須崎港内で謎の物体発見! トピックス

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須崎港内で謎の物体発見!
平 成 24 年 4 月 12 日 の 午 前 中 に 須 崎 の 漁 業 者 の 方 か ら 「 今 ま で に 見 た こ と も
な い も の が 港 に 浮 か ん で い た の で 採 集 し た が 、こ れ が 何 か 教 え て 欲 し い 。」と の
連 絡 を 受 け 、須 崎 港 へ 行 っ て み ま し た 。
現場でその物体を見せてもらうと、
楕 円 球 状 を し た ゼ ラ チ ン 質 ( 写 真 1)
で内部に多数の細かい点が見られまし
た。港内の海面に浮遊していたものを
タモ網で採集したとのことでした。何
かの卵かと思いましたが、その場では
写真 1
謎の物体
分からなかったため当場へ持ち帰り、
写真 1
謎の物体
調べることにしました。
こ の 物 体 の 大 き さ は 長 径 約 3 0 c m 、短
径 約 2 0 c m 、形 は 楕 円 球 状 で 片 側 の 端 部
か ら 中 央 に か け て 長 さ 約 13cm、 深 さ 8
∼ 9 c m の 溝 が あ り ( 図 1 )、 色 は 白 色 か
ら透明、質感は前述のとおりゼラチン
質でプヨプヨしていました。
小片を採集し、実体顕微鏡で観察す
ると、球形の多数の粒がゼラチン質に
図 1
謎の物体の大きさ
埋在し、球形の 1 粒 1 粒には丸い油球が
1 つ 見 ら れ ま し た ( 写 真 2 )。 こ の 球 形 1
粒 の 大 き さ は 平 均 1 . 8 9 m m 、油 球 の 大 き さ
は 平 均 0.39mm で し た 。
このことから何らかの魚の卵であると
考えられましたので、日本産稚魚図鑑に
ある「卵と孵化仔魚の検索」で調べてみ
写真 2
観察された油球
ました。
魚 卵 に は 「卵 生 」( 体 外 で 受 精 ) と 「胎 生 」( 体 内 で 受 精 ) が あ り ま す が 、 こ の
物 体 は 体 外 に 放 出 さ れ た も の で あ る た め 「卵 生 」、 ま た 海 面 上 に 浮 い て い た こ と
か ら 「 浮 性 卵 」、 さ ら に 卵 の 1 つ 1 つ が 分 離 し て い な い た め 「 凝 集 浮 性 卵 」 と 判
断 さ れ ま し た 。「 凝 集 浮 性 卵 」 に は 「 卵 帯 」、「 卵 嚢 」、「 卵 塊 」 の 3 つ に 分 類 さ れ
ていますが、卵はゼラチン質の嚢中に収容されていたことから「卵嚢」と判断
されました。そして、卵嚢の大きさ、油球の有無などから、この謎の物体はミ
ノカサゴの卵の可能性が高いと考えられました。ただ、検索に記されている卵
及び油球の大きさより大きいため、検索にはない別種の可能性もあります。
その後、当場の水槽に収容して観察することにしました。数日後にはゼラチ
ン質がなくなり、分離した卵がみられましたが残念ながら孵化した仔魚は認め
られませんでした。
魚卵については、食物として比較的身近なものもありますが、種の同定に関
してはまだまだ不明な点も多く、今後の研究に期待されるところです。
また謎の物体を発見された際は、ご連絡いただきたいと思います。
(山田博一)
参考文献
平 井 明 夫 ( 2003) :魚 の 卵 の は な し 、 成 山 堂 書 店 .
沖 山 宗 雄 編 ( 1 9 8 8 ): 日 本 産 稚 魚 図 鑑 、 東 海 大 学 出 版 会 .