第 9 回 Intel® Teach 「MT クラブ」 フォーラム開催

第 9 回 Intel® Teach 「MT クラブ」 フォーラム開催
2009年 6月27日、第 9 回 Intel® Teach 「MT クラブ」 フォーラム (MT = Master Teacher) を、インテル株式会社 (東京)
にて開催しました。このフォーラムは、Intel® Teach プログラムへの参加機関 (学校・教育委員会・大学) の皆様とともに、21
世紀型スキルを育成する授業について考えることを目的として、定期的に開催しているものです。
今回のフォーラムでは、インテルの教育関連の活動報告と、特別講師として NPO 学習学協会 代表理事 本間正人氏を
お迎えして、『学習スタイルのパラダイムシフト ~教育から学習へ~』 と題して、学びを活性化させるコーチングの実践的手
法を体感するワークショップを実施しました。また、本年度すべての学校に電子黒板が設置されるにあたり、東京書籍株式
会社よりデジタル教科書やデジタル教材を活用した授業実践について紹介いただきました。
インテルの教育支援 - 社会貢献、政策、関係業界との連携・協力の 3 本柱による推進をめざす
冒頭に、インテル株式会社 教育プログラム推進部部長 柳原なほ子より、Intel® 教
育支援プログラムの使命と目的の共有と、Intel® Teach ワークショップや Intel ISEF
(国際学生科学フェア) の紹介がありました。2001 年に日本で Intel® 教育支援プロ
グラムが始まって以来、社会貢献活動を通して教育にかかわってきましたが、徐々に
政策や関係業界との連携・協力の側面からも、相互に影響しながら教育支援に取
り組む体制が整ってきました。「これからもインテルでは、この 3 本柱で 21 世紀を生
きるスキルを身につけた人材を育成するための取り組みを進めていきたい」 と抱負を
語りました。
子ども 1 人 1 台 PC の学習効果について ~柏市の小学校での実証実験より~
続いて、インテル株式会社 事業開発本部 公共事業統括部 教育事業開発部長
竹元賢治より、2008年 9月からインテルと内田洋行が取組む、子ども 1 人ひとりに
小型ノート PC を配布し、普通教室での授業のなかで活用する ICT の学習効果
の実証実験と今後の展開についての紹介がありました。
来るべき将来に向けて、普通教室で "児童・生徒 1 人に 1 台の PC" を活用して
授業を行う環境では、どのような学習効果が引き出せるか、またどのようなシステム
インフラの整備が必要なのか、ハード・ソフト両面からの検証が行われています。今
回は、その途中経過として、学習効果、学習意欲、ICT 活用の 3 つの観点から結
果報告がありました。
また、このプロジェクトの第 2 弾として、今年度より都内の公立小学校を対象に実施される、児童 1 人に 1 台の "教育用
途専用 PC" 「インテル クラスメイト PC」*1 を活用した授業の実証実験についても紹介がありました。国語・算数そして外
国語活動等、教科の授業において、PC ならではの拡張性を活かした実践が期待されます。
*1 インテルが教育用途として開発した 「インテル クラスメイト PC」。小型のノートブック PCで、ワイヤレス接続機能、長時間のバッ
テリー駆動、堅固な耐衝撃設計などの特長に加え、タッチパネル機能を搭載しています。
デジタル教科書・教材を活用した授業実践の可能性について
東京書籍株式会社 ソフトウェア営業部長 笹村元康氏からは、デジタル教科書の 活用実践事例や、デジタル教科書・教
材により授業がどのように変わるのか、デモンストレーションを交えて紹介いただきました。
神田須田教育開発株式会社のご協力で会場にご用意いただいた可動式では国内最大級の電子黒板と東京書籍の中
学校英語 「New Horizon」 のデジタル教科書を使ったデモンストレーションでは、電子黒板に教科書準拠のコンテンツが拡
大提示されることにより、生徒の集中力が増し、教室の一体感が生まれる効果を
実感。さらに、デジタル教科書・教材ならではのさまざまな機能を用いることで、授
業のテンポやリズム、また授業の進め方がいかに変化するか、模擬授業スタイルで
体験しました。
2009年 4月、21 世紀の学校にふさわしい教育環境の抜本的充実を図ることを目
的に、政府より提唱された 「スクール・ニューディール」 構想の推進により、本年度す
べての学校に電子黒板が設置される予定です。「デジタル教科書は、あるレベルま
で授業の質を高めるために有効である」 と言われていますが、21 世紀に必要なスキ
ルを育成する新しい授業デザインを実現するために、今後段階的に学校に導入され
るさまざまな ICT 機器やソフトウェアの特性をよく理解して、意図的に活かしていくこ
とが不可欠であることが確認されました。
教育における ICT 推進施策の動向について
インテル株式会社 事業開発本部 公共・教育事業開発部長 緒方功治より、「国
際競争力」 をキーワードにした政策レベルでの ICT 推進施策への提言や、日本教
育工学振興会 (JAPET) の政府・ロビー部会での活動による教育イノベーションへ
の取り組みについて報告がありました。
昨今の政府の ICT 推進施策の動向をふりかえり、各省の政策目標では教育にお
ける ICT 利活用がどのように捉えられ、政策レベルで推進されているのか、現状とと
もに 「国際競争力」 の視点から見た問題意識が共有されました。さらに、世界のい
わゆる ICT 教育先進国においては、教員の ICT 指導力を高めるトレーニングを重
視した ICT 推進施策が政策的にデザインされていることを指摘し、日本の 「スクール・ニューディール」 構想によるハードウェ
ア・インフラの整備が真に効果を発揮するためには、教員の ICT 指導力向上のための研修システムや学校を取り巻く ICT
サポート体制の充実・強化が必要不可欠であること、また、政府関係機関や企業関係団体との連携・協力がより一層大
切になることなどをお伝えしつつ、今後の取り組みへの意欲を語りました。
『学習スタイルのパラダイムシフト ~教育から学習へ~』
21 世紀の社会を生きる力を育成するには、どのような授業が求められるのか、知識
提供型から学習者が自ら主体的に学ぶことを重視する思考支援型へ、学習のあり
方が大きく変化しようとしています。特別講師の本間正人氏から、「学習学 =
Learnology」 の理論に基づいたプロのコーチングノウハウを伝授いただきながら、学
習者の学びを活性化させるにはどのような手法が効果的か、その秘訣を紐解いてい
きました。
ワークショップでは、まず学習学と教育学の違いについて、定義 (「学習」 とは、外界
を認知し、環境に適応しながら、自らの特質を発揮すること (内なる可能性を引き
出すこと) )、指導者・学習者の役割の視点から考えました。そして、
人間は一生、学び続ける存在である
人間には備わる学ぶ力が備わっており、それを引き出すことが指導者の役
割である
言語コミュニケーションによる 「学びあい」 が人類最大の強みである
といった学習学の前提となる考え方を教授いただきました。「人間は学ぶ存在であ
る。そのような人間観に立って考えると、学ぶ存在としての人間が言語コミュニケー
ションを発揮しながら学びあっていく、その環境をサポートしていくのが本来の学校のあるべき姿ではなかろうか」 「学習は喜
ばしいことであってほしい」 とのメッセージを伝えていただきました。
さらに、実際に「最高の学習体験」 をテーマに、ヒーロー役とインタビュアー役になってインタビューを行うペアワークを通して、
コーチングの基礎的なスキル (傾聴、質問、承認) を学びました。
学習学の前提のひとつに、「心は学ぶ機能を果たしている」 という考え方があり、脳科学的にも、感情が揺れ動くと記憶が
定着しやすいと言われています。実際にワークを行うことで、学習者が 「感情の揺れ」 を感じ、それを表現するしかけを施す
ことで、学習効果を高められることを実感しました。参加者からも、「エネルギーレベルがあがった」 「すぐに取り入れられるヒン
トを得られた」 といった感想が寄せられ、このような考え方や手法を学校という学びの場でも積極的に活かしていくことの大切
さが共有されました。
人間の内なる可能性を引き出す技術 (ヒューマンウェア) の基本は、人と人との接触、つまりコミュニケーションにあると考えら
れます。テクノロジーのイノベーションと学びを活性化するコミュニケーションの融合が、21 世紀型スキルを育成する効果的な
授業の実践につながるものと期待されます。
講師: 本間正人 (ほんま・まさと) 氏
東京大学文学部社会学科卒業、ミネソタ大学から Ph.D. (教育学博士号) を取得。93 年に独立し、数多くの企業・自
治体でコーチングやポジティブ組織開発の超・参加型研修を実施。Learnology (学習学) を提唱し、現在、特定非営利
活動法人 学習学協会代表理事、帝塚山学院大学客員教授、らーのろじー株式会社代表取締役。著書は、『人に好
かれてうまくいく 「愛嬌力」』 (共著、大和書房)、『ほめ言葉ハンドブック』 『ほめ言葉ハンドブック家族・プライベート編』 (共
著、PHP 研究所)、ほか多数。
※ 所属・役職名は 2009年 6月27日当時のものです。