衛星航法による航空機着陸システムと PPD(個人用保護

衛星航法による航空機着陸システムと
PPD(個人用保護デバイス)の干渉実験
Experimental Results of Personal Privacy Device (PPD) for satellite based aircraft landing system
福島荘之介
Sonosuke Fukushima
齊藤真二
Shinji Saitoh
電子航法研究所
Electronic Navigation Research Institute
1.はじめに
GBAS(Ground – Based Augmentation System: 地上型衛星
航法補強システム)は,狭域 DGPS を用いた衛星航法に
よる民間航空機の進入着陸システムである.最近,米連
邦 航 空 局 ( FAA) は , ニ ュ ー ア ー ク ・ リ バティ空港に
GBAS 地上装置を設置し,運用段階(カテゴリーI)に入
った.しかし,運用前の試行期間に電波干渉による複数
回のシステムダウンを生じている.後に FAA は,その原
因を滑走路付近に配置された GBAS 基準局に近い高速道
路を走行する車両に搭載された PPD と特定した[1].
我が国においても,電子航法研究所がプロトタイプ装
置を開発しており,GBAS の実用化が期待されている.
このため,PPD の影響を調査し,対応を検討する必要が
ある.本稿では,PPD 信号の RF 特性の測定結果[2]に引
き続き,GBAS 基準局に内蔵される GPS 受信機への影響
を計測したので,その結果について報告する.
2.実験の構成と設定
GBAS 基準局には Novatel Inc.と CMC Electronic が共同開
発した L1 24 チャネル GPS 受信機(CMA-4048)が使われ
る.本受信機は,GBAS 用に開発された唯一のモデルで
あり航空用途の RTCA DO-278B Level 2, DO-254A Level B
標準に対応する.実験はシールド性能を備えた電波無響
室内で実施し,GBAS 基準局付近で PPD 信号が送信され
る状況を模擬した.実験では,GPS シミュレータを用い
てライブ環境と同等のシナリオ(但し,CN0 が時間変動
しない設定)で GPS 信号を発生し,ケーブル接続で PPD
信号と混合して GPS 受信機に入力する.PPD 信号は GPS
アンテナから 90 cm の位置で送信し,受信後に可変減衰
器を通して混合器に入力する.GPS 受信機の出力データ
を PC で取得し,感度抑圧を示す GPS 衛星信号の CN0 の
平 均 値 と 擬 似 距 離 の 誤 差 を 示 す CMC ( Code Minus
Carrier)の標準偏差を求めた.
受けるケースであり,標準偏差は 2.64 m であった.PRN7
は 最 低 仰 角 の 衛 星 で は な く,補足されている中で最も
CN0 が低い衛星である.これらの結果は,減衰量を 50 dB
とすれば,シミュレータ信号のみの場合と同等であった.
減衰量と実験結果から PPD と GBAS 基準局の離隔距離
を検討した.見通し内の自由空間損失は,
L = 32.44 + 10 log F + 10 log d
(1)
であり,L は損失(dB),F は周波数(MHz),d は距離(km)と
なる.90 cm の離隔距離 d に対する伝搬損失を L90 とする
と,必要な離隔距離に対応する伝搬損失 Lfs と減衰量 Latt
の関係は,
L fs = L90 + Latt
(2)
となる.実験結果から Latt を 50 dB とすれば,式(1)から
L90 は 35.47 dB であるため,Lfs は 85.47 dB となり,離隔距
離 d は 285 m と求められる.
4.まとめ
GBAS 基準局受信機への PPD の影響を検討し,入手し
た PPD を用いた実験により離隔距離を求めた.この結果
は,空港内基準局の設置位置選定に寄与できる.今後の
課題は,PPD のモニタ手法を検討することにある.
参考文献
1. John Warburton and Carmen Tedeschi, "GPS Privacy Jammers and RFI
at Newark, Navigation Team AJP-652 Results", 12th International
GBAS Working Group Meeting (I-GWG 12), Nov. 2011.
2. 福島荘之介,齊藤真二“衛星航法による航空機着陸システムと
PPD(個人用保護デバイス)の干渉実験”,測位航法学会(全
国大会)2013 年 4 月.
3.実験結果と考察
図 1 に CN0 と可変減衰器の減衰量の関係を示す.PPD
は入手した 10 台から代表的な PPD を用い,比較のためシ
ミュレータ信号のみの場合も測定した.図 1 は受信され
た 6 衛星の内,低仰角の PRN26(EL:27.6~36.3°),7
(EL:26.8~28.9°),29(EL:10.9~16.0°)の CN0 が 5
種類の PPD1,2,4,8,9 により影響を受けた結果を示す.
PPD9 は 0.25 mW と高出力のため感度抑圧が大きく,減衰
量が 19 dB 以下の場合には衛星補足が行われない.
また,CMC についても同様に減衰量との関係を把握し
た.CMC が最大になるのは,PPD2 により PRN7 が影響を
図 1:平均 CN0(低仰角衛星)と減衰量の関係