「谷岡健吉:超高感度 HARP 撮像管の発明とその応用」

特別講義
岡本教授担当、4 月 15 日実施分レポート
「谷岡健吉:超高感度 HARP 撮像管の発明とその応用」
システム創成学科シミュレーションコース
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梅城 崇師
谷岡氏は、高知放送局に入局するが、開発技術の特技を生かし、大学学習時にもお世話
になった NHK の放送技術研究所に勤めるようになり、HARP 撮像管を開発した。
事件・事故などは昼間だけでなく夜間も発生する。そのため、夜間でも鮮明に撮影でき
る高感度のカメラが必要となる。また、オーロラや夜空などの天文関係、夜行性動物の撮
影などにおいても高感度カメラが必要である。特に夜行性動物では、近年の環境保護機運
によって、ライトを当てることへの問題などもありライト無しが望まれてもいる。
撮像管は、光を信号に変える、カメラの心臓部ともいえる装置であり、この性能によっ
てテレビカメラの感度や画質が決定する。よって、各メーカともこの撮像管の開発に精力
を注いでいる。
カメラレンズから入った光は、撮像管の中で電気信号に変えられる。従来の撮像管では
光子1個につき電子1個という増倍率1を目指した開発が続けられていた。しかし NHK が
開発した HARP(High‑gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)撮像管では、
光を電気に変換する光電変換膜という膜に特殊な材料を用い、数千ボルトの高電圧をかけ、
アバランシェ(Avalanche;なだれ)増倍現象で信号を増幅することにより、増倍率が1以
上の撮像管になったのである。
HARP 管の開発中はなかなか実用化できなくて、従来の延長技術に負けそうになり、開発
中止寸前までなった。しかしハイビジョンという、従来に比べ高解像度になることで、単
位面積あたりにより少ない入力に対して同等以上の出力を要求する、高感度カメラが必要
なものを視野に入れた開発を試み、この撮像管が生まれることになった。
この撮像管を利用することで、従来は暗くて撮影できなかったところも鮮明な画質で撮
影できるようになった。特に感度を上げた新 Super‑HARP カメラにより、函館空港全日空機
ハイジャック事件で夜明け前に警官隊が突入する様子が、真昼に撮影したかのように明る
く映し出したことで、他テレビ局もこの力を痛感することになる。
HARP では、HARP 膜を通過する間にねずみ算式に電子が増えていくため、膜を厚くすれば
するほど感度を高めることができる。しかし一方で厚くすることによって膜内の電界が不
均一になりやすく、ノイズが増え感度が不安定性になってしまう。よって、より高い感度
の HARP 感を作るためには、不純物除去などが必要になりそれほど簡単なことではない。ま
た、膜厚増加により、印加する電圧も増加させなければならず、コンデンサなどの関連部
品も開発しなければならない。
現在では CCD の 1000 倍程度の感度を持つ撮像管も可能である。