システム工学 I 第5回 Lagrange 運動方程式 と状態方程式 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 1 一般化座標の必要性 (1) • 制御対象はふつう微分方程式によってモデリ ングされるが, そのためには座標系が必要 • どのような座標系を取るかが問題になる • 素朴に考えると実験室に固定された直交座標 系で良さそうだが・ ・ ・ 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 2 一般化座標の必要性 (2) • 例として 2 次元の 2 重振り子を考える θ1 (x1,y1) (x2,y2) θ2 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 3 一般化座標の必要性 (3) • 素朴には, (x1 , y1 ), (ẋ1 , ẏ1 ), (x2 , y2 ), (ẋ2 , ẏ2) を変数として 8 次元の微分方程式を立てれば よいが・ ・ ・ • (θ1 , θ̇1 , θ2 , θ̇2 ) の 4 個の変数で運動は完全に記 述される筈 • 8 次元の微分方程式を立てることは無駄 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 4 一般化座標の必要性 (4) • 運動を記述するために必要なパラメータ (座 標を一般化したもの) を一般化座標という. • 一般化座標の時間微分を一般化速度という. • 一般化座標の次元は, その運動を直交座標系 で表現したときの座標系の次元と同じことも あれば, そうでないこともある. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 5 一般化座標の必要性 (5) • 今回の講義以降, 時間に関する 1 階微分をドッ ト, 2 階微分を 2 重ドットであらわすことが ある. d2 x dx と ẋ, と ẍ は同じ意味. • たとえば, dt dt2 ... .... • 稀に x, x などといった記号が使われること がある. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 6 Lagrangean(1) • 「力学系の運動を最小限の変数で記述したい」 という要求に答えるのが Lagrangean( Lagrange 関数ともいう) を用いた定式化 • Lagrangean はもともと Newton 力学の再定式 化のために使われたもので, 運動エネルギー とポテンシャルエネルギーの差として定義さ れた. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 7 Lagrangean(2) • 後述するが, Newton 力学は, Lagrangean の 積分が停留値を取るという形で再定式化され るということが発見された. • この事実を最小作用の原理という. 最小作用 の原理は Newton 力学の言い換えと解釈する こともできる. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 8 Lagrangean(3) • 最小作用の原理は, 物理現象に関する実験事 実を記述した原理であり, 他の物理法則から 導かれるものではない. • 実は最小作用の原理という名前は不正確. 物 理現象は Lagrangean の積分が停留値を取る 形で実現されるが, 最小であることは保証さ れない. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 9 Lagrangean(4) • Lagrangean の積分が停留値を取るための条 件は, 変分法という手法によって導かれ, そ の結果, Euler の方程式と呼ばれる微分方程 式が出て来る. • Lagrangean から導かれた Euler の方程式を Lagrange の運動方程式, Euler-Lagrange 方程式などと呼ぶ. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 10 Lagrangean(5) • Lagrangean を用いた古典力学の再定式化を解 析力学と呼び, これは量子力学を学ぶために 必須 • 2 足歩行ロボットや多関節マニピュレータの モデリングの際にも, 変数の数を減らすため には, Lagrangean を用いた定式化が必須 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 11 Lagrangean(6) • Lagrangean と, そこから導かれる Hamilton 関数と呼ばれる関数は, 受動性と呼ばれる性 質に基づく制御などに利用されている. • 古典的な Lagrangean や Hamilton 関数の変数 には物理的な意味があるが (位置, 速度など), その変数に物理的な意味を与えずに一般化し たものが最適制御で用いられている 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 12 Lagrangean(7) • 物理学および最適制御では, ともに Lagrangean あるいは Hamiltonian が取り扱われるのである が, その意味合いは異なる: ⊲ 物理学にとって, 物理法則は Lagrangean が 停留値を取る条件として定式化されるとい うのは, 物理法則 ⊲ 最適制御では, Lagrangean が停留値を取る ような制御入力を求めることが目的 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 13 Lagrangean(8) • Hamilton 関数の一般化については, van der Schaft によって port-controlled Hamiltonian system (あるいは port-Hamiltonian system) という名称で取り纏められた体系が 有名. • 以下ではまず古典力学における Lagrangean について説明する. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 14 古典力学における Lagrangean(1) • 古典力学における Lagrangean(これを L であ らわす) は, 運動エネルギー (T とする) とポ テンシャルエネルギー (U とする) の差とし て定義される. 以下がその定義. L=T −U • 続いて, Lagrangean の例を挙げる. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 15 質量 m の物体の自由落下 0 U = −mgx T = 21 mẋ2 x L = 21 mẋ2 + mgx 座標軸の原点と 向きに注意 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 16 長さ l 単振り子 (質量 m) l θ U = mgl(1 − cos θ) 1 T = m(lθ̇)2 2 m 1 L = m(lθ̇)2 2 −mgl(1 − cos θ) 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 17 変分法 (1) • x, ẋ および t に関する Lagrangean が与えら れているものとし, これを L(x, ẋ, t) とする. • 運動開始時刻を ti , 運動終了時刻を tf とし, Z tf L(x, ẋ, t)dt が停留値となるための J = ti 条件を求めたい. ただし始点と終点を固定す る: x(ti ) = xi , x(tf ) = xf 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 18 変分法 (2) • この問題を解くための方法が変分法 Z tf L(x, ẋ, t)dt の • 変分法では, x(t) が J = ti 停留値を与えるための条件を求める. • x(t) がこの積分の停留値を与えているのであ れば, x(t) に微小な摂動が加えられても上記 積分はほとんど変動しない. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 19 変分法 (3) • 変分法では, この「微小な摂動が積分値に影 響を与えない」という条件から, 微分方程式 を導く. このために, x(t) を少しずらして, x(t) + εh(t) としてみる. • h(t) は h(ti ) = 0 および h(tf ) = 0 という条 件のみ指定された関数, ε はパラメータ 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 20 変分法 (4) • 積分値の変動を ∆J とすると・ ・ ・ Z tf ∆J = ti L(x + εh, ẋ + εḣ, t) − L(x, ẋ, t) dt • Taylor 展開して, L(x + εh, ẋ + εḣ, t) = L(x, ẋ, t) ∂L + ∂∂L x εh + ∂ ẋ εḣ + (高次項) • 高次項は無視する. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 21 変分法 (5) • 低次項が零となる条件を求めたい • 任意関数 h の微分が含まれるのは都合が悪い ので, 部分積分によりこれを消すと・ ・ ・ Z tf ti tf Z tf d ∂L ∂L ∂L ḣdt = hdt − h ∂ ẋ ∂ ẋ ∂ ẋ ti ti dt t ただし f (t) tf は f (tf ) − f (ti ) を意味する. i 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 22 変分法 (6) • ここで h(ti ) = h(tf ) = 0 を使うと・ ・ ・ Z tf ∂L d ∂L • ε hdt が零となる, − ∂x dt ∂ ẋ t0 というのが求める条件 • ε, h は任意だったから d ∂L ∂L = 0 でなければならない. − ∂x dt ∂ ẋ 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 23 変分法 (7) d ∂L ∂L • 微分方程式 = を Euler 方程式, dt ∂ ẋ ∂x あるいは Euler-Lagrange 方程式という. • 関数 x(t) が Euler 方程式を満たすことが ,そ Z の関数を代入したときの tf L(x, ẋ, t)dt の ti 値が停留値となるための必要条件である. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 24 自由落下の Lagrangean と運動方程式 1 • 自由落下の問題では L = mẋ2 + mgx. 2 ∂L ∂L = mẋ, = mg を Euler 方程式に代入 • ∂ ẋ ∂x すると・ ・ ・ d • mẋ = mg, すなわち ẍ = g で, 確かに自由 dt 落下の運動方程式になっている. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 25 単振り子の Lagrangean と運動方程式 (1) 1 • 単振り子では, L = m(lθ̇)2 − mgl(1 − cos θ). 2 ∂L ∂L • = −mgl sin θ を Euler 方程 = ml2 θ̇, ∂θ ∂ θ̇ 式に代入すると・ ・ ・ • ml2 θ̈ = −mgl sin θ, よって g θ̈ = − sin θ l 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 26 単振り子の Lagrangean と運動方程式 (2) g • 微分方程式 θ̈ = − sin θ から単振り子の周期 l を求めるためには, 楕円積分という手法が必 要になる. • 初学者向けの議論では, θ が十分小さいと仮 定し, sin θ ≃ θ と近似する. このとき, g θ̈ ≃ − θ l 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 27 散逸関数 (1) • 物理における Lagrangean は保存則に対応し たものであり, 摩擦などのエネルギー散逸構 造を持つ系には対応できない • この問題を解消するために, (Rayleigh の) 散逸関数という関数を Lagrangean に付加す ることがある. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 28 散逸関数 (2) • 1 次元の並進運動では, 典型的な動摩擦力モ デルは, −cẋ. • 系に摩擦などがある場合には, Euler 方程式 を次のように変更すれば良さそう ∂L d ∂L = − 散逸力の項 {z } dt ∂ ẋ ∂x | 追加 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 29 散逸関数 (3) • 1 次元の並進運動では , 動摩擦力 −cẋ は, d 1 2 − cẋ によって与えられる. dẋ 2 • 一般化座標および一般化速度で記述された系 ∂D(ẋ) では, 散逸力が となる関数 D(ẋ) を, ∂ ẋ 何らかの形で構成することを試みる. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 30 散逸関数 (4) ∂D(ẋ) となる関数 D(ẋ) がうまく ∂ ẋ 見付かったとき, これを (Rayleigh の) 散逸 関数という. 1 • 先に挙げた Q(ẋ) = cẋ2 は Rayleigh の) 散逸 2 関数の一例である. • 散逸力が 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 31 散逸関数 (5) • うまく散逸関数 Q(ẋ) が見付かった場合, エ ネルギー散逸構造を含む系の Euler 方程式は 次のように変わる. ∂L ∂Q(ẋ) d ∂L = − dt ∂ ẋ ∂x ∂ ẋ 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 32 Lagrange 制御システムと状態方程式 (1) Lagrangean で記述されたシステムを制御システム と捉える場合には, もっとも単純には, Euler 方程 式の右辺に入力ベクトル u を追加する. すなわち, d ∂L ∂L = + u (散逸力なし) dt ∂ ẋ ∂x d ∂L ∂L ∂Q(ẋ) = − + u (散逸力あり) dt ∂ ẋ ∂x ∂ ẋ 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 33 Lagrange 制御システムと状態方程式 (2) • Lagrange 制御システムにおいて, 状態変数 z を z = (z T1 , z T2 )T = (xT , ẋT )T とし, 関数 ψ を次のように定義する. d ∂L ∂L ∂Q(ẋ) ψ(z, ż, u, t) = − + −u dt ∂ ẋ ∂x ∂ ẋ • ψ = 0 が ż 2 について解け, ż 2 = η(z, u, t) と いう形になっていると仮定すると・ ・ ・ 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 34 Lagrange 制御システムと状態方程式 (3) • 次の (非線形) 状態方程式が得られる. ż 1 = z 2 ż 2 = η(z, u, t) • このように解けない場合は以下の形 (ディス クリプタシステム) を取り扱うしかない: ż 1 = z 2 , 0 = ψ(z, ż, u, t) 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 35 Lagrange 制御システムと状態方程式 (4) • 教科書の例を単純化して, 摩擦のない 2 連の 振動子 (左端固定) の右端に外力 u を加える 問題を考える. k1 m1 k2 q1 m2 u q2 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 36 Lagrange 制御システムと状態方程式 (5) • qi を質量 mi の物体のつり合いの位置からの 変位とし, 各ばねのばね定数を ki とする (i = 1, 2). q = (q1 , q2 )T とする. 1 • 運動エネルギーは m1 q̇12 + m2 q̇22 , ポテン 2 1 k1 q12 + k2 (q2 − q1 )2 シャルエネルギーは 2 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 37 Lagrange 制御システムと状態方程式 (6) 入力 u は Lagrangean とは無関係なので, Euler 方程式 の導出が終わった後で追加することにして・ ・ ・ 1 1 L= m1 q̇12 + m2 q̇22 − k1 q12 + k2 (q2 − q1 )2 2 2 ∂L = m1 q̇1 , m2 q̇2 , ∂ q̇ ∂L = − (k1 + k2 )q1 − k2 q2 , −k2 q1 + k2 q2 ∂q 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 38 Lagrange 制御システムと状態方程式 (7) d ∂L = ∂∂L • 以上を dt q に代入すると, ∂ q̇ m1 q¨1 = −(k1 + k2 )q1 + k2 q2 , m2 q¨2 = k2 q1 − k2 q2 • 第 2 式には入力 u が追加されているので, m2 q¨2 = k2 q1 − k2 q2 + u のように変更する. 第 1 式はそのまま. • 状態変数を (x1 , x2 , x3 , x4 )T = (q1 , q2 , q̇1 , q̇2 )T と 取る 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 39 Lagrange 制御システムと状態方程式 (8) 以上のように変数を取って整理すると・ ・ ・ ẋ1 = x3 (ẋ1 = q̇1 = x3 だから) ẋ2 = x4 (ẋ2 = q̇2 = x4 だから) −(k1 + k2 ) k2 ẋ3 = x1 + x2 m1 m1 k1 k2 1 ẋ4 = x1 − x2 + u m2 mm m2 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 40 Lagrange 制御システムと状態方程式 (9) 行列を使って書き直すと, ẋ = Ax + Bu, 0 0 A= − k1m+k2 1 k1 m2 0 0 k2 m1 k2 −m 2 1 0 0 0 0 1 , 0 0 0 0 B= 0 1 m2 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 41 Lagrange 制御システムと状態方程式 (10) • 先の式が教科書と違うのは, 教科書と異なり, 摩 擦がない場合を考えているから • 摩擦を考慮し, 摩擦に対応する散逸関数を D = 1 d1 q̇12 + d2 (q̇2 − q̇1 )2 + d3 q̇22 として計算し直す 2 と教科書の式が得られる. • 教科書とは大文字の使い方が違うので注意. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 42 Hamilton の運動方程式 (1) • Lagrangean L(x, ẋ, t) とが与えられていると いう問題設定に戻る. • (非線形) 座標変換によって Euler 方程式を別 の形に書き直したい. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 43 Hamilton の運動方程式 (2) • q = x と書き直し, p = p を一般化運動量と呼ぶ. ∂L ∂ ẋ T と定義する. • 任意の時刻において (x, ẋ) から (q, p) への変 換が非線形座標変換になっているものと仮定 する. この仮定のもとで, ある関数 η(q, p, t) が存在し, ẋ = η(q, p, t) である. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 44 Hamilton の運動方程式 (3) • Hamiltonian H(q, p, t) の定義は次の通り: H(q, p, t) = pT η(q, p, t) − L(q, η(q, p, t), t) このようにする理由は, Hamiltonian を使って Lagrange 形式を表現し直すと (これを Hamiloton の運動方程式という) 見通しが良いこと (後述). この計算を次に見てゆく. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 45 Hamilton の運動方程式 (4) ∂η ∂L ∂L ∂η ∂H = pT − − ∂q ∂q ∂q ∂ q̇ ∂q ∂η ∂L ∂η = pT − − pT ∂q ∂q ∂q T ∂L dp ∂L d ∂L =− =− =− = ∂q ∂x dt ∂ ẋ dt 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 46 Hamilton の運動方程式 (5) ∂H ∂η ∂L ∂η = η T + pT − ∂p ∂p ∂ ẋ ∂p ∂η ∂η − pT = η T + pT ∂p ∂p T = η = ẋ = q̇ 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 47 Hamilton の運動方程式 (6) • これらをまとめてたものは次の通り. これを Hamilton の運動方程式という. T ∂H q̇ = ∂p T ∂H ṗ = − ∂q 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 48 Hamilton 制御システム (1) • Hamilton 制御システムは, Hamilton の運動 方程式に散逸関数に相当する項と制御入力, 出力関数を付加したもの (以下において D は 定数行列). • 次のシートには変数を (q T , pT )T のままにし たものを書くが, x = (xT1 , xT2 ) = (q T , pT )T と置き直すことが一般的 (xi ∈ Rn , i = 1, 2). 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 49 Hamilton 制御システム (変数 (q T , pT )T ) T ∂H q̇ = ∂p T T ∂H ∂H −D +u ṗ = − ∂q ∂p T ∂H y= ∂p 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 50 Hamilton 制御システム: (変数 x) ∂H ∂x ẋ = J − R T ∂H T y=G ∂x J = ! 0 In ,R = −I n 0 T + Gu ! 0 0 ,G = 0 D 0 In ! I n は n 次の単位行列 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 51 port Hamiltonian システム (1) Hamilton 制御システムの行列 J , D , G を x の関数で置 き換えたシステムは port(-controlled) Hamiltonian システムと呼ばれ, 近年, 活発に研究されている. ∂H T + G(x(t))u ẋ = J (x(t)) − R(x(t)) ∂x T ∂H T y = (G(x(t))) ∂x 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 52 port Hamiltonian システム (2) ただし, 以下の条件が成り立つものとする. • J (x(t)) は J (x(t)) = −(J (x(t)))T を満たす関 数行列で, 0 0 • R(x(t)) = 0 D(x(t)) • x(t) を固定したとき D(x(t)) は半正定対称行列 とする. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 53 port Hamiltonian システム (3) • port Hamilton システムの具体例は, メカトロニ クスや電気回路などで見られる • 系に自然なエネルギー散逸構造が定まっているた め, 制御系設計が比較的容易で, ロバスト性が高 いことがメリット • 一方で, 適用できる対象が限定され, かつ設計の 自由度が低いことがデメリット 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 54 Lagrange の未定乗数法 (1) • 運動方程式を立てるとき, 運動に束縛条件が付い た状況を取り扱わなければならないことがある • たとえば円柱上の物体が斜面を滑らずに転がる, といった場合 • 一般化座標 q のもとで, ベクトル値関数 C(q) が 与えられ (C(q) ∈ Rl とする), C(q) = 0 を満た すように運動方程式を立てたい, という状況を考 える. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 55 Lagrange の未定乗数法 (2) • このような状況で役に立つのが Lagrange の未 定乗数法. 以下ではこの手法について述べる. • λ ∈ Rl とし, Lagrangean L のかわりに, LC = L + λT C(q) という関数を考える. • C(q) = 0 であれば LC = L である. ∂LC = C(q)T は束縛条件に対応する関数である. • ∂λ 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 56 Lagrange の未定乗数法 (3) • したがって, 以下の連立 (微分) 方程式を解けば, 束縛条件がある問題を取り扱うことができる. ∂LC d ∂LC = dt ∂ q̇ ∂q ∂LC =0 ∂λ • このような手法を Lagrange の未定乗数法とい う. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 57 Lagrange の未定乗数法 (4) 例として円柱が斜面を転がり落ちる問題を考える. θ(t) 円柱 質量 m r 慣性モーメント I x(t) α 横から見た図 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 58 Lagrange の未定乗数法 (5) • 円柱の横滑りは十分小さく無視できると仮定する. • 円柱の質量は m, 断面の半径は r, 慣性モーメン トは I とする. • 斜面の勾配は α とする. • 運動開始時を基点として, 円柱の設置点の斜面に 沿った移動距離を x(t), 円柱の回転角度を θ(t) と する. θ(t) は 360 度 (2π) を越えても零に戻さな いことにする. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 59 Lagrange の未定乗数法 (6) 1 • 時刻 t における円柱の運動エネルギーは mẋ2 + 2 1 2 I θ̇ で, ポテンシャルエネルギーは −mgx sin α 2 • よって, L = 12 mẋ2 + 21 I θ̇ 2 + mgx sin α • 横滑りしないなら x(t) − rθ(t) = 0. ゆえに LC = 12 mẋ2 + 21 I θ̇ 2 + mgx sin α + λ(x − rθ) 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 60 Lagrange の未定乗数法 (7) d dt ∂LC ∂ ẋ ∂LC ∂ θ̇ ∂LC ∂λ = = ∂LC ∂x ∂LC ∂θ =0 ⇒ mẍ = mg sin α + λ ⇒ I θ̈ = −rλ ⇒ x = rθ • 第 2 式から λ = −I θ̈/r, • 第 3 式を 2 回微分して ẍ = r θ̈ • これらをまとめて λ = −I ẍ/r 2 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 61 Lagrange の未定乗数法 (8) I ẍ • λ = − 2 を mẍ = mg sin α + λ に代入すると, r I m + 2 ẍ = mg sin α; この微分方程式を解 r くと円柱の運動が決まる • I の影響で円柱の移動が遅くなっており, 物理的に I θ̈ I ẍ は mẍ = mg sin α + λ における λ = − =− 2 r r の項が摩擦に相当する. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 62 Lagrange の未定乗数法 (9) • 先に述べた解は「僅かな横滑り」を無視した極限. • 物体の断面の形状が複雑などの理由で, 物体の回 転軸と質量中心が必ずも一致しない運動には, 「斜 面を滑らずに転がる」という条件が物体の質量中 心の上下動を発生させることがあり得る. この場 合には, 「斜面を滑らずに転がる」という条件を 実現できない可能性がある. 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 63 参考文献 • 畑 (益川監修, 植松, 青山編), 解析力学, 東京図書, 2014 • 原島, 力学, 3 訂版, 裳華房, 1985 • W. M. Haddad and V. Chellaboina, Nonliner Dynamical Systems and Control, Princeton University Press, 2008 • 野波, 水野 (編集代表), 制御の事典, 朝倉書店, 2015 電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 64
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