(書評6) 」(高濱正伸著 ① 「夫は犬だと思えばいい。 集英社刊) ② 「パパのトリセツ」 (おおたとしまさ著(株)ディスカヴァー・トゥエンティワン刊) 今回は男性が書いたものを取りあげた。2冊を対象にしたのは、昨年相次いで出版され たのを機にセットされた著者二人の短い対談を新聞で見かけたからである。①の著者は塾 経営者、②は育児・教育ジャーナリスト。子育て・教育に関する問題の背景には、母親の 心身の負担軽減や安心の確保があり、そのための夫の理解・協力はどうすれば得られるか について、著者たちの豊富な体験例を踏まえて書かれている。子育て中の母親の夫に対す る不満や悩みを分かりやすく分析・解説し、具体的な対処方法を示す。言葉のやりとり例 など、自分の経験に照らして苦笑しながら、参考になることも多かった。 二つの著書に共通するのは、夫を理解するための基本的スタンスを、自分(女性)とは 異なるものとして夫をみることに置く。①では夫を「犬」と、②では「ロボット」とみる。 夫を自分と同様な思考・感情を持つものと思うから、 「期待」どおりの行動をしてくれない ことに苛立ち「グチ」を言う。話を聞いてくれない、すぐ忘れるのだから・・・と「あき らめ」たり、「意地悪」「イヤミ」な言動にでたりする。他方、夫は、ただ妻の話を聞いて やればいいのに「知識」や「理屈」で「正解」を求めたがり、つい「論破」してしまう。 「自 分の間違いを認めず」 、妻のイライラに「辟易」することにもなる。こうして夫婦関係が険 悪なものになり、家庭の雰囲気は悪化する。男と女は違う生き物と割り切り、異性を学び、 理解しようと努め、共感できれば良い家庭が築け、健やかな子育てもできる(①)といい、 「ママとは違う角度から子育てにかかわる自律型ロボットとして」パパを育て、夫婦「二 人でいっしょに、対等に子育てライフを満喫しよう」と提案する(②)。 「ジェンダー論」風にいうと、世間一般によくみられる夫婦間の問題を取りあげ、その 円満な関係の構築や子育てに役立つものの、 「男と女」の違いをステレオタイプにとらえた 子育て、夫婦関係改善のハウツーもの、マニュアル本ではないか・・・という評価も可能 であろう。しかし、我が国の子育ての大半を女性が担っているのが実態であり、その上で の「男女・夫婦論」として読んでみれば、それなりの有効性と説得力を持つ。 また、二人の著者が読んでいるかどうかは知らないが、 「すぐ忘れる男 決して忘れない 女」 (マリアン・レガト著、下村満子監訳:当センター図書室所蔵)においては、近年の性 差医療の研究成果を踏まえて、男女の脳の構造や遺伝子・ホルモン等の違いから、男女の 行動や考え方に大きな違いが生ずることが明快に説明されている。 「男らしさ、女らしさ」 は生物学的、自然的要因とともに、育つ環境、社会的な影響によってそれぞれの個性とし て形成されていくわけだが、 「男と女」の違いを知り、学ぶことにより、男女の関係を冷静 にとらえられ、相互の理解を深めることができるので、心地よい夫婦関係と幸せな家庭生 活を築くことにつながる、とはこれらの著者が共通して言いたいことなのだ。 (副館長 中野伸介)
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