第56回年次集会プログラム - 九州大学 医学部・大学院医学系学府

第56回 九州学校保健学会
第 5 回 長崎県小児保健学会
合同学会
プログラム・抄録集
と き
ところ
平成20年8月24日(日曜日)
長崎大学医学部良順会館
ボードインホール
長崎市坂本1丁目12番4号
主催
後援
九州学校保健学会
長崎県小児保健協会
長崎県教育委員会
長崎市教育委員会
長崎県小児科医会
長崎市小児科医会
日本小児科学会長崎県地方会
九州学校保健学会会長 森内浩幸(長崎大学医学部小児科教授)
長崎県小児保健協会会長 松本正(長崎大学医学部保健学科教授)
良順会館交通案内図
JR長崎駅もしくは浦上駅から
<市 電>
・JR長崎駅、浦上駅より
「赤迫」方面行き「大学病院前」または「浜口町」で下車(料金100円)し、徒歩約 10 分
<バ ス>
・JR長崎駅より
8番「下大橋」行き乗車「医学部前」で下車。 所要時間約15分 (料金150円)
・JR浦上駅より
徒歩にて「合同庁舎前」まで移動(約5分)し、8番「下大橋」行きに乗車。
「医学部前」下車 所要時間約5分
<タクシー>
・JR浦上駅前から約5分、650円~800円程度
至
佐
賀
至
長崎バイパス
(川平)
浦上天主堂
平和公園
コンビニ
松山町
電停
長崎大学医学部
医学部前
バス停 正門
爆心地
公園
原爆
資料館
浜口町
電停
〒
コンビニ
浦
上
川
至
赤
迫
記念講堂
大学病院前
良順会館
コンビニ バス停
長崎大学医学部歯学部
附属病院
大学病院前
電停
坂本町 コンビニ
バス停
コンビニ
JR浦上駅
JR
浦上駅前
電停
路面電車
合同庁舎前
バス停
至
長
崎
駅
--1--
参加者の皆様へのお知らせとお願い
学会場のご案内
開場及び受付開始時間は、8月24日(日)午前9時30分です。
参加手続き
事前登録はありませんので、受付にて記名をお願い致します。
学会員でなくても一般演題、特別講演、シンポジウムに参加できます。
参加費
参加費は1000円、学生は学生証を提示いただければ無料です。
年会費・新入会受付
学会当日、会場前に事務局受付を用意します。
九州学校保健学会 : 入会金無料、年会費2000円
長崎県小児保健協会 : 入会金1000円、年会費1000円
評議員会
九州学校保健学会:8月24日 12時10分より1階専斎ホールにて開催致します。
昼食について
周辺にもレストランや食堂がございます。(会場に簡単な地図を準備いたします)
駐車場について
駐車スペースが狭いため、できるだけ公共交通機関をご利用下さい。
日本小児科学会専門医の単位取得
日本小児科学会員の方は、専門医資格更新のための8単位が取得できます。
必要な方は受付にて認定証をお受取下さい。
一般演題発表者の方へ
一般演題の発表時間は講演7分、討議3分の計10分を予定しています。
事務局
〒812-8582 九州大学医学部小児科学教室内
九州学校保健学会事務局 (担当:實藤 雅文)
TEL: 092-642-5421 FAX: 092-642-5435
E-mail: [email protected]
第56回九州学校保健学会・第5回長崎県小児保健学会 開催事務局
〒852-8102
長崎大学医学部小児科学教室内
TEL:095-819-7298 FAX:095-819-7301
九州学校保健学会 担当: 本村克明 中富明子
E-mail: [email protected]
長崎県小児保健協会 担当: 森藤香奈子 E-mail: [email protected]
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プログラム
開会の辞
9時55分
九州学校保健学会会長 森内浩幸(長崎大学医学部小児科教授)
一般演題(1)
10:00-11:00
一般演題(2)
11:00-12:00
昼休み
12:00-13:00
九州学校保健学会評議員会
12:10-12:40 会場:1階専斎ホール
長崎県小児保健協会総会
12:05-12:15 会場:ボードインホール
特別講演 13:00-14:00
「子供と大人のこころの健康」
講師:長崎大学医学部精神神経学講座教授 小澤寛樹
座長:長崎大学医学部小児科教授 森内浩幸
シンポジウム
14:00-16:00
テーマ「特別支援教育」
司
会:
本山和徳(長崎県立こども医療福祉センター)
円城寺しづか(長崎市障害福祉センター)
シンポジスト:教育委員会から
閉会の辞
笹山龍太郎(長崎大学教育学部)
小学校教育現場から
木村 栄(長崎市立橘小学校)
養護教諭の立場から
小宮麻里子(新上五島町立奈良尾小学校)
学校医の立場から
野口哲彦(大村市野口内科こども医院 院長)
薬物の使用について
本山和徳(長崎県立こども医療福祉センター)
5歳児健診について
松坂哲應(長崎県立こども医療福祉センター長)
ペアレントトレーニング
錦井友美(国立病院機構長崎病院小児科)
長崎県小児保健協会会長 松本正(長崎大学医学部保健学科教授)
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一般演題(1)10:00~11:00
座長
神村 直久
(かみむら小児科)
1.学校検尿の一次検尿における血尿・蛋白尿の陽性基準について
−福岡市学校腎臓・糖尿検診の結果からの検討−
○郭 義胤、津留 徳、進藤静生、河野 斉、西村美保、兼光聡美、井原健二、堤 康、筒 信隆、
波多江健、久野 敏、喜多山昇、徳永尚登、宮﨑良春(福岡師医師会学校腎臓・糖尿検診部会)
学校検尿は小児腎疾患の早期発見に有効だが陽性基準は統一されていない。特に一次検尿の血尿と蛋
白尿の陽性基準は感度や信頼性、経済性に関与するが、±以上と1+以上の地域が混在している。福岡
市では一次検尿は±以上を陽性としてきたので後方視野的に解析した。
平成 18、19 年の対象者は 229,740 名。医師会臨床検査センターで一次二次検尿を行ったのは 93,636 名。
未提出や生理中などを除いた 88,466 名を対象とした。
一次検尿潜血±で二次検尿を検討した 2,344 名中陽性(1+以上または赤血球 5 個以上)は 612 名
(26.1%)。一次検尿潜血1+以上で二次検尿を検討した 937 名中陽性は 464 名(49.5%)だった。一次検尿蛋
白±で二次検尿を検討した 14 名中陽性(1+以上)は 1 名(7.1%)。一次検尿蛋白1+以上で二次検尿を検
討した 775 名中陽性は 108 名(13.9%)だった。 一次検尿の尿潜血の陽性基準を±から1+に変更すると二
次検尿で血尿が認められた者の半数以上を見落とす危険性がある。
2.長崎県下における学校管理下心臓関連突然死と心肺蘇生
○山本浩一(上五島病院小児科)
本村秀樹、森内浩幸(長崎大学医学部・歯学部附属病院小児科)
宮副初司(みやぞえ小児科)
健康に日常生活を過ごしている児童生徒の突然死は、家庭、学校、社会に大きな衝撃を与える。従って予防
医学の観点から過去の突然死例の分析は重要と考えられる。しかし児童生徒の突然死はまれであり、剖検率
が低い本邦では、学校管理下を除けば実態把握は困難である。
我々は、長崎県下の 1974 年度以降 33 年間における学校管理下の突然死例に関して検討を行っているので、
学校現場での心肺蘇生、自動除細動器使用の状況も含め報告する。
--4--
3.四肢疼痛を主訴として、学童期から思春期に診断されたファブリー病の 3 例
○實藤雅文、吉良龍太郎、鳥巣浩幸、石井麻里絵、原 寿郎(九州大学小児科)
鷲東菜摘(浜の町病院小児科)、中村公俊(熊本大学小児科)
ファブリー病は、発症頻度が約 4 万人に 1 人の稀な疾患で、X 染色体劣性遺伝形式をとり、主に学童期か
ら青年期の男性に発症するが、小児期に診断されることは尐ない。四肢の痛み、聴力低下、汗が出にくい、
特徴的な皮疹、角膜混濁、腎機能障害、心機能障害、脳血管障害など様々な症状を呈し、晩期には心不
全・腎不全となりうる重篤な疾患である。我々は、四肢疼痛を主訴にファブリー病と診断した男児 3 例を経験
した。症状出現から当院受診までに 2~5 年を要しており、四肢の痛みといった本人の訴え以外の客観的な
所見が乏しいことに加え、疾患が非常に稀であるため、診断がつきにくいと考えられた。ファブリー病に対し
ては、2004 年より日本でも酵素補充療法が健康保険適用となり、臓器障害の予防が可能になったため、早
期発見に努めることが重要と考えられた。現在、3 例とも酵素補充療法を開始している。
4.摂食障害患者の治療プログラムに合わせた看護計画表の作成
~2事例への活用とその考察~
○江上美紀、真崎友美子、松永悦子(長崎県立こども医療福祉センター病棟)
小柳憲司(長崎県立こども医療福祉センター小児科)
当センターには以前から摂食障害患者に対する医師作成の治療プログラムがあり、患者の病状に合わせ
た安静度や栄養管理の指示が細かく規定されている。しかし、看護師の間では「今、この患者にどう声かけ
をしたらいいのか、どこまで援助すべきなのかわからない」という声があがっていた。これは、治療チーム(医
師、看護師)内で、患者に対する理解が共有されていないからだと考えられた。そこで、看護計画を医師の
治療プログラムに合わせた形で構成し、同一の表として呈示するよう試みたところ、病状および治療への理
解が深まり、患者に対して統一した関わりができるようになった。本演題では、今回作成した看護計画の概
要とその活用について、事例をもとに報告する。
--5--
5.工学部学生を対象とする学校保健における禁煙教育の試み
○富田純史、西尾恵里子(九州共立大学 スポーツ学部・工学部)
我が国の主要死因として生活習慣病が半数を超えるに至り、肺を中心とする悪性新生物だけでなく心疾
患や脳血管疾患の発生に及ぼす喫煙の影響が指摘されている。18 歳人口の多くが大学へ進学する現在、
学校保健の果たすべき役割の重要性は増大しており、医・歯・薬・看護・運動・食物・栄養系学部だけでなく
他の学部においても、学校教育環境の改善充実並びに生涯に亘る保健教育の一環として必要であろう。演
者らは、通常健康に関する教養講義のみを受講する工学部学生を対象として(1)喫煙による煙中芳香族炭
化水素などの肺吸着、(2)喫煙者唾液中のニコチンとその代謝物検出、(3)タバコ煙粒子の変異原性、(4)
質問表による喫煙歴を含む生活習慣調査などを行った。今回、これらの実施上の問題点と喫煙行動・意識
の改善への影響などについて検討したので報告する。
6.中学生を対象とした性に関するピア・エデュケーションの有用性について
○坪田幸子、三岳亜里沙、高尾尚平(長崎大学医学部・歯学部附属病院)
佐田直子(虎ノ門病院)、六倉綾香(医療法人愛賛会浜田病院)
宮原春美(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
中学生の発達段階に応じ、また集団教育に対応できるプログラムを実施し、その感想文から中学生を対
象とした性に関するピア・エデュケーションの有用性の検討を行なった。その結果、感想文ではほとんどが肯
定的な評価であった。一方的に知識の提供をするのではなくピア・エデュケーションを応用し、さらに中学生
の参加やグループワークを導入したことで共感・支持が得られたものと思われた。
--6--
一般演題(2)11:00~12:00
座長 岩永 竜一郎 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
7.ピアエデュケーションを応用した発達障害児の性教育の有用性について
○三岳亜里沙、坪田幸子、高尾尚平(長崎大学医学部・歯学部附属病院)
佐田直子(虎ノ門病院)、六倉綾香(医療法人愛賛会浜田病院)
宮原春美(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
昨年本学会で発表した「からだ探検隊2号」のプログラムを改良して実施し、さらに母親のインタビューを
通して発達障害児に対する性教育の有用性について検討した。その結果、実施前は性発達に関する現実
を厳しくとらえていたが、実施後はネガティブなイメージが明らかに減尐していた。子どもが楽しく性につい
て学ぶことができたことで、母親の発達障害児の性に対するネガティブなイメージを減尐させることができた
ものと考えられる。
8.軽度発達障害児の療育における看護師の役割
○松隈奈都子(長崎大学医学部・歯学部附属病院)
増山亜由美(独立行政法人国立病院機構長崎中央病院)
森藤香奈子、松本 正、宮下弘子(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
継続的な医療的なケアが尐ない軽度発達障害児に対する看護を検討することを目的とし、軽度発達障害
児の療育機関で勤務経験のある4名の看護師にインタビューを行った。その結果、軽度発達障害児の生活
上の問題に対して母親と一緒に解決方法を考えることと精神的支援、自宅での環境調整において父親へ協
力を要請すること、チーム内で統一した関わりをするために情報交換をすること、地域への啓発という内容
を抽出することができた。
--7--
9.広汎性発達障害児支援における連携の重要性と課題
—行為障害を合併した 12 歳男児例の考察—
○調優子、安元佐和、廣瀬伸一(福岡大学小児科)
龍岳不二(福岡市発達教育センター)
松尾清則、秋丸大輔(福岡市こども総合相談センター)
症例は、12 歳男児。てんかん、広汎性発達障害、精神遅滞の診断で当科で加療中。両親は離婚し、児は
一時父親と同居、現在は母親が引き取っている。
多動、衝動性が目立ち、学校では他児や教師への暴力など問題行動が絶えず、学校と母子間の関係もこ
じれて登校できない状況になっていた。そこで演者らよりケース協議を提案。学校関係者、発達教育センタ
ー、児童相談所と情報を共有し、問題点を明確化、支援のネットワーク体制を確認した。その後、児は知的
障害児施設に入所し、特別支援学級に通級。支援者間での協議も継続している。この症例を通し、関係機
関の連携の重要性とその課題について検討した。
10.小学校在籍の高機能自閉症児の集団参加に向けた支援
~教室に入れない児童に特別支援学校と専門医が連携して行ったコンサルテーション~
○樋口陽子(北九州市立八幡特別支援学校)
納富恵子(福岡教育大学特別支援教育講座)
特別支援学校は、地域の小・中学校に在籍する教育的ニーズのある児童生徒への支援を行うことが求め
られている。A校では、地域の小・中学校教員を対象に「保護者への説明と連携」をテーマに、A校専門医で
ある精神科医の経験を持つ大学教員の講話、親の会代表等を助言者に個別の教育支援計画作成演習を
行った。高機能自閉症で 2 年間教室に入れず全て別教室で過ごす児童について、当該校の管理職、担任、
特別支援担当教員が演習に参加した。 講話や助言を受け、①保護者を支え保護者の安定を図る、②無理
のない形でクラスメイトとの交流を図る、③学校全体で共通理解し教員間で役割分担して支援や対応を行う、
④学年相応の学力をつけるという 4 つの基本方針をたてた。発表者の 4 回の学校訪問により、基本方針を
実行するための校内体制や具体的取組、経過に応じた支援について助言を行ったところ、3 ヶ月で改善し集
団参加が可能になったので、経過を報告する。
--8--
11.特別支援教育コーディネーターの活動状況に関する心理学的研究
~学校規模による比較~
○餅原尚子(鹿児島純心女子大学)
久留一郎(鹿児島純心女子大学大学院)
1.問題と目的:2007 年度より、各幼稚園、小・中・高等学校、特別支援学校には「特別支援教育コーディネ
ーター」が指名されているもののその機能は十分でないように思われる。今回は、児童生徒数 99 名以下の
学校と 100 名以上の学校の現状について明らかにし、今後の特別支援教育のありようについて考察するこ
とを目的とする。
2.方法:A県都市部A市・B市小・中学校の特別支援教育コーディネーターを対象に、2007 年6月にアンケ
ート調査を実施し、116 名より回答を得られた(回収率 64%)。
3.結果と考察:児童生徒数 99 名以下の学校は「コーディネーター任せ」「時間的余裕がない」といった課題
が、100 名以上の学校においては「協力を得ることの難しさ」や「組織の不十分さ」などの課題が明らかにな
った(P<0.01)。それぞれの長所と短所を相互補完しつつ、教員や保護者、関係機関、地域等理解を得ること
が求められるものと思われる。
12.ダウン症候群における地域連携の試み
~ダウン症候群医療ケア・フォーラム 及び
染色体障害児・者を支える会(バンビの会)20 周年記念公演の開催~
○近藤達郎、国場英雄、本村秀樹、森内浩幸(長崎大学医学部小児科学教室)
松本 正(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
ダウン症候群における地域連携を考えた場合に、患者家族と関連あする職種の専門家および一般市民
が一同に介した場は相互理解のために必要である。今回、平成 19 年 12 月 16 日に第 2 回ダウン症候群医
療ケア・フォーラムと、染色体障害児・者を支える会(バンビの会)20 周年記念公演を長崎大学小児科及び
バンビの会が主催して行なったので報告する。これら2つを行ったことは今後の優しい社会作りに寄与でき
たと考えられる。
*平成19年度長崎県小児保健協会 活動助成報告
--9--
特別講演 13:00~14:00
「子供と大人のこころの健康」
講師
小澤 寛樹 (長崎大学医学部精神神経学講座教授)
座長
森内 浩幸 (長崎大学医学部小児科教授)
最近のストレス社会を反映して、年間3万人以上の自殺者が続いている。これは失業などの経済的状況、
職場/家庭における人間関係など大人社会の問題と考えられている。確かに、団塊の世代の働き盛りの男
性たちの自殺が多く認められているが、統計をよく見ると、全ての世代、性別で自殺は増えてきている。
長崎ではここ数年に不幸な子供たちが加害者/被害者になる事件があり、また中高校生の自殺が多発
した。これらの原因は簡単に説明にできるものではないが、大人と同様に今の子供たちに多くの精神的な負
荷がかかっていることがその背景に重要と思われる。そこで子供と大人の精神衛生に関してストレス・うつを
軸に話題を提供したい。
- - 10 - -
シンポジウム
14:00~16:00
テーマ 「特別支援教育」
座長:本山和徳(長崎県立こども医療福祉センター)
円城寺しづか(長崎市障害福祉センター)
長崎県の施策に見る特別支援教育の推進について
笹山 龍太郎 (長崎大学大学院教育学研究科准教授)
1 障害のある子どもの教育推進計画(実施計画)
長崎県教育委員会は、平成16年3月に「障害のある子どもの教育推進計画(実施計画)」を策定した。こ
の計画に基づき複数の障害種に対応できる特別支援学校の設置、しま地区等における特別支援学校分教
室の設置、小・中学校等の特別支援教育の推進等の施策を実施し、現在に至っている。
2 発達障害等のある子どもへの支援
さらに、全国的に喫緊の課題とされた通常学級に在籍する発達障害のある子どもの教育支援のために、
「軽度発達障害等のある子どもの支援充実事業」、「教育支援ネットワーキング事業」を実施し、小中学校等
の支援体制の充実を図っている。
3 特別支援教育の一層の充実のために
今後、特別支援教育の一層の推進のためには、①特別支援学校の教員の専門性の向上、②幼稚園、高
等学校の特別支援教育の推進、③小・中学校の支援体制の機能向上及び授業の改善、④児童生徒、保護
者及び地域への特別支援教育の理解啓発等が挙げられる。このことを踏まえた県教育委員の取組に期待
したい。
- - 11 - -
小学校教育現場から
木村 栄 (長崎市立橘小学校教諭)
日本の教育は特別支援教育への転換で大きな変革を迎えた。それは集団支援から個別支援への転換と
言っても過言ではない。
しかし,特別支援教育の実践は多くの課題を抱えたままの船出となった。
最大の課題は,発達障害という医学的理解を全職員に浸透させること,そして特性に応じた対応方法を
教育分野の手法として還元し,実践していくことである。
元来,医学的知識を教育的手法に還元して取り入れることの尐なかった教育界では,発達障害を受け入
れることが難しい人間も尐なくない。それは保護者にしても同様である。
また,専門家から発達障害とその特性について知ることはできても,それを教育的手法に還元できる専門
家は尐ない。全てが試行錯誤の段階に等しい。
特別支援教育は,教育・医学・福祉,それぞれがお互いのフィールドを知り,チームとして機能することで,
より良い支援ができるものである。
今後,教育の現場に数多く足を運び,医学の側面から教育的手法を考えようと試みてくださる医学関係者
が増えることを期待したい。
養護教諭の立場から
小宮 麻里子 (新上五島町立奈良尾小学校)
養護教諭は学校の中で唯一,多尐なりとも医療的知識があり,子どもの評価を行わない立場である。
そのため学校の保健室には,けがや病気だけでなく,様々な理由で身体的・精神的不調を訴えてくる子や,
落ち着きがない,乱暴,不器用,感覚過敏など発達障害様の行動特性をもつ子,中には発達の個性のため
に不適応を起こし,居場所を求めて来室する児童も尐なくない。
そのような児童に適切な支援を行うためには,教育・医療・福祉の連携が必要不可欠である。特に学校医
は,私たち教育現場の者にとって,一番身近な医療的支援のアドバイザーであるので,私たちは専門的立
場からのアドバイスを期待している。
しかし現状は,十分にその連携や支援ができているとは言い難い。特別支援教育に求められている前述
の連携において,支援チームとしての学校医と学校現場との関わり方を模索していくことは,これからの特
別支援教育にとってとても重要である。
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特別支援教育と学校医
野口 哲彦
(大村市野口内科こども医院院長・学校医)
学校医は今、年一回の健康診断が主な仕事で、後は伝染性疾患が増えた場合に、学校長から学級・
学校閉鎖の相談を受けることくらいです。学校医は小児科医とは限りませんし、発達障害に関しても
知識が乏しい学校医は多いと思います。もし「特別支援教育」に学校医が関わるとなれば、このよう
な状況の学校医に対しても学校側の要望はかなり高いものがあり、即”薬物治療の指導をしてほし
い”ということになると考えられ、この方面の専門医でないと無理だと思われます。従って、この特
別支援教育に学校医が関わるということはとても困難な道程が有ると思います。今後、学校医の協力
を得るためには発達障害を考慮した学校健康診断が必要になると考えられます。
「特別支援教育」の対象者は発達障害児だけで無く、特別な支援を必要とする子ども達も対象にな
っていますので、
「特別支援教育」の最終目的は子ども達が問題のある子どもを支える学校・社会に
もっていくことだと思います。したがって、私たち学校医の役割はこのようなことが可能になるよう
に何をすべきかということになるのではないでしょうか。
「発達障害」における学校との連携の現状と課題
本山 和徳
(長崎県立こども医療福祉センター小児科)
発達の遅れがあり支援の必要なこども達においては医療と教育の連携が必要不可欠である。発達障害
のあるこども達はその発達状況によって、幼児期にあるいは就学後に症状が明らかになり、家族の養育上
の困難性や保育や学校など集団の場で発達の遅れや集団不適応を示して見出され、医療機関を受診す
る。
医療機関を紹介された児の診療において医療機関の果たす役割として、診断、療育訓練、服薬などがあ
げられる。診断は児の理解につながり、そのことをとおして家庭や学校での具体的な支援の契機となる。家
庭や学校での支援は日常のことでありきわめて重要である。
今回、外来を受診した通常学級に在籍する発達障害児例をもとに、学校と連携した内容から、医療と教育
の役割や課題について考案したので報告します。
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島原市における 5 歳児健康診査
松坂 哲應
(長崎県立こども医療福祉センター長)
目的:発達障害の二次障害は就学後に顕在化しやすいため、幼児期に子どもの特性に気づき、適切な対応
策を講じる必要がある。5 歳児健診がその役割を果たせるか検討する。
方法: 1.発達障害児の問診項目作成:5~6歳の定型発達児および ADHD 児、PDD(高機能)児を対象
2. 5歳児健診票に1.で作成した問診11項目を追加
3. 保育園・幼稚園での生活状況質問票:問診11項目と園での生活状況(生活習慣、運動、あそび、
言語理解、社会性・対人関係・情緒面)を保育士・教諭が記載。
4. 健診内容:問診、直接観察Ⅰ(スキップ、タンデム歩行、片足立ち、弾むボール取り)、直接観察
Ⅱ(積み木、指示の理解、構音、色、左右判別、じゃんけん、三角、社会的交流、人物画)、集団
遊び、自由遊びの観察を行い、発達障害のリスク児は小児科医診察を受けた後、保健指導、心
理相談、教育相談へ。
結果:平成 19 年 12 月 13 日~平成 20 年 6 月 4 日までに 172 人が受診。23 人(13.3%)がリスク児として医
師の診察を受けた。このうち、問診11項目中3項目以上陽性のものは 15 人(8.7%)だった。リスク児は
経過観察とし、必要なら園支援、医療・療育へ紹介、親はペアレント・トレーニング(PT)を勧められた。
考察:リスク児の親は子育て困難感が強く、叱責も多いので、PT を含む親支援が自尊感情の育ちに必要で
ある。
行動の問題のある子どもを持つ母親へのペアレントトレーニングの試み
錦井 友美 (独立行政法人国立病院機構長崎病院小児科)
ペアレントトレーニング(Parent training;以下 PT)は、子どもの行動に対応する技術を、その養育者(母
親)に直接訓練する。10 回程度で構成されたコース制で、毎回のスケジュールが明確に決められており、ホ
ームワークやロールプレイなど、母親が実践しながら学べる内容が盛り込まれていることが特徴である。多
くのプログラムは、行動学習理論と親子関係性の強化を基礎にしており、子どもの行動や症状への対応技
法の獲得にとどまらず、自信、信頼関係、親機能の向上も期待できるよう、心理的な支援にも重点をおいて
いる。当院では、平成 18 年から、心身症、神経症、不登校、母親の育児困難などを主訴に受診した親子を
対象として PT を行なってきた。プログラムは、肥前方式親訓練(Hizen Parenting Skills Training;HPST)を
モデルに、対象者に合わせた工夫を加えた。具体的な内容や取り組みを紹介する。
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