2014 年 8 月 20 日「遺伝子組み換えイネ及び遺伝子組み換え作物の

2014 年 8 月 20 日「遺伝子組み換えイネ及び遺伝子組み換え作物の隔離ほ場における試
験栽培の中止を求める要請」を独立行政法人農業生物資源研究所(つくば市)に提出しま
した。
生活クラブ茨城からは、茨城単協と機関会議、まちや班、関連団体の賛同署名 合計 68
枚。また、今回は生活クラブ連合会の協力を得て、全国の会員単協、関連団体からも合計
34 枚の賛同署名が集まり、中止要請文と合わせて提出しました。
中止要請文の提出への参加者は、生活クラブ茨城環境委員会 4 名、職員 1 名に加えて生
活クラブ連合会から 1 名利、つくば市民ネットワークからも 1 名が参加しました。提出の
際には、農業生物資源研究所の研究者と質疑応答の場を設けました。その中で、日本人の
大切な主食である米の遺伝子組み換えに不安を感じていること、周囲に多くの田畑が広が
るこの環境で万が一遺伝子汚染の可能性があった場合の賠償責任について、法的整備がな
い現状への不安の声を届けました。また、同研究所が遺伝子組み換え作物の利点だけを強
調して広報していることへの抗議、日本の農業を守る農水省の役割として、早急な「カル
タヘナ国内法」の整備の要求も行いました。
質疑応答の後、生活クラブ茨城からの中止要請文を読み上げ、生活クラブグループの賛
同団体を紹介し、団体署名用紙と共に提出。その後つくば市民ネットからも中止要請文を
読み上げ提出しました。
質疑応答の概要は以下の通り。
〈質〉今年は今まで比べ、試験栽培面積を拡張して行っているがなぜか。
〈答〉花粉症治療米は、薬として使用できるレベルの効果を目指している。そのためには
非臨床動物実験が必要で、現在はラット実験で 26 週投与をある程度行なう必要があ
り、その総量を確保するためには、圃場を拡げて生産量を上げなければならない。
〈質〉主食であるコメを遺伝子組み換えする事にとても抵抗がある。なぜイネなのか。
〈答〉イネは、PB1という分解されにくいタンパク質を持っており、ここにアレルギーを
起こす成分を薄めた物を入れておくことで、分解されずに腸まで届き、腸で吸収す
る事が出来る。この性質を特徴的に持っているのがイネなので。食べる事で、薬と
しての効果が期待できるものの実現が、イネなら可能。
〈質〉遺伝子組み換え技術はまだ不確実なものだと思っている。新たなアレルギーの原因
になるという心配はないのか。
〈答〉その場合はまた対応することになる。
〈質〉動物実験では 26 週投与が最長との事だが、人間の寿命は長く、長期的な実験、経過
観察が必要ではないか。
〈答〉人間の場合、医師の処方に沿って薬は飲むことになり、最長半年と思われる。ラッ
トでの 26 週投与実験が適当な期間であるというのは、国際的にも認められている方
法であり、それに従って、実験を行っている。
〈意〉人によっては半年以上飲む可能性もあり、26 週で切るのではなく、もっと長くラッ
トの寿命まで実験をすすめてほしい。
〈質〉実用化され、米として流通するのでは、誤食の危険性も出てくると思うが。
〈答〉開発当初は、パックごはん等での実用化を想定していたが現実的に難しく、現在は
カプセル、錠剤などの「薬」の形での実用化を想定している。
〈質〉試験圃場についてもそうだが、実際に栽培が始まった場合、他の在来の米との交雑
が心配だが、その点は?
〈答〉
「完全隔離」が必要。遺伝子組み換えイネにとっても、他のイネとの交雑が起こると
品質の低下を招く事だから。安定した品質の薬を創るためには、管理法まで細かく
規定する必要がある。生産人口の減少、耕作放棄地の問題もあり、山間部などでの
栽培が良いのではないかと考えている。確実に高値で売れる作物を作れば、活性化
にもつながる。
〈意〉里山利用というが、地方に多く分散するという事は、より遺伝子汚染の範井が広が
る恐れがあるので心配だ。人為的に汚染させるということも考えられる。
〈質〉メーカーが何社か興味を持って話を聞きに来ているそうだが、何のメーカーか?
また、賛同するメーカーからの寄付はあるのか。
〈答〉花粉症治療イネに関しては、製薬会社。寄付はもらっていない。研究費はすべて国
の費用(税金)から出ている。
〈意〉それならばより市民の理解を得るためにも、遺伝子汚染による賠償責任を問う「カ
ルタヘナ国内法」の整備が重要ではないか。
〈質〉複合病害対策イネ、開花期制御イネ、は収量を上げるための開発か。現在の状況を
知りたい。
〈答〉複合病害対策イネ…食用ではなく飼料用米として開発。安全性の確保が重要で、現
在は、屋外で育成し、抵抗性を確認中。ただし飼料用なので、輸入より安くなけれ
ば現実的には流通しない。コスト面での課題が大きい。
開花期制御イネ…開花期をずらすことで大きく育つ。ただしイネでの実用化は考え
ていない。イネは全ゲノムが解読できており、このイネで開花期制御を可能にして、
かなり難しいが同じイネ科のトウモロコシで応用したいと考えている。
〈質〉また去年までGM大豆、GMトウモロコシの展示栽培を行ってきたが、今年はGM
ダイスは試験栽培にかわった。GMトウモロコシについては去年と同じく外資系企
業(シンジェンタ)の種子を植えて、非遺伝子組み換えのもとの比較しているだけに見
えるがそうなのか。
〈答〉ダイズとトウモロコシの試験栽培については担当外なので詳細は分からない。
〈質〉外資企業のGMトウモロコシと非遺伝子組み換えトウモロコシを並べて栽培し、農
薬をかけてGMトウモロコシの優位性を示すことから見て、貴研究所は遺伝子組み
換え作物を奨励し推進している立場なのか。
〈答〉そうではなく、公平な立場で情報提供を行っている。
〈意〉それならば、貴研究所が作成したパンフレットは、遺伝子組み換え作物のメリット
ばかりが強調されているのはおかしいのではないか。推進でも反対でもない中立の
立場であるなら、遺伝子組み換え作物のリスク(深刻な耐性雑草、抵抗性害虫の出
現による使用農薬の増加)デメリットについても掲載するべき。内容の見直しを要
望する。
海外などの遺伝子組み換え作物の一般栽培は非常に有利な状況であり、それに対し
有機農家は遺伝子汚染から自分で守らなければならず、輸送中も混入しないように
厳しく管理しなくてはならない。遺伝子組み換えを食べたくないと思っている側に
とって今の状況は非常に不利であり、大量に輸入している日本は表示義務が不備な
ので消費者は選ぶこともできない。このような状況で、私たちが遺伝子組み換え作
物に危機感を持っていることは理解していただきたい。
〈質〉昨年も農水省として「カルタヘナ国内法」の整備を進めてほしいと要望を出してい
ますが、その後なにか進捗状況があれば教えてほしい。
〈答〉特に進めているということは聞いていない。
〈意〉貴研究所としても、農水省に対して「カルタヘナ国内法」整備を進めるよう意見
するべきである。現在のカルタヘナ国内法では(日本独自の解釈で)保護対象を古
来からの野生生物に限定しており、一般農作物は含まれていない。このままで遺伝
子組み換え作物を一般に栽培させることは問題だと研究者としても考えていること
ではないのか。研究所としてもこの問題をクリアしていかないと、遺伝子汚染に危
機感をもつ市民や有機農家の理解は得られず、栽培に対する反対が続くことになる。
それは研究所としても不本意ではないのか。遺伝子組み換え作物を開発している研
究所として早急に農水省に対し、一般農作物の保護において法的整備をすすめるよ
うに提案するべきだと思う。
〈意〉中国のイネの遺伝子組み換え汚染が深刻な状況。それに対する検査の体制も不十分
な現状だが、その点、貴研究所は専門家集団であり、ぜひ現状把握に協力して頂き
たい。GM作物を検出する検査体制の強化をぜひお願いしたい。