089,2002 目:Constructionof 6)題 radiation 著 者 anewporcinewhole-genOme hybrid frameworkmap usinga panel 名:Hamasima,N.,Suzuki,H.,Mikawa,AリMorozumi,T・,Plastow,G・and Mitsuhashi,T. 学術雑誌名:AnimalGenetics 巻・号・頁・発行年:34(3):216-220,2003 目:Cloningofsixfull-1engthcDNAsencodingpigcytochromeP450enzymes 7)題 and 著 者 gene enzymesin theliver and kidney Morozumi,T・ 名:Kojima,M.and 学術雑誌名:Journalof these expressionof Health Science 巻・号・頁・発行年:50(5):518-529,2004 目:Comparative 8)題 著 者 analysis and development ofmicrosatellite swine(Sus scz・Ofb)chromosomelqter 名:Mikawa,S.,Shimanuki,S.,Morozumi,T・,Domukai,M・,Shinkai,H・・ Uchida,Y.,Mikawa,A.,Miyake,M・,Miyake,Y・,Hayashi,N・, Kusumoto,H.,Uenishi,H・,Hayashi,T・and 学術雑誌名:AnimalGenetics -233- Awata,T・ markers on 巻・号・頁・発行年:35(6):445-450,2004 目:Genomicstructureofeightporcinechemokinereceptorsandintergene 9)題 著 者 an of sharing between exon CCHland XCHl 名:Shinkai,H.,Morozumi,TリToki,D.,Eguchi-Ogawa,T・,Muneta,Y・, Awata,T.and Uenishi,H. 学術雑誌名:Gene 巻・号・頁・発行年:349(11):55-66,2005 目‥Twoquantitative 10)題 the affecting 著 者 St]SSCZ・Ofbchromosomesland7 traitlocion number of vertebrae 名:Mikawa,S.,Hayashi,T.,Nii,M.,Shimanuki,S・,Morozumi,T・and Awata,T. 学術雑誌名:Journalof AnimalScience 巻・号・頁・発行年:83(10):2247-2254,2005 11)題 著 目‥Genomic 者 of andgeneorder structure swine chromosome7ql・1→ql・2 名‥Tanaka,M.,Suzuki,K.,Morozumi,T・,Kobayashi,E・,Matsumoto・T・・ Domukai,M.,Eguchi-Ogawa,T・,Shinkai,H・,Awata,T・andUenishi, H. 学術雑誌名:AnimalGenetics 巻・号・頁・発行年:37(1):10-16,2006 目:Biaseddistributionofsinglenucleotidepolymorphisms(SNPs)in 12)題 著 者 porcineToll-1ikereceptorl(7LRl),几彪∴几朗,7L戯:and7L価genes 名‥Shinkai,H.,Tanaka,M.,Morozumi,T・,Eguchi-Ogawa,T・,Okumura, Uenishi,H■ N.,Muneta,Y.,Awata,T・and 学術雑誌名:Irnmunogenetics 巻・号・頁・発行年:58(4):324-330,2006 13)題 著 目:Analysisofthegenomic 者 a)1genecluster structureoftheporcine 名=Eguchi-Ogawa,T.,Morozumi,T・,Tanaka,M・,Shinkai,H・,Okumura, Uenishi,H・ N.,Suzuki,K.,Awata,T・and 学術雑誌名:Genomics 巻・号・頁・発行年:89(2):248-261,2007 目:Anaturally 14)題 occurringvariant increased 著 者 ofporcine肋■1associatedwith toinfluenza susceptibility virus 名:Nakajima,E.,Morozumi,T・,Tsukamoto,K・,Watanabe,T・,Plastow, Mitsuhashi,T. G.and 学術雑誌名:BiochemicalGenetics 巻・号・頁・発行年:45(1-2):11-24,2007 目:Fine 15)題 mapping vertebrae nuclear 著 者 a of and quantitative swine analysis of an orphan traitlocus nuclear receptor,germ factor(NR6Al) 名:Mikawa,S.,Morozumi,T.,Shimanuki,S・,Hayashi,T・,Uenishi,H・, Awata,T・ Domukai,M.,Okumura,N.and 学術雑誌名:Genome Research 巻・号・頁・発行年:17(5):586-593,2007 -234- for number of Cell andJW 著 thepromoter 目:Polymorphismsin 16)題 者 regionof theporcine antiviralJm genes 名:TungtrakooIsub,P.,Noda,T.,Morozumi,T・,Hamasima,N・,Kobayashi, Watanabe,T. E.,Ueda,J.and 学術雑誌名:AnimalGenetics 巻・号・貢・発行年:39(1):22-27,2008 目:Differencesindistributionofsinglenucleotidepolymorphismsamong 17)題 intracellular 著 者 pattern pigs receptorsin recognition 名:Kojima-Shibata,C.,Shinkai,H.,Morozumi,T・,Jozaki,K・,Toki,D・, Uenishi,H・ Matsumoto,T.,Kadowaki,H.,Suzuki,E・and 学術雑誌名:ⅠmmunOgenetics 巻・号・貢・発行年:61(2):153-160,2009 目:GenomicsequenceencodingdiversitysegmentsofthepigTCR∂chain 18)題 gene 著 者 demonstrates productivity of highly diversified repertoire 名:Uenishi,H.,Eguchi-Ogawa,T.,Toki,D・,Morozumi,T・, Yamamoto,R・and Tanaka-Matsuda,M.,Shinkai,H・・,r 学術雑誌名:MolecularITnmunOlogy 巻・号・頁・発行年:46(6):1212-1221,2009 -235- Takagaki,Y・
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