Ⅳ 土地の権利者が所在不明の場合の対応 土地等に関する登記事項証明書や住民票の写しを調査し、さらに、戸籍謄本等を調査することによ って、土地所有者等が戸籍上生存していることは確認できたものの、避難者名簿等による調査、現地 や避難先での実地調査等、各種調査をおこなっても、その者の生死を含めてその居所がどうしてもわ からない場合があります。また、登記簿上の土地所有者等が、避難者名簿等の調査により、すでに死 亡していることは判明しても、その相続人が存するかどうかが明らかでない場合もあります。 このように、様々な資料、情報等を基に土地所有者情報調査を行ったにもかかわらず、土地の所有 者等をどうしても特定することができない場合、そのままでは土地の所有者等権利者を相手方として 行うべき復興事業等のための手続が進められなくなります。このような場合には、以下のような諸制 度の活用について検討する余地があります。 1.土地の所有者等の所在が不明な場合や相続人が明らかでない場合に、その財産を管理する者を おく制度 (1)不在者財産管理人制度 (2)相続財産管理人制度 2.土地の所有者等の所在が不明な場合に、その所在不明者を法律上死亡した者とみなし又は戸籍 上死亡したものとする制度(これにより、相続を開始させ、相続人を新たな権利者とする) (1)失踪宣告制度 (2)認定死亡制度 (3)東日本大震災での死亡届の取扱いについて 3.土地の所有者等の所在が不明な場合にも対応可能な制度 (1)土地収用法の不明裁決等の制度 復興特区法上の制度として (2)不動産登記法の筆界特定制度の特例 (3)土地への立入り等 35 1.土地の所有者等の所在が不明な場合や相続人が明らかでない場合に、そ の財産を管理する者をおく制度 (1)不在者財産管理人制度 [ 摘 要 ] <目的> この制度は従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者) 不在者財産管理人制度全 に、財産を管理する者がいない場合において、家庭裁判所に、財産を管理する 般については、以下の URL 者(不在者財産管理人)の選任を申し立てて不在者財産管理人を選任してもら や文献を参考 い、その不在者の財産に関する管理、保存、場合によっては家庭裁判所から権 (参考)裁判所 HP「 不在者 限外行為の許可を得た上で処分といった行為を行えるようにする制度です。こ 財産管理人選任」 れによって、不在者の財産が、権利の行使もされず、散逸するままとなる不都 http://www.courts.go.j 合な状況が回避されることとなります。 p/saiban/syurui_kazi/k azi_06_05/index.html <内容> (参考)財産管理実務研 家庭裁判所は、申立てにより、不在者自身や不在者の財産について利害関係 究会「不在者・相続人不 を有する第三者の利益を保護するため、財産管理人選任等の処分を行うことが 存在 できます。選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理、保存するほ 新訂版」(新日本法規出 か、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって、遺産分割、 版(株)、2005) 財産管理の実務 不動産の売却等を行うことができるとされています。例えば、公共事業の事業 者が不在者財産管理人から不在者の土地を取得しようとする場合は、不在者財 手続きについて 産管理人が不在者の土地の売却のため土地の売買契約を締結することについて Ⅴ参考資料 P81 参照 家庭裁判所の許可を得る必要があります。 申立書記入例について Ⅴ参考資料 P83 参照 [参照条文] ■民法 (不在者の財産の管理) 第 25 条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理 人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所 は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずる ことができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。 ア.不在者財産管理人選任の要件 ①不在者が財産管理できないこと。 ②利害関係人または検察官からの申立てがあること。 ③管理の実益のある財産の存在すること。ただし、既存債務の履行のため (例えば、すでに売買がなされた不動産について所有権移転登記手続履 行の方法として)管理人を選任する場合もあり、必ずしも積極財産の存 在を要件とするものではありません。 36 [ 摘 要 ] イ.申立人の範囲(利害関係人又は検察官) 利害関係人とは、不在者の債権者や推定相続人など法律上正当な利害 関係を有するものをいい、単に事実上の関係を有するに過ぎないもの(単 なる友人や隣人等)は含みません。 利害関係人にあたるとされた主要な実例として、不在者の配偶者、子、 父母、兄弟姉妹など、債権者、担保権者、債務者、不在者財産につき買 収を計画している国・地方公共団体・独立行政法人など、時効により不 在者財産の所有権を取得したと主張する者、不在者財産の共有者、保管 者、福祉事務所長などがあげられます。 不在者財産管理人の申立てについては、不在者の親族等に申立てをす るよう依頼する場合のほか、市区町村が利害関係者として自ら家庭裁判 所に申し立てることも十分ありうると考えられます。例えば、公共事業 の用地買収のため、国や地方公共団体が利害関係人として家庭裁判所に 不在者財産管理人の選任を申し立て、利害関係人の選任が認められた事 例は過去においても少なくありません。具体の事例において、市区町村 がこの場合の利害関係人と認められるかについては、申立ての理由・目 的によりますので、次頁の参考事例も参考に、弁護士等の専門家と十分 ご相談ください。 ウ.不在者財産管理人のできること ①保存行為、及び ②物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目 的とする行為 ※ これらの権限を超える行為を行おうとするときは、あらかじめ家庭 裁判所の許可を得ることが必要(民法第 28 条、第 103 条) 例えば、不在者の財産である土地の売却は、保存行為等には当たら 権限行為外行為の許可に ついて Ⅴ参考資料 P82 参照 ないため、不在者財産管理人の権限を超える行為として家庭裁判所の 申立書記入例について 許可が必要となります。このため、公共事業の事業者が不在者財産管 Ⅴ参考資料 P84 参照 理人から不在者の土地を取得しようとする場合は、不在者財産管理人 が家庭裁判所の権限外行為の許可を得た上で売買契約を締結するこ とになります。 ○許可が必要な行為の例 不動産の売却、相続の放棄、遺産分割協議の成立 ○許可が不要な行為の例 建物等の修繕、建物等の賃貸、債務の履行 37 等 等 [ 摘 要 ] (参考事例) ○北海道南西沖地震災害後の奥尻町の事例 Ⅴ参考資料 P121 参照 「上述の津波による行方不明の場合以外で、地権者や相続人の行方が不明 な場合、民法第 25 条の規定に基づく不在者の財産管理人の選任に係る申立 を行うこととした。この手続きを行ったケースは3件あり、司法書士を財産 管理人として、町が申立人となって手続き中である。」 北海道庁ホームページ「北海道南西沖地震災害と復興の概要の紹介」掲載 の PDF 文書「復興町づくりに係る用地の処理及び移転補償について_(未定 稿)平成 7 年 5 月北海道企画振興部南西沖地震災害復興対策室)」29 頁 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/gkg/nanseiokijishinyoutisyoriitenhosyou_No.1.pdf ○「不在者の財産管理人選任により用地を取得した事例について」:用地ジャ Ⅴ参考資料 P154 参照 ーナル(株)2009 年 1 月号 12 頁~18 頁 北海道が施行する農業農村整備事業に関して、土地所有者が失踪宣告に より死亡とみなされていたが、本人からの連絡により失踪宣告の取消がな されたものの連絡が取れなくなり、再び所在不明状態となったことから、 不在者財産管理人を選任の上、用地取得した事例です。利害関係人となる 北海道(支庁長名)が不在者財産管理人の申立人となり、申立費用及び連 絡通信費は北海道が負担しています。 ○「原野商法により分譲された土地を財産管理人制度により取得した事 例」:用地ジャーナル 2010 年 1 月号 6 頁~11 頁 北海道開発局が施行する遊水池事業に伴い支障となる土地が、いわゆる 原野商法で取得されたものであり、その一部の土地が地主不在であったた め、不在者財産管理人を選任の上、用地取得した事例です。不在者財産管理 人の申立人は、利害関係人となる釧路開発建設部がなっています。 38 Ⅴ参考資料 P161 参照 フローチャート 事務処理の手順 [ 不在者財産管理人 家庭裁判所 摘 要 ] 出典)九州地方建設局用 地部「多数相続・多数墳 墓等事務処理の手引き」 残留財産の管理不能を確認 (1996) 不在者財産管理人選任の ための準備 + 権限外行為のための準備 不在者財産管理人選任審判 の申立て 審 問 の た め 出 頭 候補者としての審問出頭 不在者財産管理人選任審判 権限外行為許可の申立 不在者財産管理人選任 財 産 目 録 調 整 義 務 財産状況の報告 管理計算義務 審問のため出頭 権限外行為の許可の審判 管理処分の取消し請求 管理処分の取消し 管理終了報告 39 (2)相続財産管理人制度 [ 摘 要 ] <目的> 相続の対象となる財産をめぐっては、現実に種々の法律関係が錯綜している 相続財産管理人制度全般 のが通常です。かかる相続財産を相続人不存在の理由により、無管理の状態の については、以下の URL まま放置することは、相続財産の散逸を招くのみならず、相続債権者や受遺者 や文献を参考 の利益を害することとなります。よって、これらの不都合を是正して、相続財 (参考)裁判所 HP「相続財 産の管理及び清算を行い、法律関係の安定性の確保をはかるために設けられた 産管理人の選任」 のが、相続人不存在のための財産管理制度です。 http://www.courts.go.j この制度により、相続人のあることが明らかでないときは、相続財産が法人 p/saiban/syurui_kazi/k とされ、相続財産管理人が選任されますが、この選任された相続財産管理人は azi_06_15/index.html 家庭裁判所の許可を得て相続財産に属する土地等の売却を行うことが可能とさ (参考)財産管理実務研 れています(民法第 28 条(民法第 953 条により準用))。 究会「不在者・相続人不 このため、例えば、地方公共団体が公共事業のため土地を取得しようとする 存在 財産管理の実務 場合において、土地所有者がすでに死亡していることは確認できたがその相続 新訂版」(新日本法規出 人のあることが明らかでないようなケースにおいては、当該地方公共団体が、 版(株)、2005) 利害関係人として家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立て、家庭裁判所 の権限外行為の許可を得た上で相続財産管理人と土地の売買契約を締結するよ うなことが本制度の活用により可能となります。 <内容> 相続財産管理人制度では、相続人のあることが明らかでないとき(相続人全 員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれま す。)には、相続財産を当然に法人とする ※1 ことによって(民法第 951 条)、 法律上の帰属主体を創設し、その管理を相続財産管理人に委ね(民法第 952 条)、 この相続財産管理人が、相続財産法人の法定代理人として、相続財産の管理と 清算(民法第 957 条)を行うこととしています。 この相続財産管理人の選任は、利害関係人又は検察官が家庭裁判所に請求す ることによって行われ、このようにして選任された相続財産管理人は、財産を 管理、保存等するほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不動産の売 却等を行うことができるとされています。一方、家庭裁判所は、相続人をさが すため、期間を定めて公告を行い(民法第 958 条)、期間内に相続人が現れなけ れば、相続人不存在が確定します(民法第 958 条の 2)。 ※1 相続財産自体が、管理と清算等を目的とする一種の財団法人となって、独立の権利義務の帰属主体となるという趣 旨 40 [ 摘 要 ] [参照条文] ■民法 (相続財産法人の成立) 第 951 条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。 (相続財産の管理人の選任) 第 952 条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相 続財産の管理人を選任しなければならない。 2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれ を公告しなければならない。 ア.相続財産管理開始の要件 ①相続が開始したこと。 ②相続人のあることが明らかでないこと。 ③相続財産が存在すること。 イ.申立人の範囲(利害関係人又は検察官) 利害関係人又は検察官の申立てによって家庭裁判所が相続財産の管理 手続きについて 人を選任し、相続人の出現を促す捜索の意味も含めて、遅滞なくその旨 Ⅴ参考資料 P85 参照 を公告します(民法第 952 条)。 申立書記入例について 利害関係人とは、相続財産につき法律上なんらかの利害関係を有する Ⅴ参考資料 P91 参照 相続債権者又は受遺者を言いますが、特別縁故者としての相続財産分与 審判の申立人(民法第 958 条の 3 第 1 項)、相続財産について権利を取 得しようとする者や市区町村が利害関係者として自ら家庭裁判所に申し 立てることも十分ありうると考えられます。 ※1 不在者財産管理人制度と 同様に事例は過去においても少なくありません。具体の事例において、 市区町村がこの場合の利害関係人と認められるかについては、申立ての 理由・目的によりますので、次頁の参考事例も参考に、弁護士等の専門 家と十分ご相談ください。 ※1 「これらの者[相続財産を買収しようとする国、地方公共団体]は、相続財産の管理や清算自体には格別利害関係は ないといえるが、道路工事や河川工事の都合上、私有地を公共用地として取得しなければならない場合がある。その 際、対象不動産中に相続人不存在の不動産があるときは、相続財産管理人の選任を求めて、この者との間で、買収交 渉を行う実際上の必要性は否定しがたいところである。このため、これらの者が相続財産を買収しようとする場合に は、利害関係が肯定されている(昭 38.12.28 最高裁家二第 163 家庭局長回答・家月 16.2.138、前橋家審昭 59・3・22 家月 37・2・151)。」 「不在者・相続人不存在 出版(株)発行 財産管理の実務 平成 17 年 9 月 124 頁 41 新訂版」 財産管理実務研究会 編集 新日本法規 [ 摘 要 ] ウ.相続財産管理人のできること ①保存行為、及び ②物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的 とする行為 ※ これらの権限を超える行為を行おうとするときは、あらかじめ家庭 権限外行為の許可につい 裁判所の許可を得ることが必要 (民法第 28 条(民法第 953 条により準 て 用)、第 103 条) Ⅴ参考資料 P86 参照 例えば、相続財産に属する土地の売却は、保存行為等には当たらな いため、相続財産管理人の権限を超える行為として家庭裁判所の許可 が必要となります。このため、公共事業の事業者が相続財産管理人か ら相続財産に属する土地を買収しようとする場合は、相続財産管理人 が家庭裁判所の権限外行為を得た上で売買契約を締結することにな ります。 ○許可が必要な行為の例 不動産の売却、相続の放棄、遺産分割協議の成立 等 ○許可が不要な行為の例 建物等の修繕、建物等の賃貸、債務の履行 等 (参考事例) ○北海道南西沖地震災害後の奥尻町の事例 Ⅴ参考資料 P123 参照 「地権者の死亡が法律上確定しており、その相続人の存在が不明な場合 は、民法第 952 条の規定に基づく相続財産管理人の選任を行うことになる。 相続財産管理人は、不在者の財産管理人と同じ権利義務を負い、財産の管 理及び清算を行う。このケースは青苗の場合1件あり、町が司法書士を相 続財産管理人として家庭裁判所に申立を行い、手続き中である。」 北海道庁ホームページ「北海道南西沖地震災害と復興の概要の紹介」掲載 の PDF 文書「復興町づくりに係る用地の処理及び移転補償について_(未定 稿)平成 7 年 5 月北海道企画振興部南西沖地震災害復興対策室)」31 頁 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/gkg/nanseiokijishinyoutisyoriitenhosyou_No.1.pdf 42 [ ○「ひとつの相続事件において失踪宣告及び相続財産管理人制度を活用した 摘 要 ] Ⅴ参考資料 P167 参照 事例」:用地ジャーナル 2008 年 5 月号 16 頁~21 頁 北海道開発局が施行する国道防災事業に関して、土地所有者が既に死亡し ており、相続が発生していたが、相続人の1名が生死不明で相続人不確定の 状態、また、別の相続人が相続放棄したことにより相続人不存在の状態であ ったことから、失踪宣告及び相続財産管理人制度を行い用地取得した事例で す。相続財産管理人の申立人は、利害関係人となる室蘭開発建設部がなって います。 ○「家事審判手続き(相続財産管理人制度)を活用した相続解決事例」:用地 Ⅴ参考資料 P173 参照 ジャーナル 2010 年 3 月号 8 頁~12 頁 相続人が子無くして死亡し、かつ、第二、第三順位の相続人も存在しない ケースにおいて、公共事業の用地取得のため東日本高速道路株式会社が利害 関係人となり家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申立て、財産管理人とし て選任された司法書士と、家庭裁判所からの権限外行為の許可を得て、土地 売買契約を締結した事例。なお、同事例においては、並行して「相続財産法 人 相続財産管理人」を収用名宛人として福島県収用委員会へ裁決申請を行 っていたが、収用委員会の裁決手続開始決定前に相続財産管理制度の活用に より解決。 ○「特別高圧送電線新設に係る相続財産管理人の選任による送電線下用地の 権利確保事例について」:用地ジャーナル 2007 年 5 月号 19 頁~24 頁 東北電力㈱が施行する特別高圧送電線の新設工事に関して、土地所有者 が既に死亡しており、相続が発生していたが、関係する法定相続人と接触 して確認の結果、法定相続人全てが相続放棄の手続きを行っていたため、 起業者の主導により弁護士を相続財産管理人として選任し、用地取得した 事例です。相続財産管理人の申立人は、利害関係人となる東北電力㈱がな っています。 43 Ⅴ参考資料 P178 参照 フローチャート 事務処理の手順 [ 相続財産管理人 家庭裁判所 法定 期間 摘 要 ] 出典)九州地方建設局用 地部「多数相続・多数墳 相続人不存在を確認 墓等事務処理の手引き」 (1996) 相続財産管理人選任の ための準備 + 権限外行為のための準備 相続財産管理人選任審判 の申立て 相続財産管理人選任審判 審問のための出頭 候補者としての審問出頭 及びその公告 相続財産管理人選任 2 ヶ 権限外行為許可の申立 月 審問のため出頭 権限外行為許可の審判 2 ヶ 請求申出の公告 月 以 上 6 ヶ 相続人捜索の公告 月 以 上 特別縁故者への財産分与 ヶ 3 共有持分が承継すべき者のない場合、他の共有者に帰属 並びに特別縁故者に対する財産分与がされず、当該共有 の場合に、相続債権者、受遺者に対する清算手続 相続財産を国庫に帰属させる 44 月 2.土地の所有者等の所在が不明な場合に、その所在不明者を法律上死亡し たものとみなし又は戸籍上死亡したものとする制度 (1)失踪宣告制度 [ 摘 要 ] <目的> 今回の大震災での被災により土地の所有者が行方不明となったままの場合、 失踪宣告制度全般につい 相続は開始されず、また、別途財産管理人が選任されない限りその者の土地等 ては、以下の URL や文献 の財産を管理する者も存しない状態が続くこととなります。 を参考 このような状況においては、土地の所有者の所在が不明となるため、用地取 得に関する交渉等も不可能になります。 (参考)裁判所 HP「失踪 宣告」 このように、生死が一定期間不明な場合に、この生死不明の者(不在者)を http://www.courts.go.j 法律上死亡したものとみなし、生死不明の状況を解消するための制度が「失踪 p/saiban/syurui_kazi/k 宣告制度」です。この失踪宣告により、不在者は、法律上死亡したものとみな azi_06_06/index.html され、相続が開始されますので、以後、相続人を特定し、境界確認や用地取得 の手続を進めることが可能となります。 (参考)岡垣学・野田愛子 「講座・実務家事審判法 <内容> 4」(株式会社日本評論 人の生死が一定期間不明のとき、その不在者との間に利害関係を有する者は、 相手方が長期にわたり不在のため、権利の行使や義務の履行等に支障が生じる こととなります。このため民法では、利害関係人の請求により、家庭裁判所が その不在者を死亡したものとみなす失踪宣告制度が定められており、失踪の種 類としては「普通失踪」と「危難失踪(特別失踪)」の2種類が存在します。 普通失踪宣告に必要な生死不明の期間は7年間ですが、東日本大震災におい ては、例えば、津波によって生死不明となるなど危難失踪が適用される可能性 があるケースが多いと考えられます。以下では、危難失踪(特別失踪)につい て説明することとします。 [参照条文] ■民法 (失踪宣告) 第 30 条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求に より、失踪の宣告をすることができる。 2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭 遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が 去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。 (失踪の宣告の効力) 第 31 条 前条第 1 項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、 同条第 2 項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したも 45 社、1989) のとみなす。 [ 摘 要 ] <概要(危難失踪宣告)> 死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、危難の去った後一年間明 らかでないときに、利害関係者は失踪宣告の申立てをすることができます。 この申立てを受け、民法第 30 条第 2 項に基づき、家庭裁判所が失踪宣告の審 判を行います。この場合の失踪宣告を「危難失踪」又は「特別失踪」と呼んで います。 死亡の原因たるべき危難とは、それに遭遇すると人が死亡する蓋然性の高い 事変を指し、火災、地震、暴風、山崩れ、雪崩、洪水等の一般的事変のほか、 断崖からの転落、熊等野獣による襲撃などの個人的遭難をも含みます。 ア.申立手続 申立手続について 不在者の利害関係人が、不在者の最終住所を管轄する家庭裁判所に対 して、失踪宣告の申立てを行います(家事審判規則第 38 条)。 この場合の利害関係人とは、一般には、不在者の配偶者、相続人にあ Ⅴ参考資料 P92 参照 申立書記入例について Ⅴ参考資料 P94 参照 たる者、財産管理人、受遺者など、この失踪宣告を求める法律上の利害 関係を有する者」をいうと解されています ※1 。 なお、申立書には、不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)、不在者の 戸籍附票、失踪を証する資料(危難に遭遇したことを証明する資料)、 申立人の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項 証明書))を添付することが必要です(その他、審理に必要な追加書類 を求められることがあります。)。 イ.審判手続 審判手続について <内容>で紹介した、それに遭遇すると人が死亡する蓋然性の高い事 Ⅴ参考資料 P92 参照 変のほか、個人的遭難が不在者にとって失踪の原因となったものである ことが認定されると、家庭裁判所は、2か月以上の期間を設けて、公示 催告をします(家事審判規則第 40 条第 2 項)。生存又は異時死亡の届出 がなく、公示催告が満了したとき、家庭裁判所は、不在者に対し失踪宣 告をします。 失踪宣告審判が確定すると、裁判所書記官は、その旨を告示し、不在 者の本籍地の戸籍事務管掌者である市区町村長に通知します(家事審判 規則第 44 条)。 なお、失踪宣告の申立人には、戸籍法による届出義務があり、失踪宣 告の審判が確定してから10日以内に、市区町村役場に失踪の届出をし ※1 利害関係人とは、失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者をいう。(判昭 7.7.26 民集 11-1658)。 なお、学説上、失踪宣告は、生死不明の不在者の死亡を擬制するという重大な効果を生じさせるものであるから、そ の申立権者は、不在者財産管理人の請求の場合よりも厳格に解すべき、あるいは、単なる利害関係人というだけでは 足りず、相当重大な法律上の利害関係を有する者と解すべき、との説もとなえられている。 46 なければなりません(戸籍法第 94 条・第 63 条第 1 項)。 [ 摘 要 ] 戸籍法による失踪の届け ウ.失踪宣告の効果 出について 失踪宣告の審判が確定すると、不在者は失踪者になり死亡したものと Ⅴ参考資料 P93 参照 みなされるので、失踪者を中心とする身分的及び財産的法律関係につい て、例えば婚姻の解消、相続の開始及びその他死亡を要件とする法律効 果の全てが同時に発生することとなります。但し、これら効果の発生時 期は、宣告時ではなく、危難の去った時にさかのぼります(民法第 31 条)。 なお、失踪宣告は、失踪者本人の権利能力を奪うものではないことか ら、たまたま失踪者が他の土地で生活している場合や、元の住所に帰来 したときは、有効に新しい法律関係を形成することができ、失踪宣告の 効力は及びません。 (参考事例) ○北海道南西沖地震災害後の奥尻町の事例 Ⅴ参考資料 P119 参照 「津波による行方不明者については、法律上生存しているため民法第 30 条 に基づく失踪宣告を受け、相続関係を整理し、買収手続を進めることとした。 手続きとしては、いわゆる危難失踪に該当する申立書に、申立人及び不在者 の戸籍謄本、不在者の戸籍附票謄本、危難に遭遇したことを証明する資料を 添えて家庭裁判所に申し立てる。この申立ては、親族の微妙な感情問題があ り、町が主体となって進めることが困難であったため、被災後1年を経過し た段階で親族に手続きを依頼し、処理を進めている。現在申立て中の事件は 平成 6 年度中に5件あった。」 北海道庁ホームページ 「北海道南西沖地震災害と復興の概要の紹介」 掲載の PDF 文書「復興町づくりに係る用地の処理及び移転補償について_(未 定稿)平成 7 年 5 月北海道企画振興部南西沖地震災害復興対策室)」27 頁 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/gkg/nanseiokijishinyoutisyoriitenhosyou_No.1.pdf ○「ひとつの相続事件において失踪宣告及び相続財産管理人制度を活用した 事例」:用地ジャーナル 2008 年 5 月号 16 頁~21 頁 北海道開発局が施行する国道防災事業に関して、土地所有者が既に死亡し ており、相続が発生していたが、相続人の1名が生死不明で相続人不確定の 状態、また、別の相続人が相続放棄したことにより相続人不存在の状態であ ったことから、失踪宣告及び相続財産管理人制度を行い用地取得した事例で す。失踪宣告の申立人は、相続人がなっています。 47 Ⅴ参考資料 P167 参照 フローチャート 申立人(利害関係人) 失踪宣告申し立て [ 家庭裁判所 市区町村長 法定 期間 事件の受理 (1996) 家裁調査官による事前調査 戸籍謄本各1通 ロ)失踪を証する資料 公示催告 家事審判規則39~41条 ・公示催告の方法 家事審判規則41・21条 ・公示催告の内容 家事審判規則40条① ※ 家庭裁判所は、失踪宣告の 申立てがあると、まず利害関 係人と認められるか判断し、 また失踪者が真に生死不明で あるか生存の有無、音信の最 後がいつであったかを判断す るため、失踪者の縁故関係、 立寄りを考えうる諸方面へ照 会、音信最後の手紙、警察の 捜索願い、他官公庁による捜 査、菩提寺の過去帳、石塔の 記入時期などを調査し失踪期 間の開始時、失踪期間経過の 要件を判断する。 家事審判規則40条② 普危 通難 失失 踪踪 6 2 ヵ ヵ ・公示催告の期間 月月 失踪宣告の審判 生存または異時死亡の届け出 がなく公示期間を満了した時 即時抗告 家事審判法14条 家事審判規則42条①、② 家事審判規則27条② 失踪宣告審判の即時抗告: 不在者、利害関係人 失踪宣告申立却下審判の即 時抗告: 申立人 審判の告知 家事審判法13条 失踪宣告の審判確定 失踪宣告の公告 不在者の本籍地の戸籍事務 家事審判規則44条、21条 管掌者へ通知 家事審判規則44条 書類交付申請 (確定証明書) 出典)九州地方建設局用 墓等事務処理の手引き」 失踪宣告の申立書 ハ)利害関係を証する資料 ] 地部「多数相続・多数墳 普通失踪 7年 (戸籍附票謄本など) 要 家事審判法9条①甲類4 危難失踪 1年 (添付書類) イ)申立人、不在者の 摘 確定証明書交付 10日 以内 失踪届 戸籍簿に失踪事項記載 (戸籍法94条、63条①) 審判確定の日から10日以内 (添付書類) イ)失踪宣告審判書謄本 ロ)確定証明書 48 (2)認定死亡制度 [ 摘 要 ] <目的> 失踪宣告制度と同様に、生死不明の状態を解消することを可能とする制度の (参考)関東弁護士会連合 一つで、戸籍手続上の必要から、官公署(警察署、海上保安庁等)が死亡の事実 会「改訂版 を確認するものです。戸籍に死亡の旨が記載されることにより、死亡したもの 法律実務ハンドブック」 と推定されますので、反証が示されない限り、相続手続を進めることが可能と (新日本法規出版(株)、 なり、以後、相続人の特定等の調査手続を進めることができるようになり、さ 2011) らに、相続人を相手に契約手続を行うことも可能となります。 なお、東日本大震災における遺体未発見者については、警察署長等の責任で 死亡を認定し報告する認定死亡による処理は、限られた情報を前提に判断せざ るを得ないこともあってほとんどのケースにおいて困難とされ、このような実 情を踏まえて、別途、後述の法務省通知「東日本大震災により死亡した死体未 発見者に係る死亡届の取扱いについて」による取扱いができることが明確化さ れました。 ※1 <内容> 水難、火災その他の事変により、死亡したのは確実であっても遺体が発見さ れない場合には、戸籍法第 89 条により、取り調べをした官公署(警察署、海上 保安庁、外務省)が死亡を認定して死亡地の市区町村長に報告し、市区町村が 戸籍簿に死亡を記載する措置が行われることがあります。これを、「認定死亡」 と言います。 戸籍には、正確な死亡時刻がわからないことから、「推定する」と明記され ます。死亡が認定された後、生存が確認されたり、死亡日時が明らかになった 場合は、戸籍の訂正が行われます。 なお、取り調べをした官公署による認定死亡は、実務上は親族等からの認定 死亡の願出により行われるようです。 [参照条文] ■戸籍法 第 89 条 水難、火災その他の事変によって死亡した者がある場合には、その取調をした官 庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外国又は 法務省令で定める地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告 をしなければならない。 ※1 平成 23 年 5 月 11 日衆議院法務委員会 警察庁生活安全局長及び法務大臣答弁参照 49 Q&A 災害時の [ <認定死亡の効果> 取り調べをした官公署が死亡を認定しても、法律上、死亡したものとみなさ れるわけではありませんが、官公署が死亡地の市区町村長に死亡の報告をする と、戸籍に死亡した旨が記載されることとなります。戸籍に記載された認定死 亡の記載は、反証が示されない限り、当該不明者は戸籍記載の死亡の日に死亡 したものと推定されるので、相続手続などを進めることが可能となります。 ◆失踪宣告と認定死亡の違い 失踪宣告も認定死亡も、現実にその人が死亡したことが確認されていなく ても、死亡した蓋然性が高いという判断により、一定の要件を満たす場合に、 その人が死亡したものとして取り扱うという点では共通していますが、下表 の点で相違があります。 法的根拠 手続 失踪宣告 認定死亡 民法第30条以下 戸籍法第89条 利害関係人が家庭裁判所 取り調べをした官公署( に申し立て、家庭裁判所が 警察署、海上保安庁等)が 失踪宣告の審判を行う。 死亡を認定して死亡地の市 区町村に報告 法的効果 法律上死亡したものとみ なされる。 失踪宣告の効果をくつが 死亡したものと推定され る。 生きているという証拠( えすには、失踪者本人又は 反証)を提出すれば、くつ 利害関係者からの申立てに がえすことが可能 よる家庭裁判所の失踪宣告 取消の審判が必要 50 摘 要 ] (3)東日本大震災での死亡届の取扱いについて [ 摘 要 ] <目的> 本来、死亡届を提出するには、戸籍法上原則として診断書又は検案書を添付 (参考)法務省 HP「御遺体 することが必要です。しかしながら、遺体が未発見の方についてはこの診断書 が発見されていない場合で 等の書類を添付することができないため、震災により死亡したことは確実と考 も死亡届を提出できます」 えられるような場合でも、死亡届の提出は困難でした。このような事態に対し http://www.moj.go.jp/MI て、戸籍届出人(戸籍法第 87 条に基づく同居の親族等)の負担軽減や事務処 NJI/minji04_00026.html 理の円滑化の観点から、平成 23 年 6 月 7 日に法務省民事局民事第一課長通知 「東日本大震災により死亡した死体未発見者に係る死亡届の取扱いについて 手続きについて (通知)」が出され、東日本大震災により死亡したのは確実と推定されるが遺 Ⅴ参考資料 P95 参照 体が発見されない場合は、同居親族等の死亡届出義務者が死亡届とともに、診 通知について 断書又は検案書 ※1 に代えて、「死亡の事実を証すべき書面」として申述書等の Ⅴ参考資料 P96 参照 書類を提出し、市区町村(又は法務局)がその死亡を認定したときは、市区町 村は当該死亡届を受理できることが明確化されました。 この手続により、死亡届が提出され、それが受理されると、相続の手続を行 うことが可能となります。以後、相続人の特定等の調査手続を進めることがで きるようになり、さらに、相続人を相手に契約手続を行うことも可能になりま す。 <内容> 認定死亡制度と違い、死亡届出義務者自らが、死亡届とともに、診断書又は 検案書に代えて死亡の事実を証すべき書面たる申述書等の書類を提出するこ とで、市区町村(または法務局)が死亡を認定します。 [参照条文] ■戸籍法 第 86 条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知った日から七日以内・(略)・・ に、これをしなければならない。 2 3 届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。 一 死亡の年月日時分及び場所 二 その他法務省令で定める事項 やむを得ない事由によって診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の 事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又 は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない。 ※1 検案書とは、医師が死体について死亡の事実を医学的に確認し(検案)、死亡事由などについて記した書類のこと。 死亡診断書と同様に死亡を証明する効力を持つ。 51 [ ア.手続 ①市区町村長が、把握している情報を踏まえて、死亡届に添付された「死 亡した事実を証する書面」から本人が死亡していると認定できると判断 した場合 市区町村長は、管轄法務局長等に当該死亡届の受理又は不受理につき 照会することなく、死亡届を受理して差し支えないとされています。 ②市区町村長が判断できかねる場合 市区町村長は、管轄の法務局長等に対して死亡届の受理又は不受理に ついて照会を行います。法務局長等は、所要の調査を行ったうえで、市 区町村長に対して当該死亡届の受理又は不受理について指示を行い、こ れに基づき市区町村長が死亡届を受理又は不受理として処理します。 イ.提出者の範囲 戸籍法第 86 条に基づく死亡届を提出できる者は次のとおりです。 ①戸籍法第 87 条第 1 項に規定する届出義務者 同居の親族、その他の同居者、家主・地主又は家屋若しくは土地の管理 人 ②戸籍法第 87 条第 2 項に基づき死亡届を行うことができる者 同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人及び任意後見人 なお、市区町村は、戸籍法第 87 条 1 項の届出義務者にも、同条 2 項の 死亡届を行うことができる者にも該当しませんので、ご注意ください。 52 摘 要 ] 3. 土地の所有者等の所在が不明な場合にも対応可能な制度 (1)土地収用法の不明裁決制度 [ 摘 要 ] <目的> 土地収用法に基づく収用裁決手続においては、本来、土地所有者等の氏名及 (参考)小澤道一「逐条 び住所を明らかにして行うことが原則ですが、同法は、一定の要件の下で、土 解説 地所有者等の氏名や住所を明らかにしないまま、裁決申請の手続や裁決等の一 次改訂版 連の手続を行うことを認めています。 ぎょうせい発行、2003) 土地収用法 第 2 上・下」 ((株) 所有者情報調査の目的が事業用地の取得等である場合、土地所有者等の住所 (参考)高田賢造「新訂 や生死が明らかでなく、その土地所有者等の親族等より協力が得られる時は、 土 地 収 用 法 」( 日 本 評 論 財産管理人制度等の活用によって対応することがまず考えられますが、他の用 社、1965) 地取得の進捗状況、当該事業をめぐる地元の状況、手続に要する時間等を比較 (参考)収用裁決研究会 して、財産管理人制度等の活用による任意取得ではなく、土地所有者等の住所 「改訂版 や氏名を明らかにしないまま土地収用手続を行うことが効率的で望ましいと考 の裁決申請書等作成マニ えられる場合があり得ます。このような場合に活用されうる制度がこの不明裁 ュ ア ル 」( ケ イ ブ ン 出 版 決制度です。 (株)、2004) 起業者のため <内容> [土地収用法の趣旨] 事業に必要となる土地等を取得するためには、土地等を取得しようとする者 (起業者)と土地等の所有者との間に、その土地等の取得について合意が成立 することが必要ですが、土地等の所有者の理解が得られない場合には、土地等 の取得ができず、事業の遂行そのものが不可能となる場合があります。 土地等の収用制度の基本法である土地収用法は、憲法 29 条の規定を受けて、 所有者の意思にかかわらず土地等を収用するための要件とその手続、損失の補 償などについて定めています。 [土地所有者等の氏名又は住所を記載しない裁決申請] 本来、収用委員会に提出する裁決申請書には、「土地所有者及び土地に関し て権利を有する関係人の氏名及び住所」を記載した書類を添付しなければなり ません。しかしながら、例外的に、「起業者が過失がなくて知ることができな いもの」については記載することを要しないこととされています(土地収用法 第 40 条第 2 項。明渡裁決の申立ての場合も同様(同法第 47 条の 3 第 2 項)。)。 53 不明裁決制度について Ⅴ参考資料 P100 参照 [ 摘 要 ] [土地所有者等の氏名又は住所を明らかにしない裁決(不明裁決)] また、収用委員会が権利取得裁決を行う場合も、原則としては、補償金を受け るべき土地所有者及び関係人の氏名及び住所を明らかにして裁決しなければな りませんが、「土地所有者又は関係人の氏名又は住所を確知することができな いとき」は、これを明らかにすることなく裁決をすることが認められています (「不明裁決」同法第 48 条第 4 項。明渡裁決にも準用(同法第 49 条 2 項))。 [土地所有者等の氏名又は住所を記載しない裁決申請における「過失がないこ と」の意味] 土地収用法第 40 条第 2 項に基づき「土地所有者及び土地に関して権利を有す る関係人の氏名及び住所」に関し「起業者が過失がなくて知ることができない もの」について、裁決申請書の添付書類に記載しない場合には、同法施行規則 第 17 条第 2 号イにより、起業者において知ることができないことについて「過 失がないこと」を証明しなければならないとされています。 この「過失がなくて知ることができない」とは、例えば、「登記簿の調査、 登記名義人への照会、戸籍簿・住民票の調査、周辺住民への照会、占有関係等 の現地調査等により起業者が真摯な努力をしても、知ることができないことを いう。(中略)起業者は、登記簿や戸籍簿の写し等関連資料を整えて、真摯な調 査を行ったことを証明すればよい。」(小澤)、「登記簿の調査をなすべく、 これをしないときは過失があるというべき」(高田)、「過失がないことは、 起業者が通常考えられる調査を実施した経過及び結果と、他に調査の方法がな いことを適切な資料等があればそれらを添付して説明(証明)することである。」 (収用裁決研究会)等と説明されています。下に参考事例を附してありますが、 更なる詳細については、収用委員会への申請ないし申立時に所管の収用委員会 事務局にご相談ください。 なお、裁決申請後、収用委員会の裁決において、「土地所有者又は関係人の 氏名又は住所を確知することができないとき」にあたるとして不明裁決が行わ れうるかどうかは、具体の事案の中で、各収用委員会において判断されること となります。 (参考事例) Ⅴ参考資料 P184 参照 ○「共有持分権者の一部について不明裁決を行った裁決の例」:用地ジャーナ ル 1996 年 4 月号 20 頁~21 頁 土地の共有者 34 名中 10 名の住所及び氏名について、土地登記簿及び戸 籍等を調査し、かつ地元の古老の意見等を徴しても、その生存、所在地、 相続人の有無等について確認できないため、土地収用法第 48 条第 4 項ただ し書により不明として、裁決を行った事例 54 [ フローチャート 【起業者】 事業準備のための立入り 【国土交通大臣又は都道府県知事】 事前説明会の開催 事業の認定の申請 事業認定申請書の公告・縦覧等 事業の認定 原 則 周知措置 1 年 以 内 土地調書・物件調書の作成 4 年 以 内 裁決手続開始決定 裁決手続開始登記 審 理 権利取得 事 業 認 定 意見書提出 の 手 公聴会開催請求 続 【収用委員会】 裁決申請 (※土地所有者等の氏名・住所 を記載しない申請) 【土地所有者等】 収 用 裁 決 の 意見書提出 手 続 ・意見陳述 権利取得裁決 (※不明裁決) 明渡裁決の申立て 明渡裁決 (※不明裁決) (※土地所有者等の氏名・住所を 記載しない申立て) 土地の引渡し ・物件の移転 補償の払渡 (※補償金の供託) 代行又は代執行の請求 代行又は代執行 55 摘 要 ] 東日本大震災復興特別区域法上の制度 平成 23 年 12 月 26 日に施行された復興特区法では、筆界特定制度の特例及び [ 摘 要 ] ◆復興特別区域基本方針 復興整備計画の作成等や復興整備事業実施の準備又は実施のための土地の立入 40 頁 り等についての制度が設けられました。これらは、土地の所有者の所在が不明 http://www.reconstruct な場合への対応を含めたものであり、可能な場合には、これらを積極的に活用 ion.go.jp/topics/HPtok し、復興整備事業の円滑な実施に資することが期待されます。 ku%20kihonhoushin.pdf# search='復興特別区域基 (2)不動産登記法の筆界特定制度の特例 本方針' ◆復興整備計画作成マニ ュアル 24-26 頁 <趣旨> http://www.reconstruct 土地の境界を明確化するための手段として筆界特定制度の利用が考えられま す。筆界特定制度は、筆界特定登記官が,外部専門家である筆界調査委員の意 見を踏まえて,土地の筆界の現地における位置を特定する制度です。しかしな がら、筆界特定の申請者は、原則として土地の所有者として登記されている人 (土地の所有権登記名義人)やその相続人等とされています(不動産登記法第 131 条第 1 項)。 これに対して、復興特区法第 73 条では、復興整備事業(土地収用法による事 業認定の告示があった事業、都市計画法により土地収用法による事業認定の告 示があったとみなされる事業等に限ります。)の実施主体は、筆界特定登記官 に対し、復興整備事業の実施区域内の土地及びこれに隣接する他の土地との筆 界について、これらの土地の所有権登記名義人等の承諾を得て、筆界特定を申 請することが可能となりました。(なお、これらの所有権登記名義人等のうち にその所在が判明しない者があるときは、その者の承諾を要しないで申請する ことができます。) [参照条文] ■東日本大震災復興特別区域法 (不動産登記法の特例) 第 73 条 第 46 条第 6 項の規定により公表された復興整備計画に記載された復興整備事 業(土地収用法第 26 条第 1 項、公共用地の取得に関する特別措置法(昭和 36 年法律 第 150 号)第 10 条第 1 項又は都市計画法第 62 条第 1 項の規定により告示された事業 に限る。以下この項において単に「復興整備事業」という。)の実施主体は、不動産 登記法(平成 16 年法律第 123 号)第 131 条第 1 項の規定にかかわらず、同法第 125 条に規定する筆界特定登記官に対し、一筆の土地(復興整備事業の実施区域として定 められた土地の区域内にその全部又は一部が所在する土地に限る。)とこれに隣接す る他の土地との筆界(同法第 123 条第一号に規定する筆界をいう。)について、同法 第 123 条第二号に規定する筆界特定の申請をすることができる。 56 ion.go.jp/topics/2012/ 01/000476.html 2 前項の申請は、対象土地(不動産登記法第 123 条第三号に規定する対象土地をいう。) [ 摘 要 ] の所有権登記名義人等(同条第五号に規定する所有権登記名義人等をいう。)の承諾 がある場合に限り、することができる。ただし、当該所有権登記名義人等のうちにそ の所在が判明しない者がある場合は、その者の承諾を得ることを要しない。 ■不動産登記法 (定義) 第 123 条 一 筆界 表題登記がある一筆の土地(・・略・)とこれに隣接する他の土地(表題登 記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時 にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。 二 筆界特定 一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について、この章の定めるとこ ろにより、筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができ ないときは、その位置の範囲を特定すること)をいう。 (筆界特定の申請) 第 131 条 土地の所有権登記名義人等は、筆界特定登記官に対し、当該土地とこれに隣接 する他の土地との筆界について、筆界特定の申請をすることができる。 以下、「復興整備計画作成マニュアル」(平成 24 年 1 月 31 日公表)より引 用 ◆復興整備計画作成マニ [特例の要件] ュアル 24-26 頁 本特例の適用に当たっては、次の要件を満たす必要があります。 http://www.reconstruct ① ion.go.jp/topics/2012/ 申請者が復興整備計画に記載された復興整備事業の実施主体である こと。 ② 01/000476.html 当該復興整備事業が土地収用法第 26 条第 1 項の事業認定の告示があ った事業、公共用地の取得に関する特別措置法第 10 条第 1 項の特定公 共事業の認定の告示があった事業及び都市計画法第 62 条第 1 項の都市 計画事業の認可等の告示があった事業のいずれかであること。 ③ 筆界特定の対象土地のうち少なくとも一方の全部又は一部が当該復 興整備事業の実施区域内に所在すること。 ④ 筆界特定の申請をすることについて、土地の所有権登記名義人等の承 諾があること(土地の所有権登記名義人等の所在が不明の場合には、承 諾を得なくても申請を行うことができます。)。 [申請書類等] ・筆界特定の申請に当たっては、不動産登記規則(※)第 207 条第 2 項及び 第 3 項に規定する筆界特定申請情報(筆界特定の申請に至る経緯その他の 具体的な事情、工作物や囲障又は境界標の有無、筆界として主張する線等) 並びに同規則第 209 条第 1 項に規定する筆界特定添付情報(所有権を証明 57 する登記事項証明書、代理人による申請の場合の代理権限証明書等)を明 らかにし、申請する必要があります。 ・特に本特例を活用する場合には、申請に当り、上記「特例の要件」を満た すことを証する必要があるため、以下に例示する書類等を用いることが想 定されます。 ・【特例の要件】①、②を満たすことを証する書類として、具体的には、公 表された復興整備計画の写し及び土地収用法等の規定による告示が掲載 された公報等の写し [不動産登記規則第209条第1項第7号イ関係] ・【特例の要件】③を満たすことを証する書類として、具体的には、公表 された復興整備計画の写し、土地収用法等の規定による告示が掲載され た公報等の写し及び実施区域を表示する図面、図書等の写し(土地収用 法第26条の2第2項、都市計画法第60条第3項第1号、第2号等参照) [不動産登記規則第209条第1項第7号ロ関係] ・【特例の要件】④を満たすことを証する書類として、具体的には、対象 土地の全ての所有権登記名義人等の筆界特定申請についての承諾書(所 有権登記名義人等の記名押印、印鑑証明書を添付) [不動産登記規則第 209 条第1項第7号ハ、第 211 条第7項関係] ・また、土地の所有権登記名義人等の所在が不明の場合には、必要な調査を 行ったにもかかわらず、所有権登記名義人等の所在が判明しないことを証 する書類として、具体的には、申請人が所在探索のための調査の内容及び その結果を記載した書面(申請人の記名押印、印鑑証明書を添付)及び その調査の内容を裏付ける資料(所有権登記名義人等が自然人の場合は、 例えば登記名義人等が登記簿上の住所に居住していないことを市区町村 長が証明した書面等、所有権登記名義人等が法人である場合は、例えば当 該法人の登記簿、当該法人の代表者の登記簿上の住所に送付した郵便物が 不到達であったことを証する書面等)を添付する必要があります。 [不動産登記規則第 209 条第 1 項第 7 号ハ、第 211 条第 7 項関係] ※不動産登記規則の一部を改正する省令(平成 23 年法務省令第 41 号) による改正後の不動産登記規則(平成 23 年 12 月 26 日施行) [留意事項] ・本特例に係る申請に当たっては、通常の筆界特定の手続と申請の要件や申 請書類等が異なることや、境界杭等の震災による滅失や地形の変容等が多 く想定されるほか、土地の所有権登記名義人等を始めとする関係人やその 他の関係者の所在が不明である等、通常とは異なる様々な状況が想定され ることから、本特例の活用が復興整備事業の円滑な実施に資するか否かと いった観点から、筆界特定の申請を行う土地を管轄する登記所の筆界特定 58 [ 摘 要 ] 登記官に、申請前に良くご相談下さい。また、申請後においても、同様の 観点から、筆界特定登記官と柔軟な協議を行って下さい。 ・なお、この留意点に関しては、別途、法務省から法務局・地方法務局にも 周知されています。 (3)土地への立入り等 <趣旨> 被災地における円滑な復興を実現するためには、復興整備計画の作成や復興 整備事業の実施に当たって、調査又は測量のために他人の占有する土地への立 入りや、障害物の伐除・土地の試掘等の必要が生じることが想定されます。こ のような場合、通常であれば、土地の所有者や占有者の同意を得た上でそのよ うな行為を行うことになりますが、今般の被災地においては、津波により多く の住民が所在不明となったり連絡をとることに支障が生じて所有者の同意等が 得られないために土地への立入り等が困難となり、事業に必要な測量や地質の 調査等を行うことができず、事業の迅速かつ適正な実施が不可能となるおそれ があります。 このため、土地の所有者や占有者の同意が得られない場合でも、必要な限度 において、土地への立入り、障害物の除去等を可能とし、円滑な復興事業の実 施を可能とする必要があります。 <特例措置の内容> ア.復興整備計画の作成又は変更のための測量又は調査を行うときは、その 必要の限度において、土地への立入りを行うことができます。また、当該 測量又は調査のため必要な場合で、所有者や占有者の同意が得られないと きは、被災関連市区町村長の許可による障害物の伐除や被災関連都道県知 事の許可による土地の試掘を行うことができます。 イ.復興整備計画に記載された復興整備事業の実施の準備又は実施のための 測量又は調査についても、ア.と同様、土地への立入り、障害物の伐除及 び土地の試掘等を行うことができます(復興整備事業の実施主体が国、都 道県又は市区町村以外の場合には、立入りについても被災関連市区町村長 の許可が必要)。 なお、立入り等の行為により損失が発生した場合には、損失を与えた者が損 失を受けた者に対して通常生ずべき損失を補償することも併せて措置するとと もに、必要な許可を受けなかった場合等には罰則が科せられます。 59 [ 摘 要 ] <現行制度との関係> [ 今回の措置について、復興整備計画の作成等に関しては、都市計画の決定等 のための測量又は調査のための土地の立入り等が、復興整備事業に関しては、 市街地再開発事業の施行の準備又は施行のための測量又は調査のための土地の 立入り等が、それぞれ類似の制度として存在します。その他にも、道路法、下 水道法、土地収用法など各個別法において、事業に応じた土地への立入り等に 関する規定が置かれています。 復興整備事業の中には、これら現行法において今回の措置と同様の行為が可 能なものも存在する一方で、各個別法では、規定している行為、立入りの許可 権者、所有者への通知等の手続について、差異があります。復興特区法では、 復興整備事業を対象にして立入り等の措置を統一的に規定してわかりやすい制 度とするとともに、例えば集団移転促進事業など現行法では立入り等の行為に ついて規定されていない事業において、新たに立入り等を可能としており、復 興整備事業を実施する初期段階において意義のある制度となっています。 [参照条文] ■東日本大震災復興特別区域法 (復興整備計画のための土地の立入り等) 第65条 被災関連市町村等は、復興整備計画の作成又は変更のため他人の占有する土地に 立ち入って測量又は調査を行う必要があるときは、その必要の限度において、他人の占 有する土地に、自ら立ち入り、又はその命じた者若しくは委任した者に立ち入らせるこ とができる。 2 前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、立ち入ろうとする日の 三日前までに、その旨を当該土地の占有者に通知しなければならない。 3 第1項の規定により建築物が存し、又は垣、柵等で囲まれた他人の占有する土地に立ち 入ろうとするときは、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を 当該土地の占有者に告げなければならない。 4 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定す る土地に立ち入ってはならない。 5 土地の占有者は、正当な理由がない限り、第1項の規定による立入りを拒み、又は妨げ てはならない。 (復興整備計画のための障害物の伐除及び土地の試掘等) 第66条 前条第1項の規定により他人の占有する土地に立ち入って測量又は調査を行う者 は、その測量又は調査を行うに当たり、やむを得ない必要があって、障害となる植物若 しくは垣、柵等(以下「障害物」という。)を伐除しようとする場合又は当該土地に試 掘若しくはボーリング若しくはこれらに伴う障害物の伐除(以下「試掘等」という。) を行おうとする場合において、当該障害物又は当該土地の所有者及び占有者の同意を得 ることができないときは、当該障害物の所在地を管轄する被災関連市町村長の許可を受 けて当該障害物を伐除し、又は当該土地の所在地を管轄する被災関連都道県知事の許可 60 摘 要 ] を受けて当該土地に試掘等を行うことができる。この場合において、被災関連市町村長 が許可を与えようとするときは障害物の所有者及び占有者に、被災関連都道県知事が許 可を与えようとするときは土地又は障害物の所有者及び占有者に、あらかじめ、意見を 述べる機会を与えなければならない。 2 前項の規定により障害物を伐除しようとする者又は土地に試掘等を行おうとする者 は、伐除しようとする日又は試掘等を行おうとする日の三日前までに、その旨を当該障 害物又は当該土地若しくは障害物の所有者及び占有者に通知しなければならない。 3 第1項の規定により障害物を伐除しようとする場合(土地の試掘又はボーリングに伴う 障害物の伐除をしようとする場合を除く。)において、当該障害物の所有者及び占有者 がその場所にいないためその同意を得ることが困難であり、かつ、その現状を著しく損 傷しないときは、被災関連市町村等又はその命じた者若しくは委任した者は、前二項の 規定にかかわらず、当該障害物の所在地を管轄する被災関連市町村長の許可を受けて、 直ちに、当該障害物を伐除することができる。この場合においては、当該障害物を伐除 した後、遅滞なく、その旨をその所有者及び占有者に通知しなければならない。 (復興整備事業のための土地の立入り等) 第67条 第46条第6項の規定により公表された復興整備計画に記載された復興整備事業 (同条第2項第4号ヌ、ル又はワに掲げる事業にあっては、実施主体が国、都道県又は市 町村であるものに限る。以下この条、次条及び第71条において単に「復興整備事業」と いう。)の実施主体(以下この条及び第69条から第71条までにおいて単に「実施主体」 という。)は、復興整備事業の実施の準備又は実施のため他人の占有する土地に立ち入 って測量又は調査を行う必要があるときは、その必要の限度において、他人の占有する 土地に、自ら立ち入り、又はその命じた者若しくは委任した者に立ち入らせることがで きる。ただし、国、都道県又は市町村以外の実施主体にあっては、あらかじめ、被災関 連市町村長の許可を受けた場合に限る。 2 第65条第2項から第5項までの規定は、前項の規定による復興整備事業のための土地の 立入りについて準用する。 (復興整備事業のための障害物の伐除及び土地の試掘等) 第68条 前条第1項の規定により他人の占有する土地に立ち入って測量又は調査を行う者 は、その測量又は調査を行うに当たり、やむを得ない必要があって、障害物を伐除しよ うとする場合又は当該土地に試掘等を行おうとする場合において、当該障害物又は当該 土地の所有者及び占有者の同意を得ることができないときは、当該障害物の所在地を管 轄する被災関連市町村長の許可を受けて当該障害物を伐除し、又は当該土地の所在地を 管轄する被災関連都道県知事の許可を受けて当該土地に試掘等を行うことができる。こ の場合において、被災関連市町村長が許可を与えようとするときは障害物の所有者及び 占有者に、被災関連都道県知事が許可を与えようとするときは土地又は障害物の所有者 及び占有者に、あらかじめ、意見を述べる機会を与えなければならない。 2 第66条第2項及び第3項の規定は、前項の規定による復興整備事業のための障害物の伐 除及び土地の試掘等について準用する。 61 [ 摘 要 ] ■東日本大震災復興特別区域法施行令 [ (収用委員会に対する裁決の申請) 第 11 条 法第 70 条第 4 項の規定により土地収用法(昭和 26 年法律第 219 号)第 94 条第 2 項 の規定による裁決を申請しようとする者は、内閣府令で定める様式に従い、次に掲げる 事項を記載した裁決申請書を収用委員会に提出しなければならない。 一 裁決申請者の氏名及び住所 二 相手方の氏名及び住所 三 復興整備事業(法第 67 条第 1 項に規定する復興整備事業をいう。)の種類(復興 整備計画(法第 46 条第 1 項に規定する復興整備計画をいう。)を作成し、又は変更す る場合にあっては、その旨) 四 損失の事実並びに損失の補償の見積り及びその内訳 五 協議の経過 ■東日本大震災復興特別区域法施行規則 (収用委員会に対する裁決申請書の様式) 第 43 条 令第 11 条の内閣府令で定める様式は、別記様式第十とする 別記様式第 10(第 43 条関係) (略) 参考:復興特区法第71条について <趣旨> 被災地においては、多数の行方不明者や相続の発生、仮設住宅への入居者や 県外の避難者の存在により、通常時に比して土地所有者情報調査に多大な困難 を伴うことが想定されます。 復興整備計画の作成や復興整備事業の実施のためには、土地等の所有者・占 有者の情報等を把握する必要がありますが、これらの情報は、特に個人の識別 情報を含む場合は、元々の収集目的以外の使用が難しく、被災地における復興 のために十分な活用がなされないのが実情です。 このため、市区町村等が復興整備計画を作成若しくは変更し、又は実施主体 が復興備事業の実施の準備若しくは実施するに当たって、関係行政機関や関係 地方公共団体の長、公私の団体に対して、資料の提出その他必要な協力を求め ることができることを明らかにしました。 この規定により、市区町村や実施主体は、通常であれば本来の目的以外の使 用が困難な資料についても、提供を受けやすくなる等、各種の団体から必要な 協力が得られることとなります。 62 摘 要 ] [参照条文] [ ■東日本大震災復興特別区域法(資料の提出その他の協力) 第 71 条 復興整備計画を作成若しくは変更しようとする被災関連市町村等又は実施主体 (国、都道県又は市町村に限る。)は、復興整備計画の作成若しくは変更又は復興整備 事業の実施の準備若しくは実施のため必要がある場合においては、関係行政機関の長、 関係地方公共団体の長又は関係のある公私の団体に対し、資料の提出その他必要な協力 を求めることができる。 63 摘 要 ] <参照法令等のURL> ◆ [ 東日本大震災復興基本法(平成 23 年法律第七十六号) http://law.e-gov.go.jp/(※総務省法令データ提供システム) ◆ 東日本大震災からの復興の基本方針(平成 23 年7月 29 日決定・平成 23 年8月 11 日改定 東日本大震災復興対策本部) http://www.fsa.go.jp/news/23/20110819-1/03.pdf ◆ 東日本大震災復興特別区域法(平成 23 年法律第 122 号) http://www.reconstruction.go.jp/topics/%EF%BC%91.pdf ◆ 東日本大震災復興特別区域法施行令(平成 23 年政令第 409 号) http://www.reconstruction.go.jp/topics/%EF%BC%92.pdf ◆ 東日本大震災復興特別区域法施行規則(平成 23 年内閣府令第 69 号) http://www.reconstruction.go.jp/topics/%EF%BC%93.pdf ◆ 復興特別区域基本方針(平成24年 1 月 6 日閣議決定) http://www.reconstruction.go.jp/topics/2012/01/000408.html ◆ 復興整備計画作成マニュアル(平成24年 1 月) http://www.reconstruction.go.jp/topics/2012/01/000476.html 64 摘 要 ] 出典:復興庁「東日本大震災復興特別区域法」復興特区制度説明資料(平成 23 年 12 月 26 日公表) 65
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