JEOL MS Data Sheet MS Tips 日本電子株式会社 日本電子株式会社 用研究センター 分析機器 応 応用研究グループ 〒 196-お問い合わせ:分析機器販促グループ 8558 東京都昭島市武蔵野 3-1-2 Tel : (042) Faxwww.jeol.co.jp : (042) 542-3132 Tel : 542-2242, (042) 528-3340 No.030 030 No. JMS-K9 Application Data 新水道法に基づく塩化ビニル及びエピクロロヒドリンの測定 ~パージ&トラップ-GC/MS 法~ 水質汚濁に係る人の健康の保護を目的とした環境基準等の見直しが継続的に検討されているが、2003 年 12 月の環境基準健康項目専門委員会による第 1 次報告において、検出状況等から塩化ビニル、エピク ロロヒドリン、1,4-ジオキサン、マンガン、そしてウランといった五つの新規項目が要監視項目として位置付 けられるべきと判断された。このうち塩化ビニルとエピクロロヒドリンは、ラットを用いた経口投与試験における 発癌性のリスクを考慮し、体重50kg、飲用水量2L/day として指針値が設定され、具体的にはそれぞれ塩化 ビニルが 0.002mg/L(2ppb)、エピクロロヒドリンが 0.0004mg/L(0.4ppb)とされている。また測定方法上は、各化 合物の指針値の約 1/10、すなわち塩化ビニルが 0.2μg/L(0.2ppb)、エピクロロヒドリンが 0.03μg/L (0.03ppb)の定量下限値がそれぞれ設定されており、適当な測定方法として、パージトラップ GC/MS 法が示 されている。そこで今回 JMS-K9 にテクマー社製のパージトラップ Tekmar5000J を接続したシステムを用い て、上記2物質の測定条件の確立と定量精度の確認を行った。 < 測定条件 > 表 1 パージ・トラップ-GC/MS 条件 表1に測定条件を示す。検量線用試 料は、各化合物の定量下限値(塩化ビ 装置:PTI :Tekmar5000J +AQUAauto70 オートサンプラー GC-MS :JMS-K9 ニル;0.2ppb、エピクロロヒドリン;0.03p 試料:(標準試料) ブランク、STD1 STD2 STD3 STD4 STD5(ppb) pb)と目標値(塩化ビニル;2ppb、エピ 塩化ビニル 0 0.1 0.2 1.0 2.0 10 クロロヒドリン;0.4ppbであるが今回は エピクロロヒドリン 0 0.015 0.03 0.15 0.3 1.5 0.3ppb)を含め、ブランク、他3濃度(詳 (実試料) 水道水に対して定量下限濃度の標準添加試料 細表 1 参照)の合計の6種類とした。試 PTI 条件; 料量は5mL、クライオフォーカス機能 塩析 :なし 試料量 :5mL は使用したが、塩析は未使用である。 バルブ/トランスファー温度:150℃ パージ時間 :6分 さらに、実試料としては、当研究所の水 ドライパージ時間:3分 デソーブ時間 :6分 道水に対して、測定対象物質が定量 デソーブ温度 :180℃ クライオフォーカス温度 :-180℃ 下限濃度となるように標準添加した試 注入温度 :180℃(2分間) ベーク温度 :225℃ 料を測定した。また、検量線の作成に GC-MS 条件; おける定量下限濃度試料と水道水の 分離カラム :AQUATIC(内径 0.25mm、長さ 60m、膜厚1μm) オーブン温度 :40℃(3分保持)→100℃(0分保持) 、 4℃/分 標準添加試料に関しては、5回の連続 →200℃(1分保持) 、10℃/分 測定を実施し、再現性の結果から本測 流量 :1mL/分(Desorb He Inlet Pres:120kPa) 定方法の定量下限値と実試料におけ インターフェイス温度 :200℃ イオン源温度 :200℃ る定量性の確認を行った。尚、今回内 イオン化電圧/電流:70eV / 300μA 部標準化合物としては、p-ブロモフル SIM 質量数/時間 :塩化ビニル =m/z62、62/各200m秒 オロベンゼンを1ppb添加して測定し、 エピクロロヒドリン =m/z49、57/各200m秒 定量計算は、相対検量線法を用いた。 (IS)p-ブロモフルオロベンゼン =m/z174、176/各200m秒 < 結果と考察 > 図1に検量線用試料における最下 濃度である STD1(塩化ビニル;0.1、エピク ロロヒドリン;0.015ppb)を測定して得られ 1.5E+04 た SIM クロマトグラムを示す。各化合物 3.0E+02 の保持時間は、それぞれ塩化ビニル 1.0E+04 が 5:26、エピクロロヒドリンが 17:33 であ 2.0E+02 る。両化合物共に良好なピークプロフ 5.0E+03 ァイルを示し、塩化ビニルは比較的早 い時間で溶出し、非常に高感度であ RT--> 17:10 17:20 17:30 17:40 17:50 18:00 R.T-->05:00 05:10 05:20 05:30 05:40 05:50 る。一方エピクロロヒドリンは、前後に夾 雑物のピークが見られるが、分離・感 塩化ビニル(m/z62) エ ピ ク ロ ロ ヒ ド リ ン ( m/z57 ) 度共に十分あり、定量解析上問題のな 図 1 STD1(塩化ビニル;0.1、エピクロロヒドリン;0.015ppb)の SIM クロマトグラム いレベルである。 PTI-K9によるエピクロロヒドリンの検量線 PTI-K9による塩化ビニルの検量線 0.14 7 y = 0.6166x + 0.0129 R2 = 0.9999 y = 0.0783x + 0.0006 R2 = 0.9998 0.12 内標とのピーク面積比 内標とのピーク面積比 6 5 4 3 2 1 0.1 0.08 0.06 0.04 0.02 0 0 0 2 4 6 8 10 0 0.5 1 濃度(ppb) 1.5 濃度(ppb) 図 2 塩化ビニル及びエピクロロヒドリンの検量線 次に両物質の検量線を図2に示した。得られた検 量線の相関係数は、塩化ビニルが 0.9999、エピクロ ロヒドリンが 0.9998 であり、両物質とも良好な直線性 であった。 さらに STD2 の 5 回連続測定の結果から計算した 変動係数(C.V.%)を表 2 に示した。水道法では、有 機物の項目ついて基準値の 1/10 付近の定量値の 変動係数(C.V.%)が 20%以内であることが求められ ている。今回の測定では、各化合物の定量下限値 濃度において、塩化ビニルが 3.07%、エピクロロヒド リンが 1.96%と良好な再現性が得られており、C.V. 20%以下を十分に満たす測定が可能であった。 水道水に標準添加した試料の SIM クロマトグラムと 定量解析結果を図 3 及び表 3 それぞれ示した。図3 より、実試料にもかかわらず顕著な夾雑物の検出は 確認されず、図1の標準試料の結果と類似した良好 なピークプロファイルが得られた。また表 3 より、両化 合物共に算出された定量値は添加濃度と良い一致 を示し、5 回の再現性も CV%で塩化ビニルが 4.17%、 エピクロロヒドリンが 5.37%と良好であった。以上の結 果、実試料においても十分な定量性が確認された。 塩化ビニル 3.0E+04 :0.192ppb 2.0E+04 1.0E+04 R T--> 05:00 05:10 05:20 05:30 05:40 05:50 6.0E+02 5.0E+02 エピクロロヒドリン 4.0E+02 :0.03ppb 3.0E+02 2.0E+02 R.T--> 17:10 17:20 17:30 17:40 17:50 18:00 図 3 標準添加試料の SIM クロマトグラム “JMS-K9”を GC/MS として用いたパージトラップとのシステムによって、塩化ビニル及びエピクロロヒドリンの 2 種類の新規項目の測定において、水道法で要求されている感度と精度を十分に満たす結果が得られた。 表 2 STD2 標準試料の再現性による定量下限の確認 塩化ビニル エピクロロヒドリン 1st 定量値(STD2:ppb) 2nd 3rd 4th 5th 0.2135 0.0288 0.2267 0.0287 0.2236 0.0283 0.2196 0.0296 0.2340 0.0298 標準偏差 平均値 0.00687 0.00057 0.223 0.029 CV% 3.07 1.96 表 3 標準添加試料の定量値の再現性結果 1st 塩化ビニル エピクロロヒドリン 0.181 0.027 定量値(Sample+STD2:ppb) 2nd 3rd 4th 0.187 0.031 0.199 0.031 0.203 0.031 標準偏差 平均値 CV% 5th 0.190 0.029 0.00800 0.00160 0.192 0.030 4.17 5.37
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