参考資料 1-5 柳井市避難所調査

参考資料 1-5 柳井市避難所調査
(1)第 1 回柳井市避難所調査
z 日
時:2009 年 1 月 18 日(日)9 時 30 分~17 時
z 場
所:柳井市内の避難所(旧大畠町も含む)
、46 箇所(全 86 箇所中)
z 内
容:避難所の立地条件、建物構造、電波到達見通し状況確認
z 参加者:松野・村上・安永(山口大学)、浦上(大島商船高等専門学校)、
【内容】
本提案システムは、避難所において無線端末装置に電源を入れることで災害発生直後に素早く無線ネ
ットワーク構築をおこなうことができる特徴を持つ。この無線ネットワークは、耐震性のある小・中学
校などの建物間ネットワークを恒常的に構築しておき、これを基幹ネットワークとして活用する。そし
て、この基幹ネットワークの基地局に接続できる周辺避難所間をアドホックな支線ネットワークとして
構築する。しかし、全避難所を基地局に設置することは、設置にかかる労力や費用、避難所の耐震構造
やハザード状況により、難しい。そのため、基地局となる避難所を選定する必要がある。
そこで、本提案システムを初めて導入する自治体において、基地局となりうる避難所を選定する指針
を定めるため、大島商船高専の所在地である周防大島町に隣接する柳井市をモデル地区として、避難所
調査を実施した。本調査を行った避難所を以下に示す。
z
柳井市避難所一覧、ハザードマップ(柳井市役所防災担当課等資料)をもとに現地調査を実施。
z
調査を行った避難所数は、46 ヵ所(全部で 86 ヶ所)。
(1) 基幹基地局となる可能性の高い“学校”、柳井市において優先的に避難所として開設する“公
民館”はすべて現地調査を行う。
(2) 基幹基地局に接続する支線基地局となり得る避難所は、(1)に接続できる周辺避難所を優先
的に現地調査を行う。
以下、1.で、その地形、及び、各種災害時に危険地域(浸水地域、地震災害地域等)を確認する。次
に、2.で、自治体の避難所開設優先順位、避難所の耐震性を確認する。ここでは、モデル地区とした柳
井市の現状についても調査確認する。最後に、3.で、1.及び 2.で選択された避難所と避難所の階数、ア
ンテナ設置場所などを考慮し基地局となりうる避難所を選定する。
1.柳井市の基本要件と災害リスク
柳井市は山口県東部の瀬戸内海に面した地域に立地し、人口 36,371 人、世帯数 16,016、高齢者人口構
成比 30.3%(2007 年 3 月 31 日住民基本台帳による)の都市である。周防大島(町)と大島大橋で結ば
れ、北に岩国市、西に光市・田布施町、南に平生町と接している。柳井市の面積は 139.89km2、人口密
度 260.00 人/km2 であり、JR山陽本線が東西に走り、柳井駅が市の中心となる。
z 浸水ハザード、リスク
市街地は二級河川柳井川と二級河川土穂石川の流域の沖積平野及び干拓地に拡がり、浸水の危険があ
る。柳井市は洪水避難地図(洪水ハザードマップ)を 2007 年 12 月に作成し、市民に配布・公開して防
災の啓発、避難への備え、自主防災活動の支援に努めている。
z 地震ハザード、リスク
山口県が 2008 年 3 月に発表した地震被害想定調査報告書によれば、柳井市に最も大きな影響・被害を
与える地震として、次が挙げられる。なお、柳井市の昼間人口 37,246 人、夜間人口 35,923 人、木造建
物数 26,058 棟、非木造建物数 5,836 棟の基礎データに基づく。
¾
日積断層による内陸地震(M6.7)
: 柳井市で震度6強が想定され、全壊 585 棟、半壊 2907 棟、
死傷者 223 人。
¾
大竹断層(小方-小瀬断層)による内陸地震(M7.2):
柳井市で震度6弱が想定され、全壊
309 棟、半壊 1807 棟、死傷者 117 名。
¾
東南海・南海地震
M8.5 のプレート間地震: 地震発生の確率は最も高い。柳井市では震度5
強が想定され、全壊 67 棟、半壊 198 棟、死傷者 7 名。
2.柳井市の避難場所
柳井市の防災計画において、生活避難場所として、87 施設が指定されている。施設の種類(図1)で
は学校 27%、集会所 23%、公民館 15%の割合が高い。収容可能人員の合計は 14,490 人、収容場所の面
積合計は 45,909m2 となり、計算上は平均で一人当たりおよそ 3.2m2 の面積になる。収容可能人員の施
設種別(図 2)によれば、学校が 57%と過半数を超え、次いで公民館の 10%となる。なお、学校の多く
は市立の小中学校であるが、県立高校3箇所、私立高校 1 箇所が含まれる。
柳井市生活避難場所の施設
その他, 16, 18%
学校, 23, 27%
公園, 1, 1%
保育園・幼稚園, 2,
2%
体育館, 3, 3%
神社・寺院, 10, 11%
集会所, 19, 23%
公民館, 13, 15%
図1
柳井市生活避難場所の施設分類と箇所数
柳井市生活避難場所の収容人数
その他, 2090, 14%
保育園・幼稚園, 200,
1%
体育館, 1300, 9%
神社・寺院, 640, 4%
学校, 8050, 57%
公民館, 1430, 10%
集会所, 780, 5%
図 2 柳井市生活避難場所の施設分類と収容人数
○耐震診断結果(市の施設、県の施設について)
柳井市では市の施設について、耐震診断結果を公表しているので、市役所総務課防災担当係より一覧
表を提供していただき、避難所となっている施設の耐震状況を確認した。耐震性については、1981 年の
建築基準法新耐震規定により確認審査されたか否か、1981 年以前の審査であれば、耐震診断が実施され
たか否か、耐震診断が行われた場合は、耐震性の有無が記載されている。通常の学校は校舎が複数棟か
ら構成されており、棟ごとに耐震結果が表記されている。
山口県立高等学校についても、山口県教育委員会教育政策課から耐震診断調査結果を提供していただ
いたので、市の施設と併せて、耐震状況を集計する。私立高等学校 1 校については、問い合わせしてい
ないため、体育館と主校舎とも耐震性不明と仮定している。
図 3 に体育館と主たる校舎の耐震性条件を分類して集計結果を示す。なお、主たる校舎で耐震性あり
とは、面積の比較的大きい普通教育棟・特別教育棟・管理棟などで、耐震性有る建物が有ることを示し、
全ての校舎の耐震性有りということではない。
23 校のうち、最も望ましい体育館有・主校舎有は7校
(30%)である。体育館有・主校舎無しまたは不明の場合、避難所になる体育館は安全と推定される一
方、児童や生徒の学ぶ校舎が被災する恐れが高くなり、これは 3 校(13%)が該当する。体育館無しまたは
不明・主校舎有の場合(6 校、26%)、本来避難所になる筈の体育館は危険が推定されるが、主校舎の教
室等に避難できる可能性が高い。体育館無しまたは不明・主校舎無しまたは不明は 7 校(30%)が該当
し、これらの学校は地震時避難所として危険であるのはもちろん、児童生徒の安全を考え、耐震補強・
建て替えや学校の統合など施設の利用計画検討が重要である。
柳井市避難所(学校)耐震性条件
学校数
0
2
4
6
8
体育館有・主校舎有
体育館有・主校舎無不明
7
3
体育館無不明・主校舎有
6
体育館無不明・主校舎無不明
7
図 3 柳井市の生活避難場所(学校)の耐震性条件
公民館及び市の施設(学校を除く)21 箇所について耐震性の結果は有りが 11 箇所(52%)、不明が 10
箇所(48%)となった(図 4)。ほぼ半数の施設について、耐震性が確認されず、地震時の生活避難場所
としては耐震性の確実な判定と耐震補強の実施が望まれる。
公民館他市の施設(学校を除く)21箇所の耐震性
不明, 10,
48%
有, 11, 52%
図 4 柳井市の公民館等、市の施設(学校を除く)21 箇所の耐震性
3.避難所としての活用優先順位、無線LANシステムで通信を確保する基地局、支局の選び方について
本提案システムの無線端末装置とアンテナを避難所へ設置する際には、(1)他避難所との見通しを確認
(避難所間の障害物の有無)、(2)避難所の階数を確認、(3)避難所の形状(屋上の有無/屋上への移動階
段の有無/屋上が無く地上へアンテナを立てる場合、避難所周辺における十分な空きスペースの有無/
アンテナを立てる際の障害となる電線等の有無
など)を確認する必要がある。 なお、1.及び 2.にお
いて選定した耐震構造性のある建物を基地局候補とする。
(1)他避難所との見通しを確認
無線LANにおいて、屋外伝搬を行う際には、送受信機のアンテナ間での見通しが確保できるかが重要
である(図5参照)。各避難所間に位置する山・建物・木などの遮蔽物の確認を行った(図6、図7参照)。
(2)避難所の階数を確認
避難所の階数が高い方が避難所間の遮蔽物が少なくなる。そのため、避難所の階数調査を行った。
(3)避難所の形状を確認
具体的には、避難所の屋上形状を確認する(図 8、図 9 参照)。これは、各避難所に設置するアンテナ
間の見通しが必要であるため、屋上にアンテナを設置することが望ましい。そのため、屋上の有無/屋
上への移動手段の有無を確認した。もし、屋上がない場合には、地面に直接アンテナ(12m程度)を立
てることになる。その際には、建物周囲に 12m×12m 以上のスペースが必要となるため、そのスペース
の有無を確認する。例えば、図 10 のように周辺に駐車場があれば、その駐車場にアンテナ設置すること
は可能である。
図 5 避難所間の見通し
図 6 障害物(木)
図 7 障害物(電線)
図 8 中学校校舎屋上の塔屋
図 9 避難所(屋上あり)
図 10 避難所(屋上なし)
4.調査まとめ
山口県柳井市をモデル地区として、避難所調査を行った。この調査結果より、基幹基地局候補となる
避難所および支線基地局候補となる避難所を選定する方針を示すことができた。
本提案システムでは、避難所間距離や標高等の地理的条件、収容可能人数や耐震強度などの避難所の
詳細情報、避難所の周位の山・建物等の遮蔽物を考慮した上で、避難所間ネットワーク構築案を自動生
成するためのアルゴリズムを提案する。
そのため、今後は、本調査で得られた基幹基地局候補と支線
基地局候補で構成される避難所間ネットワーク構築案と、本提案アルゴリズムとを比較し、評価を行っ
ていく予定である。