発表内容の資料 - 東京都立総合工科高等学校

3G通信でスマートハウスの実現
~オープンソースハードウェアとインターネットの連携~
東京都立総合工科高等学校
3年
1.はじめに
土
P
屋
電気・情報デザイ ン科電気類型
寛
真
・
髙
橋
和
也
プログラム総合開発環境(図1)はインタ
インターネットを使った通信網は電子機器
ーネット環境があれば無料でダウンロードす
P
に限らず、様々な分野に使われています。住
ることができます。プログラム言語は C 言語
まいにおいても年齢に関係なく「快適な生活」
と Java をベースとしておりマイコンボードを
を求めるため使われ始めています。
あまり触ったことのない初心者でも容易に扱
今回私たちは携帯電話などで使われている
うことができます。また、公開されているソ
3G通信とワンボードマイコン「Arduino」を
ースやライブラリも自由に使うことが出来ま
使用した組み込み機器の開発をおこない様々
す。
な可能性について研究しました。
②3G シールド
3G とは第 3 世代携帯電話の通信ネットワー
2、Arduino と 3G シールドの環境について
クのことで G は Generation(世代)の頭文字
①Arduino(アルデュイーノ)
です。日本国内の携帯電話で使用される通信
Arduino とは、イタリアで開発された試作
では NTT ドコモ、au、SoftBank の 3 社が 3G
やホビーなどに使われるワンボードマイコン
ネットワークを運用しています。陸上・海上・
です。安価で手に入ることができ、オープン
上空の日本全土をカバーしています。
ソースハードウェアとしても公開され、改
Arduino に接続する制御ボードのことを
造・自作も自由におこなうことができるのが
“シールド”と呼んでいます。接続すること
特徴です。
により、応用的な開発を行うことができます。
3G シールドはそのうちの1つで、携帯電話
の 3G 回線を使って制御を行う無線機器です。
具体的には Web やクラウドサーバ、SNS、メー
ルの処理ができます。Arduino をネットワー
クに接続するシールドはありますが、 LAN ケ
ーブルやルータなどが必要で、移動しながら
使用や山間部や近海部といった Wi-Fi の届か
ない場所では使えません。3G シールドなら日
(図1)プログラム総合開発環境
-1-
本全国 3G の携帯回線電波が届く場所であれ
心拍センサや振動センサなどをマラソン中の
ばどこからでも通信をおこなうことができる
選手の体に取り付け、クラウドサーバ を通し
メリットがあります。これまで 3G 機器はメー
てロギングして、選手の体調がわかるシステ
カーやキャリアなどでしか使うことができな
ムです。また、体調不良を感じた時、取り付
い特別なものでしたが、3G シールドにより簡
けてあるボタンを押すことによって第三者に
単に使うことができます。
情報が届き通報できます。
・天気予報装置
気圧センサに 3G シールドを取り付け、気圧
をクラウドサーバ上にロギングし、変化を計
算して天気が崩れるようなら外出先の携帯電
話へメールを発信するシステムです。
4 、スマートハウスの開発
スマートハウスとは、IT 技術を使用して家
電や設備をネットワーク構成し最適に制御を
( 図 2 ) Arduino+3 G シ ー ル ド
おこなうシステムコンピュータで管理された
3 、Arduino と 3G シールドの応用
家のことで省エネルギー、蓄電エネルギー、
Arduino と 3G シールドを使った、具体的な
HEMS(表示、管理)で構成されます。
事例を挙げます。
・自動車防犯装置
車のエンジンが起動した時は電圧変位セン
サ、衝撃があった時は圧電センサが反応し、
緊急でメールを送信します。また盗難時は
GPS を使うことにより、軌跡を GoogleMap 等
にマッピングすることもできます。
・FOX テーリング
元々は特定の電波を発信している FOX を探
し出すフィールドゲームです。FOX と呼ばれ
る Arduino と 3G シールドを使用し、一定時間
毎に GPS 情報を SMS で送信し、FOX を見つけ
出すゲームです。
・選手体調管理システム
Arduino と 3G シールドを入れたポーチから
(図 3 )構 成 図
-2-
現在、日本の高齢者(65 歳以上)が約 25 パ
①使 用 電 力 量 監 視 シ ス テ ム
ーセントを占めています。この割合はさらに
一定時間毎に使用電力量、発電電力量を測
伸びると予想されます。核家族化によって高
定し、クラウドサーバへデータを保存します。
齢者社会で一人暮らしの高齢者が増え、自宅
データはグラフ化し、スマートフォンやパソ
での事故がニュースなどで取り上げられるこ
コンなどからいつでも参照し省エネを心がけ
ともあります。
ることが出来ます。
高齢者一人暮らしの対策としてセキュリテ
START
ィサービスがありますが、とても設置・維持
コストが掛かるのが難点です。そこで
3G シ ー ル ド 起 動
Arduino と 3G シールドを使用し、スマートハ
30 秒待機
起動成功
ウスのシステムを組めば、設置コストを除け
起動失敗
発電電力量、
ば通信料金しか掛かりません。また、携帯電
電力消費量測定
話と連動し外出先から簡単に家の情報の取得、
制御をすることによって高齢者の状態を家族
30 秒待機
データベースへ保存
が知ることができ安全・安心に暮らすことが
出来ます。
成功
1時間待機
失敗
5 、システムの構成
サンプルスケッチを利用すれば、手軽にク
(図5)電力監視システムフローチャート
ラウドサーバを利用した相互通信や SMS など
をスマートフォンに送ることが出来ます。C
②帰宅確認システム
言語をベースにしているので標準関数が理解
外出時に携帯電話、スマートフォンから玄
できればプログラムを変種し直すことも容易
関の戸締り、外出先からの室内照明の制御が
に出来ます。具体的に次のようなシステムを
行えます。部屋の入退室も記録を撮り、もし
プログラム中に取り入れました。
も侵入者があった場合の手がかりにな ります。
③住宅管理・防犯システム
//3G シールド起 動
if (a3gs. sta rt() == 0 & & a3 gs. b e gin() == 0) {
//成 功
Seria l. prin tln("Succes s");
}else if{
//失 敗
Seria l. prin tln("Fai led");
}
//SMS 送 信
if(a3g s. send SMS( m sn,m sg ,a3g sC S_UNI COD E)==0){
//SMS 送 信 成 功
Seria l. prin tln("OK !");
}else{
//SMS 送 信 失 敗
Seria l. prin tln("Can' tsen dSM S.");
}
窓ガラスの隅に圧電センサを取り付け、外
部からの振動を感知した際に外出先の自分宛
へ SMS を送信します。SMS を外出先から送信
すれば、現在の家の状態が確認できます。
電気などの使用状況も常に監視、ロギング
し、スマートフォンから確認することもでき
ます。外出先のスマートフォンから照明器具
(図4)プログラムコード の一部
-3-
6、まとめ
の ON OFF を行うことができ、消し忘れに対応
できるようになります。スマホ用のプログラ
私たちは研究で 3G シールドを使って何が
ムは PHP を使って作成します。
出来るか時間をかけて考えてきました。今回
の発表では社会問題になりつつある「高齢化
START
社会」に焦点を当て、年金でも維持できる。
起動失敗
スマートハウスの低コスト化と繋げま した。
結論として、システムには Arduino 本体の
3Gシールド起動
起動成功
メモリが足らず送信できなかったり、接続エ
END
ラーが発生し解決に時間がかかるなど 3G 電
波状態により安定動作が左右されるなど多く
アナログセンサ値>5
の問題があります。
0
NO
YES
・ブザー
今後の課題として、カメラを利用した室内
0.1 秒 待 機
のモニタリング機能を取り付け、現在の部屋
・ LED
・ SMS 送 信
の様子を簡単に確認でき、数時間ごとに 撮っ
た写真をクラウドサーバで閲覧できるように
する構想があります。そのためによりスペッ
0.1 秒 待 機
クの高い Arduino に代え、安定度を高め、ま
たスマートハウスの構成である蓄電機能を備
(図6)防犯システムフローチャート
えるためソーラーパネルなどの自然エネルギ
④緊急通報システム
ーを取り入れる予定です。
分かりやすい場所へ大きなボタンで設置す
このシステムを使えばかなり実用性の高い
ることにより緊急時ボタンを押すと、緊急通
ものが低コストで運用できます。
報連絡が家族や自治体の管理センターに送ら
今回の研究を通して、現在まだ各家庭に普
れます。
及しているとは言えないスマートハウスです
が、導入のコスト面だけを解決すればきっと
これからの家庭の主流にもなり、高齢者にと
って住みやすく生活がしやすい家が増えると
思います。
参 考 URL
・ NPO 法 人 3G シ ー ル ド ア ラ イ ア ン ス
http://www.3gsa.org/
(図7) システム本体写真
-4-
・ 3G シ ー ル ド wiki
http://a3gs.wik i.fc2.co m/
・ Arduino 公 式 サ イ ト
http://arduino.cc/