航空技術情報 2015 年 6 月

航空技術情報 2015 年 6 月
【Index】
★FAA、機種間スイッチ配置差異は最小が望ましい
★FAA が 2018 年からターミナル空域における航空機の順位付けツールの展開へ
★運輸安全委、787 電池問題の安全勧告で FAA が回答
★広域補強システム(WAAS)が Honeywell の GBAS の精度を向上
★パイロットに失速回復の実地訓練
デルタ航空などが採用
★タイ航空当局の安全対策に重大懸念を表明 国際機関
★航空エンジンに革新 GEも認めた日本の素材力
★日航、手荷物検査の待ち時間をスマホで「見える化」
★ボーイング、777X など開発は「計画通り順調」
★2023 年には航空機へ搭載 米空軍が進めるレーザー兵器開発 その有用性は
★英格安航空イージージェット、機体検査はドローンで
★新型滑走路上異物検出システム、今年度に成田で実証へ
★FAA 空港の安全向上のための新しい取組みを開始
★米空港の保安検査、禁止品目の95%を見逃し
★ANA、機体整備会社
MROJapan 17 年度県内で事業
★インドの有資格パイロット、飛行時間 35 分-求人増で質に懸念
★ロシア旅客機が北京市中心部上空を低空飛行=データ入力ミスが原因
★パイロットの重量入力ミス、エールフランスが安全性調査受ける
★操縦不能の状況を防止するため、EASA(欧州航空安全庁)と IATA(国際航空運送協会)、航空会社
の操縦士に対する新訓練要件を発表
★欧州コックピット協会が“Pay to Fly”コンセプトの禁止を要求
★MH17 便の撃墜前のウクライナにおける航空リスクに関する情報隠し容疑
★Malaysia Airlines、航空機の飛行追跡用の On Air AIRCOM 飛行追跡技術を利用する最初の航空会社
★英国環境局、EU-ETS の適用に反対するインドのジェットエアウェイズ社の訴えを却下
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★FAA、機種間スイッチ配置差異は最小が望ましい
運輸安全委の ANA 機背面飛行問題の勧告に回答(ウイングデイリー0629)
運輸安全委員会はこのほど、2011 年 9 月にエアーニッポンの 737−700 型(JA16AN)が飛行中に機体が背面
飛行状態になった重大インシデントで、米連邦航空局(FAA)に対して安全勧告を行っていたが、FAA 側から
回答があったことを明らかにした。FAA は、同じ航空会社の機種間でコクピットのスイッチ配置が不統一であ
る事例が確認されたことから、配置の違いを最小にすることが望ましいなどと回答した。
重大インシデント発生当時、当該便は那覇空港から羽田空港に向けて飛行中の 22 時 49 分頃、串本の東約
69 キロメートル、高度 4 万 1000 フィートで、機長が操縦室を退室した後、副操縦士が機長を再入室させよう
とした際に、副操縦士がドアロックセレクターを操作するつもりで、誤ってラダートリムコントロールを操作
したことで、機体が反転した状態となって、急降下した。
この重大インシデントを受けて運輸安全委員会は、FAA がボーイングに指導すべき措置として、スイッチの
形状、大きさ、操作上の類似性を低減、または解消する必要性について検討することを勧告していた。
これに対して FAA は、フライトデッキのドア開閉スイッチの形の修正についてボーイングと共同で分析。誤
作動を防止するうえで、
(1)ヒューマン・ファクターの見地から、スイッチの形状以上にスイッチの配置が重
要であることのほか、
(2)同じ航空会社の機種間でスイッチの配置が統一されていない事例が確認されたこと
から、配置の違いを最小とすることが望ましいことを報告した。ただ、
(3)米国内の運航会社では、運航中に
操縦室から運航乗務員が退室する場合、ほかの乗務員を入室させて、運航乗務員の再入室時に手動でドアロッ
クを解除し、フライトデッキのドア開閉スイッチは使用しない手順になっているため、JA16AN で発生したよ
うな問題が、影響を及ぼさないなどの結論を得たという。
★FAA が 2018 年からターミナル空域における航空機の順位付けツールの展開へ(Aviation Daily 0626)
連邦航空局(FAA)は、米国航空宇宙局(NASA)が開発した航空機間の順位付け及び間隔設定のためのツール
を、2018 年から 2022 年までの間に、9 の主要な空港に配置しようとしている。これによって、燃料効率のよ
い最適な経路を用いた降下が、より行いやすくなる。
Terminal Sequencing and Spacing(TSAS)と呼ばれるこのソフトウェアは、ターミナル空域(空港を中心に
1
5 海里から 35 海里までの間のドーナツ型の空域)における、管制官による航空機の管理に役立つ。
TSAS は、ターミナル空域に入ってこようとする航空機(到着機)に対して、他の航空機との間隔を維持しつ
つ連続降下進入方式に従って降下できるように、管制官が指示すべき速度について戦略的な情報を提供する。
TSAS を用いて航空機の速度を調整することにより、連続的に降下する航空機同士を、燃費のよい経路から逸
脱することなく、最終進入に移行する地点において安全に合流させることが、可能となる。
この技術の開発は 2009 年に開始され、2011 年にプロトタイプの試験が始まった。その後、2014 年には、更な
る試験及び評価のために FAA に移管されている。現在、FAA は、TSAS をフェニックス、ヒューストン、アトラ
ンタ、シアトル、サンフランシスコ、ラスベガス、デンバー、ロサンゼルス及びシャーロット(ノースカロラ
イナ州)に展開するための、最終的な投資についての決断を行おうとしている。
★運輸安全委、787 電池問題の安全勧告で FAA が回答
FAA、リチウムイオンバッテリー新基準策定など対応(ウイングデイリー0626)
運輸安全委員会はこのほど、メインバッテリーの不具合で高松空港に緊急着陸した全日空 A N A の 7 8 7 - 8
型(JA804A)の重大インシデントの調査を経て、米連邦航空局(FAA)に昨年 9 月末に安全勧告を行ったが、
その勧告に対する措置状況の報告を受けた。FAA は、リチウムイオン・バッテリーの新たな基準を策定したほ
か、バッテリーシステムは再設計されて新しいリチウムイオンバッテリー安全評価にもとづいて承認され、熱
伝播リスクにも明確に対応したなどと回答した。なお、運輸安全委員会は FAA に対して、FAA が講ずべき措置
と、設計・製造者であるボーイングに指導すべきことを勧告していた。ちなみに、ボーイングでは現在も内部
短絡(ショート)発生メカニズムを継続的に研究中で、充電ユニット(BCU)とコンタクターを含むバッテリ
ー製造過程についても調査中だ。
去る 2013 年 1 月 16 日、山口宇部空港を羽田空港に向けて飛び立った JA804A は、四国上空を上昇中、メイ
ンバッテリーの不具合を示す計器表示と共に、操縦室内等で異臭が発生したため、目的地を急遽、高松空港に
変更して着陸した。乗員乗客が降機する際には、非常用の脱出スライダーを使って避難する事態となった。同
機はメインバッテリーを損傷したものの、火災発生には至らなかった。
その後の運輸安全委員会の調査で、メインバッテリーが熱暴走を起こしたと結論。6 番セルが熱伝播の起点
となり、6 番セルとブレースバーが接触してアース線を介してショートし、バッテリーボックス内に大電流が
流れてアーク放電が発生したことが熱伝播を助長して熱暴走に至り、バッテリーの損傷を拡大させたものと推
定した。
787 型機のバッテリーに起因したトラブルは、JA804A で発生した重大インシデントのほか、日本航空(JAL)
機がボストン・ローガン空港で駐機中に白煙を上げたインシデント(2013 年 1 月 7 日)など、計 3 回の発熱
現象が発生。FAA の型式証明では、リチウムイオンバッテリーの発熱現象発生確立は 1000 万飛行時間に 1 回
未満程度とされていたが、787 累計飛行時間が約 25 万時間の時点で 3 回発生したことなどを踏まえ、型式証
明取得時におけるリチウムイオンバッテリーの故障率は、適切ではなかった可能性が指摘されるなどしてい
た。
そうした状況にあるなか運輸安全委員会は、FAA が講じるべき措置として、
(1)航空機装備品の試験が実運
用を適切に模擬した環境で行われるよう航空機製造者及び装備品製造者を指導すること、
(2)リチウムイオン
バッテリー試験において電気的環境が適切に模擬されるように、技術基準を見直し、必要があれば技術基準の
改正を行うこと、
(3)同型式機の型式証明時のリチウムイオンバッテリー故障率想定の見直しを行い、その結
果を踏まえて必要があればリチウムイオンバッテリーの安全性評価の見直しを行うこと、
(4)同型式の型式証
明において、セル間の熱伝播リスクが適切に評価されているか見直しを行うこと、
(5)同型式機のセルがベン
トした後に発生するコンタクターの動作が、運航に与える影響を検討し、その結果を踏まえて必要な措置を講
じること、という 5 項目を勧告。
一方、ボーイングに対して指導すべき措置として、
(1)エレメントの不均一な成形及び他の製造工程に起因
する事象との関連の可能性を踏まえ、内部ショートの発生機序について更に調査を継続すること。また、その
結果を踏まえ、更なるリチウムイオンバッテリーの品質と信頼性向上を図ると共に、温度等のリチウムイオン
バッテリーの運用条件の見直しを行うこと、
(2)設計時には想定されていないバッテリー充電ユニット(BCU)
の動作及びコンタクターの動作確認について改善を図ることを勧告していた。
★広域補強システム(WAAS)が Honeywell の GBAS の精度を向上(Aviation Daily 0622)
Honeywell は、同社の SLS-400 SmartPath 地上型衛星補強システム(GBAS)のソフトウェアのアップグレード
について、夏の終わりまでに連邦航空局(FAA)の認可を得られそうだとしている。このアップグレードによ
り、航空企業は機上装置の変更を行うことなく、着陸支援装置を用いてカテゴリーII 計器進入を行うことが
できるようになる。
この性能の向上は、GPS を用いて計算される航空機の位置の精度に大きな影響を及ぼす電離圏の変化をより正
確に予測するために、SLS-4000 に広域補強システム(WAAS)受信機を統合したことによるものである。
一般的には、高高度にあるいくつかの人工衛星からの WAAS 信号を、航空機に搭載されている GPS の基本装置
2
を補強するために使用することによって、位置推定の精度を向上させることができる。Honeywell では、WAAS
信号とともに、FAA が全米に配置した 200 を超える地上受信機のネットワークから読み出したリアルタイムの
電離圏の状況に関する情報も用いることとしている。
◇GBAS の地上局は、次の各要素で構成されている。
・正確に測定された位置に配置された 4 つの GPS 受信機
・電子機器のラック
・進入方式の経路に関する情報及び GPS の補正に関する情報を送信する VHF 送信機
地上局と航空機の距離は 23 海里ほど離れている場合があり、それぞれにおける電離圏の環境が異なること
があることから、このシステムでは現実の「気象状況」によらない最も大きい誤差を想定している。
現在、ニューアークやヒューストンで利用されている SmartPath システムは、いわゆるブロック 1 ソフトウェ
アを使用しており、想定される最大の誤差に応じて、行える計器進入はカテゴリーI に限られている。カテゴ
リーI 計器進入においては、パイロットが滑走路を視認できなくても、地表から 200ft の高度まで降下するこ
とが可能である。
Honeywell によると、WAAS アップグレードを地上局に施した場合には、機上の GBAS 着陸システム(GLS)の
機器が同一であっても、WAAS による電離圏に関する情報から精度の低下がないことが分かれば、カテゴリー
II 計器進入(滑走路を視認できなくても、地表から 100ft の高度まで降下することが可能)を行うことがで
きるようになる。
「WAAS があれば、もはや我々は嵐があると想定する必要はなく、嵐が存在する場合にだけそれに対処すれば
よい。
」Honeywell の SmartPath マーケティング・製造管理担当副部長の Jared Louwagie 氏は、述べている。
Louwagie 氏は、WAAS その他の変更を施したブロック 2 ソフトウェアについて、システムの設計承認を夏の中
頃に得られると期待しており、夏の終わりにはアップグレードのオプションを空港が利用できるようにしたい
と考えている。
Honeywell では、カテゴリーIII 計器進入に対応したシステムの開発も継続している。これによって、雲底が
100ft 未満で、滑走路視距離が 150ft 以下の状況における進入及び自動着陸が可能となる。
Honeywell は、昨年 12 月にボーイングのモーゼスレークの施設において、787 型試験機を用いて 12 回のカテ
ゴリーIII 計器進入を行っている。Louwagie 氏によると、Honeywell は、国際民間航空機関(ICAO)において
検討中の運航基準が完成した後の 2018 年に、カテゴリーIII 計器進入に対応した機能を利用できるようにし
たいと考えているとのことである。
★パイロットに失速回復の実地訓練
デルタ航空などが採用(ウオールストリートジャーナル 0622)
【ルブルジェ(フランス)
】商用ジェット機のパイロット訓練プログラムに新たな手法が導入されている。小
型プロペラ機を使って失速への対応など極端な操縦を訓練させるというものだ。
デルタ航空や南アフリカ航空などの航空会社は経験豊富な飛行教官を再び航空学校に送り出し、飛行時の期待
の異常姿勢を認識してそこから回復する方法を学ばせている。
世界の航空業界は異常姿勢からの回復訓練や失速訓練を強化する方向にあり、新たな訓練手法はその一環とし
て導入された。
★タイ航空当局の安全対策に重大懸念を表明 国際機関(CNN.co.jp 6 月 20 日)
(CNN)国連の国際民間航空機関(ICAO)は20日までに、タイの航空業界監督当局に対し安全運航の
審査体制などで重大な懸念があるとの監査結果を発表した。
ICAOは今年3月、同国に対し審査体制の不備を指摘し、90日間内の是正措置を求めていた。しかし、同
期間内に適切な対応は見られなかったとして18日に深刻な懸念を改めて突き付けた。
3月の監査結果では、タイの民間航空行政当局(DCA)の人員不足に言及、地元の航空会社の運航業務の安
全対策で問題点があると指摘していた。
ICAOは今回、タイの他、同様の懸念をアンゴラ、ボツワナ、ジブチ、エリトリア、ジョージア(旧グルジ
ア)
、ハイチ、カザフスタン、レバノン、マラウィ、ネパール、シエラレオネとウルグアイにも表明した。
ICAOの警告を受け、大手のタイ航空は最高レベルの安全対策で業務を運営しているとの声明を発表。同社
社長は懸念の対象は航空会社ではなくICAO基準の措置を有効に実行していない国家機構を示唆している
と指摘した。タイ運輸省はCNNのコメントの要請に応じていない。
航空業界問題に詳しい弁護士によると、ICAOの懸念表明を受け今後の最大の焦点は他の国がタイ向けの路
線でどう対応するかにある。ICAOの今年3月の指摘を受け、アジアの複数の国はタイへの新規路線の開設
を禁じ、保有する機材の点検強化を命じていたという。これらの国には日本、中国、韓国、シンガポール、オ
ーストラリアや欧州連合(EU)などが含まれていた。
今回の重大な懸念表明を受け、タイの航空会社が新たな規制を受ける可能性もある。
★航空エンジンに革新 GEも認めた日本の素材力(日経 0619)
3
フランスで開催中の世界最大級の航空展示会「パリ国際航空ショー」
。目を引いたのが、機体やエンジンに使
われる部品の素材革命だ。エンジン向け繊維複合材では、日本勢が一度は埋もれかけた技術を生かし米ゼネラ
ル・エレクトリック(GE)を動かした。日本の素材力は世界の航空機産業の隠れた主役だ。
◇パリの航空展示会で注目
「これまでにない価値を持つ材料。耐熱合金の世界を一気にたたき壊すかもしれないほどのインパクトだ」。
航空機エンジン世界最大手、GEアビエーションの商談施設。同社の次世代エンジンの総責任者、ウィリアム・
ミルハム・ゼネラルマネジャーが力説した。
その材料とはエンジン向けのセラミックの繊維複合材「CMC」
。炭化ケイ素(SiC)でできた繊維をセラ
ミックとして焼き固めたものだ。
SiC繊維の特徴は、従来エンジン部品に使われていたニッケル合金に比べ重さが3分の1、耐熱温度が 20%
アップ、強度が2倍と3拍子そろっている点にある。ミルハム氏は「強みは高圧タービンで大いに発揮される」
と語る。なぜか。
高圧タービンには 1000 度を超える高温の燃焼ガスが送り込まれる。従来のニッケル合金だと外から取り込ん
だ空気で冷やす必要があったが、SiC繊維製のCMCだと最高 2000 度まで耐えられるため冷却空気が不要
となる。
「使わない空気は推力として有効活用されるため燃焼改善につながる」(ミルハム氏)のだ。しかも軽量であ
れば一段の燃費向上も見込める。
◇日本カーボン、GE動かす
このSiC繊維を手掛けられるのは世界で日本カーボンと宇部興産の2社しかない。GEが選んだのは日本カ
ーボンだ。仏エンジン大手サフランと三顧の礼を持って日本カーボンを迎え入れ、3社合弁でNGSアドバン
ストファイバー(富山市)を設立。同社はSiC繊維を量産するため約 60 億円を投じ新工場の着工も決めた。
CMCが入ったエンジン「LEAP」は他の新技術の貢献もあり燃費を 15%以上削減。今年中に運航を始め
る欧州エアバスの次期小型機と、2017 年に初飛行を迎える米ボーイングの次期小型機の両方への搭載が決ま
っている。
現在CMCの適用部品は1つにすぎないが、
「
(燃焼ガスが流れる)燃焼器ライナーや円筒部品などにも展開し
ていく」ことを明らかにした。特殊機械を使って繊維を縦横に通しながら3次元の部品に加工するGE独自の
ノウハウで実現する。すでにエンジン 70 機分の量産に入っているという。
「SiC繊維は 30 年以上赤字で、半分お蔵入りの事業だった」。NGSの武田道夫社長は振り返る。日本カー
ボン出身の武田社長は入社以来 17 年間、SiC繊維の研究開発に携わったが、用途はスポーツ用品などに限
られ鳴かず飛ばず。だがここに来てGEからプロジェクトが舞い込むや「ミスターSiC繊維」として白羽の
矢が立った。
◇注:日本生まれの新素材を採用、次世代航空機エンジン「LEAP」
(2014.08.14)
GE アビエーションは、最新鋭の航空機エンジンのための組立工場を建設、その名は『LEAP』
、
「Leading Edge
Aviation Propulsion(最先端の航空推進技術)」の頭文字。革命的な技術が詰め込まれています。
そのひとつは、セラミックマトリックス複合材料(CMC)をはじめとする次世代素材。重さは金属材料の 3 分
の 1 と軽量でありながら、耐熱温度は金属材料より 20%も高く、多くの合金が溶解し始めるほどの高温でも使
用することができます。
「軽量化による相乗効果は 3 倍をはるかに上回る。すべて軽量化され、ニッケル合金のタービンディスクも、
従来のようにガッシリした作りでなくて良いわけです。遠心力が弱まるのでベアリングや他の部品もスリム化
することができる」と GE アビエーション 製造責任者のマイケル・カウフマン氏。
ここに採用しているのが、日本カーボンが開発した炭化ケイ素連続繊維。耐熱性と耐久性に優れ、かつ軽量な
「ハイニカロン」です。
「炭素繊維」と似ているようですが、炭素は高温環境では使えません。一方、炭化ケイ素は、高い耐熱性を有
します。この特徴を利用してセラミックスを炭化ケイ素繊維で強化することで、高温になる航空機エンジンで
の使用が可能になったのです。
この新素材はエンジンを何百ポンドも軽量化し、エンジン効率を大幅向上してくれます。
「航空機エンジンの軽量化や耐熱性強化、より簡易に冷却することができる素材、素材技術によってエンジン
や航空機の運転効率が高まり、低コストでの運用が可能になる」
LEAP エンジンを搭載した航空機が就航するのは 2016 年。このエンジンは GE アビエーションのベストセラー
となっており、20 カ国から得られた確定受注はすでに 6000 基を超えています(2014 年 7 月現在)。
※LEAP エンジンは、GE と仏スネクマ社(サフラン・グループ)が 50%出資した合弁会社、CFM インターナショ
ナルが開発。
LEAP エンジンには、特殊合金を用いて 3D プリンターで製造した 19 個の燃料ノズルや炭素繊維複合材ブレー
ド、CMC 製部品が使われています。
3D プリンターで製造されたノズルの耐久性は従来モデルの 5 倍、よりシンプルな設計が可能になり、ろう付
けや溶接の回数は 25 回からわずか 5 回に減りました。
4
こうしたブレイクスルーは、GE がジェット推進技術の研究開発に注ぐ年間 10 億ドルに及ぶ投資の成果です。
★日航、手荷物検査の待ち時間をスマホで「見える化」
(時事通信 2015/6/19)
日本航空は 19 日、羽田空港発の同社国内線の乗客が搭乗前の手荷物点検を受ける「保安検査場」の待ち時間
をスマートフォン上で確認できるサービスを 7 月 1 日から提供すると発表した。空いている検査場を選んで待
ち時間を短縮、ストレスを軽減してもらうのが狙い。
★ボーイング、777X など開発は「計画通り順調」
787-10、737MAX 派生型含む全 7 つの開発プログラムで(ウイングデイリー0617)
777X の特徴の一つでもある主翼端の折り畳み機構については、
「オプション仕様ではなく、標準装備」とする
考えを示したほか、胴体の素材は既存の 777 型機と同様にアルミ合金を適用することに改めて言及。ボーイン
グは 777 型機などを通じて、胴体設計に深い知見を有していることから、窓を現行 777 型機よりも少し大きく
することができることを説明しており、
「客室内湿度は 787 型機と同程度にする」ことが可能であることにも
触れた。
★2023 年には航空機へ搭載 米空軍が進めるレーザー兵器開発 その有用性は(乗りものニュース 6 月 13
日)
◇撃った瞬間に必ず命中する兵器
「戦闘機に搭載された赤外線レーザー兵器によって敵を破壊、撃墜」
新作 SF アニメのプロットではありません。アメリカ空軍指向性エネルギー兵器局が、2023 年には航空機に空
中発射型固体赤外線レーザーを搭載する計画であることが 2015 年 5 月、明らかになりました。まず C-17「グ
ローブマスターIII」輸送機をプラットフォームとして試験を行い、将来的にはより小型の戦闘機へ搭載する
ことが見込まれています。
戦闘機を使った試験については、F-15「イーグル」にレーザーポッドを外部搭載することが考えられているほ
か、F-35B「ライトニング II」で、その胴体内に有する垂直離着陸用のリフトファンを発電機、およびレーザ
ー発振器に置き換える案が検討されています。
レーザー兵器の推定出力は 100~150 キロワット。強い指向性をもった赤外線を空中ないし地上の目標に数秒
間照射することによって、熱に弱い部分を焼損させ、破壊します。
こうした強い電磁波を利用し対象を破壊するシステムを「指向性エネルギー兵器(DEW)」と呼称します。指向
性エネルギー兵器は空間を光速で伝播、すなわち秒速 30 万 km にも達するため「撃った瞬間に必ず命中する」
という優れた特性を有します。
指向性エネルギー兵器には赤外線レーザーのほかにもうひとつ、
「ハイパワーマイクロ波」があります。この
ハイパワーマイクロ波はレーダーなどのセンサー部から攻撃対象に浸透し、電子回路を破壊するものです。
その原理は、電子レンジにうっかりアルミホイルを入れてしまい火花を散らす失敗と全く同じ。金属部が強力
なマイクロ波の照射を受けると非常に高い電圧が生じ、IC や基盤を焼き切ります。
ハイパワーマイクロ波はすでに実用化されているか、ないし実用化目前であるとみられ、F-22「ラプター」、
F/A-18E/F「スーパーホーネット」などの「AESA レーダー」は超高出力のマイクロ波を発振可能であるともい
われます。詳細は不明ですが推定出力数百メガワット~ギガワットで、1 兆分の 1 秒という極めて短いパルス
を照射。瞬間的に対象を破壊します。
◇レーザー兵器が実用化されても主力はミサイルのまま?
指向性エネルギー兵器はまるで夢のような兵器に思えるかもしれませんが、残念ながら万能ではありません。
射程距離は極めて短く、ハイパワーマイクロ波はせいぜい 1km、100 キロワットクラスの赤外線レーザーも数
km 程度ではないかとみられています。現代の空対空ミサイルは 100km 先の航空機を撃墜可能なものもありま
すから、戦闘機にとっての主要な兵装はミサイルであり続けるでしょう。
この指向性エネルギー兵器は、むしろ接近するミサイルへの防御に使えます。赤外線誘導型のミサイルならば、
赤外線レーザーを使えばその誘導装置を破壊、ないし狂わす程度は容易にできるはずです。対象を焼損させる
ほどの出力はありませんが、赤外線レーザーを使ったミサイル妨害装置はすでに実用化されています。同様に
ハイパワーマイクロ波は、レーダー誘導型のミサイルの電子機器を破壊するのに最適です。
現代の空対空ミサイルは非常に高性能であり、撃たれた側はほぼ撃墜されます。しかし将来、指向性エネルギ
ー兵器を使ったミサイル防御が当たり前になると、そうしたミサイルの優位性は減じられるかもしれません。
なおアメリカは 2009 年、ボーイング 747 に超大型の酸素ヨウ素化学レーザー(COIL)を搭載した試験機 YAL-1
「エアボーン・レーザー」によって、弾道ミサイル迎撃実験を成功裏に行っています。COIL はメガワットク
ラスの超高出力赤外線レーザーで、数百 km の射程を有しました。
この「空中戦艦」とも形容される恐るべき YAL-1。空対空戦闘を想定した研究も行われましたが、残念ながら
予算などの問題によって実用化されることはありませんでした。
5
★英格安航空イージージェット、機体検査はドローンで(ロイター0612)
英格安航空イージージェットは、機体検査にドローンの使用を試みています。ドローンを使えば、これまで数
日かかっていた検査が数時間で済むといいます。
★新型滑走路上異物検出システム、今年度に成田で実証へ
電子航法研が開発中の光ファイバ接続型ミリ波レーダーで(ウイングデイリー0608)
電子航法研究所は現在、航空機の安全運航を脅かす問題を解決すべく、仙台空港において自動で滑走路表面
上の異物を検知することが可能な光ファイバ接続型ミリ波レーダによる異物探知技術を研究開発中だ。これま
でに試作したシステムを用いて、仙台空港で滑走路表面上の異物を探知することにも成功済み。今年度は実用
化に向けて、成田空港で実証実験を行うことを計画している。
時に重大な航空事故を引き起こしかねないのが、滑走路表面上に散らばった異物だ。2000 年 7 月には仏パ
リのシャルル・ド・ゴール空港を離陸した超音速旅客機コンコルドが、米ニューヨークへ向けて飛び立とうと
した際、滑走路上に落ちていた金属片を離陸滑走中に跳ね上げてタイヤがバースト、燃料タンクを損傷し、飛
び散った火花が燃料に引火して炎上、乗客乗員 109 名と墜落地点のホテルに居た 4 名の計 113 名が死亡する大
事故となった。この事故をきっかけに世界的に滑走路上に散らばる異物を早期に検出するシステムの開発が加
速し、英国やシンガポール、イスラエル製等の機器が登場。現在、EUROCAE が最低性能基準を定めるべく作業
を行っており、早ければ 7 月末には決まる見通しにあるという。
滑走路上の異物は、こうした危険な事故の要因になるだけでない。バードストライクが発生した時などに行
われる異物安全点検による滑走路閉鎖時間は、航空機の定時性等にも大きな影響を及ぼす。滑走路の定時点検
は通常 2 回行われているほか、バード・ストライク等が発生した場合には、臨時点検も行われており、年間
100 回以上に達するという。
そうしたなか電子航法研究所が開発中の光ファイバ接続型ミリ波レーダシステムは、天候の影響を受けにく
く、小型かつ高分解能特性を実現するミリ波レーダ技術と、Radio-Over-Fiber(ROF)技術を組み合わせるも
の。中央装置と滑走路面に設置した複数の路面装置の間を光ファイバと光切替装置で繋ぎ、中央装置で生成し
たミリ波帯送信レーダ信号を、ROF 技術を用いて電気信号を光信号に変換して路面装置に配信する。中央装置
を一括化することで低コスト化するほか、異物検出時間を短時間化することなども目指す。
米連邦航空局(FAA)では、空港面における異物探知性能として直径 1 インチ×1 インチの円筒状の金属物
体を 60 メートル離れたところでも探知可能な最低性能として求められている。電子航法研究所によれば、こ
うした非常に小さな異物を探知するためには、自動車に用いられている衝突防止用ミリ波レーダ等に比べて高
感度であることが求められるほか、詳細な情報を取得するために高分解能であることも同時に求められるとい
う。
電子航法研究所では、3 センチ程度の異物を検出することが可能な探知性能のほか、24 時間 365 日あらゆる天
候で探知可能なシステムを開発することを目指している。
電子航法研究所では、仙台空港に試作した光ファイバ接続型ミリ波レーダシステムを設置し、実験局免許を
取得した後に仙台空港で滑走路上の反射器を探知する試験を実施。レーダ受信信号処理回路では、高速 FPGA
回路を活用することで最大毎秒 2 回のリアルタイム PPI スコープ描画が可能であることが確認された。さらに、
しきい値判定演算処理を実装するなどして、異物となる対象物をより明確に判断することを可能にすることな
どにも成功した。
★FAA 空港の安全向上のための新しい取組みを開始(Aviation Daily 0605)
滑走路における安全を向上させるための 15 年間の取組みを終えようとしている連邦航空局(FAA)は、問題の
ある箇所に焦点を当てて滑走路への誤進入を減少させる、空港の安全に関する新しい取組みを正式に開始し
た。
滑走路誤進入削減プログラム(RIM プログラム)は、FAA の解析によって最も高いリスクがあると認められた
空港内の特定の場所を対象としている。FAA は、
「具体的な空港内の場所を、滑走路誤進入を引き起こす恐れ
のあるリスクの要素とともに特定するために」データを集め、調査してきた。次のステップは、そのリスクを
軽減するための戦略を練り、対処するための計画を立てることである。FAA は、述べている。
FAA は、今年の初めに、このプログラムのいくつかの項目について記載した書面を、国際民間航空機関(ICAO)
に提出している。
FAA は、
「誘導路の形状」が主要な焦点になるだろうと述べている。リスクを軽減するための措置は 2016 年に
開始され、およそ 15 年かけて行われると見込まれている。
★米空港の保安検査、禁止品目の95%を見逃し(CNN.co.jp 6 月 2 日)
ワシントン(CNN) 米国土安全保障省が米国内数十カ所の空港で実施した覆面調査で、保安検査を担う米
運輸保安庁(TSA)の職員が95%の確率で武器や爆弾を発見できていない実態が判明した。
当局者によると、同省監察室の調査官が乗客を装うなどして禁止品目を持ち込めるかどうか試した。その結果、
6
70回のうち67回は保安検査を通過できてしまったという。
同省はこの夏をめどに今回の調査に関する報告書をまとめる予定。広報はこの調査結果について、
「決して良
い数字とは言えないが、空の安全を継続的に進化させるための要素として欠かせない」とコメント。ジョンソ
ン長官はTSAに対し、今回の調査で明らかになった問題を是正するための対策を指示しており、現在一部の
対策が講じられていると説明した。
さらに、空の安全は何重もの対策に守られていると強調し、例として乗客名簿と監視対象者リストとの照合、
保安検査、探知犬を使った無作為の検査、操縦室のドアの安全対策強化、航空警察官、操縦士の武装、公衆に
よる監視などを挙げている。
一方、米下院監視・政府改革委員会のジェイソン・チャフェッツ委員長は、
「TSAは6年以上にわたって膨
大な予算を費やしてきたにもかかわらず、その成果がほとんど表れていない」と批判、禁止品目を発見できな
い確率は2007年よりも高くなっていると指摘した。
★ANA、機体整備会社
MROJapan 17 年度県内で事業(沖縄タイムス 6 月 2 日)
ANAホールディングス(ANAHD、東京都港区、片野坂真哉社長)が1日、那覇市内に航空機整備の専門
会社「MROJapan」を設立した。同日、片野坂社長が本社で会見し、発表した。
同社は那覇空港を拠点に航空機整備事業を計画。9月から伊丹空港で事業を始め、県が那覇空港内で整備する
航空機整備施設の完成後、拠点を移し、2017年度下期に沖縄で事業を始める予定。
資本金1千万円をANAHDが100%出資して事業を始め、沖縄で事業が始まる際、資本金を10億円に増
やし、ANAHD45%、ジャムコ25%、三菱重工20%、沖縄振興開発金融公庫、琉球銀行、沖縄銀行、
沖縄海邦銀行、沖縄電力が各2%を出資する予定だ。
事業内容はMRJ(三菱リージョナルジェット)を含むリージョナル機や小中型機の整備・重整備、機体のペ
イント作業。沖縄の事業開始時で約200人、最終的に約300人の雇用を見込む。
片野坂社長は「着実に成長を遂げている沖縄貨物ハブと合わせてMROJapanを通じ、沖縄の地域振興、
雇用の創出に貢献していきたい」と話した。
県の施設整備事業は空港内の建設予定地の一部になる自衛隊施設の移転補償交渉が難航し、14年11月から
中断中。着工に向けて県と関係機関が調整を進めている。
注:ジャムコ
昭和 30 年 伊藤忠航空整備株式会社設立
昭和 63 年 株式会社ジャムコに商号変更
主な株主 伊藤忠商事 ANA ホールディングス 昭和飛行機工業
★インドの有資格パイロット、飛行時間 35 分-求人増で質に懸念(Bloomberg 2015/6/2)
アヌパム・ベルマさんは航空機を 360 時間操縦したことを示す証明書を持っている。ベルマさんはそれを、副
操縦士席にわずか 35 分間座って手に入れたと語る。
裁判所文書とパイロットや規制当局、業界アナリストとのインタビューに基づけば、インドにはベルマさんの
ように飛行時間と訓練について水増しされた証明書を入手したパイロットが数十人いるという。貧しい農家の
息子であるベルマさんは、商用ジェット機の運航を学ぶためインド政府から補助金 280 万ルピー(約 550 万円)
の支給を受けた。
「飛行中に緊急事態に遭遇したらどうなるのだろう。乗客が死んでしまうだけでなく村に墜落すれば犠牲者は
さらに増えるかもしれない」
。ベルマさん(25)はインタビューでそう語る。
故意の行為か訓練不足の結果と考えられる航空機事故が相次いだことを受け、航空の安全性についてはここ数
年、航空機の信頼性によるものかパイロットの信頼性によるものか見方が分かれてきた。今年3月にはドイツ
の格安航空ジャーマンウイングスのアンドレアス・ルビッツ副操縦士が機長を操縦室から締め出し、機体を山
に墜落させたとみられている。
インドでは格安航空会社の就航増加でパイロットが新たに数百人必要となったことから、パイロットの質につ
いての懸念がここ 10 年間、高まっている。警察当局が、昇進または証明書取得のため偽造文書を利用した疑
いで少なくとも 18 人を捜査する中、インド政府は 2011 年に国内のパイロット 4000 人余り全員の航空機免許
を調査した。政府の調査結果は公表されていない。
元商用機パイロットでチェンナイを拠点とする航空安全コンサルタント、モハン・ランガナサン氏によれば、
11 年の調査では国内の大半の飛行クラブで違反が見つかった。インド民間航空局のM・サティヤバティー局
長は今年4月 24 日、偽の証明書が引き続き利用されている現状についての質問に対し、同局が新たに監査を
実施し「全ての航空学校について再認証」を義務付ける可能性があると述べた。
★ロシア旅客機が北京市中心部上空を低空飛行=データ入力ミスが原因―中国(Record China 5 月 31 日)
2015 年 5 月 30 日、北京青年報は記事「北京市中心部上空にロシア旅客機が侵入、ロシア側はデータのミスと
説明」を掲載した。
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28 日未明、ロシア・トランスアエロ航空 UN8888 便が北京首都国際空港を離陸した後、規定の航路を飛ばずに
北京市中心部上空を低空で飛行した。地下鉄国貿駅周囲などでごう音に驚いた市民が目を覚ます事態となった。
空港管制の指示を受け、同機はまもなく正しい航路へと復帰した。
トランスアエロ航空は 29 日、初期調査で航空機に搭載されていたデータにミスがあったことが明らかになっ
たと発表した。ただしどの段階で間違ったデータが入力されたのかは明らかになっていない。また UN8888 便
は規定の航路を外れたが、飛行禁止区域には侵入していないとも発表している。
★パイロットの重量入力ミス、エールフランスが安全性調査受ける(ロイター0529)
[パリ 29日 ロイター]仏蘭系航空大手エールフランス・KLMが仏航空事故調査局(BEA)から今月
2回目となる調査を受ける事態に直面している。
今回の調査は、パリ郊外のシャルル・ドゴール空港で5月22日、滑走路での加速が不十分だったため、パイ
ロットがボーイング777型貨物機のコンピューターに誤った離陸重量を入力したことに気付いた問題をめ
ぐるもの。
事情に詳しい関係者によると、このメキシコ行の貨物機のシステムに入力された重量データは正しい重量より
最大100トン少なく、これは最大離陸重量の4分の1以上を占めるという。
これを補うためパイロットらは最初の設定を無効にして航空機の2つのエンジンのスロットルを最大限まで
引き上げて、機体の後部が地面を擦るのを避けた。
ロイターの問い合わせに対しエールフランスはこの事態の発生を認め、乗員は最初の目的地に到着後、この間
違いを報告し飛行任務から外されたと述べた。
エールフランス広報は電子メールの声明で「航空機の加速が遅すぎると認識したため乗員はただちに反応して、
全出力で加速した。機体は通常通り離陸した」と説明した。
BEA広報は、エールフランスの社内調査とは別に、調査を開始したことを認めた。
エールフランスに対しては、同社の旅客機が5月2日にアフリカ中部の活火山、カメルーン山にあわや衝突と
いう事態が発生したことを受け、BEAが調査を開始している。
★FAA 空港施設の「壊れやすさ」に関するガイドライン策定に向け衝突試験を実施(Aviation Daily 0528)
連邦航空局(FAA)は、滑走路付近の着陸支援装置及び灯火の支柱の「壊れやすさ(frangibility)
」を評
価する標準的な試験手順の構築に向け、代表的な航空機の主翼や脚による地上衝突試験を行っている。
構造物が壊れやすい(frangible)とは、衝突時に折れたりバラバラに壊れたりすることを指し、そのまま
の位置で変形するのよりも、衝撃を和らげることができる。
FAA では、滑走路安全エリア(滑走路の両サイドから 250 フィートの範囲及び両端から 1,000 フィートの範
囲)に設置される全ての構造物について、航空機が接触した際に地上 3 インチのところで破断する構造である
ことを求めている。
今年 4 月末、FAA の委託業者が、英国内の施設において、ウィンチでケーブルを巻き取ることによって時速 87
マイルで走行する重量 6,600 ポンドの衝突用車両を用いて、壊れやすい進入灯システム(ALS)の支柱につい
てのフルスケールの衝突試験を行った。ALS の支柱は、滑走路中心線上の滑走路端手前に設置されている。
この衝突試験では、FAA 認可を受けた複合材製の高さ 20 フィートの ALS の支柱に衝撃を与えるため、双発レ
シプロ機のパイパー・ナボナ機の主翼を模擬した「ソフトインパクター」と「硬いインパクター」が衝突車両
に装備された。荷重は、衝突車両に装備された 3 軸のロードセルを用いて計測された。
この委託業者は、今年 6 月にも、滑走路の接地帯外側の左又は右に設置されているグライドスロープアンテナ
(計器着陸装置の一部である垂直方向の誘導支援装置)について、航空機の脚が衝突した際の壊れやすさに関
する特性を評価するための衝突試験を予定している。
この衝突試験では、グライドスロープアンテナの構造物は、一定の負荷によって切断し、分離するヒューズボ
ルトで台座に固定されており、ナバホ機の前脚を時速 31 マイルのスピードで衝突させる。
この衝突試験は、1975 年にジョン・F・ケネディ空港でボーイング 727 型機が壊れにくい ALS の支柱に衝突
し、搭乗者 124 名のうち 113 名が死亡した事故で注目を集めた長年の安全問題の解決に、役立つものとなるは
ずである。また、その翌年、デンバー・ステープルトン空港で発生した DC-9 型機が離陸時に 2 本の ALS 支柱
に衝突した事故でも 14 名が負傷しており、国家運輸安全委員会(NTSB)が、FAA に対して、空港における全
ての壊れにくい ALS 支柱を壊れやすいものに交換するよう勧告していた。
★操縦不能の状況を防止するため、EASA(欧州航空安全庁)と IATA(国際航空運送協会)、航空会社の操
縦士に対する新訓練要件を発表(欧州コンサル 0521)
2009 年に生じた Air France 447 便の航空事故以来、取締諸機関は、旅客機の安全と通信を改善する方法を
議論してきている。この事故では、リオデジャネイロ=パリ間を運航中の Air France のジェット機が、2009
年 7 月の雷雨の間に、センサーの機能不全と操縦士のエラーにより、航空機の失速のために大西洋に墜落し、
機内の 228 名全員が死亡した。
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この事件に関する最終報告書では、乗務員訓練と、乗務員と半自動化されたフライト制御システム間の接点の
性質について、多くの根本的な疑問が投げられ、答えのないままになっている。フライ・バイ・ワイヤの A330
機にはほとんどの場合、飛行機の失速を防止する技術が用いられている。対気速度情報が完全に喪失している
間、システムは手動制御に戻る。報告書では、操縦士らの行動から、彼らは失速状態とは反対にあると信じて
いたことが示されると主張されている。
墜落の結果、諸当局は数々の変更と勧告を発表した。これには、追加的な対気速度訓練、乗務員指示の改善、
対気速度計の保守点検間隔の短縮のための要件も含まれている。フランスの事故安全調査当局 BEA(民間航空
の安全のための調査分析局)も、高空での失速状態の接近と回復に関する訓練を諸当局が規定するよう勧告
し、操縦室に迎角インジケータを加える可能性を諸当局が検討するよう提案した。
2015 年 5 月 4 日、民間航空において最高の安全環境保護共通基準を促進・実現することを目指す欧州航空安
全庁(EASA)と国際航空運送協会(IATA)は、操縦不能の状態を防止するために、航空会社の操縦士に対する
新たな訓練要件を公表すると発表した。目的は、操縦不能による事故リスクを削減することである。国際民間
航空機関(ICAO)も、航空機異常姿勢防止回復訓練マニュアルを開発している(DOC 100011)
。これは、
航空機やフライトシミュレーターのメーカー、操縦士組合、航空会社、訓練機関、事故調査局の多くの専門家
グループからの情報提供により開発された。
異常姿勢防止回復訓練の要件は、失速につながる可能性のある予期しない出来事に操縦士が立ち向かうため
の、訓練強化を目指している。EASA の、航空会社の操縦士に対する新たな訓練要件は、操縦不能の状態を防
止するために昨年 ICAO が作成した自主的なガイドラインに基づいている。欧州の全航空会社と商用ビジネス
ジェットの運航事業者は、2016 年 5 月までにこれらの規定を実施するよう求められる。新ルールには、失速
回復に関する訓練、飛行機の機首が低すぎるか高すぎる状況への対処が含まれ、落雷など環境上の危険や熱帯
収束帯(ITCZ)の乱流に関するより多くの訓練も含まれている。新訓練では、予期しない問題が発生する際に
操縦士が経験する可能性のある「驚き」の影響と、空間での方向感覚喪失など他の問題への対処方法も扱われ
るはずである。
EASA の Patrick Ky 専務理事は、近年の多数の事故により、操縦不能が、依然として航空安全の主要懸念分
野であり、最も優先的に扱うべきであることが示されていると述べた。「操縦不能」LOC-I に陥ることは稀で
あるとはいえ、2001~2011 年に、操縦不能(LOC-I)発生による飛行機事故は、商用航空における死亡の第
一原因であった。
過去 5 年間にわたる LOC-I による事故の 97%は、旅客や乗務員の死亡を伴うものであった。欧州の操縦士諸組
合は、訓練基準を改善し、特に基本的な飛行技術に重点を置くよう、圧力をかけ続けていた。操縦室の自動化
が進み、経費による圧力のために、これが軽視されて来ていると多くが感じている。欧州の 37 カ国の 38,000
名を超える操縦士を代表する欧州操縦士協会は、操縦士訓練は過去 10 年間に、EU 規制機関によっても航空会
社によっても、漸次簡素化されて来ていたと述べた。このため、EASA のイニシアティブは非常に歓迎されて
いる。
IATA 事務総長兼最高経営責任者の Tony Tyler 氏は、世界的な基準とベストプラクティスに基づくこの重要
なイニシアティブに関して EASA のパートナーとなることにより、今後このような LOC-I の発生率が低減する
だろうと述べた。IATA は、欧州加盟各国による同規定の実施を支援することにおいて、その操縦士訓練特別
委員会を通じて、詳細なガイダンス内容を作成中であるという。
★欧州コックピット協会が“Pay to Fly”コンセプトの禁止を要求(欧州コンサル 0519)
欧州の航空市場の自由化によって,格安航空会社(LCC)という新しいビジネスモデルが出現し、航空会社、
パイロットおよび乗務員の間で行われる雇用関係に、多様な慣行を生じさせる傾向をもたらしている。航空業
界における様々な変化によって、個々の乗客のチケット価格と利便性に効用がもたらされた一方で、非定型的
な雇用慣行が生まれている。非定型的な雇用慣行とは終身雇用契約以外の全ての形式の雇用慣行を意味する。
こうした非定型的雇用契約が航空業界のなかでますます広まっている。欧州委員会の資金援助を受けたゲント
大学(University of Ghent)の研究者グループによる「航空業界における非定型的雇用。最終報告」
(2015 年)と題する調査によれば、非定型的雇用契約の数が劇的に増加しているという。6,600 人のパイロッ
トを対象としたこの調査によれば、欧州においては 6 人につき 1 人以上のパイロットが「非定型的雇用契約」
の下で働いているという。
この調査によって、自営業パイロットの 70%が LCCs 航空会社で働いていることが判明した。これらのパイロ
ットは人材派遣会社を通じて働いているか、自営業か、或はゼロ時間契約即ち、飛行時間のみに対して報酬を
受け、最低支払額の保証がない契約で働いている。こうした雇用慣行に依存する LCC に対して不公正な競争上
の優位性を創出することにより、航空市場の競争がゆがめられているとこの調査は結論づけている。
こうしたコスト削減が最も著しく行われているは Norwegian Air Shuttle とアイルランドの Ryanair であった。
さらに、人材派遣会社の増大によって、パイロットの地位はますます「不安定な」ものとなっていると付言し
ている。また、この調査によれば、2009 年以降に Ryanair はパイロットと乗務員に夏季には最大限の飛行と
就労を行わせ、冬季には彼らを解雇することによって、冬季の閑散期に発生する損失を埋めわせてきたとのこ
9
とである。
Ryanair は、パイロットが他の国における、より苛酷な労働規則の下で働いている期間でも、アイルランドの
契約で雇用しているとの非難を受けている。アイルランドの契約を利用していることは、デンマークの労働組
合およびベルギーの航空輸送協会からも告訴を受けている。
上記に加えて非定型的な労働慣行は、航空業界の安全優先のカルチャーとは両立し難いものと考えられてい
る。状況によって変わる不安定な雇用形態のために生ずる「依存性」のために、他の如何なる考慮に優先し
て、中立的でプロフェッショナルな安全性に関する判断を選択するパイロットの法的義務と、雇用主の商業的
利益とが対立する状況が発生するおそれがある。
若年のパイロットは、彼らの訓練費用を負担するための負債の大きさのために、特に弱い、脆弱な立場に置か
れている。研究者グループの調査によれば、若年のパイロットが置かれている条件は最悪であり、30 才以下
のパイロットの 40%は自営業か、ゼロ時間契約か、あるいは人材派遣会社を通じて働いているとのことである。
加えて、若年のパイロットは、自分の飛行経験等を修得するために、飛行時間を「買う」ことを強いられる、
“Pay-to-Fly”(P2F)の契約の下で働いている。ゲント大学の研究グループは、P2F の雇用条件が最も行き過
ぎた、搾取の激しい雇用慣行であり、それは禁止されるべきであると勧告している。
こうした慣行は「自費で行うライン・トレーニング」(定期訓練)とも呼ばれるが、新しく訓練を受けるパイ
ロットが飛行経験を修得するために、飛行時間のパッケージを買うことを強いるものである。このような飛行
時間は通常「タイプ・トレーニング」
(機種別訓練)と呼ばれるものの一部であり、パイロット各自の職歴の
一部となる。パイロットは特定の機種の航空機を操縦する前に、パイロット免許に加えて、タイプ・トレーニ
ングと呼ばれる特定の資格を修得する必要がある。タイプ・トレーニングは 3 つの主要な段階があり、地上訓
練、シミュレータ訓練そして「ライン・トレーニング」がある。
最初の 2 つの段階では、訓練生パイロットはまだ「十分な能力がない」と見なされて、これらの段階はパイ
ロットが各社の特定機種別の資格を得るために、会社が行う必要となる、避ける事のできない投資期間とな
る。この投資資金は順々にパイロット個人に転嫁され、航空会社の費用からは消失していき、それが“Pay
to Fly2”モデルの最初のステップとなる。
ゲント大学の調査によれば緊急措置が必要であるという。航空業界が海運業界における「便宣置籍旗国」のモ
デルを模して、航空機搭乗員を EU 域外から雇用し、EU の航空機を操縦させ、飛行させるリスクを冒す方向に
向っている。こうした展開によって、公正な競争と労働者の権利が損なわれ、安全性の監視を有効に行うこと
が困難となり、現行の法的枠組は明らかに無力化する。このために、これらの研究者グループが勧告する最初
の政策は、本拠地の原則を強化するために、社会保障制度に係る調整に関する規則 987/2009 を修正すること
である。欧州レベルの職業年金基金の創設と、EU 加盟国の間の信頼性と管理を向上させるために、社会保障
制度を改善することが推奨される。
また、研究者グループは航空機の運航を行う航空機乗務員の派遣サービス業務や一時雇用契約に係る、技術的
規則と労働規則を設定して、制限を課し、恒常的に監視し、監督することを勧告している。また、一時的な労
力負荷に対応するために、民間航空業界が下請会社を使うことも制限されるべきであり、会社の責任事項と乗
務員の管理を改善すべきである。
研究者グループは税制、労働規則および社会保障制度等を使って、適切な報告のメカニズムを確立し、法的お
よび経済的な側面からの内部通報者の保護の改善も推奨している。航空乗務員の社会的状況、就労上および安
全性などの状況を有効に監督することのできる、グローバルあるいは欧州レベルの監督制度を構築すべきであ
る。彼らは Pay-to-Fly 方式を欧州レベルそして/又は全世界的なレベルで禁止することを勧告している。
また、航空乗務員の訓練制度と、その資金調達方法を改善すべきである。最後に、航空業界における便宜置籍
旗国慣行の定着を防止するための計画を策定すべきである。
欧州委員会は Norwegian Air International に対する米国の航空当局による完全運航認可の遅延の際に
は、オープンスカイ協定に基づき活発な活動を行ったが、その際には、その NAI のビジネスモデルも欧州議会
の議員によって議論の対象とされた。欧州の民間航空対話委員会は欧州議会の運輸及び観光委員会(TRAN)
に、この事案についての協議を申し入れた。最終的に、欧州委員会は NAI および他の航空会社のビジネスモデ
ルを調査する意向を表明した。
欧州コックピット協会(ECA)の Dirk Polloczek 会長によれば、航空会社が自営業或は擬装自営業のパイロッ
ト、派遣会社との一時的雇用契約のパイロット、或はゼロ時間契約のパイロットなどを雇用して、より安価な
労働力を得るビジネスモデルを常に作り変えているとのことである。しかし,Polloczek 氏によれば、
“Pay to
Fly”(P2F)方式は全く異なる次元に達した、許せない慣行であるという。何故ならば若年のパイロットの雇用
が、現在では航空会社による自社の社員に対する投資ではなく、単なる収益発生用員として考えられるからで
ある。
さらに、ECA の Philip von Schöppenthau 事務局長によれば、P2F はパイロットが如何なる代償を払っても飛
行を行うイセンティブとなっているという。というのは、パイロットは、たとえ気分が悪くても、あるいは疲
れていても、飛行を拒否することがないからである。しかし実際に、他の全てのパイロットと同じく、若年の
パイロットは、安全に関する決定を選択するにあたり、金銭上や職歴上の因果関係を心配せずに自己の職務に
10
集中し、安全を優先させなければならない。この意味において、P2F 方式は安全に対するリスクとなる。
2015 年 4 月 24 日の声明において、ECA は“Pay to Fly”方式に懸念を表明し、断固としてそれを拒否する言
明を行った。ECA の考え方によれば、ライン・トレーニング中のパイロットは、収益を生むフライトによる商
業的運航を行うために、支払いを強制されるべきではない。ECA の見解によれば、パイロットはトレーニング
に対して不釣り合いなコスト負担を負うべきではない。航空会社は地上訓練、シミュレータ訓練およびライ
ン・トレーニングに対して、一般的な規則として,自社で資金負担をすべきである。
パイロットは最初のタイプ・レーティングに対しても、あるいは異なる機種の航空機に関する資格を得るため
にも(タイプ・レーティング訓練)支払いを強いられるべきではない。パイロットに新しい航空機の機種の訓
練を行うことは、航空会社が自社の飛行用員に対して、異なる機種の最適な使用機会を与えるための投資なの
である。このため、それに係るコストを全部負担すべきは航空会社なのである。訓練を供与する航空会社は、
パイロットが合理的で公正な「絆」によって長年にわたり会社に勤務することに合意することを求めることに
よって、その「投資収益」を回収すべきである。こうした雇用契約によって、従業員は、もし合理的な期間の
前に会社を去る場合には、訓練費用を返済すべきである。
ドイツのパイロット協会である Vereinigung Cockpit (VC)が“Pay to Fly”(P2F)方式を非難した。VC の IIjia
Shulz 会長によれば、その理由は航空会社が若年のパイロットを利用するだけでなく、航空安全をも危険にさ
らすからである。ECA が P2F の禁止を求める請願書を支持する理由は以上のとおりである。ECA は欧州の政策
決定機関と欧州航空安全機関(EASA)に対して、P2F を禁止し、その悪用を止めるための、断固とした、そし
て有効な措置を実行するよう要求している。
★MH17 便の撃墜前のウクライナにおける航空リスクに関する情報隠し容疑、国際民間航空機関の紛争地域情
報レポジトリーの限界の可能性を示す(欧州コンサル 0519)
過去何十年間において、航空安全および安全保障に関する関心が寄せられてきたが、総じて航空会社は国際紛
争地域の上空を飛行することに関して余り気にしてはいなかった。航空会社は、それらの紛争地域で使用され
る武器は約 11km の上空を飛行する航空機およびその乗客を危険にさらす可能性はないと考えていた。しかし
ながら、2014 年 7 月にマレーシア航空 MH17 便が撃墜された後、こうした意見は基本的に変わった。
国際民間航空機関(ICAO)の民間航空に対する紛争地域のリスクに関するタスクフォース(TF RCZ)が設置され、
全体作業計画及びふたつの直近プロジェクトが発表された。パイロット・プロジェクトの最初のひとつは、
「紛
争地域についての情報の迅速共有」に関する新たな中央システムの確立であった。
2015 年2月 2 日から 5 日まで開かれた国際民間航空機関の第 2 回ハイレベル安全会議においても、民間航空
に対する紛争地域のリスクといった安全保障問題が取り上げられた。その議論の中で紛争地域の上空を飛行す
る際の安全保障対策の改善に関する提案も行われた。
紛争地域の上空を飛行する航空機に対するリスクについての情報および警告を各国政府が提供することがで
きるデータベースを国際民間航空機関が構築すべきであるという広範な合意が得られた。最終的に、国際民間
航空機関の会議での代表者たちは、情報機関を含む最新情報源から危険地域の上空を飛行することの危険性に
関する最新情報センターとして機能することになるインターネットサイトの導入に合意した。承認された各国
の役人だけが国際民間航空機関理事会によって合意された手続に従って危険情報を提供する権利を有する。こ
のデータベースに情報を提供する国の同定は明確に示されることになるであろう。また、危険情報の提出国は、
公表する前に関連する情報を審査し、承認する機会を有することになるであろう。
このウェブサイトは、航空会社だけでなく一般公衆も利用することができる。国際民間航空機関は、同機関が
紛争地域情報レジストリー・ウェブサイトの開設者として情報の中央収集ポイントとしてのみ機能するであろ
うと述べた。しかしながら、国際民間航空機関は、情報内容が正確であり、有効であり、信頼性があり、完全
であり、包括的であり、真正でありまたは最新であるかどうかは保証しないことにしている。
このウェブサイトが開設される前に、米国以外の国々においては歴史的に見て他国においてそうした危険に関
する公共警告を発したことは稀であるという懸念もあった。しかしながら、このことは安全保障上の脅威に関
する貴重な情報源としてそうしたデータベースを機能させるためには最も重要な側面であろう。MH17 便の撃
墜に関するオランダの報告書によると、MH17 便が撃墜されたときには同空域には同機以外にも少なくとも 3
機の航空機が飛行していた。オランダ主導の国際調査団は、主なシナリオのひとつとして MH17 便はロシア製
の Buk ミサイル発射装置によって撃墜されたとしていると述べた。
2015 年 4 月 27 のこの MH17 便の撃墜事件に関連して、いくつかのドイツのメディアによる調査の結果が公表
された。それによると、ドイツ政府がウクライナ地域における危険性に関する情報をもっていたことが示され
ている。このことは、政府がリスクの可能性を航空会社に警告するために持っている情報を利用しなければ結
局は国際民間航空機関の新たな紛争地域情報レジストリーの限界を強調していることにもなる。
ドイツのメディアによる調査結果によると、ドイツ政府はマレーシア航空 MH17 便が撃墜されたウクライナ地
域に地対空ミサイルが設置されているという危険性に関する情報をもっていた。ドイツの公共放送テレビ局
NDR および WDR 並びに Sueddeutsche Zeitung 紙によると、外務大臣は 2014 年 7 月 14 日における Antonov 軍
用機の墜落をその地域における地対空ミサイルの存在を示すものとして評価した。ドイツの情報担当官は、そ
11
うした戦争地域の上空を定期的に飛行する航空機の安全に関する影響から Antonov 軍用ジェット機の墜落に
関心を寄せ、それらの懸念をドイツ政府に伝えた。
外務省による報告書の中で高度 6,000m (19,600 フィート)で飛行していた Antonov 軍用貨物航空機の墜落
によって、地上の状況が「重大問題」の原因として説明されている。ドイツ対外情報局 BND は、ウクライナ上
空域は安全ではないという警告を発していた。しかしながら、ドイツ政府はウクライナにおける民間航空機に
対する脅威の可能性に関するこうした情報をもっていたにもかかわらず、この情報を民間航空機全部またはド
イツの航空会社さえにも知らせなかった。ドイツ政府は、マレーシア航空の航空機が撃墜される 1 時間よりも
前に特に Lufthansa にウクライナ紛争地域の上空を飛行することを認めており、この情報を共有しなかった。
まさに、Lufthansa 機はマレーシア航空 MH17 便と同じルートを 20 分前に飛行していたことになる。MH17 便
の撃墜当日に 3 機以上の Lufthansa 機が問題の空域を通過している。他のドイツの航空会社は、自社独自の予
防策として事前に飛行ルートを変更していた。このことは、紛争地域における飛行リスクに関する情報の共有
に重大な欠陥があるという当時のパイロット協会および航空会社による声明を裏付けるものである。その結果
として、ケルン大学航空宇宙法研究所の Stephan Hobe 所長は、ドイツ政府の活動不足を厳しく批判した。
Hobe によると、そうした明らかな安全保障上のリスクを示すそれほど多くの事実があったのであれば、ドイ
ツ政府は航空会社に彼らのルートを変更させ、また彼等に強制的にそうさせる義務があった。
ウクライナだけが自国の領空を閉鎖する権限を有していたが、そうはしなかった。しかしながら、国は入手し
ている情報に基づいて自国の航空会社にある地域の上空を飛行することを禁止することができる。この禁止
は、ドイツの場合で言えば Lufthansa のようにそうした方策を講じる国の航空会社のみに対して有効となる。
航空会社は、自社独自の判断によってある地域の上空を飛行しないことを決定することもできる。航空会社は、
情報セキュリティ報告書を発行する欧州航空安全機関を含む様々な国内および海外の情報源に基づいてそう
した決定を行うことができる。
しかしながら、最後に残る疑問として、もし当時既に国際民間航空機関の紛争地域情報レジストリー・ウエブ
サイトが存在していたとしたら、ドイツ政府が入手していたウクライナにおける高いリスクに関する情報を提
供していたかどうかである。
★Malaysia Airlines、航空機の飛行追跡用の On Air AIRCOM 飛行追跡技術を利用する最初の航空会社となる
(欧州コンサル 0505)
2014 年 3 月 8 日に 227 人の乗客および 12 人の乗務員を乗せてクアラランプールから北京に向かった
Malaysian Airlines の MH370 便ボーイング 777-200 機が途中で行方不明になったことを受けて、航空におけ
る安全性および安全保障の強化に対する要求が強まっていた。この航空機が飛行ルートを変更した後に墜落
したと考えられる南インド洋における広範な捜索にもかかわらずこの航空機の何の痕跡も見つからなかった。
2014 年 12 月、航空機追跡タスクフォース(ATTF)が設置され、航空会社の継続追跡の改善に関する勧告を含む
報告書が発行された。2015 年 1 月 29 日、マレーシア政府は「MH370 便の 239 人の乗客および乗務員全員が命
を落としたと思われる」と述べ、
「正式に」MH370 便が「事故に遭った」ことをシカゴ条約の基準を引用して
宣言した。Malaysia Airline の MH370 便の行方不明は、航空機が完全に見失われることを防止することがで
きる十分な航空機追跡対策が行われていなかったことを強調することとなった。この事故によって現在の航空
機追跡技術の欠陥が露呈した。
現在、航空機は航空管制(ATC)によって十分に捕捉されている空域から離れる時は、たまにしかその位置を ATC
に連絡しないことになっている。事故後の調査は、原因を解析するために飛行データおよびコックピットでの
音声(
「ブラックボックス」
)レコーダーに大きく依存している。事故原因に関する性急な診断は、再発の誘因
となる問題が繰り返される可能性がある。
2014 年 5 月に開かれた国際民間航空機関(ICAO)の会議において飛行追跡に関する技術および基準についての
議論が行われた。国際民間航空機関は、国際航空の安全性および安全保障問題を担当している。同機関が 2009
年に起きた Air France 447 便の事故の後に既に行動すべきであるという要求があったにもかかわらず、何故
飛行追跡に関する提案を出すのにそれほど時間がかかるのかの質問に答えて、同機関の Olumuyiwa Benard
Aliu 理事会議長は単に国際的総意を得るために時間がかかったいるだけだと述べた。
EU レベルにおいては、マレーシア航空の MH370 便の行方不明後における ICAO レベルでの遅い決断への対応と
して、欧州委員会はいつでも航空機の正確な位置が確実に分かるようないくつかの対策を提案している。実際
的には、欧州委員会は航空機の事故が起きた場合にその航空機の位置を知ることができるように航空機の信頼
性および抵抗力を高めたいと思っている。欧州委員会は、EU の航空安全規則の改正を含むいくつかの段階で
の対策を考えている。
2015 年 2 月 2 日から 5 日まで開かれた第 2 回ハイレベル安全性会議において、航空機の国際追跡および紛争
地域における民間航空に対するリスクを含む重要な安全性および安全保障問題が取り上げられた。 その議論
の中には現状の見直し、航空安全管理の今後のアプローチおよび地域協力の強化促進に関する議論が含まれて
いた。
理事会議長国であるラトビアは、フライト・レコーダー、水中緊急位置発信機(ELT)および航空機追跡システ
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ムに関する EU の改正規則について説明している文書を作成した。欧州委員会は、水中緊急位置発信機の必要
とされる寿命を延ばすことも希望しており、また大型航空機の発信範囲を広げたいと思っている。航空機の追
跡に関しては、国際民間航空機関は国際的な飛行追跡に関する基礎を作ることにおいて重要な第一歩となる
15 分航空機追跡の採択を勧告した。
国際民間航空機関は、航空会社は海洋地域において自社の航空機の行方が分かっていなければならないという
責任を取り始めるべきであると提案している。基準は、重量が 27,000kg 以上であり、座席数が 19 席以上の航
空機に適用されるであろう。予備計画においては、この基準を 2016 年 11 月までに「適用」させることになっ
ている。ひとたび航空機上で何か問題が起きた場合に(6 海里の範囲内で墜落現場を特定する目的のために)
高速データを送信する航空機を含む遭難の追跡に関しては、国際民間航空機関は 2021 年から製造される新航
空機にこの能力が搭載されることを望んでいる。
その一方で、British Airways および Iberia を含む IAG によって運航されている航空機は、「航空機通
信アドレス指定報告シテム」(ACARS)を通じてその位置を含む実績データを 30 分ごとに送信している。Air
France-KLM は、2009 年の事故以来、自社の航空機の位置データを 10 分ごとに発信していると述べた。異常
な航路逸脱がある場合には、この周期は 1 分ごとに短縮される。KLM もこれに従うことを決定した。
他方、MH370 便の行方不明に対する対応として Malaysia Airlines は 2015 年の夏までに新たな飛行追跡シス
テムを開始することを発表した。同社は、本質的には航空会社が航空機の位置を追跡し、予期せぬ航路逸脱
または位置報告における差異を確認することを可能にする現在の機器に対する地上ベースのソトウエアの更
新から成る技術の広範な試験をすでに行ったことを発表した。この技術は、AIRCOM Server ACARS メッセー
ジ・ハンドリング・システムを使用することによって航空管制データを再目的化することから、新たな機器に
対する追加投資が必要とされない。
AIRCOM FlightTracker は、航空会社が 15 分以下の間隔で任意に変更することができるが、フライトごとに
少なくとも 15 分よりも短い間隔での追跡を保証するために複数の情報源を使用する。さらに、それはもし他
の情報源からの情報に差異が検知されると自動依存監視-契約(ADS-C)を直ちに取得することを可能にするも
のである。
SITA OnAir の Ian Dawkins 最高経営責任者によると、同社は航空会社が ATC のような情報追跡を簡単に利用
できるようにこのソリューションを設計したとのことである。国際民間航空機関の議論を受けて、SITA は異
常事態を探知し、報告する新システムを開発しようとしている。AIRCOM FlightTracker は、航空機に対する
改良を必要とすることなく、追跡を改善し、予定外の動きを探知するという重要な役割を担っている。それは、
すでに 90 社以上の航空会社によって使用されている SITA OnAir の現在の AIRCOM Server ACARS メッセージ・
ハンドリング・システムにソフトウエアを単に追加したものである。AIRCOM FlightTracker は、もし航空機
が分からない理由によって正規のルートから離れたことを確認する場合には緊急位置報告を要求し、緊急事態
が収まるまでの報告に対する料金を放棄する。
★英国環境局、EU-ETS の適用に反対するインドのジェットエアウェイズ社の訴えを却下(欧州コンサル 0430)
注:MBM 経済的手法 Market-based Measures
航空セクターからの GHG 排出は京都議定書の対象に含まれず、航空セクターの国際的な GHG 排出量削減スキー
ム構築の責任を担うとみられた国際民間航空機関(ICAO)も長い間行動を起こさなかった。国際レベルで何
の措置も講じられなかったことから、EU は 2012 年 1 月 1 日付けで欧州排出量取引制度(EU-ETS)に関する法
律を航空セクターに適用した。
同セクターに対する EU-ETS の適用は当初、EU 域内の空港を出発する、または域内の空港に着陸する第三国の
航空会社のフライトも対象としていた。しかし、航空セクターの排出量に関する地球規模での市場に基づく仕
組み(MBM)を 2016 年までに確立することで ICAO が最終的に合意した後、影響を受ける第三国の政府や航空
会社からの EU-ETS 適用への批判を受け、EU は第三国の航空会社の排出を 2014~2020 年までの間適用免除と
することを決定した。
ICAO が計画する MBM は、2020 年に国際航空セクターからの排出量に適用されるはずである。これを受け EU
は、第三国の航空会社への EU-ETS の適用「期限を延長する」決定を下した。しかし、EU-ETS は EU 域内のル
ートを飛行する第三国の航空会社には 2012 年に適用されている。欧州域内のフライトを運航するすべての事
業者は、航空事業者保有口座(Aircraft Operator Holding Account)を開設するよう義務付けられた。各事
業者の認証排出量及び排出量を相殺するために提出される排出枠に関する情報は、EU 取引ログで入手するこ
とができる。
欧州経済領域(EEA)の加盟国はそれぞれ、航空セクターが EU-ETS の対象となる場合に備え、管理を担当す
る所轄官庁を指名した。EU 加盟国は、排出枠を提出しない航空会社に対し CO2 1 トン当たり 100 ユーロの罰
金を科す義務がある。加盟国が政治的な理由だけで罰金の請求を放棄することはできない。また、法律に従わ
ないすべての事業者は、EU の規則に則って「名前を公表」されることになる。EU 加盟国の一部の所轄官庁は、
2012 年に欧州内のフライトを運航した中国、インド及びロシアの事業者に罰金を科さなければならない。
しかし、中国及びロシアなどの航空会社は、2012 年に欧州域内で運航したフライトの排出枠を放棄していな
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い。2014 年 2 月 20 日の提出期限までに、EU 加盟国は 2012 年の排出量を対象とする規則の施行を開始しなけ
ればならなかった。
2014 年、オランダの当局は、アムステルダム-ウィーン間の定期便を運航し、2012 年の年間排出量報告書を
提出しない中国の航空会社に対し過料を科したと報道された。しかし、オランダ当局が EU-ETS 不遵守の罰金
を受領したかどうかは不明である。それに対し、特にフランス、ドイツ、及び英国といった EU 加盟国は、罰
金の施行を延期したようだ。
2014 年 4 月、ドイツの排出量取引所轄官庁(ドイツ排出量取引局 Deutsche Emissionshandelsstelle、DEHSt)
は、61 の航空事業者(うち 44 社は欧州外に拠点を置く)に総額 270 万ユーロの罰金を科したと発表した。
DEHSt は 2014 年 7 月にそれらの航空会社の名前を公表すると示唆していたが、2015 年 2 月 17 日になってよ
うやく、2012 年に EU-ETS を遵守しなかった航空事業者のリストを公表した。
DEHSt によれば、発表された 44 の事業者には合計で 536 万 3,400 ユーロの罰金が科された。リストの大半は
小規模事業者だが、ドイツの主要なエアライン、エア・ベルリンとコンドル航空の 2 社も含まれている。これ
ら 2 社の話では、報告時の些細な相違のためにわずかな罰金が科されただけであるという。その一方で注目す
べきなのは、2012 年に EEA 内でフライトを運航していた中国国際航空とアエロフロート航空が、ドイツのリ
ストに載っていないことである。
2015 年 4 月 20 日、インドのジェットエアウェイズによる訴えが英国の独立した法的審査官によって却下され
たと発表された。EU-ETS を遵守しなかったとして英国環境局(EA)がジェットエアウェイズを訴え、同社は
それに抗議していた。その訴訟とは、2012 年にジェットエアウェイズが EEA 内で運航したフライトについて、
CO2 排出量報告の提出や、その排出量を相殺するための排出枠の放棄を行わなかったことに関するものであ
る。
ジェットエアウェイズは、CO2 約 150 トンに対し 15,000 ユーロ(16,000 ドル)の罰金を科される。同社は
その主張の中で、航空事業者に EU-ETS を課す EU の一方的なやり方は、ICAO 総会決議によって達した世界的
合意に反しており、また、インド政府は同社に EU-ETS の遵守を禁じていたと述べた。
エネルギー・気候変動大臣によって任命された審査官宛てにジェットエアウェイズが提出した文書によれば、
インド政府は 2011 年 11 月、インドの航空会社は EU- ETS の下で排出データを提出する必要はない旨の決定を
下し、その後、EU 当局との連絡は事前承諾がある場合に限って行われるとの通達を出した。インドの航空会
社は、2012 年 4 月に EU-ETS への参加を法によって正式に禁じられた。エア インディアも EU-ETS の下で排出
量を報告する必要があるが、同様に義務を果たしていない。
しかし、独立した英国の法的審査官であるデイビッド・ハート氏は、2015 年 3 月 27 日、ICAO の決議は EU-ETS
指令と矛盾するというインド政府の見解を退けた。ハート審査官は、制度の管理を担当する英国の所轄官庁で
ある EA は、ジェットエアウェイズが法的な報告期限を遵守しなかったことを考慮して同社の排出量を決定す
る義務があるとの裁定を下した。
加えて、インド政府の考えはジェットエアウェイズを縛る法律としての意味はなく、明らかな政治見解である
と述べた。ハート審査官によれば、根本的な問題は、ジェットエアウェイズが EU 指令を遵守する必要がない
と考えられるような、EU 指令を無効にできる拘束力のある国際基準があるかどうかである。審査官は、そう
した国際基準は存在せず、よって基準があるとしたインド政府の結論は間違っているとの判断を下した。した
がって、そう主張することで EU の法律を覆すことはできない。
インド政府の指示とは無関係に、EU 加盟国内の裁決機関あるいは EU 加盟国内の各国の裁判所には、EU 指令の
有効性を問う申立てを受理する権限はなく、特にこの EU 指令の有効性については、すでに EU の最高裁判所で
ある欧州連合司法裁判所(CJEU)がすでに支持していると審査官は主張した。さらに審査官は、米国の航空
会社が 2011 年に起こした訴訟における CJEU の判決に説得力があると考えた。また、ジェットエアウェイズは
ICAO 総会決議を根拠として訴訟を起こしたが、ジェットエアウェイズとインド政府が頼みとする同決議の文
言に対し、EU 加盟国は留保を主張した。このため、たとえ ICAO 決議に法的拘束力があったとしても、関連す
る箇所に留保を行った EU 加盟国を拘束することはできない。
そのようなあらゆる理由を考慮して、審査官はジェットエアウェイズの主張を却下した。ジェットエアウェイ
ズが規定された期限内に自社の排出量を報告していなかったことから、EA はこれらの排出量を決定する義務
があった。ICAO 決議はそうした義務に影響を与えることはできず、インド政府の指令も同様である。この裁
定は、EU-ETS 法を遵守していない、欧州域内で運航する EU 以外のすべての航空事業者に関する前例となるだ
ろう。
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