《2012 年 米国のドラッグストア Part-4》

《2012 年 米国のドラッグストア Part-4》
b)OTC&ヘルスケア部門
この部門はチェーンドラッグのフロントエンドカテゴリーで最大の売上規模の 280 億ド
ルの 11%の構成比を持っている。近年この OTC 部門はさすがドラッグストアの核部門と
いう高い評価を得た。不景気により人々の医者への訪問が減少したが、その代わりドラ
ッグストアの幅広く深い品揃えの OTC とカウンセリングで自分の病気を治療したり、健
康管理をした人が多かったからだ。もし人々が積極的に健康の自己管理をし、OTC をよ
り活用して医者に行く回数を半減させた場合、52 億ドルの医療費の削減を可能にすると
コンスーマーヘルスケアプロダクツ協会は述べている。実際に来院する患者のうち 10%
は自らのケアで治せるので来院不要と医師が述べている。このようにドラッグストアの
OTC 部門は現在では米国のヘルスケアのフロントラインになっている。下記の表の通り
代表的な 31 の OTC カテゴリーのうち、23 のカテゴリーで売上げが前年を上回った。こ
のようにドラッグストアの OTC&ヘルスケア部門が好調であったのは薬剤師の存在が大
きく、彼らの相談のしやすさと患者本位のカウンセリング力に負うところが大きい。そ
のために OTC 部門の拡充を図るドラッグストアが増加している。このようなポジティブ
な傾向とは逆に有名なブランドのリコール続きで、消費者の OTC に対する信頼は落ちて
いる。消費者は鎮痛剤の安全性に対して懸念をしており、関節痛や筋肉痛には内服薬よ
り外用鎮痛薬を求める傾向が多くなっている。J&J の Bengay が外用鎮痛薬のトップブ
ランドだ。また特徴としてはナチュラルな成分やケミカル成分の入っていない商品に対
する人気が高まっている。その証拠にホメオパシーの人気が高い。
カテゴリー別に見てみると、10%以上成長したのが、ウエイトコントロール関連用品と
睡眠治療薬だ。5%以上が、リキッドタイプの風邪・アレルギー薬、歯磨きとマウスウォ
ッシュのオーラルケアだ。風邪・アレルギー関連の Pseudo-ephedrine 成分の商品は BTC
(ビハインド・ザ・カウンター)で、セルフでは購入できず薬剤師を通してのみ購入可で
あるが、再度の上昇が見込まれる。Airborne や Zlcamtoiu などのナチュラル成分の風邪
薬は以前ほどの伸びは無いが依然として強い。ドラッグストアの市場構成比が高い商品
は禁煙促進用品(73%)
、妊娠診断キット(69%)、排卵時期測定用品(66%)、風邪薬(64%)
、
救急医療商品(62%)だ。ビタミンが 4.8%伸びたが、不況になると病気にならないよう
に(医者にかかると高額のため)予防やウエルネス意識が強く働くためだ。また風邪薬
やビタミンの成長はインストアクリニックを行っている店舗では著しい。それは患者が
診断してくれた上級看護士のアドバイスを受けて購入するからだ。ビタミンカテゴリー
の中では、ウエイトコントロール、リキッドタイプのビタミン・ミネラルそしてエネル
ギードリンクの成長が著しい。シニアの人の増加から、ファーストエイドの成長も著し
かった。特にスカーケアマネージメント商品が注目されている。スカーケアマネージメ
10
ント商品は 1997 年に導入されて以来成長著しく、
2011 年度も 10%以上市場を拡大した。
傷口の直りを早くしたり、見栄えもよくしたりする OTC クリームやバンデージの需要は
高く、新しいカテゴリーとしての地位を獲得した。
セックスエンジョイメント商品のカテゴリーが注目されている。特にこの分野はセック
スウエルネスという言葉で表現されるようになり、かつての避妊や病気からの予防と言
う観点にセックスを楽しむという観点が付け加えられた。そしてそれらの商品は調剤室
の側のセックスウエルネス売り場のみならず、生理用品売り場にもクロス MD がされる
ようになった。コンドーム、妊娠診断キット、排卵日測定キットに加え、ジェリー、刺
激する商品、強精商品などが品揃えされている。
40 歳以上の女性(74 百万人で米国の人口の 25%のシェアを持つ)は健康に関心が強い一
方問題も抱えている。女性特有の更年期障害、骨粗鬆(悩む人の 80%は女性)
、失禁(2
千万人が失禁で悩んでいるが、その内の 90%は女性)、高血圧(男性より女性に多い)、
リュウマチ、糖尿病、摂食障害なども男性より女性に多い。これらの人々はドラッグス
トアにとり大切な顧客で、ウイメンズヘルスコーナーはドラッグストアの大変重要な売
り場になっている。
米国では環境問題から Green Product 旋風が吹いており、それにそぐわない商品が避け
られる傾向にある。そのため布製オムツを使う人が増加しており、現在では 10%を数え
るようになった。また生理用品で「Soft Cup」という商品も環境問題から市場導入された。
ホームヘルスケア(介護・看護関連商品)もドラッグストアにとり注目のカテゴリーだ。
2006 年にベビーブーマー(1946 年~1964 年の間に 7600 百万人と大量に誕生した人々の
呼称)が初めて 60 歳代に突入し、中年層からシニア層へ今後沢山の人々が流れ込んでく
る。今後 23 年間 65 歳以上の人々は伸び続け、2030 年には 20%のシェアになると予測さ
れている。このシニア層はドラッグストアにとって核の顧客になることは間違いない。調
剤薬、OTC、紙おむつ、介護機器と多くの商材を必要とするからだ。このベビーブーマー
のシニアの特徴は昔のシニアと比べ、教育レベルが高く、収入もきちんとあり、健康度も
高い。健康と環境に関心の高いロハス層は 3500 億ドル市場あるが、ベビーブーマー及び
それ以上の年齢の人々が多くを占めており、ウエルネス、健康、自立生活できる商品を求
めている。今後どのような商品がホームヘルスケアカテゴリーに品揃えされるべきか色々
と討議されている。確実に必要なのは、杖、車椅子歩行補助機器、家庭用医療機器、バス
セーフティ関連商品、ウーンドケア商品、失禁・人口肛門関連商品、ベッド関連商品など
は間違いなく必要とされている。このカテゴリーはセルフサービスだけで販売できるもの
でなく、知識を持った人間のコンサルティング力が重要だ。そのためカードラッグのよう
なローカルドラッグが差別化のために力を入れている。市場規模は小さいがイアケアが
20%拡大したのは注目に値する。
11
【2011 年ドラッグストアの OTC カテゴリー売上げ】
(2012 年 3 月 18 日までの 1 年間)
カテゴリー
1)ビタミン
2)風邪・アレルギー・鼻炎薬(錠剤)
3)内服鎮痛剤
4)胃腸薬(錠剤)
5)ファーストエイド・アクセサリー
6)その他ヘルス治療薬
7)歯ブラシ・歯間清掃用品
8)アイ・コンタクトレンズケア用品
9)生理用品(ナプキン・タンポン)
10)歯磨き
11)ファーストエイド・トリートメント
12)大人用紙おむつ
13)避妊関連用品
14)風邪・アレルギー・鼻炎薬(リキッド)
15)禁煙促進用品
16)家庭用ヘルスケアキット
17)フットケア用品
18)胃腸薬(リキッド)
19)鼻炎用品
20)整理関連用品
21)マウスウォッシュ
22)ウエイトコントロール関連用品
23)咳止めシロップ
24)咳止めドロップ
25)外用鎮痛剤
26)家族計画用品
27)モイスト・タオル
28)ベビー用品
29)ウエイトコントロールキャンディ・錠剤
30)睡眠治療薬
31)義歯用品
売上高($百万)
2061
1790
1262
1148
808
679
639
590
585
528
528
430
400
382
378
376
366
360
354
318
268
243
223
223
213
177
166
155
149
109
107
前年比(%)
4.8
4.4
-2.5
0.6
4.1
2.7
4.5
3.2
2.7
5.4
1.7
2.9
5.4
5.6
0.2
-0.9
-1.4
2.4
-3.6
0.6
6.7
10.6
-2.9
0.5
2.3
0.5
2.9
-1.4
-3.2
13.0
-3.2
平均単価($)
9.79
9.98
6.25
9.78
6.13
5.15
4.88
8.07
4.66
4.21
5.64
11.00
18.14
7.10
39.24
24.28
7.92
6.95
8.06
8.76
4.5
7.57
7.37
7.37
6.91
14.24
3.26
4.17
14.77
8.13
4.78
資料:Chain Drug Review
【2011 年度ドッラッグストアにおけるビタミン】
種類
ミネラルサプリメント
マルチビタミン
1&2文字ビタミン(例 C,E)
エネルギードリンク
ウエイトコントロール(リキッド/パウダー)
リキッドビタミン/ミネラル)
金額($百万)
255
104
79
74
53
25
前年比(%)
+3.2
▲4.2
+0.6
+12.7
+9.8
+8.6
12
c)H&BA ブランドトップ 50
近年消費者はドラッグストアをヘルスケアのデスティネーションストアという位置づけ
を再認識している。50 のトップ HBA ブランドの中で 42 ブランドがヘルスケア関連であ
った。トップ 10 の内の 3 つのブランド(P&G の Prilosec が 3 位、JNJ の Zyrtecg が 4
位、Sanofi の Allegra が 8 位)はスイッチ OTC 商品だ。それらの商品 1 年前強に市場導
入されたため、昨年はその反動で売上を下げた。ビタミン、ミネラル、サプリメントは 1
位、6 位、10 位を占めているが、成長率も高い。現在では米国民の半分はビタミン等の
サプリメントを服用している。
禁煙補助用品もニコレットガムの 9 位と底固い動きである。ビューティーケアのトップは
Just for Men というヘアカラーで 29 位だ。グレーヘアーが落ち着きのある男性で格好が
良いという考え方の時代は終わり、女性と同じようにいつまでも若々しくありたいのだ。
1946 年~1964 年の間に誕生した大量のベービーブーマの最初の年の人が今年 66 歳にな
る。ベビーブーマーがこの男性用のヘアカラーの市場を拡大している。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
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30
31
32
33
34
H&BA ブランドトップ 50
Nature's Bounty mineral supplements
Advil internal analegesic tablets
Prilosec OTC antacid tablets
Zyrtec cold/allergy/sinus tablets
Depend adult incontinence products
Nature Made mineral supplements
Always sanitary napkins/liners
Allegra cold/allergy/sinus tablets
Nicorette antismoking gum
Nature Made 1-and 2-letter vitamins
Aleve internal analegesic tablets
Plan B One Step women's contraceptives
Claritin cold/allergy/sinus tablets
Next Choice women's contraceptives
Claritin D cold/allergy/sinus tablets
Mucinex DM cold/allergy/sinus tablets
Tampax Pearl tampons
Dr. Scholl's foot care devices
Mucinex cold/allergy/sinus tablets
Poise adult incontinence products
Miralax laxative/stimulant liquid/powder
Prevacid 24HR antacid tablets
Nature's Bounty 1-and 2-letter vitamins
Mucinex D cold/allergy/sinus tablets
Abreva lip balm/cold sore medication
Listerine mouthwash/dental rinse
Bayer internal analegesic tablets
Tylenol internal analegesic tablets
Just For Men men's hair coloring
L'Oreal Superior Pref. women's hair coloring
Futuro muscle/body support devices
Centrum Silver multivitamins
Vicks Nyqull cold/allergy/sinus liquid
Halls cough/sore throat drops
売上高($)
168,226,100
146,342,000
135,012,900
123,286,500
114,728,600
113,297,600
109,209,200
109,124,800
107,783,100
106,306,100
104,146,400
92,476,460
89,665,930
86,975,960
81,842,550
81,003,340
77,635,120
74,085,950
72,469,390
69,453,870
66,555,870
64,649,500
62,942,620
62,878,870
62,714,650
62,632,540
62,592,950
62,250,640
62,050,100
61,509,880
60,567,350
56,853,310
55,466,670
54,057,710
対前年比(%)
5.97
3.31
-11.57
-8.00
4.92
17.94
0.10
4.53
18.15
3.95
10.04
-5.26
1.60
-10.81
-11.93
7.22
6.39
-15.68
7.40
10.05
-8.57
5.16
-5.29
3.07
3.15
-2.13
-34.44
0.52
-1.05
14.50
-3.53
9.56
1.40
13
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
Neosporin first aid ointment/antiseptic
Revlon Colorsilk women's hair coloring
Crest 3D White Whitestrips Adv. Tooth whitener
Gillette Fusion cartridges
Garnier Nutrisse women's hair coloring
Gillette Mach3 razor cartridges
Delsym cough syrup
L'Oreal Excellence women's hair coloring
Allegra D cold/allergy/sinus tablets
Dulcoalx laxative tablets
Theraflu cold/allergy/sinus tablets/packets
Alcon Opti-Free Replenish eye/lens care
Olay Regenerist facial antiaging
Ricola cough/sore throat drops
Tums antacid tablets
Nicorette antismoking tablets
53,386,770
53,374,420
53,102,460
50,315,110
48,107,040
48,040,740
47,481,980
45,985,900
45,911,030
45,535,800
44,778,100
43,402,780
43,281,250
41,000,760
40,915,880
39,884,410
-1.83
0.33
7.57
1.72
11.17
-2.52
-1.38
-4.34
5.38
-3.84
-12.42
-1.32
5.45
15.94
54.54
d)ビューティーケア
ビューティーケアの売上は非常に好調であった、31 のビューティーケアカテゴリー中 28 カ
テゴリーで売上げを前年比増加させた。好調の要因は下記の表(2010 年に行われた「今後ビ
ューティーケア商品を購入する場合利用する小売業態」
(OTX リサーチ)
)で分かるとおり、
消費者が不景気のため、百貨店や専門店からビューティーケア商品の購入先をドラッグスト
アに移していることだ。ドラッグストアを利用する回数を増やすという好回答の要因は、
「必
需度の高いビューティーケア商品の品揃え」
「低価格」そして「近場という便利性」だ。
【今後ビューティーケア商品を購入する場合利用する小売業態】
業態
ホールセールクラブ
スーパーマーケット
専門店
百貨店
マスマーチャンダイザー
ドラッグストア
利用する回数を増やす(A) 利用する回数を減らす(B)
(%)
(%)
8
14
17
18
41
41
41
40
52
45
19
19
(A)―(B)
(%)
‐33
‐36
‐35
‐27
+22
+22
それと消費者の節約志向から、ドラッグストアは高価格帯の化粧品を避け、利益率が高く且つ
値ごろ価格商品を積極的に扱った。プライベートブランドも他の分野と同じく大変活躍した。
商品別に見てみると、ネイルポリッシュが 41%、ネイル全体で 24%、グルーミング関連で
16%の成長をした。ネイル、カラーコスメそしてサンケアが最大の成長を示したカテゴリー
だ。カラーコスメカテゴリーではメイベリンや、レブロン、ロレアルなどの巨大ブランドよ
り、セカンドクラスサイズのブランドが好調であった。ネイルケアはプライベートブランド
の好調にその成長は支えられた。付け爪は二桁の成長を記録した、サンケアに関しては人々
は価格が高めで SPF の高い商品を選んだことが売上拡大の要因だ。今年もその傾向は続き、
20%以上の成長が見込まれている。
また CVS からスタートしウォルグリーン、ライトエイド等がヨーロッパ等から持ってきた自
社専売品を拡販したが、大変好調であった。またドラッグストアは販促で「1 個購入すると 2
14
個目は無料」プログラムを化粧品、フレグランスそしてヘアケア商品に積極的に実施したこ
とも、ドラッグストアのビューティーケアが他業態と比較して健闘した要因だ。米国ではメ
ンズ化粧品の市場が大きく成長しており、メンズ化粧品の新製品の数が増えている。今まで
のシャワー関連、シェービング関連、デオドラント関連だけでなく、女性と同じく多岐な分
野に広がって商品構成されている。メンズ化粧品関連で伸びる分野は次の 4 つが予測されて
いる。リップ、アイ、ハンド等分野別の商品、メーキャップ及び日焼けクリーム、アンチエ
イジング、オーガニック・ナチュラル商品だ。今後ドラッグストアのビューティーケア部門
に対し顧客が望むことは、より低価格商品の品揃え(61%)、サンプル&テスト商品の設置
(35%)
、幅広い品揃え(32%)
、百貨店ラインの品揃え(31%)
、高額品の品揃え(26%)だ。
【2011 年ドラッグストアのビューティーケアカテゴリー売上げ】
(2011 年 3 月 18 日までの 1 年間)
カテゴリー
1)スキンケア
フェイシャル・アンチエイジング
フェイシャル・クレンザー
アクネ・トリートメント
2)アイ関連化粧品
マスカラ
アイライナー
3)フェイス関連化粧品
ファンデーション
パウダー
4)ネイル関連化粧品
ネイルポリッシュ
5)ヘアカラー
6)ソープ
7)カミソリ刃
カートリッジ
ディスポーザブル
8)ハンド&ボディローション
9)シャンプー
10)デオドラント
11)ヘアコンディショナー
12)リップ関連化粧品
口紅
13)サンケア商品
14)ヘアスタイリングジェル・ムース
15)女性用フレグランス
16)ヘアスプレー
17)その他グルーミング商品
18)カミソリ
19)男性用化粧品・グルーミング・アフターシェイ
20)男性用フレグランス
売上高($百万)
1213
477
295
185
714
322
211
654
340
108
621
323
616
554
518
317
201
484
467
449
362
349
223
346
283
208
173
158
135
131
120
前年比(%)
3.06
0.41
6.64
3.81
3.06
1.66
5.02
4.95
4.18
3.72
23.54
41.14
2.36
3.39
7.59
6.47
9.41
0.02
4.37
4.22
8.76
0.98
4.15
3.37
3.13
-7.56
1.67
15.63
4.60
-0.49
-5.37
平均単価($)
9.21
17.05
5.99
6.85
5.75
7.09
5.39
8.84
10.19
8.41
N/A
N/A
7.14
3.52
9.56
15.76
5.89
5.70
4.69
3.76
4.91
5.35
6.03
8.88
5.18
15.07
4.24
9.49
9.08
4.99
20.02
15