疑義照会に対する医学部生の意識調査 常世田京子 1), 加瀬光一 2

疑義照会に対する医学部生の意識調査
常世田京子 1), 加瀬光一 2), 長谷川佳孝 1), 月岡良太 1), 森澤あずさ 1),
大石美也 1)
1) 株式会社アインファーマシーズ
2) 株式会社アインファーマシーズ アイン薬局 神栖店
【目的】医学部 5 年生の調剤薬局体験実習を通して、患者の薬物治療の安全を
確保する医薬分業とそのシステムの一つである「疑義照会」を薬剤師の立場か
ら伝え、疑義照会に対する医学部生の考えの変革を調査する。併せて、将来、
医師になり処方を記載する時、処方記載の充実と疑義照会への協力を意識でき
るように行動の変革を期待するとともに、保険薬剤師が疑義照会を通じた医薬
連携のあり方を再検討する機会とする。
【方法】2014 年 9 月~2015 年 3 月にアイン薬局神栖店にて調剤薬局体験実習
を行った医学部 5 年生 9 名にアンケート調査を実施した。
体験実習内容は、調剤薬局業務の流れの説明、処方箋調剤、投薬、疑義照会と
した。アンケート項目は、保険薬局業務の印象、実習前後で印象変化の有無、
疑義照会の必要性の有無、自身が処方箋を記載する時に意識する事、保険薬剤
師に求めたい事、印象に残った実習項目等とした。
【結果】アンケート調査の結果から、
「実習前の保険薬局の印象」という項目に
対しては、6 名が「処方箋を元に薬を渡す」というものだった。すべての医学部
生が実習前後で「保険薬局の印象」は変わったと回答し、「疑義照会の必要性」
や「自身が処方を記載する時に意識すること」についてもあると回答した。
「保
険薬剤師に求めたい事」という項目に対しては、
「患者の体調や服薬状況に対す
るフィードバック」、「新薬や新剤形などの情報提供」、「お互いに気づいたこと
を意見交換できる場が欲しい」などの意見があった。「印象に残った実習項目」
は「調剤体験」が 5 名、
「疑義照会体験」が 3 名、
「投薬体験」が 1 名であった。
【考察】今回実習に参加した医学生の多くは、保険薬局の業務や疑義照会の法
的根拠などをしっかりと理解できていなかったが、実習でこれらの業務につい
て具体的にイメージできるようになった。このように医学部生が調剤薬局の現
状を体験することで、医師となった際に処方箋の記載内容の適正化が期待され、
また疑義照会も医薬連携において大きな効果を示すことになると考えられる。
医学部生の「実習前の保険薬局の印象」は保険薬局のあるべき姿からはかけ離
れたものだった。保険薬局が安全な薬物治療のための役割を果たし、保険薬剤
師が医師にチーム医療の一員と考えてもらえる存在になるべく、服薬情報提供
や疑義照会で医薬連携をより積極的に行う必要を感じた。
(第 48 回日本薬剤師会(2015 年 11 月, 鹿児島)にて発表)