傾向スコアマッチングによる 大腿骨頚部骨折の急性期リハビリテーションの比較 西村直樹 小林勇矢 北原淳 大塚功 井口隼人 【はじめに】 全国の DPC 病院において大腿骨頚部骨折のリハビリテーション(以下リハ)提供状況は、1 日平均 1.9 単 位、入院期間中のリハ実施率は 62.5%である。早期リハの必要性も一般化されてきているが、急性期病院 においてリハ提供体制が十分整っている状況にはない。 【目的】 背景因子をマッチングさせた大腿骨頸部骨折術後の高頻度集中リハビリテーション効果を、当院と他病 院で比較し、その有効性を明らかにする。 【対象と方法】 2014 年 4 月~2015 年 3 月までのグローバルヘルスコンサルティング社が所有する DPC データ、471 病院 7454 症例(DPC コード 160800xx01xxxx 股関節大腿近位骨折 K0811 人工骨頭挿入術)のうち、傾向スコア マッチングにより抽出した 110 症例(当院 55 症例/他病院 55 症例)を対象とした。背景因子は、年齢、 性別、BMI、入院時 Barthel Index(以下 BI) 、Charlson comorbidity index、入院経路、認知症自立度 とした。当院と他病院の 2 群間について、リハ開始日、リハ日数、1 日あたりのリハ実施単位数、リハ実 施率をプロセス指標として、退院時 BI、BI 利得、1 日あたりの BI 利得、在院日数、在宅復帰率、医療費 をアウトカム指標として比較した。検定における有意水準は p<0.01 とした。 【結果】 当院は 1 日あたりのリハ実施単位数(4.5 単位)、リハ実施率(91.5%)が他病院より有意に高かった(p <0.01) 。また、在院日数(23.6 日) 、医療費(2068064 円)は有意差を認めなかったが、退院時 BI(59.9) 、 BI 利得(47.4) 、1 日あたりの BI 利得(2.2) 、在宅復帰率(58.2%)は、いずれも有意に高かった(p< 0.01) 。 【考察】 背景因子をマッチングさせた大腿骨頸部骨折術後の急性期リハビリテーションにおいて、「1 日平均 4 単 位以上のリハビリ」かつ「入院期間中に実施率 90%以上のリハ介入」 は、退院時 BI を有意に改善させ 高い在宅復帰率に影響を与えると示唆される。
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