韓国のアニメーション ネパールの山道

連載 : アジアのアニメ事情 ④
韓国のアニメーション
山口 康男
韓国のオリジナル・アニメの歴史は比較的
たといわれていますが、その後原版は遺失し、
新しく、1967年、カラー長編劇場作品『ホン
・
幻の作品となっていました。しかしごく最近、
ギルドン』
(シン・ドンホン監督)
(16mmフィル
日本の収集家がそのプリントを保有している
ム、約87分)が第一作でした。日本の植民
ことが判明して韓国に寄贈されたのです。韓
地支配時代後と朝鮮戦争(1950∼53)の苦
国政府機関は唯一残っていた音源を使用し
難を経て初のオリジナル作品の製作にたどり
て原版修復し、昨年4月、40年ぶりに公開さ
着いたわけです。物語は李王朝時代の義賊
れました。シン監督は「亡くなった子供に再
の英雄・洪吉童(ホン・ギルドン)を主人公
会したような気分」と喜びを語ったということ
にしたおなじみの物語です。不遇の生まれ故
です。ぜひ日本でも見てみたいものです。
に疎んじられた少年ギルドンは、自ら家を飛
さて時代は変わって現在の韓国アニメの状
び出し、道術使いの仙人に弟子入りして神出
況です。ご承知の方も多いと思いますが韓国
『冷蔵庫の国・ココモン』
。ファンタジー・ワー
ルド、キューティ島では冷蔵庫の中の食べ物
がユニークな動物たちに変身してくり広げる
楽しいものがたり。 (製作:Olive Studio)
韓国の国産第一号作品
『ホン・ギルドン』
取材協力:韓国文化コンテ
ンツ振興院・日本事務所
鬼没の秘術を授かり、長じて金剛山の山賊
政府は近年、アニメ産業の振興育成に力を
たちを集めてその頭目となり、庶民をいたぶ
入れてきておりますが、すでにその成果は着
フル3Dのデジタル作品で、コミック・エデュテ
る貴族や悪徳役人どもの財宝を奪い貧しい
実に結実しつつあります。多くの才能や傑作・
インメントとして人気も高いというのは教育熱
人々に分け与える義賊となります。韓国民な
秀作が次々と現れ、世界各地のコンペなどで、
心な親が多い韓国のお国柄でしょうか…。
ら誰でも知っている伝説のヒーローです。一
数々の賞を得ています。
時間半の長編はセルの代替品としてビニール
テレビ・アニメで今最も高い人気を維持し
シートを裁断して使用したという文字通り苦
ているのは幼児向け作品『冷蔵庫の国・コ
心の超大作でした。抜群の興行成績を上げ
コモン』
(韓国SBSテレビにて放映中)です。
アジア太平洋現地発
日本動画協会専務理事・事務局長。東映動画で『ゲゲゲ
の鬼太郎』などの演出や、企画プロデューサーとして
『キャンディキャンディ』などに携わる。東映アニメー
ション研究所を設立。
しばた てつゆき
ネパールの山道
柴田 徹之
大 学 在 学中にはじめての 海 外で
インド二ヶ月の旅。以後、15年以
上にわたり、インド、ネパールなど
南アジアを何度も訪れる。2008
年1月、インドの放 浪 修 行 者を撮
影した写 真 集『サドゥ 小さなシ
ヴァたち』
(彩図社)を出版。
小 雨の降る東ネ
パール の山 道で
10 人程の荷役集
団と出会った。
国土の大半を山岳地帯が占めるヒマラヤ
には村人たちにとってのささやかな憩いの場
の国、ネパール。そこには無数の山村が点在
ともなっています。宿屋や茶屋は人々の出会
し、村々を結ぶ山道が様々な場所に通じてい
いの場でもあり、ネパールの山岳地帯におけ
ます。山村をめぐる旅の道中、ふと夜の山を
る駅のような役割を果たしてきました。
見上げると、はるかに高い尾根の上に小さな
ネパールの山村は意外なほど解放的です。
明かりを見つけて言い知れぬ感慨を覚える、
山の世界を結ぶ細道は、北はヒマラヤ高地か
といったことが何度もありました。人と自然と
らさらにはチベット、南はタライ平原からイン
の深い関わりを感じる象徴的な風景です。
ドへと途切れることなく通じていて、古くから
ネパールの山道でよく見かけるのが巨大な
様々な民族の旅人たちによって歩かれてきま
荷物を背負った荷役集団です。ヒマラヤ高地
した。そのため、人々は異なる文化に対してと
では動物が運搬しますが、一般的な山村で
ても寛容です。私がふらりと村々を旅して廻
は人がその役割を果たしています。百キロぐ
れたのも人々が温かく迎え入れてくれたから
らいの荷物を背負う男も珍しくなく、小さな
でしょう。村はずれから聞こえる子供たちの
少女でも二十キロぐらいの荷物を背負って何
歌声が今も耳に残ります。優しさと懐かしさ
日も旅をします。こうした荷役集団が渡り歩く
に満ち溢れるネパールの山道が今後も健在
街道沿いには茶屋や雑貨屋、そして素朴な宿
であることを願うばかりです。
に やく
霧の湧き出る早朝のヒマラヤの山村
やまぐち やすお
屋(民家とほとんど変わらない)があり、とき
(写真は筆者提供)
ACCUニュース No.374 2009.8
5