足と足関節の障害・外傷

足と足関節の障害・外傷
東京警察病院整形外科
足部・足関節外科外来
足部と足関節(足くび)の慢性疼痛や変形を中心に扱っています。具体的には変形性足関節症(軟
骨の磨耗による足の痛み)、足関節骨折・踵骨(しょうこつ)骨折後の変形治癒や足関節捻挫の後
の不安定症(捻挫ぐせ)、外反扁平足障害、外反母趾、スポーツ障害、足部変形などです。足部と
足関節は人体の土台で歩行に最も重要な部分であり、この部分の痛みは日常生活を著しく障害しま
す。
足部と足関節の障害は多岐にわたっており、診断そのものが困難であることが多く、治療には高
い専門性が必要となります。当院では他府県からも含めて足に障害のある多くの患者さんが来院さ
れていますが、足部・足関節を専門に扱う医師と、足部のケア・ギプス処置等に精通した看護師に
より、適切な治療を行うよう努めています。
症状から見た足部と足関節の障害
足首がはれて痛い(ケガはない)
変形性足関節症、関節リウマチ、特発性距骨壊死
捻挫の後に足首の痛みがとれない、捻挫ぐせ
陳旧性足関節外側靭帯損傷(足関節不安定症)、距骨骨軟骨傷害
捻挫の後、足の甲の痛みがとれない
陳旧性リスフラン関節損傷
捻挫の後、外くるぶしのうしろのスジが外れる感じをくりかえす
反復性腓骨筋腱脱臼
あしの指(2―4趾)の付け根付近の痛み・異物感
モートン病、関節リウマチ
扁平足で足首まわり(くるぶしの下など)が痛い
外反扁平足障害
甲高でアーチが高く、かかとや親指の付け根、小指の付け根の接地部が痛い、タコができる
凹足、シャルコーマリートゥース病
骨折のあとに痛みがとれない
足関節果部骨折(くるぶしの骨折)や踵骨骨折の変形治癒、外傷後の変形性関節症
踵(かかと)の痛み
足底腱膜炎(足の裏)、踵骨疲労骨折(踵全体)、アキレス腱付着部炎(踵のうしろ)
足の裏のしびれ、痛み
足根管症候群
母趾(足の親ゆび)が外を向いて、付け根が痛い
外反母趾
母趾の付け根がはれていたい、そり返せない
強剛母趾
それぞれの障害について
 変形性足関節症
足関節の軟骨が磨耗して腫れや痛みを引き起こします。外傷で
軟骨を損傷した後に起こるものと、特に原因がなく起こるものが
あります。外傷としては足関節の骨折や捻挫のあとにいわゆる捻
挫ぐせとなった場合があります。インソールを使って軟骨への負
担を軽くしたり、医療用の硬いサポーターで足関節を固定します。
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また消炎鎮痛剤の内服で痛みのコントロールを行います。
手術には、より軟骨の磨耗の少ない部分に体重を分散させる方
法があります。これは低位脛骨骨切り術(ていいけいこつこつき
りじゅつ)といって、脛骨(すねの骨)の足首に近い部分で骨の
骨切り術前
向きを変えて、より軟骨が残っている部分に体重がかかる軸を移
動させるものです。これによって、軟骨が消失して狭くなった関
節が開き(図の矢印)、軟骨様の組織が再生することを促します。
軟骨の摩耗が足関節全体に及んでいる場合には、この手術は行え
ません。
軟骨の摩耗が足関節全体に及んでいる場合には、関節の固定(足
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関節固定術)を行うことがあります。足関節にある痛んだ組織を
切除して、脛骨とその下の距骨をスクリューで固定します。この
手術は内視鏡を使って行っています(鏡視下足関節固定術)。関節
を切開して行う場合より、術後の痛みや出血が少なく、骨癒合が
骨切り術後
早いようです。関節固定術は痛みを取り除く効果は高いのですが、
急な斜面や階段などで足が硬いと感じます。
 外反母趾
外反母趾は非常に多い障害です。母趾(足の親指)の付け根の内側が突出して赤くはれたり痛み
を出します。程度が強くなると足の裏に痛いタコができたり、母趾が2番目のゆびの下にもぐりこ
んで2番目の指が持ち上がって痛み引き起こします。また
変形が強いと歩行時に踏ん張り
がきかなくなります。
日常生活の障害があまり大きくない場合は、母趾を内側へ引き戻すストレッチ運動や靴のインソ
ールを患者さんの足に合わせて作ることなどが治療の主体となります。
痛みと変形が強い場合、手術で矯正することができます。変形だけで痛みがない場合は手術は行
いません。母趾の付け根にある第1中足骨を切って骨を正しい形に直して固定します。埋め込み型
の小さいスクリューで固定します。変形の程度
があまり強くない場合は、第1中足骨の母趾に
近いところで矯正します(シェブロン法)。変
形が強い場合は、第1中足骨の足首に近いとと
ころで矯正します(マン法)。これらは世界的
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に最も広く行われている方法ですが、手術中の
正確な矯正と、強固なスクリューによる術後の
矯正の維持が重要です。スクリューを抜くため
の手術は通常行いません。術後の合併症として
は、変形の再発や内反母趾等が知られています。
術前
マン法術後
 足関節不安定症
いわゆる捻挫ぐせで、ひどい捻挫をした後に
何度も捻挫をくりかえしたり、痛みが持続して
しまう障害です。怪我をしたときに損傷した、
外くるぶしの下にある外側靭帯(前距腓靭帯と
踵腓靭帯)と呼ばれる靭帯が十分修復しないこ
とが主な原因です。装具や足首の筋力強化訓練
が治療の中心です。改善しない場合やスポーツ
選手では、靭帯の縫縮術や靭帯再建術を行うこ
ともあります。また幼少時に捻挫すると靭帯が
切れないでむしろその付着部が剥離骨折を起こ
します。これが骨のかけらとして残り、スポーツ年齢になって痛みや捻挫ぐせを起こすこともあり
ます。この場合も同様な治療を行います。
 距骨骨軟骨傷害
足関節の土台にある距骨という骨の軟骨に亀裂が入ったり、はがれる障害です。捻挫のあとに発
生することがありますが、原因を特定できないこともあります。捻挫したあとになかなか痛みが取
れない場合の原因のひとつです。症状は漠然とした足首の痛
みや、関節のなかで何かががずれる感じがします。初期には
X 線写真では分かりませんので、捻挫後に痛みが長引く場合
には MRI 検査を行い、距骨の軟骨に異常がないかをチェッ
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クします。
治療は松葉杖で足をつかないようにしたり、体重がかから
ない装具をつけます。痛みの期間が長かったり、MRI で損傷
が大きい場合は手術も考慮します。若い患者さんの場合は、
内視鏡を使って細いワイヤーを軟骨の下の骨にさして骨の
血行を促します(関節鏡視下ドリリング法)。軟骨がはがれかかっていたり、軟骨の下に小さな空
洞ができている場合は、自分の骨を使って軟骨を固定する方法を選択します。これを骨釘固定術(こ
っていこていじゅつ)といいます。軟骨が完全にはがれて修復できない場合は、膝からの軟骨移植
手術を行います。
 足関節骨折や踵骨骨折後の痛み
他の施設で骨折のギプス治療や手術を受けた
あとに痛みが長い間取れないという相談があり
ます。けがをしたときの骨のダメージがとても大
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きい場合に、痛みが長引く傾向があります。まず
薬の内服や装具・インソールを用いた治療を行い
ます。関節面にできた段差が大きかったり、すで
関節の段差
関節固定術
に軟骨が摩耗しているような場合は、手術で骨の
構造を整えたり、痛んだ関節の部分的な関節固定
術を行うこともあります。
 外反扁平足障害
足のアーチがつぶれて、さらに足全体が外側を向いてしまう障害があります。生まれつきの扁平
足と考えて、痛みがあっ
たとしても治療できるも
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のと思っていない方や医
師も多いようです。内く
るぶしの下にある後脛骨
筋腱という腱が、炎症を
起こしたり擦り切れたり
して起こることが最近分
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かってきました(後脛骨筋腱機能障害)。アーチを支えるインソールや装具を使って治療します。
改善のない場合や変形が高度の場合、腱移行術や骨切り術・関節固定術などで足のアーチを作るこ
とも行います。
 モートン病
足のゆび(趾)の付け根の、ゆびとゆびの間の神経が“こぶ”をつくる障害です。3趾と4趾の
骨切りと腱移行
間がもっとも多いです。歩行時にゆびの付け根に痛みを感じたり、異物が入っているような感覚が
あります。ゆびにしびれを感じることもあります。“こぶ”はとても小さいのですが、ゆびの付け
根の非常に狭いところにできるので症状が強く、日常生活に困ることも多いようです。
治療は消炎鎮痛剤の内服やインソールの作製を行います。また神経の近くにステロイドの注射を
行うこともあります。改善がない場合は手術も考慮します。手術は神経の“こぶ”を切除します。
手術により症状がよくなる患者さんの割合はおよそ 85%です。
 関節リウマチ
関節リウマチはいろいろな関節で痛みが出ますが、足関節で炎症や痛みを起こすことも多いです。
関節の変形が強くなり、薬物療法で改善が見られない場合は、手術(関節固定術や人工関節置換術)
を行います。また外反母趾や扁平足の原因の一つでもあります。靴の中敷きや靴そのものを足に合
わせて作製します。
 強剛母趾
しばしば外反母趾と間違えられますが、母趾が外を向く程度は強くありません。むしろ母趾の付
け根の関節(MTP関節)がはれて、上にそり返す時に痛みがあります。このためつま先立ちが困
難になります。MTP関節の軟骨がすり減って関節炎を起こしたり、上に骨の突出(骨棘
)が出て痛みが出ます。消炎鎮痛剤や靴の中敷きで治療を行います。改善がない場合は手術を行
います。骨棘を、軟骨の摩耗が
強い部分も含めて切除(カイレ
クトミー)を行います。
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強剛母趾の骨の
出っ張り
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