造血幹細胞移植推進事業フォーラム 2015年3月7日(土) 於・神戸国際会議場 新適合検索評価点について 一戸 辰夫 広島大学病院 血液内科 造血幹細胞提供支援機関 HLA委員会委員長 1 非血縁者間骨髄移植のHLA適合性にかかわる最近の知見 最近行なわれた解析では、非血縁者間骨髄移植におけるHLA‐DRB1座の アリル不適合例の急性GVHDや移植後死亡のリスクは、1990年代に比べ て相対的に高くなっており、2000年以降においてはHLAクラスIのアリル不 適合例とほぼ同等になってきている。これらに加え、HLA‐A, ‐B, ‐C, ‐DRB1の アリル1組不適合(抗原レベルの不適合を含む7/8適合)の移植後死亡リ スクは、アリル2組不適合(6/8適合)より低いことが報告されている。 これらの結果を受け、2014年8月のHLA委員会において、HLA‐A, ‐B, ‐C, DRB1それぞれのローカスの不適合が移植成績に与える負の影響は、ほ ぼ同等に評価すべきであり、適合検索評価点の見直しを行なう方針が妥 当である、との提言がなされた。 2 HLA各座の不適合が移植後死亡リスクに与える影響 Morishima Y, Blood 2015 3 HLAアリル不適合が移植成績に対する影響の経年的な変化 1993‐1999 2000‐2009 Kanda Y, Br J Haematol 2013 4 非血縁者間骨髄移植における アリル不適合数の影響(DR1抗原不適合を含む解析) Adjusted 3‐yr OS 41% 47% 38% 47% P‐value 0.19 0.96 0.014 reference 対象:1996‐2005年の間に移植が実施された16歳以上のAML, ALL, MDS Atsuta Y, Biol Blood Marrow Transplant 2012 5 現在の検索評価点 1、ランク評価点 ランク 評価点 1(6抗原マッチ) 800,000 2(DRミスマッチ) 600,000 2(B ミスマッチ) 400,000 2(Aミスマッチ) 200,000 6抗原適合+アリル6/8適合は 1抗原不適合+アリル7/8適合 よりも上位 DRB1座のアリルミスマッチは A, B, C座のミスマッチより上位 2、HLA 型評価点 HLA-A HLA-B HLA-Cw HLA-DR アリルマッチ 3,060 3,060 2,010 1,010 アリルコードマッチ 3,050 3,050 2,000 1,000 -35,000 -35,000 -15,000 -10,000 アリルミスマッチ 抗原ミスマッチ -20,000 抗原マッチ アリルミスマッチ組合せ 0 成績不良組合せ:-1000 6 現行検索システムの問題点 ★ 適合・不適合の判断がローカス毎となっており、アリル毎 のミスマッチ数を区別できない。 A*02:01, A*24:02 vs A*02:06, A*24:20 A*02:01, A*24:02 vs A*02:01, A*24:20 →いずれも1座ミスマッチ例 と扱われる ★ 6抗原適合ドナープールの中に複数のアリル不適合例が 多数検索される。 患者HLA : A*02:01, A*26:01, B*39:01, B*15:01, DRB1*04:05, DRB1*0901 ドナー#1 HLA : A*02:01, A*26:03, B*39:01, B*15:01, DRB1*04:05, DRB1*0901 ドナー#2 HLA : A*02:01, A*26:03, B*39:04, B*15:01, DRB1*04:03, DRB1*0901 ドナー#3 HLA : A*02:06, A*26:06, B*39:02, B*15:01, DRB1*04:03, DRB1*0901 A‐B‐DR 6抗原適合者数=21名 7 現行の検索システム 適合検索(6/6抗原適合) 6/6抗原適合 0座ミスマッチ 6/6抗原適合 1座ミスマッチ 6/6抗原適合 2座ミスマッチ 6/6抗原適合 3座ミスマッチ 6/6抗原適合 4座ミスマッチ アリルレベルでは8/8適合例から 理論的には8/8ミスマッチ例まで が混在可能 ミスマッチ検索(5/6抗原適合) 5/6抗原適合 5/6抗原適合 5/6抗原適合 5/6抗原適合 1座ミスマッチ 2座ミスマッチ 3座ミスマッチ 4座ミスマッチ アリルレベルでは7/8適合例から 理論的には8/8ミスマッチ例まで が混在可能 8 新しい検索アルゴリズム #1 6抗原マッチ、DR抗原ミスマッチ、B抗原ミスマッチ、A抗原ミスマッチ毎に 異なる点数が与えられていたランク評価点を廃止し、A‐B‐DR抗原の適合の 有無によらず同一の基礎点を用いる。 #2 それぞれのローカスにアリル(またはアリルコード)レベル、抗原型レベル での不適合が存在する場合、基礎点からの減点を行う。これらの中にいわ ゆる「ハイリスク」の不適合が存在する場合にはさらに減点を行う。 #3 それぞれのローカスのアリル(またはアリルコード)が適合している場合 には、加点を行う。 #4 アリル不適合時の減点幅、アリル適合時の加点幅については、ローカス 毎の区別を行わない。 #5 上記のアリル不適合・抗原不適合の減点幅は、HLA‐A, ‐B, ‐C, ‐DRB1の アリル不適合(抗原不適合を含む)が1組であるドナー(7/8適合ドナー)を 6/8適合ドナーより上位に検索できるように調整する。 9 現行の検索システム 適合検索(6/6抗原適合) 6/6抗原適合 0座ミスマッチ 6/6抗原適合 1座ミスマッチ 6/6抗原適合 2座ミスマッチ 6/6抗原適合 3座ミスマッチ 6/6抗原適合 4座ミスマッチ (アリル適合度 0/8‐8/8) 新しい適合検索 アルゴリズム ( )カッコ内は可能性のある適合アリル数 A‐B‐C‐DR 0座ミスマッチ (8/8) A‐B‐DR 0座ミスマッチ(6/8‐8/8) A‐B‐C‐DR 1座ミスマッチ (6/8‐7/8) A‐B‐DR 1座ミスマッチ(4/8‐7/8) ミスマッチ検索(5/6抗原適合) 5/6抗原適合 1座ミスマッチ 5/6抗原適合 2座ミスマッチ 5/6抗原適合 3座ミスマッチ 5/6抗原適合 4座ミスマッチ (アリル適合度 0/8‐7/8) A, B, DR 3座の抗原レベルでの 適合数を重視 A‐B‐C‐DR 2座ミスマッチ (4/8‐6/8) A‐B‐DR 2座ミスマッチ (2/8‐6/8) 3−4座ミスマッチ (0/8‐5/8) A, B, C, DR 4座のアリルレベルでの 適合数を重視 10 現行の検索システム 新しい適合検索 アルゴリズム 適合検索(6/6抗原適合) 6/6抗原適合 0座ミスマッチ 6/6抗原適合 1座ミスマッチ 6/6抗原適合 2座ミスマッチ 6/6抗原適合 3座ミスマッチ 6/6抗原適合 4座ミスマッチ 新システムではA‐B‐DR 6抗原適合 ドナーのうち複数のアリル不適合 ローカスを有するドナーは上位に 検索されなくなる。 A, B, DR 3座の抗原レベルでの 適合数を重視 A‐B‐C‐DR 0座ミスマッチ A‐B‐DR 0座ミスマッチ A‐B‐C‐DR 1座ミスマッチ A‐B‐DR 1座ミスマッチ A‐B‐C‐DR 2座ミスマッチ A‐B‐DR 2座ミスマッチ 3−4座ミスマッチ A, B, C, DR 4座のアリルレベルでの 適合数を重視 11 現行の検索システム 新システムではA‐B‐DR1抗 原不適合ドナーの中から アリル不適合ローカス数の 少ないドナーを上位に検索 しやすくなる。 新しい適合検索 アルゴリズム A‐B‐C‐DR 0座ミスマッチ A‐B‐DR 0座ミスマッチ A‐B‐C‐DR 1座ミスマッチ A‐B‐DR 1座ミスマッチ ミスマッチ検索(5/6抗原適合) 5/6抗原適合 5/6抗原適合 5/6抗原適合 5/6抗原適合 1座ミスマッチ 2座ミスマッチ 3座ミスマッチ 4座ミスマッチ A, B, DR 3座の抗原レベルでの 適合数を重視 A‐B‐C‐DR 2座ミスマッチ A‐B‐DR 2座ミスマッチ 3−4座ミスマッチ A, B, C, DR 4座のアリルレベルでの 適合数を重視 12 新しい適合検索 アルゴリズム ★8/8適合ドナー A‐B‐C‐DRアリル適合ドナー ★8/8適合の可能性があるドナー A‐B‐DRアリル適合C座不明ドナー A‐B‐C‐DR 0座ミスマッチ A‐B‐DR 0座ミスマッチ X人検索 ★7/8適合ドナー A‐B‐DRアリル適合C座1組不適合ドナー A‐B‐DRアリルまたは抗原1組不適合 かつC座適合ドナー A‐B‐C‐DR 1座ミスマッチ A‐B‐DR 1座ミスマッチ Y人検索 ★7/8適合の可能性があるドナー A‐B‐DRアリル1組不適合C座不明ドナー A‐B‐C‐DR 2座ミスマッチ A‐B‐DR 2座ミスマッチ ★6/8適合ドナー 3−4座ミスマッチ Z人検索 問題点:データ管理システムの容量制限(X+Y+Z=100) 13 検討が必要な課題 • 0座ミスマッチ、1座ミスマッチのドナーが多数存在する場 合、100名以上の同時検索ができない。 →1座以上ミスマッチ群にさまざまなローカスの不適合ドナー が混在するため、特定のローカスの不適合ドナーを希望する 場合、十分に候補者を検索しきれない可能性がある。 今後の方針 →HLA‐A/B/C/DRB1座のアリルレベル不適合+C座の抗原レベル不適合を 同列に扱い、次いでDR座の抗原レベル不適合、A/B座の抗原レベル 不適合の順に上位から検索されるように評価点を設定する。 →ミスマッチ検索は引き続き利用可能とする。 今後、自動検索廃止の件とあわせて、「今後の方針」について 骨髄バンク認定施設を対象にパブリック・コメントを求める予定 14 自動検索とマニュアル検索の現状 • 自動検索とマニュアル検索の比率(2014年11月) 自動:23% vs マニュアル:77% • ただし、上記「自動検索」患者のうち2/3はミスマッチ検 索を同時に実施しており自動検索のみの患者はその うち1/3弱(全体の8%未満)となり、マニュアル検索実 施の患者数より、はるかに少ない。 • 10年前の患者コーディネートでは、2割がマニュアル 検索であったことを考えると状況が逆転している。 15
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