一‘ご豆 ン り ー 第6号平成26年3月 v一 一麺 │ − 、” 壱 一 ー PIP‐ , r 一【 ‘,陰瞳a − Index I事業の窓 ◆2013年夏の豊後水道東岸の水温について…………………………… ◆テングサの粗放的手法による種苗生産について…………………… ◆アユのエドワジエラ・イクタルリ感染症について………・……・…・ ◆アサリ資源の再生に向けて……………………..……………・……… ◆キジハタの種苗生産について………………………………………… Ⅱ新施設紹介 ◆リアルタイムPCR装置の概要……………………………・……。 ‐ 表紙写真説明 「キジハタの放流」 種苗生産親魚飼育中の稚魚 魚礁への放流定着した稚魚 ◆事業の窓 2013年夏の豊後水道東岸の水温について 環境資源室主任研究員橋田大輔 2013年夏の低水温とカタクチイワシの豊漁 はじめに 2013年の夏は、全国各地で猛烈な暑気に見舞われ 2013年7月から10月の水温を平年(1991年-2012 た年でした。気象庁の発表によりますと、夏季の西 年)と比較した表1を見ると、7月の水温は平年よ 日本の平均気温平年差は+1.2℃となり、統計を開 りやや高い状態でした。しかしながら8月、9月には、 始した1946年以降で最も高くなりました。特に、高 一部の海域を除き、平年を下回る水温となり、夏季 知県江川崎では8月12日の最高気温が41.0℃となり、 を中心に豊後水道東岸は平年に比べ低い状態であっ 日本の日最高気温の記録を更新しました。 たことが分かります。一般に、ある海域の水温が低 気温だけでなく海水温も高く、2013年8月の四国 くなるためには、直接その海面が冷やされるか、ほ 沖の海水温は平年より1.2℃高い29.2℃となり、月 かの場所にあった低温の海水が流入することが必要 平均値としては1985年以降で最も高くなりました です。2013年夏は猛暑であったので、海面が冷やさ (気象庁発表)。 れたため水温が低下したとは考えられません。そこ このように、2013年夏は全国的に気温・海水温と で、この要因を探るため、まず図1の豊後水道中央 もに高い状況でしたが、図1の豊後水道東岸では、 を縦断するSt4∼St28における断面の水温を検討し バケツに水深3bの海水を入れると結露するほど、水 てみました。 温が低い年でした。ここでは、この2013年夏の低水 表12013年7月から10月の水温の平年比 温について、検討してみました。 水温平年偏差北部中部南部 7月(5m; +0.7 +1i +1.s 7月(60m; +1.5 + 0 . ( +0.9 8月(5m −2.2 −1. −1.4 8月(60m; −2.2 −2.1 −1.8 9月(5m +0.8 + 0 . −1.5 9月(60m; −1.9 -ti −3.3 10月(5m: −0.6 + 1 . [ +1.1 10月(60m) −1.3 + 0 . ミ +0.7 図2の9測点における水温の鉛直分布図を見ると、 表層は暖かく底層は冷たい構造となっていることが 100m St 望 ゴロ 蓮 星 200m 500m st28 分かります。月別に、水温構造の変化を見ると、零 月、8月には20℃を下回る低温水が海底に沿って水 道南方から進入していることが分かり、この夏の異 常な低水温は、このことが原因であったことが伺わ れます6 図1検討に用いた豊後水道の水温観測点 −1− St8.040910131619222528、0409】O13I619222528 められた底層水の進入・湧昇が、この夏に異常な低 2013年夏は、漁模様(以下、漁況)にも興味深い 1 現象が見られました。というのは、卵を持ったカタ 1 ︵白︶二︾己①白 00 5 00 5 水温をもたらした要因だったのかもしれません。 水温(2013/07 、 ー クチイワシが御五神島や日振島と言った島唄部を中 水温(2013/08) 心とした海域で多獲され、7月から10月の水揚量は Sta、04091013】61928。040910131619222528 平年の約3倍と、1979年以降では最高となったので す。これまでの研究から、底層水は栄養塩に富み、 1 御五神島や日振島と言った島唄部周辺では、その湧 1 ︵■︶二浬畠の畠 00 05 0 5 i J / │ ; 蕊 昇が植物プランクトンの増殖を支えていることが知 水温(2013/09) 唖Ⅲ 声 られています1)。また、カタクチイワシ親魚は、こ 水温(2013/10) のような生産性の高い海域に選択的に来遊すると考 えられています鋤。このようなことから類推します 図2水温の鉛直分布の月推移 と、この夏に島喚部でカタクチイワシ親魚が多獲さ そこで、より詳細に検証するため測点St.uにおけ れた事は、カタクチイワシの餌となる植物プランク る水深60m水温の一日平均水温の推移を見てみまし トンの生産を支える栄養塩に富んだ底層水の進入・ 湧昇が原因であったのかもしれません。 た(図3上)。すると底層水温は、7月3日から大きく 低下し始め、概ね7月9日から9月17日頃にかけて20 ℃以下の低水温の状態であったことが分かりました。 おわりに また、底層水温の低下とともに表層水温も低くなっ ここまで、底層水温とカタクチイワシ漁況につい ており(図3下)、表層の水温が底層の影響を受けた て述べましたが、宇和海における漁況は底層水温だ ことが示唆されました。 けでなく表層水温も密接に関係していると考えられ ”お羽迦四灯調羽泌型迦加 ます。また、漁況だけでなく、表層水温は赤潮の消 画砺-'12の平均水温との差-60m日平均水温 K $ 芦 ■ 』 長や養殖魚の成長にも大きな影響を与えます。この −「 ように水温の変化は、地域漁業に与える影響が大き 蝉 いために、水産研究センターでは長期にわたって水 温をモニタリングできる体制を整えてきました。こ うした体制によって得られた水温データは水産研究 ■ 1m 「 画'03-'12の平均水温との差−5m日平均水温一 T センターのホームページに随時掲載しています。水 産関係の方はもちろんのこと、他の県民の方々にも、 ノ唱腿網 B 」" ^ W 釣りや海水浴といった海のレジャーの際に、是非ご V判 利用いただければ幸いです。 p W 1 8 / 1 卿 1 1 α Z 引用文献 図3St.Uの水温と偏差の日変化(上:60m下:5m 1)速水祐一・兼田敦史・小涜剛・中野伸一・武岡英隆. これまでの研究から、底層に見られる低温水は陸 豊後水道における外洋起源栄養塩の供給機構とその 棚斜面から海底にそって進入し、海峡部や島嘆部に 生態系への影響.沿岸海洋研究2006;43:143-149. 生じる強い潮流によって中表層に持ち上げられるこ 2)木村伸吾.黒潮フロント域の低次生物生産過程. とが分かっています'>(この現象を以下、湧昇と呼 「海流と生物資源」(杉本隆成編)成山堂,東京.2004; びます)。このことを踏まえると、7月9日頃から認 194-200 −2− テングサの粗放的手法による種苗生産について 養殖推進室主任研究員田村稔治 生態 はじめに テングサは、古くから寒天の材料として食品や医 テングサは、テングサ科(紅色植物門、テングサ 薬品などに幅広く利用されている海藻で、近年では 目)の海藻の総称で、世界中の温帯∼亜熱帯域を中 健康食品ブームの中で安定した需要があり、比較的 心として9属約150種が生息しており、そのうち本研 高単価で取引されています。 究で対象としているのは、愛媛県内で最も漁獲量が 現在、厳しい経営状況に置かれている真珠・真珠 多い種類であるマクサ{GelicガumeZ宅豆"s)です。 母貝養殖業者からは副業として現行の養殖施設(写 マクサ(写真2)は多年生の海藻で、嚢果(写真3) 真1)を利用した養殖業として藻類養殖の技術開発 から放出された胞子(写真4)が発芽し幼体へ生長 が求められており、既に藻類養殖については、養殖 する繁殖と、飼旬枝(写真5)や枝による栄養繁殖 技術が確立しているヒジキ養殖の普及が行われ、県 が盛んに行われます。年間の生長は約lOcraで、長さ 下でも漁業権を取得し、ヒジキ養殖に参入する業者 が20∼30craにまで大きくなります。マクサは深層の が増加しつつあります。県では、さらに、ヒジキ養 海水が表層まで湧き上がっている湧昇域に大群落を 殖と同時に行えるテングサの養殖の技術開発に平成 形成します。 25年度より着手しているところです。また、本県の 乾燥テングサの生産量は全国2位(表1)であり、天 然資源は豊富ではありますが、採藻業者からはテン グサの天然資源の増殖が望まれている状況です。 千 一 L一睦室 頚・& 塗一』∼弓障 写真2マクサ{Gelidiumel瑠冴"s)枠内の海藻 全 萄 写真1真珠。真珠母貝養殖筏 表1テングサ生産量(乾燥重量の推移) 73 一二2 2008欝零東京 41 2009静 岡 21き 愛媛東京 7 0 5 9 39 2010静1岡 55 愛媛東京 徳島 2011瀞愛媛 2012瀞愛媛 80 86 葬銅一癖鯛 6 9 5 7 高知 両 ー 唖 ー 、 戸 、ごご 隅I隅 )三 n 徳島 21 唖 高知 34 20 徳島 高知 37 36 徳島 高知 37 ー 重6 年度1位2位3位4位5位総生産量 徳島 21 442 489 481 (単位9トン)株式会社森田商店調べ 写真3嚢果 −3− さらに、1cm角当たり約96,000個の胞子をポリエ ステル織布に散布し育成をおこないましたが、こち らも幼体には至りませんでした。そこで、嚢果を切 り取ってポリエステル織布上に直に設置し、胞子を 放出させたところ、幼体(写真7)にまで生育させ ることが可能となりました。しかしながら、幼体は ポリエステル織布がカビに覆われるにつれて減耗し 消失してしまいました。人工種苗の生産を成功させ るには、自然界でテングサの繁茂する環境を再現す ることが重要ではないかと考えています。 写真4胞子(直径約30仏霞 写真5詞旬枝 写真7幼体 種苗生産の状況 粗放的手法により種苗生産することを目的に嚢果 おわりに から放出された胞子を含む海水(胞子液)を作り、 テングサは、ところてんや寒天の材料であり、ダ 水槽に敷いたポリエステル織布に胞子数が1cm角当 イエットには最適の食材です。筆者は関西出身であ たり約3,000個となるように胞子液を散布し育成を りところてんには黒蜜をかけていただきますが、関 おこないましたが、発芽体(写真6)が確認出来た 東に移住した際に、ところてんに三杯酢が添えられ だけで、幼体には生育しませんでした。 て販売されているのを見て、カルチャーショックを 受けました。しかし、食べてみると案外美味しかっ たことを記l隠しています。愛媛では三杯酢を用いる のが主流のようですが黒蜜との食べ比べをおすすめ します。 なお、テングサを採る場合の注意点として、愛媛 県では、愛媛県漁業調整規則により、11月から翌年 3月まではテングサの採捕が禁止されています。 また、沿岸域には漁業権が設定されており、その 中にテングサが対象種に設定されている場合が殆ど ですので、採捕する区域を管理する漁業協同組合の 写真6発芽体 規則に基づいて採捕することとなります。 −4− アユのエドワジエラ・イクタルリ感染症について 魚類検査室専門員内村祐之 一一 はじめに アユは、日本各地の河川に生息し、古来より日本 ー 唖凶 一寺一§ 壷、 人になじみ深い淡水魚です。平成19年、このアユに、 一一 我が国ではこれまで発生が認められていない、エド ー 言 ワジエラ・イクタルリ(/.カリ笹rdsiellaictaluiゾ) という細菌による疾病が発生しました。')我が国に 一 グ おけるictali"プによる疾病の発生およびアユにお 一 一 君 一 一 砿 ける発症は初めてのことであり、国では都道府県に 帯緬 注意喚起')を行うとともに、本菌の天然河川におけ る分布状況を調査しています。ここでは、エドワジ エラ・イクタルリ感染症と本菌の天然河川における 写真1腹部膨満を示す病魚(上段)(写真提供;広 島県立総合技術研究所水産技術海洋センター永井 崇裕氏) 分布状況について説明します。 エドワジエラ・イクタルリ感染症とは? 細菌EZctaluiプによる感染症で、世界的にはナマ ,剛f 、、 ズの病気として知られています。')本症の発生は、 、」 北米、タイ、ベトナム、インドネシア、トルコで報 告されており、自然発症は、ナマズ類のほか、ニジ 壷 マス、コイ科のdanio(ぬ"io企yario)やrubybarb 一 一 色 = 今 (ん"迩妬〃igi℃金sciatus)、greenknifefish (鐘genman"iaだ”"s)に認められており、実験感 、 . 染では、ヨーロッパナマズ{Silurusgi召"お)、マ スノスケ、ブルーテラピア{Oreochromisaureus)、 写真2体表の発赤(写真提供;岐阜県河川環境研 ゼブラフィッシュへの感染が報告されています。 究所) なお、本菌は、37℃では増殖しないことが確認さ ノ れており、これまでに人への被害は1例も報告され ていません。 アユのエドワジエラ・イクタルリ感染症の特徴 本症は、河川・湖沼では、7月から10月の夏季を 中心とした高水温期(水温20℃以上)に発生し、成 熟期には保菌率が上昇するといわれています。’'2) 諺 病魚の外観的な特徴としては、顕著な外部症状に = 乏しい場合のほか、体表の発赤、虹門部の発赤、腹 部膨満、眼球突出が認められることがあります(写 真1∼3)。 写真3眼球突出(写真提供;岐阜県河川環境研究所) −5− 病魚を解剖すると、血液の混じった腹水の貯留が おわりに 認められることが多く(写真4)、臓器スタンプの染 色標本で短梶菌が認められます。 これまで、エドワジエラ・イクタルリ感染症によ るアユの死亡は発生しましたが、大量死は見られて いませんでした。しかし、平成23年、平成24年に、 東日本のいくつかの県では、本症によるアユの死亡 が目立ったことが報告されています。3)また、本症 1 鐘 による大量死発生の要因として、猛暑による河川水 温の上昇や渇水による河川水の停滞が指摘されてい 凶 ます。5)先述のように、本菌の天然河川への浸潤か 写真4解剖により腹水の漏出した病魚(写真提供; 広島県立総合技術研究所水産技術海洋センター永 井崇裕氏) 進んでおり、さらに近年は、異常気象の影響で、以 前に比べて河川が高水温や渇水になりやすいため、 本症による大量死が発生する可能性もあり、注意か 必要です。 なお、本症のまん延を防止をするため、次のこと 天然河川等におけるアユおよび他魚種のエドワジヱ にご協力ください。 ラ・イクタルリ保菌状況 平成19年にアユでエドワジエラ・イクタルリ感染 ○“おとりアユ”として購入したアユや漁獲したア 症が発生したため、天然河川のアユやその他の魚種 ユを、別の河川に移動すると、感染が拡大すること におけるE.icオaluriの保菌状況が調べられています。 が懸念されるので、河川で漁獲したアユを、“おと その結果、本菌の保菌が、アユのほか、ナマズ、オ り”等として他の河川に持ち出さないで下さい。 イカワ、アマゴ、カワヨシノボリ、アカザ、ギギ、 ○河川で異常なアユやナマズ、その他の魚を発見し カマツカにも確認され、またE.ictalurZ陽’性を示す た方は、最寄りの地方局水産課または水産研究セン 都道府県および河川の数も増加し、本菌の河川への ターへご連絡ください。 浸潤が拡大するとともに河川への定着が進んでいる ことが示唆されています(図1)。3‘4)平成25年の調査 引用文献 では、愛媛県のアユにも保菌が確認されており、今 1)農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長 エドワジエラ・イクタルリによるアユの感染症 後、注意が必要です。 に関する調査及び注意喚起について 2)アユ疾病に関する防疫指針.アユ疾病対策協議会 宗=■ Ⅱ 一一一一一 ■■都県 3)平成24年度第2回全国養殖衛生管理推進会議資料 ■■河川・ 湖 沼 -←魚種 4)平成25年度第1回全国養殖衛生管理推進会議資料 5)平成24年度養殖衛生管理問題への調査・研究成 果報告書 E I 君 呼 ■ H19H20H21H22H23H24H25* 図1ictaluri陽性を示す都道府県数、河川・湖 沼数および魚種数の推移3‘4〉 *H25は10月現在の数値。 −6− アサリ資源の再生に向けて 栽培資源研究所浅海調査室主任研究員石田稔 アサリ生産量の変化を統計グラフで見てみると、 アサリ資源について 過去、瀬戸内海の干潟では、豊富なアサリ資源を 全国の生産量はピーク時の年間16万トンから3万ト 利用した潮干狩りやアサリ漁業が盛んに行われてい ンにまで減少しています。瀬戸内海においてもその ました。しかし近年、その生産量が瀬戸内海沿岸の 傾向は顕著で、1970年から1983年にかけて2万トン みならず全国的にも急減しています。かつては重要 を超す生産量であったものが急減して数千トンにま な沿岸漁業として成り立っていたところでも現在で で減少したまま低位での漁獲が続いていますo(図1) は全く獲れなくなった地域もみられ、潮干狩りが行 われる干潟においてもシーズン前に漁協や自治体が 養殖アサリを放流して行う事例が多くなっています。 ︽ ︾ ︾伽 恥 ︾︾睡唖0 逸璽量︵トン︶ 19551965197$198519952005 年 図1アサリ漁獲量の変化 おけるアサリ資源の復活再生をめざしています。 アサリ資源の復活に向けた取り組み これまでにも、公設試、関係市町村、県漁連、各 栽培資源研究所では、平成25年度から5年間、上 漁協がアサリ資源の回復に向けた試験研究や事業を 記プロジェクトの中で生物資源としてのアサリを解 実施してきましたが、思うようにうまく増えてきて 明していくための「遺伝形質調査のための親貝採集」 いません。そこで、本県と同様にアサリ資源枯渇問 「浮遊幼生加入量の調査j「稚貝の着底の確認」およ 題とその回復に取り組む岡山県や大分県、(独)水産 びアサリ資源が増殖する環境等の条件を解明するた 総合研究センター、(独)産業技術総合研究所・中国 めの「アサリ生息環境の定期的な調査」や「増殖手 センターが共同参画して、農林水産技術会議のプロ 法の検討」などの調査・試験を順次行っていきます。 ジェクト研究「生態系ネットワーク修復による持続 ( 図 2 ) 的な沿岸漁業生産技術の開発」を受託し瀬戸内海に −7− 4 J 妻 = 割 雪 嚇 伺 烏 一 一 一 − 一 一 一 三<簿 図2プロジェクトの流れ と伊予灘の海域にも予想以上の数の浮遊幼生が出現 計画と経過 平成25年度は図3のように「親貝遺伝形質調査」 していることが判りました。また予想外だったこと 「浮遊幼生加入量調査」「稚貝着底確認調査」「生物 ですが、倦灘のとある干潟では少なくとも殻長1∼2 生息量調査」「生息環境調査」および「増殖手法開 cm程度まで成長しているアサリの大群が毎年出現し 発試験」を実施しました。その結果、着底前の幼生 ていて、それをある程度維持できる環境と場所が存 が浮遊する11月には、親貝がみられなくなった倦灘 在していることも判明しました。(図3) 三国査一 言 式 験 研 究 言 廿 画 … 寛 9 生 一旦…でロ Iン Vクー 一 ︾ 一 稚 昼 一 m = = − 手 一 = f … 壁呈甚堕=一 一↓ a 一 = − -,− 1 ] 調 査 1 ー f … J 壱 一 垂 & , 詞 ロB 唾 室 虫 垂 冒 回 一 図3調査・試験研究計画 が達成されれば、アサリ資源は愛媛の水産業にとっ おわりに 本プロジェクトの目的である「生態系ネットワー て重要な資源と位置づけられるとともに「6次産業」 ク分断箇所を特定し、それを適切に修復することで としての潮干狩りが今後の地域の活性化に活用され 自律的な再生産による資源の回復を実現する」こと ることも可能となると考えています。 −8− キジノ、夕の種苗生産について 栽培資源研究所増殖推進室担当係長関谷真一 設は屋内にあり、暗くて餌が見えない状態であった はじめに 本県しまなみ海道の島嘆部を中心に建網や一本釣 ことから、十分な光量を確保するため屋外水槽や人 りで漁獲されるキジハタは、「アコウ」という名で 工光の利用を開始したところ、初期の生残率は向上 呼ばれ、関西方面を中心に高値で取引されています。 しました。次に、VNNなどの病気に対応するため、 キジハタは放流後の移動も少なく岩礁に定着するこ 飼育海水の殺菌を徹底し、海水から伝染する病気を とから、放流魚として漁業者から要望が非常に強い 防ぐことによって、はじめて数千匹の単位で生産す 魚種です。このため、昭和55年(1980)年頃から種 ることができるようになりました。さらに、飼育海 苗生産技術の開発や放流技術の開発を行い、近年、 水の表面に油膜を施し、浮上してへい死するのを防 安定的に大量生産できるようになってきましたので、 いだり、餌料密度や飼育環境の急変を防ぐ低換水型 平成25年度の生産経過を報告します。 飼育方法の導入、大型の深型水槽による飼育などで 生残率の向上をさせることができました。また、良 「 質卵を安定して確保するための親魚養成法の改善や、 丙 4‐ 共食い防止のための徹底したサイズ選別などを組み 合わせ大量生産できるようになりました。 F 巳 一 一 一 「 ー 写真1種苗生産されたキジハタ(約8cm) 一 これまでのあゆみ 本県においては、宇和島市にある水産研究センター (旧水産試験場)で昭和55年度に親魚養成を、57年 写真2キジハタ仔魚(10日目 度に種苗生産試験を開始しました。当初は、ふ化仔 魚の口の大きさから、従来マダイなどに使用してき 25年度の生産状況 たシオミズツボワムでは大きすぎ、カキやウニの幼 採卵について 生などを試行しました。その後、より小型のワムシ 種苗生産に使用する親魚は、毎年秋に来島海峡周 を使用することによって生産が安定してきました。 辺で漁獲された全長30cmくらいの魚を採卵用に特別 また、安定して受精卵が得られないことやⅧNなど に配合した餌を与えながら育成します。キジハタは の病気により生産は安定しませんでした。 成長するに従いオスに‘性転換して採卵に使えなくな 平成12年度からは栽培資源研究所(旧中予水産試 るため3年で更新しています。6月中旬頃、採卵準備 験場)で引き継ぎ、安定して種苗を生産するための として容量75トンの深めの採卵水槽3面に100尾程度 技術を開発してきました。最初に、飼育初期の摂餌 ずつ収容するのですが、産卵させるためにはできる 不良を改善しました。従来種苗生産を行ってきた施 だけ親魚にストレスを与えないよう気を配ります。 −9− 水槽の設置された室内は薄暗くし、人の立ち入りも 受精卵確保が他機関頼みであった頃には、」怖くて 最小限に制限します。産卵は水温が20℃を超えた? 試せなかったアイディアも積極的に導入できました 月上旬から始まり8月下旬まで続きました。一日当 (これについては、またの機会に)。それが功を奏し たりの産卵数は一定ではなく、小潮の時期には少な てか、生産尾数も飛躍的に増加し、今年度は全長25 く、逆に大潮の時期に多くなる傾向がありました。 mmサイズの稚魚を前年度に比べ3倍以上の約56万尾 1回の種苗生産には50∼100万粒必要ですが、1日で (図1)を取り上げることができました。 この数量を確保するのはなかなか難しい状況でした。 しかし、今年度は1日50万粒以上確保できる日が数 54 殴雌一部︶ 3 生産 尾数 ︵万尾︶ 卯■四戸一m四曲 日あり、必要量を大きく上回る合計約3,000万粒も の受精卵を得ることが出来ました。この採卵システ ︽Ⅲ■。 ムを確立したことから、十分量の受精卵が確保され 大量生産が可能となりました。 現在の親魚は3年が経過した22年度購入群を引退 させ、23年度、24年度、25年度購入群をそれぞれ10 ■ ■ U ■ ■ ■ ■ ■ ■ ワ F ■ v W ■ ▼ ■ 『 ■ ■ ■ D W U ▼ 13579111315171921232 O∼150尾程度ずつ飼育しています。親魚は購入2年 年度 目から産卵量が激増するため来年度は23,24年度購 図1愛媛県のキジハタ種苗生産尾数の推移 入群で種苗生産を行う予定です。 隼 写真3親魚養成中のキジハタ(約35cm) 写真4物影にあつまるキジハタ稚魚 種苗生産について キジハタは種苗生産が非常に難しい魚種だと言わ しかし、残念ながらまだ、キジハタも他のハタ類 れます。ふ化後の減耗が甚だ大きくなかなか残りま の種苗生産と同様に形態異常魚が多数出現する問題 せん。それでも過去の知見の積み重ねから現場では が残っています。ひどい時には半数以上が異常魚と 少しずつ改良を加えて生産量も増加傾向となりまし なることもありますので、今後は、この残された問 たが、その生産は不安定なものでした。ただし、キ 題を解決するとともに、生産コストの削減も図りな ジハタが大きぐへい死するのは、ふ化後10日間と比 がら安定した種苗の供給に努力していきたいと思い 較的早期なので、次の受精卵さえあればやり直しが ます。 可能です。24年度から自家採卵が可能となった今、 種苗生産担当者の気持ちは非常に楽になりました。 −10− ◆新施設紹介 リアルタイムPCR装置の概要 本県は全国一の海面養殖業生産額を誇っており、養殖ヒラメについても全国第2位となっています。とこ ろが近年、ヒラメの寄生虫(クドア・セプテンプンクタータ)が食中毒を引き起こすことが判明しました。 この寄生虫は肉眼では確認できないうえ、ヒラメが死んだり外観症状がでることはありません。このため、 原因となる寄生虫を保有する種苗が養殖場に導入されることや寄生を受けたヒラメの流通を防止するため、 寄生虫の有無を迅速かつ正確に検査する機器を栽培資源研究所に整備しました。これにより、安全な養殖魚 を供給する体制が確保されています。 Fー一一一一一ーーーーーーーーーーーーー■ロ・ーロロ。一・1 │[隔離保管室] 1 ‐ 生 ] 一 一一一 超低温フリーザー 一 一 一 分析室] l[ 超純水製造器 リアルタイムPCR 一 一 ■■■■■■■■ ー ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 一 一 I ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 一 ’ ■ ■ ■ ■ ■ ■ I ■ ■ ■ ■ ■ ■ 一 q ■ ■ ■ ■ ■ ■ − ・安全な生産物として流通 ・健全な種苗のみ育成・放流 ■■■■■■■ 原因因子を持つロットを 特定し、除去 本機器は平成25年度電源立地地域対策交付金事業で整備しました= −11− 伊予灘尋醗公 俳一耐 愛媛県農林水産研究所 宮下 妻建誌異語をン 、公園 本村 今治市 伊 予 灘 ●八幡浜市 松山自 一 、 愛媛ロ ー 一 憲公評 − 高知県 林セ 愛媛県農 水産研究 室 子 平成26年S月1日発行、 編集・発行愛媛県水産研究センター 水産研究センター〒798-0104宇和島市下波5516 TEL(0895)29-0236/FAX(0895)29-0230 魚類検査室〒798-0087宇和島市坂下津外馬越甲309-4 TEL(0895)25-7260/FAX(0895)24-3029 [email protected] HPhttp://www6.ocn.ne-jp/^aisuishi/ 栽培資源研究所〒799-3125伊予市森甲121-3 TEL(089)983-5378/FAX(089)983-5570 、 ー [email protected] HPhttp://www14.ocn.nejp/"'saisiken/ 一ノ
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