メディア革命の中での ガイドブックの戦い

メディア革命の中での
ガイドブックの戦い
株式会社トラベル・キッチン
代表取締役 抜井 ゆかり
ガイドブック業界で何が起こっているのか 1
Amazon 海外旅行ガイド ベストセラー
2013年10月20日
1位 SIMフリースマホと 2位 台湾屋台系
B級グルメ図鑑
27日間世界一周
100選 旅々台北
¥120
¥192
6位 渡辺直美のたら福
まん腹 台湾
3位 シックスサマナ
第8号 海外サバイバ
ル闘病記
¥ 250
4位 スマホユーザーの
ための 海外トラベルナ
ビ 台湾
5位 スマホユーザーの
ための 海外トラベル
ナビ タイ
¥ 95
¥100
電子書籍による劇的な価格破壊
紙媒体VS電子書籍の戦い
¥ 1260
1
ガイドブック業界で何が起こっているのか 1
ガイドブックの電子書籍化の意義
■地図との親和性が高い
ガイドブックでは地図が重要な要素
GPS利用した地図情報との連動で
携帯、タブレットなどとの親和性高い
紙のガイドブックでは、人間側で現在地を読み取り、
自らで近くのスポットを探さなければいけなかった
電子書籍では、GPSが現在地を特定、
その近くの地図を瞬時に画面に出したり、近くのスポット検索も可能
ナビゲーション機能も付加されている
ガイドブック業界で何が起こっているのか 1
ガイドブックの変化
電子書籍化・アプリ化は時代の流れ
紙媒体のガイドブック発行の出版社では、
紙媒体と電子書籍との狭間で、
価格を極端に低廉化できない ジレンマ を抱えている
例:まっぷるマガジン電子書籍版 600円 VS まっぷるマガジン紙書籍版
840円
ガイドブック業界で何が起こっているのか 2
AR技術(拡張現実)による観光情報の発達
観光ARアプリの波
●岐阜県がセカイカメラ導入
全市町村に2010年4月、3711個の県公式エアタグを設置。
●長野県佐久市
スマホ利用のARの観光案内システム2011年10月より導入。
「佐久っとナビ」-AR機能と地図による観光情報の表示/
音声と動画によるガイド/GPS機能によるお勧めルートのナビゲーション
4
ガイドブック業界で何が起こっているのか 2
AR(拡張現実)
画像型
画像を読み取りテキストや動画といった
コンテンツを表示するビジョンベース
NTTコムウェア「動フォト」(月刊JAF Mate)
位置情報型
スマートフォンなどの端末に搭載されているGPSや
電子コンパスによって位置を特定し、
カメラによって撮影された風景を関連付けて
コンテンツを表示するロケーションベース
セカイカメラ
位置情報、多言語対応、クーポン付加
秋田市 iPhone版おもてナビ
画像型+位置情報型
Layer(レイヤー) おんせん県おおいた
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.layar&rdid=com.layar
ガイドブック業界で何が起こっているのか 3
無料ウェブサイト、ブログ、SNS観光情報の氾濫
言語別ブログ記事の割合(2007年,旧テクノラティ社調査)
日本語によるブログ発信 世界の3割(37%)
英語は36%
出典:http://www.sifry.om/alerts/achives/000493.html 6
ガイドブック業界で何が起こっているのか 3
インターネットにおける情報爆発
情報量の推移(平成13年度=100とした場合)
※平成13年度=2001年度
出典:総務省条項通信政策研究所発表データを毎日新聞加工(2012年) 7
ガイドブック業界で何が起こっているのか 3
旅行情報源としてのガイドブックの存在
出典:社団法人日本観光振興協会
平成23年度版観光の実態と志向 第30回国民の観光に関する動向調査 ※上位回答のみ抜粋
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ガイドブック業界で何が起こっているのか
1:電子書籍化により価格破壊
2:AR技術(仮想現実)による観光情報の発達
費用をかけて制作しただけで利用実績が乏しいものも多い。
存在自体を知られていなくては利用されない
3:無料ウェブサイト、ブログ、SNS観光情報の氾濫
切り捨てられる情報が多いなか、
旅行ガイドブック出版社にはブランド価値がある
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ガイドブック業界の概要
国内版ガイドブック出版社 ビッグ2
JTBパブリッシング VS 昭文社
100%JTB出資の関連会社(売上117億円)
地図とガイドブックの昭文社(売上156億円)
2004年統合設立(JTB出版事業局等)
1960年創業、1978年業界参入
ムック(るるぶ情報版)
書籍(タビリエ・タビハナ・ココミル・ララチッタ)
雑誌(時刻表・ノジュール)
ムック(まっぷる情報版)
書籍(ことりっぷ、トラベルデイズ)
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ガイドブック業界の概要
海外版ガイドブック出版社ビッグ3
JTBパブリッシング VS 昭文社
VS
ダイヤモンド・ビッグ社
地球の歩き方のダイヤモンド・ビッグ社(売上高38億円)
1969年設立、1979年業界参入
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ガイドブック業界の概要
競合誌との闘い
JTBパブリッシングの看板ガイド
昭文社の看板ガイド
そっくりな表紙
絶えずライバルを意識し、
売れるデザインを互いに真似る
ガイドブック業界はレッドオーシャンになっていた
彗星のごとく現れた救世主 昭文社「ことりっぷ」
2008年(国内)、2009年(海外) 発売
爆発的ヒット 他社追随 累計販売部数 800万部
ダイヤモンド・ビッグ社「aruco」 JTBパブリッシング「タビハナ」
ガイドブック業界の概要
「ことりっぷ」成功=マーケティングリサーチの勝利
菊地由香さんに業務命令「女性向け国内旅行ガイドブックを創刊せよ」
1000人の女性の市場調査、市販ガイド購入者へのグループインタビュー
「旅行プランを立てるのは楽しいけれど面倒くさい」「調べる時間もあまりない」
ターゲットは20~30第の働く女性、2泊3日の旅
「女子旅」は電車と徒歩が基本(エリアも街歩きエリアできるように)
「旅行先で何をして、何を食べて、何を買うのか」チェックリスト
判型 コンパクトなA5変型(スクエア)、軽さ150g(通常200g以上)
情報 1/4に絞り込み(情報を厳選した上で切り捨てる潔いコンテンツ編成)
デザイン 女子向けの甘い体裁と旅行先で広げても恥ずかしくない表紙
和柄で日本の伝統色を使用し「大人可愛い」雰囲気
メモできるよう余白多く、マーカーで書きやすい紙
地図 シンプルに
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ガイドブック業界の概要
「ことりっぷ」成功=出版後もぶれないターゲット
■シリーズ初回同時配本30シリーズ (書店に新しい棚を取るのに成功)
→半年で150万部
旅の予定がなくても購入する客が続出 アームチェアトラベラー、プレゼント等、
雑貨感覚でガイドブックを購入する
■2012年12月発売 「ことりっぷ会話帖」 2~3万部の売り上げ(通常会話集は1万部)
徹底的に女性目線の会話で構成
「これ(洋服)を明日まで取り置きしてもらえますか?」
「(靴の)つま先があたります」
「日本未入荷のコスメはありますか?」
音声付きアプリのダウンロードは52万以上
■「ことりっぷ」は強力な製品ブランド
コラボ企画多数 冊子- UR都市機構、兵庫県豊岡市、政府観光局、航空会社
食料品-エースコック「ことりっぷスープ」
精密機械-オリンパス「ことりっぷ カメラさんぽ」(PEN愛用者向け)
■中国語繁体字版の「ことりっぷ 小伴旅」を台湾で発売(「東京」「京都」「沖縄」)。
(日経ビジネス2013年7月記事参照)
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ガイドブック業界の概要
「ことりっぷ」成功が業界にもたらしたもの
メリット-新たなガイドブックの可能性
デメリット-ガイドブックのターゲットが20~30代女性中心に
この層に受けると他の層がついてくるという過信
同じ層に向けたガイドブックばかりに
またもやガイドブック業界がレッドオーシャンに
新たなブルーオーシャンは?
「ブルーオーシャン戦略
競争のない世界を創造する」
ハーバード・ビジネススクール・
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プレス
観光情報利用・発信のプロセス
ITpro「自治体による観光情報発信とIT活用」より転載
(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20100219/344809
16
/)
観光情報利用・発信のプロセス
インターネットショッピングにおける購買プロセスの変化
⇒インターネット上の観光情報利用プロセスにも利用可能か?
出典:総務省「ICT インフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関
係に関する調査(平成23年) AISCEAS:アンヴィコミュ二ケーション提唱(2005年5月「宣伝会議」) 17
観光情報利用・発信のプロセス
ソーシャルメディア時代の
新しい生活者消費行動モデル概念
=観光行動モデル概念
出典:電通モダン・コミュニケーション・ラボ レポート SIPS(2011年)
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観光情報利用・発信のプロセス
年代による観光情報発信の相違
3
0
していない
20 10
その他(_)
LINE
15
SNS
13
ブログ
100
ウェブサイト
n
全体
雑誌・ガイドブック・
フリーペーパー等出
版物への投稿
Q:.観光スポットへ遊びに行った後、何か情報発信はしていますか。
している場合は、情報発信ツールを教えてください。(いくつでも)
56
100.0 13.0 15.0 20.0 10.0
3.0
0.0 56.0
年代
20代
22
1
1
9 4
2
0
11
100.0
4.5
4.5 40.9 18.2
9.1
0.0 50.0
30代
58
11
9
10 5
1
0
31
100.0 19.0 15.5 17.2 8.6
1.7
0.0 53.4
40代
20
1
5
1 1
0
0
14
100.0
5.0 25.0
5.0 5.0
0.0
0.0 70.0
出典:関東一都三県20~40代女性の観光に関するインターネットアンケート(2013年10月)19
なぜ観光に情報発信が必要なのか
観光や旅行は高額である場合が多いが
手に取って確かめることができない
何が選択の決め手となるか?
||
情報
土地の魅力がたくさんある
サービスが優れているだけでは人は集まらない
集客をするには情報の流布・伝達が命
まちづくりには熱心だが
注目される情報づくりをしているか
優れた点を情報化(ニュース化)しているか
観光地ブームの創出
JRや航空会社のキャンペーン
JRディスティネーションキャンペーン(DC)
観光協会、自治体観光課広報・宣伝
各種イベント
TV番組、映画の舞台、ロケ地 等
↓
メディアでの大量露出によりブーム創出
=メディアを扇動することでブームが創出できる
ただし、逆にこのような仕掛けがない場合、
情報を何で知って来たのかの断定が以前は難しかった
||
観光宣伝・広報の数値化、効果認定の難しさ
観光地ブームの創出
ICTの進歩で現在は数値化が可能に
例:facebook ページ インサイト 到達度など視覚化
観光地ブームの創出
観光庁がビッグデータ収集・分析・研究に取り組む
読売新聞「観光客「ビッグデータ」収集、新スポット発掘に」(2013年10月14日)
観光庁は、携帯電話などのGPSを活用して
観光客のビッグデータを収集・分析し、
新たな観光ルート・スポットの発掘に生かす研究を始める。
来年3月までにデータ分析手法を確立する予定
全国の8地域で約70万人からデータを集める。
携帯電話会社が了承を得たうえ、
5分ごろの行動履歴を収集、データベース化
出典:YOMIURI ONLINE(2013年10月14日)
観光前情報の到達経路+観光行動=観光情報の流れが明らかに
観光地側の施策
どのような方法があるか
TV番組、雑誌特集等 誘致
プレスツアー開催
メディアで取り上げてもらうため、報道関係者を招き、
現地を取材してもらう
プレスリリース、メルマガ等 送付
地域の活動・イベントや商品の説明を簡潔にまとめ、
ニューズレターやプレスリリース、メールマガジンにして、
放送局や出版社、番組制作者等に送付、配信
キャラバン
メディアを回って売り込みをする
観光地側の施策
マーケティング的な視点が必要となる
ポジショニングステートメント=観光地としての位置づけ
ポイントオブディファランス
=他と比べ飛び抜けた差別化点(属性、性格、イメージ)
マーケットターゲット
=誰のために、何を売るのか
環境分析 強み・弱み/市場環境・脅威
明らかにし、マーケットを絞らなければ情報リーチは難しい
観光地側の施策
メディア特性を知り
内容に合わせた情報リリースを心掛ける
媒体
テレビ
優位点
限界
編集時期
視覚、音声、動作の組合せ、感覚への 高価格、激しい分散化、
瞬間的露出、視聴者限
訴求、高注目率、高到達率
2ヶ月~当日
ラジオ
対象設定が容易、安価
音声のみ、テレビより低
注意、統一されていない
聴取率、瞬間的露出
2週間~当日
新聞
機動性、タイムリー、地元市場での高
浸透率、広範な受容性、高い信頼性
寿命の短さ、再現性の
悪さ、低回覧率
1週間~前日
雑誌
対象設定が容易、信頼性と評価、再
現性の高さ、寿命の長さ、回覧性の高
さ
接触から購買まで時間
がかかる、発行部数の
一部無効、掲載場所が
不定
4ヶ月~2週間
WEB
機動性、タイムリー、安価
対象限定不能、高齢者
にリーチしにくい
1ヶ月~直前
定困難
観光地側の施策
メディアが好む下記のような要素を探し出す
最優価値
新しい(新~、オープン、開業etc.)
一番(世界一、日本一、県内一、町内一etc.
唯一(世界でひとつ、日本でひとつ、他にない)
最も(~最大、~最長etc.)
話題性、ニュース性
イベント性、季節性
イメージ変容(今までと違う、こんな面もある)
観光地側の施策
情報連鎖を生む仕組みを理解する
情報は一過性のもの
ブームもやがて萎む
↓
情報連鎖を起こす
ニュースがニュースを生む仕組み
↑
「ニュース」や「ストーリー」があるか
他人に語りたくなるストーリー、二次・三次情報が必要
「へ~」「そうか~」
広く浅い情報は伝わらない、狭く深い情報が伝播してゆく
メディア、ウェブサイト、ブログ、SNS、ツイッター
観光地側の施策
インフルエンサーの活用
インフルエンサー
情報連鎖を起こすための影響力のある人々
専門家、ジャーナリスト、著名人、
番組制作者、編集者、記者・ライター
情報感度の高い生活者
メディア等のプロ以外にも、特に詳しい情報を持った
ブロガ―等
→インフルエンサーに注目され、ネットを含めたメディアに
紹介されることが情報連鎖の発火点になる
観光地側の施策
インフルエンサー活用事例
岐阜県 観光・ブランド振興課
海外パワーブロガー、フェイスブッカ―招聘
●中国の喜琳氏
2013・1/25~28
中国でトレンドに敏感で経済の中心になりつつある
1980年代生まれの女性を代表する中国人ブロガー。
現地メディア業界に従事、20代中国人女性に大きな影響力を持つ
網易ブログ版:http://xlynn.card.blog.163.com/
新浪ブログ版:http://blog.sina.com.cn/xlynncards
観光情報についてまとめ
■ガイドブック業界は、レッドオーシャンの中で、模索している
■観光情報は、ビッグデータの収集、研究により、今後活用が進むが
それを活かしきれるかどうかはまだ不確定
■観光地はマーケティング的視点を持ち、
情報発信施策を練る必要がある
■観光後情報に今後研究の余地がある可能性も
(余談)
• 東京のような大都市では、1人の受け取る広告情報は1年で2百万
• 人間の脳に収容できる言葉は5万語
• 60%の知名度を獲得するには、90回忘れてもらう必要
そのために情報をフォーカスして、何度でも接触させる
観光地の場合は、ブランド=地名という記号・信号に
情報をこめて憶えさせるのが、もっとも効率的