広告イノベーションの開拓

データ・ジャーナリズム手法を広告
法・湯淺 正敏教授
分野に応用 大なデータ(ビッグデー くすること」が重要であ い た め デ ー
タ)を分析し、そこから るという。環境問題につ タ・クリエイ
告などテーマ性を持った
授業を取り入れている」
と湯淺教授。この授業で
は編著書の『広告をキャ
リアにする人の超入門』
を、基礎的な能力を身に
つけるためのテキストと
して学生たちは読んでい
る。広告論では、テレビ
CMの媒体パワーが損な
われる要因としてCMス
キップ問題を取り上げ、
湯 淺 正 敏( ゆ あ 告をキャリアにする人
の超入門」
( 編 著・ 三
さ・まさとし)昭和
、 論 文 は「 カ
年千葉大学人文学部法 和 書 房 )
年
プロフィル
ティ祭からみ
リエイティビ
経 学 科 卒。 博 報 堂 入 ンヌライオンズ国際ク
社。平成
から日本大学
(ジャ
法学部新聞学科教授。 た 広 告 の 拡 張 」
日本広告学会・日本広 ーナリズム&メディア
報学会・情報通信学会 第6号)など。東京都
に所属。主な著書は「広 出身・ 歳。
その解決策として、テレ では、学生たちが産業的 から学んでいる。
3〜4年生の合わせて 免除された。その間も研
とから講義や学内業務を
ビ番組やアニメ作品の中 視点から日本のマスメデ
湯淺教授は昨年度、研
に、企業名や商品名をP ィアの急激な変化につい 究休暇制度を利用したこ
ズム&メディア』第6号 している中で、弛まぬイ 増えてきている。このよ
年度末までに、学術書
名が所属するゼミでは 究を進めていたが、平成
する論文を『ジャーナリ 場、生活者が大きく変化 Rする手法が最近とみに て学習している。
の拡張」と題
からみた広告
ティビティ祭
国際クリエイ
ヌライオンズ
また、湯淺
教授は「カン
のだ。
としているも
を研究の目的
現手法の開発
新たな広告表
得られる知見をジャーナ い て C O 2削 減 な ど の メ ティブという
リズム活動に生かす試み
が行われている。
広告の伝え方の変容
この研究の目的は「デ ブのイノベーション(新 耳慣れない言葉だが、広
国際映画祭で知られる
告にデータを取り込んで カンヌでは毎年6月に広
ビジュアル的に見せ、広 告フェスティバルが開催
告クリエイティブの新し され、環境問題や社会貢
(持続的な可能性)など
い切り口の領域を広げよ 献、サスティナビリティ
うというもの。
実際に欧米のジャーナ 社会的な課題に対して、
リズムの世界では、報道 広告もどのように伝えて
現場で「データ・ジャー いくのかというのが顕著
ナリズム」と呼ばれるデ な傾向として出てきてい
で発表している。最近の ノベーションを持って取 うな現象を「コンテンツ
売企業があ
ジネスがどのように変容 げて発刊することが大き
(共著)
。
金 雲鎬(きむ・う 田秀雄賞受賞
んほ)平成 年神戸大 日本商業学会、組織学
また、メディア産業論 しているのかという視点 な目標となっている。
学術書の発刊が目標
コミュニケーションが変 「広告産業の変遷と成長
り、広告クリエイティブ につながるものと確信す 説く。
る。ネット時代の先端テ イメージ偏重ではなく、 るが、データに基づいて た論文の結びで「広告を
担当授業の広告論では
クノロジーを駆使して膨 データを使ってわかり易 説得する広告はまだ少な 取 り 巻 く メ デ ィ ア、 市 「パロディ広告や比較広
提供し、囲い込みたい場 ントカードの活用が進ん 持つ商品も積極的に提案 チャンスに
典や質の高いサービスを 展開し、日本で一番ポイ のある商品と同じ属性を 経営環境を
ポイントカードのデータ活用による
るはずと思
で成長を遂げると、卸売 との関連性を考察した。
企業を経由せずにメーカ その結果、情報や物流革
1万時間の過ごし方
小売企業がチェーン展開 略行動と卸売企業数減少 れている。
る。1960年代以降、 し、その戦
の情報・流通戦略」があ 企業に注目
取り組んでいる研究テ 准教授は革
ーマの一つに「卸売企業 新的な卸売
っ た 」。 金
種類のグループに
ど約
細分化し、それぞれに合
る消費者だけでなく、「誰 D、すなわちその人の属 か、ビールを買う人なの トカードのデータを使う 協力するメーカーの悩み ったクーポンを懇切丁寧
小売店にも様々なメリットが
こで言う2割に相当する いためにもっと手厚い特
学大学院経営学研究科 会に所属。主な論文に
プロフィル
能力」
「大規
動と需要管理
修 了、 博 士( 商 学 )
。 「小売企業のCRM活
山梨学院大学
現代ビジネス
年およ 考察」など多数。韓国
年日本商業学会 動に基づく流通短縮の
学 部 准 教 授 を 経 て 現 模卸売企業の戦略的行
職。
年助成研究論文吉 出身。 歳。
論文賞受賞、
び
す」。「どのように」を意 することにより、考える
識しない1万時間は、運 力と行動力を養うことが
が悪いと無駄になってし 主眼ですが、不得意の分
能な商品〉といったコー 限り卸売企業数は減少し 研究は問屋無用論に対す が、ここで重要なのは1 ミの課題にしている。「自 欲 を 持 つ よ う に な り ま
山梨県を中心に店舗を ドをつけておき、購買暦 てきた。しかし、厳しい る反論の論拠として使わ 万 時 間 の 過 ご し 方 で 分の頭で企画して、実行 す」と語る。
と い う 文 言 が あ る。
「 こ し、競合他社に奪われな 促効果が得られます」
、
〈手間短縮可 確かに統計データを見る らかにした。金准教授の 間 か か る と の 話 で あ る ト」を実践することをゼ 野に挑戦しようという意
の売り上げに貢献する」 なわち、優良顧客を識別 ージを損なうことなく販 的な商品〉
ました」
してくれて、どのお客さ ポイント還元という方法 い 商 品 も 提 案 す る と こ とがある。いわゆる「問 シェア拡大したことが、 る こ と を よ く 話 す。「 ど
また金准教授は、夏休 によって今まで出来なか
よ く 言 わ れ る こ と に んが特売狙いであるのか は直接的な値下げではな ろ。新商品が出るたびに 屋無用論」
。「本当に卸売 卸売企業数が減少する一 の分野でも専門家になれ み・春休み期間中に「自 った経験や新たな出会い
、
〈健康 企業に未来はないのか。 つの要因であることを明 るまでにはおよそ1万時 主企画・実行プロジェク が生まれ、さらに違う分
「2割のお客さんが8割 が明らかになります。す いために、ブランドイメ 〈経済的な商品〉
「 こ の 店 が 先 進 ーと直接取引するほうが 新によって競争力を身に
に欲しいものに的を絞る ことで、どのお客さんが の一つにブランドイメー に 送 る。
学生やゼミ生には、「1 ま う 恐 れ さ え あ る と 話 野から企画テーマを選ぶ
ことができるようになり 日ごろからよく買い物を ジの低下がありますが、 的なのは、購買経験がな 効率がよいと言われたこ つけた卸売企業が、市場 万時間の法則」を再考す す。
ようにしています。それ
顧客の囲い込みにも役立つ
「問屋無用論」に反論
理派」
「 健 康 志 向 派 」 な す」
ーでは、顧客を「簡単調 恰 好 の 事 例 だ と 思 い ま っている卸
合にもポイントカードは でいると言われる食品ス しています。ポイントカ 転換する信
有効活用できるのです」 ーパーがある。同スーパ ードの可能性を切り拓く 念と力を持
日本大学では全学部が へ応用する研究」を進め ータ・クリエイティブ」 機軸)の開拓。データ・
という広告クリエイティ クリエイティブとは少々
連携して研究を活性化さ ているという。
せる「学部連携ポスター
セッション」を開催して
おり、7月にこのセッシ
ョンに参加。法学部新聞
学科の教授として着任以
来 年、専門分野の「広
告・メディア産業」に関
して取り組んでいる「広
告クリエイティブ・イノ
ベーション研究」の内容
ータの発掘、計量的分析 る。そこで、湯淺教授の
50
受 賞 作 品 の 変 遷 を た ど り組む姿勢が将来の発展 と広告の融合」であると 広告産業論をテーマに、
24
カルな可視化というイノ ナリズムの手法を広告分
とそれに基づくグラフィ 研究は「データ・ジャー
昨年11月還暦の会も兼ねて、
盛大に開催されたゼ
ミOBOG会
」を書き上
化している中で広告のビ 戦 略( 仮 題 )
ビッグデータ時代の広告手法
ベーションが起こってい 野に応用し、企業広告は ッセージを取り入れてい の変化や方向性をまとめ る」と記述している。
26
を発表した。さらに、こ
の研究が科学研究費助成
事業(科研費)に採択さ
れ、今年度から来年度に
データ計量分析から可視化へ
商・金 雲鎬准教授
ポイントカードを活用
例えば、過去の買い物 優良顧客が誰かというの した販促のメリットは小
ふだん私たちが何気な 金准教授は話す。
「 魚 ば か は今まで把握されていま 売企業だけにとどまらな
ポイントカードはID 履 歴 を 見 れ ば、
く利用しているポイント
「小売企業の特売に
カード。特典が受けられ POSとも呼ばれる。「I り で お 肉 を 買 わ な い と せんでした。が、ポイン い。
効果的な販促 61
41
に、いつ、どこで、何が 性までわかるようになっ か焼酎を買う人なのかも
売れたかがわかるという たことで、より積極的な わかりますし、子どもが
と一緒に住んでいるとい
観点では店側にも大きな 販 促 が 可 能 に な り ま し いる、あるいはお年寄り
メリットがあります」と た」
った家族構成だって見え
15
17
20
17
23
かけて「データ・ジャー
カンヌライオンズ帰国後、
ゼミの授業で、
持論の
「脱・広告」
を披露
てきます。つまり、本当
紅葉をバックにお気に入りの一枚
ゼミの学生たちと一緒に
10
ナリズム手法を広告分野
広告イノベーションの開拓
20
(2)
平成25年10月1日
版
別
特
報
広
学
大
本
日
第31号