池田バスキュラーアクセス 透析・内科クリニック

第7回茨城県バスキュラーアクセス研究会
平成23年9月22日(木)
つくば国際会議場
バスキュラーアクセストラブルに
対するスコアリングシートの活用
池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニック
池田 潔
VA機能・形態評価方法
①理学的所見:シャントスリル、シャント雑音、シャント静脈全体の触診
(狭窄部位確認)、ピロー状態評価、止血時間の延長、
シャント肢の腫脹など。
〔シャントトラブルスコアリング(STS)の実施〕
②VA血流量測定:超音波希釈法、超音波ドップラー法、クリットライン法
③静脈圧の測定:動的静脈圧(針先、穿刺針・回路の形状、血流量に影響
を受ける)と静的静脈圧
④超音波検査:血管抵抗指数(resistance index;R.I.)、
血流量(flow volume;F.V.)、狭窄の形態評価
⑤再循環率
⑥3DCTA
⑦DSA・血管造影
超音波検査のVA機能評価
• 血流量(flow volume;F.V.)
• 血管抵抗指数(resistance index;R.I.)
LOGIQ P5(GE Health care 社)
特徴
・7.25MHz
リニアプローブ使用
・Autoモード搭載
(角度補正、自動計算)
LP5 : 1410*490*640mm, < 75Kg
測定部位は上腕動脈で再現性が高い
上腕動脈の利点
① 触知可能部位である
② 動脈であるためプローブによる
圧迫変形の影響が小さい
③ 血管径が大きい
④ 角度補正が良好である
⑤ 橈骨動脈・尺骨動脈いずれの
AVF・AVGでも評価可能である
⑥ 末梢動脈に比べて石灰化が少
なく計測に再現性が高い
血流量(flow volume;F.V.)について
血流量(ml/min)=Vm-mean(cm/s)×area(㎠)
×60(s)÷100
シャント肢上腕動脈
パルスドップラにて計測
Vm-mean:時間積分値の平均
血流速度
area:血管断面を正円と
仮定したときの血
管径より求められ
た断面積
血管径
血流量の基準値
『慢性透析用バスキュラーアクセスの作製
および修復に関するガイドライン』・・・
血流量が
500ml/min(AVF) 650ml/min(AVG)未満
またはベースの血流量より20%以上の減少
は狭窄病変が発現している可能性がある
血管抵抗指数(resistance index;R.I.)について
R.I.は末梢への血流の流れにくさを反映する指標
R.I.=
PSV-EDV
EDV
PSV:収縮期最高血流速度
EDV:拡張末期血流速度
シャント肢上腕動脈
パルスドップラにて計測
PSV
EDV
VA作製前後のパルス波形
VA作製前
VA作製後
R.I.=1.0
R.I.=0.36
良好なVAと不良なVA
良好
狭窄
R.I.=0.49
R.I.=0.78
血流量=1339ml/min 血流量=483ml/min
閉塞
R.I.=1.0
血流量=307ml/min
R.I.の基準値
• R.I.のカットオフ値を0.6とすると透析時の血流不良症例の感
度を100%にできる。
村上康一、他;腎と透析2003;56(別冊アクセス2003):3943 より引用
• 透析時の脱血不良が発生するカットオフ値は、血流量がおおよ
そ350ml/min付近、R.I.0.68付近。血流量は300~350ml/min
程度、R.I.は0.7~0.8程度が脱血不良発生やVAIVTなどの治療
を考慮する目安。今後検討必要。
春口洋昭;VA超音波テキスト2011.3.1第1版:61-62 より引
用
VA トラブルの分水嶺とは何か?
#1 閉塞を如何に対処するか。
①外科的手術+血栓除去
②血栓溶解→PTA
③血栓除去→PTA
#2 頻回狭窄病変の対処をどうするか。
①PTAから1か月以内のトラブルは手術?
②手術から1か月以内のトラブルはPTA?
#3 穿刺困難を理由に紹介された場合
の対処はどうするか。
①テクニックの問題
②再建術で改善するのか?
池田VA透析・内科クリニック
VAトラブル(閉塞)症例の方針
1)閉塞
ウロキナーゼ6万単位(+6万単位まで追加あり)
+ヘパリン5000単位投与後
→
2時間放置
2)再開通しない時に血栓吸引を追加しガイドワイヤーが、
通過
→PTA
非通過→手術
3)血栓量が多く、器質化血栓の症例はOPEも考慮
池田VA透析・内科クリニック
バスキュラーアクセスクリニック開院から1年間の現状
期間:2010年9月1日~2011年8月31日
依頼施設:
依頼数:
40
353件
手術:
95例
VAIVT:
237回
カフ付カテーテル挿入:
21回
池田VA透析・内科クリニック
VAIVT施行(依頼)理由
血流不足
V圧
V圧
その他
その他
その他
狭窄
閉塞
閉塞
狭窄
狭窄
血流不足
血流不足
閉塞
V圧上昇
AVF
AVG
130回(70例)
107回(48例)
池田VA透析・内科クリニック
手術例の内訳
9
116例(カテーテル挿入21例を含む)
1%
その他
4%
18%
19%
AVF
瘤除去
8%
閉鎖術
7%
カテ挿入
AVG
10%
再建術
15%
4%
14%
池田VA透析・内科クリニック
血管抵抗指数(resistance index;R.I.)について
R.I.は末梢への血流の流れにくさを反映する指標
R.I.=
PSV-EDV
EDV
PSV:収縮期最高血流速度
EDV:拡張末期血流速度
シャント肢上腕動脈
パルスドップラーにて計測
PSV
EDV
池田VA透析・内科クリニック
VAIVTの前後で、R.I.と血流量を測定
シャント肢上腕動脈
パルスドップラーにて計測
LOGIQ P5(GE Health care 社)
臨床症状+
(脱血不全、シャント音の異常、返血側静脈圧高値、クリアランスギャップ↑など)
看護師、臨床工学技士から報告
臨時超音波検査
スクリーニング検査
(DM:1回/6カ月、NDM:1回/12カ月)
臨床工学技士あるいは医師により施行
RI≧0.600
RI<0.600
血管造影
アクセス閉塞
50%以上の狭窄
ウロキナーゼによる
血栓融解療法
+
1回/3カ月程度の
超音波検査
-
回復
PTA
RIでの術後評価
スクリーニング時の
RI値程度まで低下
(※透析に支障ある
臨床症状が継続する場合)
+
-
※
非回復
VA再建術
次回PTA施行時、高耐圧バルーン
(cutting ballon)の使用を考慮
RIでの術後評価
出典:『バスキュラーアクセス超音波テキスト』P112
著者 春口 洋昭
2011.3.1
VA トラブルの分水嶺とは何か?
#1 閉塞を如何に対処するか。
①外科的手術+血栓除去
②血栓溶解→PTA
③血栓除去→PTA
#2 頻回狭窄病変の対処をどうするか。
①PTAから1か月以内のトラブルは手術?
②手術から1か月以内のトラブルはPTA?
#3 穿刺困難を理由に紹介された場合
の対処はどうするか。
①テクニックの問題
②再建術で改善するのか?
池田VA透析・内科クリニック
期間:2010年9月1日~2011年8月31日
VA トラブル
332回
PTA:237回
AVF:130回
閉塞:12例
9.2%
非再開通:4例
手術:95例
28.6%
AVG:107回
ウロキナーゼ6万単位+
ヘパリン5000単位
24.3%
非再開通:9例
75%はOPE
血栓吸引で開通:1例
閉塞:20例
閉塞:26例
22.2%でOPE
血栓吸引で開通:7例
PTA未施行でOPE:1例
PTA後再建術:2例
+
PTA後再建術:2例
=
PTA後:4例
全閉塞例の10.5%は、PTA後に開通せず手術となった。
AVFの閉塞例では、成功率が低く再建術が妥当であった。
VA トラブルの分水嶺とは何か?
#1 閉塞を如何に対処するか。
①外科的手術+血栓除去
②血栓溶解→PTA
③血栓除去→PTA
#2 頻回狭窄病変の対処をどうするか。
①PTAから1か月以内のトラブルは手術?
②手術から1か月以内のトラブルはPTA?
#3 穿刺困難を理由に紹介された場合
の対処はどうするか。
①テクニックの問題
②再建術で改善するのか?
池田VA透析・内科クリニック
頻回再狭窄病変の取扱い
1) 3ヶ月に2回以上は、手術を考慮。
○連続3か月目は手術
2) 手技終了のエンドポイント
○拍動がスリルに変化するのを確認
○最大加圧:12atm
内膜肥厚の抑制
3) 透析に必要な血流量の確保
超音波検査による血流500ml/min以上
池田VA透析・内科クリニック
血流量の基準値
『慢性透析用バスキュラーアクセスの作製
および修復に関するガイドライン』・・・
血流量が
500ml/min(AVF) 650ml/min(AVG)未満
またはベースの血流量より20%以上の減少
は狭窄病変が発現している可能性がある
池田VA透析・内科クリニック
血流量とR.I.の相関
1
前
0.9
0.8
0.7
0.6
VAIVT前
R.I. 0.5
VAIVT後
後
0.4
累乗 (VAIVT前)
累乗 (VAIVT後)
0.3
0.2
0.1
N=184
0
0
500
1000
1500
血流量(ml/min)
2000
2500
臨床症状+
(脱血不全、シャント音の異常、返血側静脈圧高値、クリアランスギャップ↑など)
看護師、臨床工学技士から報告
臨時超音波検査
スクリーニング検査
(DM:1回/6カ月、NDM:1回/12カ月)
臨床工学技士あるいは医師により施行
RI≧0.600
RI<0.600
血管造影
アクセス閉塞
50%以上の狭窄
ウロキナーゼによる
血栓融解療法
+
1回/3カ月程度の
超音波検査
-
回復
PTA
RIでの術後評価
スクリーニング時の
RI値程度まで低下
(※透析に支障ある
臨床症状が継続する場合)
+
-
※
非回復
VA再建術
次回PTA施行時、高耐圧バルーン
(cutting ballon)の使用を考慮
RIでの術後評価
出典:『バスキュラーアクセス超音波テキスト』P112
著者 春口 洋昭
2011.3.1
1ヶ月後にVAIVTとなった症例の転帰
24例に対し30回1ヶ月後VAIVTを施行
AVF:12例(15回)
AVG:12例(15回)
デバイス変更
デバイス変更
OPE:5例
OPE:4例
デバイス変更で改善:7例
高耐圧:5
特殊:5
デバイス変更で改善:8例
高耐圧:11
VA トラブルの分水嶺とは何か?
#1 閉塞を如何に対処するか。
①外科的手術+血栓除去
②血栓溶解→PTA
③血栓除去→PTA
#2 頻回狭窄病変の対処をどうするか。
①PTAから1か月以内のトラブルは手術?
②手術から1か月以内のトラブルはPTA?
#3 穿刺困難を理由に紹介された場合
の対処はどうするか。
①テクニックの問題
②再建術で改善するのか?
池田VA透析・内科クリニック
穿刺困難例に対するエコーガイド下穿刺
穿刺針
メディコン社製 サイトライト5 モニター
穿刺困難例:8例
エコー・DSAによる穿刺
マップ・穿刺部の指導。
指導:6例
部分置換術等による穿刺
ルートの作製
AVFに部分
グラフト:3例
Run off veinの
狭窄・閉塞の改善
:2例
1ヶ月間当クリニック外来で穿刺・
エコー下穿刺でルート作成
ルート作成:2例
まとめ
1) 閉塞のAVGは、血栓溶解後にPTAの成功率は高く積極的に
施行できるが、AVFでは血流再開が認められなければ、再
建術への変更が良い。
2) VAIVT連続1ヶ月では、デバイス変更もしくは、再建術を
考慮していく。
3) VAトラブルの判断:PTAなのか手術かは日頃の穿刺の状況
にもかかわりがある。
池田VA透析・内科クリニック
第7回透析懇談会
平成20年12月4日(木)
ホテルニューオオタニ札幌「鶴の間」
バスキュラーアクセスの維持管理
ー長期予後のための治療戦略ー
福岡赤十字病院 腎臓内科 池田 潔
何故?今、バスキュラーアクセスの
維持管理が重要なのか。
福岡市周辺の状況
バスキュラーアクセス研究会による管理・維持の重要性
市内約30施設でのVA管理・治療方針の一元化
ガイドライン
ヴァスキュラーアクセス スコアによるPTAを行う施設の分散化
年間400例
福岡赤十字病院
各年間150例
サブセンター
クリニック
クリニック
サブセンター
クリニック
サブセンター
クリニック
約30
福岡市バスキュラーアクセス研究会
を立ち上げた経緯
①透析に関わるスタッフにアクセスに関心を持って接してもらい
VA維持管理の意義を認識してもらうこと。
②修復、再建の方法、感染などのトラブルによる事例を減らす
努力に関心を持ってもらうこと。
啓蒙活動としての研究会
治療方針の一元化・標準化
福岡赤十字病院
VA管理の現状
#1 市内約50施設からの紹介
#2 年間 約700例の紹介
(アクセストラブル手術 紹介 約300例)
#3 PTAは、日帰り入院にて施行(約400例)。
#4 閉塞例は、約11%。成功率96~98%。
当院における10年間の手術及びPTA
391
(症例数)
451
408
416 404
310
275
357
500
400
300
64
144
165
31
200
PTA
100
154 118 213 255 203 239 265 269 291 318
0
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
手術総数
(year)
福岡赤十字病院 腎センター
PTA施行症例の閉塞率
(症例数)
400
391
398
444
300
狭窄
閉塞
200
100
0
11.6%
46
2003
11.3%
45
2004
13.2%
54
(年)
2005 福岡赤十字病院 腎センター
閉塞症例のPTAによる開存率成績:75%~90%
狭窄段階での処置を優先
共通した認識での、PTAへの取り組みが必要
VA観察のツールを利用
シャント
トラブル
スコアリング
1994:The Treatment Of Vascular Access Graft
Dysfunction:A Nephrologist`s View And Experience
Gerald A.Beathard
‘Advances in Renal Replacement Therapy’
Clinical Indicators for Venous Stenosis
1)静脈圧の上昇
2)繰り返す血栓形成
3)止血時間の延長
4)穿刺困難
5)疼痛
6)上肢の腫脹
7)再循環
表Ⅰ:シャント トラブル スコアリング (S.T.S) 第Ⅰ版
Co-medical staff のために
1) 異常なし
0
2) 狭窄音を聴取
1
3) 狭窄部位を触知
2
4) 静脈圧の上昇160mmHg以上
(自家:1,グラフト:3)
5) 止血時間の延長
2
6) 脱血不良(開始時に逆行性に穿刺)
5
7) 透析後半1時間での血流不全
1
8) シャント音の低下
9) ピロー部の圧の低下
10) 不整脈
(自家:2,グラフト:3)
2
1
*3点以上でDSA or PTAを検討
臨床透析:「インターベンション治療ー適応範囲と新しい器材・技術の発展ー」2005;21
スコアリングの意義、意味とは!
将来の閉塞の可能性を示
唆。
2)狭窄音を聴取
・血管雑音が高く、鋭く、短くなる。
・血管雑音が著しく減弱し、ときに聴取不能とな
る。
近い将来の閉塞の可能性を示
唆。
3)狭窄部位を触知
・thrillが減弱ないし触知せず、拍動のみとなる。
・吻合部から狭窄部にいたる部分の流出静脈が
腫大、拡張する。(瘤の形成)
・流出静脈に沿って疼痛がある。
・グラフトの場合、動脈との吻合部でthrillが減弱
ないし消失する。
DSA
狭窄部位
再循環を示唆
4)静脈圧の上昇160mmHg以上
・針先操作しても、開始時から160mmHg
以上ある。
静脈圧(mmHg)
120
18G:細径
100
18G:太径
80
17G:細径
60
40
17G:太径
20
太径:4.6mm
0
細径:3.7mm
-20
-40
血流量(ml/min)
100
150
200
250
図1
(本村内科 臨床工学士 高取)
(mmHg)
図2.PTA前後の透析時静脈圧
200
190
180
170
160
150
140
130
120
110
100
左前腕内グラフトの閉塞症例
血液回路:太径4.6mm
穿刺針:AVF17G
平成15年 4月
平成15年 8月
平成16年 1月
平成16年 4月
前
後
再循環を示唆
5)止血時間の延長
・患者の止血時間を把握しておき、そ
れより延長している。
近い将来の閉塞の可能性を示唆
6)脱血不良(開始時に逆行性穿刺)
・逆刺しにしているが、開始時から脱
血不良となる
脱血不良の意味することは何か。
シャントの狭窄だけではな
い。
透析のはじめから血流がとれない。
穿刺の位置は。針先は。
透析の後半1時間で血流がとれない。
血圧が低下していないか。
体重(DW)は適切か。
近い将来の閉塞の可能性を示
唆。
7)透析後半1時間での血流不全
・透析後半1時間で血流不全がある。
Graft静脈側吻合部の狭窄を示唆する。
8)シャント音の低下
・患者のシャント音をしっかり把握しておく。
吻合部を含めた狭窄による血流不全を示
唆。
9)ピロー部の圧の低下
・時間毎のチェック時に観察する。
血流の停滞による血栓形成の可能性
10)不整脈
・透析前~開始後1時間目までに1分間
触診する。
透析回路ピロー部
A
Qb:200ml/min
B
トラブルの出現数
最大:12
(人数)
88症例
60
ピ
ロ
I
圧
50
狭
窄
音
40
30
狭
窄
部
位
20
静
脈
圧
10
0
1
2
3
4
止
血
5
スコア
脱
血
6
音
の
低
下
血
流
7
8
9
10
スコアリングは、いくつかのあわせ技
でVA不全を見つけるツールである。
相対的狭窄1点で、道具としての
AVF,AVG狭窄が問題となることは
少ない。
相対的狭窄
10mm
10mm
6mm
絶対的狭窄
4mm
2mm
4mm
シャントトラブル スコアリング シート
PTA施行患者のシャントトラブル
症状
毎週観察
患者名
症状発見年月日
シャントトラブルスコア
4月第1週
点数
1)狭窄音を聴取
1
2)狭窄部位を触知
2
3)静脈圧の上昇(前回+40以上)
1:3
4)止血時間の延長
2
5)脱血不良(開始時に逆行性穿刺)
5
6)透析後半1時間での血流不全
2
7)シャント音の低下(自家:グラフト)
2:3
8)ピロー部の圧の低下
2
9)不整脈
1
3点以上でDSA,6点以上でPTA.
合計点数
PTA施行日
症状出現~PTA施行までの日数
4月第2週
4月第3週
4月第4週
<バスキュラーアクセスのトラブル>
#1 狭窄による血流不全
#2 閉塞
#3 感染
#4 盗血(steel)症候群
(爪の変形、指先の冷感)
#5 静脈高血圧症(シャント肢の腫れ)
#6 吻合部瘤
#7 穿刺(ミス、痛み、血腫)
#8 その他(疼痛、大血流、心過負荷等)
VA穿刺の方向と部位
V
A
V
V
A
VAの管理には透析患
者教育が重要
患者会でのVA管理の話をする。
自分で聴診器を自宅に持ってもら
う。
自宅でするシャントトラブルの
予防
①シャント肢は清潔に、毎日洗う。
透析の日もシャワーを!風呂は一番風呂に入る。
②肘枕をシャント肢でしない。
③痒いとき伸びた爪の指では掻かない。
クリームを塗る。お湯でぬらしたタオルで拭く。洗う。
自分のシャントは自分で守る
透析中の問題の観察ポイント
①静脈圧は血流量より低いか。
②ピローはふくらんでるか。
自分の体は自分で観察してみる。
①シャントのある前胸部に血管が浮いていないか?
②上肢の左右差がないか?
③手の筋肉が落ちていないか?
気になったら、まず透析室のスタッフや主治医に聞
く。
右上肢の腫脹
毛細血管の怒張
写真1
造影1
<右腕頭部の完全閉塞>
穿刺について
# 痛みには個人差が大きく解決できないこともある。
# 同じ部位の穿刺は、感染の原因になる。狭窄の原因になる。
# 穿刺困難によるシャントの再建がある。
# 痛み止めのテープを貼ると皮膚に、皺がよって穿刺ミスの
原因になる場合がある。
# ボタンホール穿刺は、適応にならない皮膚やシャントのこと
が多い。
今までは、閉塞までいかに使うか。
今後は
閉塞させないようにいかに予防管理するか!
視診
聴診
触診
全員で観察
医師もスタッフも患者も!
見て、聴いて、触る。
診る目、聴く耳、感じる指(手)
先、
の習得。
〈2006~2008年の演題にみるVA管理法〉
14
理学的所
見による
管理法
12
10
8
6
4
2
0
MRA
CT
DSA
C-ギャップ
エコー
スコアなど
左前腕3D-CT angiography
狭窄
吻合部
術中写真
術中写真
<シャントの視診>
発赤(紫)の有無(感染、血栓)
シャント瘤の増大(狭窄部位の存在)
<シャントの聴診>
透析前(穿刺前)に聴診
閉塞していないか。
狭窄音(高音、笛のような音)の確認。
瘤
Radial artery
吻合部
【感染対策】
(VAの清潔管理の注意事項)
①透析入室前の手(腕)洗いの厳守。
②透析日入浴の禁止(シャワー浴は可)
③温泉やサウナの注意(特に人工血管)
④自宅風呂は一番に!
消毒法
より広範囲にイソジン消毒
消毒法
グラフトの消毒は広範囲に行
う。
VA再建症例での感染症例の割合
80
70
72
62
60
68
56
50
40
30
20
10
14.3%
12.9%
7.4%
12.1%
10
8
5
7
2003
2004
2005
2006
0
GRAFTが全抜去となったVA感染症の症例2
症例: 77歳 女性
(原疾患:慢性糸球体腎炎)
病歴: 1999年3月に血液透析開始。
最終VA造設:2006年5月19日 左上腕内人工血管留置
入院経過:M医院にて維持透析。
2006年11月よりGRAFT直上のピンホールより浸
出液を認めていた。内服の抗生剤で対処していた。
2006年12月末、温泉に行った。自宅でピンホールに
軟膏(内容不明)を塗布した。
2007年1月9日高熱のため紹介入院。
入院時CRP 35.7mg/dl.即日のGraft全抜去であった
が、感染コントロールと全身状態が改善しないまま
2月4日死亡退院となった。
左上腕のGRAFT留置部位
圧痛と発赤を認める部位。
左上腕のGRAFT留置部位
周囲を圧迫したところ膿瘍の排出を認めた。
排膿した部位から最も遠位の動脈吻合近傍を切開し
た。
排膿を認めた。
《シャント管理の流れ》
シャント肢の外観とシャント
音の確認(受け持ちNs.Tc)
患者さんが上腕を消毒して
HD室に入室。」
異常の発見
スコア3~6点
(毎週スコア化)
ベテランスタッフ又は透析当番
のDr.(シャント管理スタッフ)に
よる確認。
6点以上なら7日以内にDSAによる確認。
閉塞の時は、閉塞時間の確認、
血栓性、非血栓性の確認。
PTAまでの時間を確認し数時間の待ち時間のある場
合は、血管内にウロキナーゼの投与。
スクリーニングと治療方針プログラムの確立
1)スクリーニング
理学的所見
非侵襲的器材による評価(エコー、ピロー)
侵襲的器材による評価(CT・DSA)
PTA、外科的再建
VAの維持・管理・ガイドラインへの意識
採用抄録数の年度別推移
(抄録数)
70
70
60
26.1%
50
35.7%
51
40
30
20
10
0
維持・管理
ガイドライン
17.8%
30
26
6
2006
6
2007
2008 (年)
一次開存率(2000年1月~2003年3月)
1
2003年透析学会報告
0.92
施設A
0.8
0.62
0.6
施設B
0.57
0.4
0.37
0.2
*
0.35
Logrank検定
*
0
0
3
6
p<0.01
9 12 15 18 21 24 (ヶ月)
〈AVF の一次開存率〉
(%)
3ヶ月:83%
100
2004年~2006年:780回
mean±SD:2.2±4.3回
80
開 60
存
率 40
20
3年:53%
(wks)
0
0
50
100
150
200
開存期間
Kaplan-Meier 生存曲線
AVGの1次開存成績
(%)
2003年4月~2008年3月 5年間
124症例
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1次開存:1年 38%
1次開存曲線
0
50
100
開存期間
150 (WKs.
)
Kaplan-Meier 生存曲線
吻合部に形成された瘤の断面
Fibrobrust
中膜
中膜
PTAの間隔と投与ARB
ロサルタン
50
25
カンデサルタン
4
8
12
P オルメサルタン
C
B
40
PTA
(
間
隔
ヶ
月
)
3 3 3 2 3 4 3 4 5
1999
2000
2001
4 4 5 1
2002
15
2003
16
2004
2005
10
3
2006
8
2007
〈再狭窄予防による開存期間の延長〉
内膜肥厚の原理
1)PTAによる血管の中膜に存在する平滑筋の増殖と
内膜への遊走が約2週間生じる。
2)血管障害による血小板凝固系の活性化、
PAI-1.tPA.MCP-1.CD11.TGF-β.AⅡ、が増殖に関与。
特に、AⅡは重要。
AⅡは、静脈の平滑筋で証明されている。
Fig.5
(ng/ml)
0.6
PTA後の高感度CRPの変化
n.s.
p<0.05
n.s.
カンデサルタン群(n = 12)
継続群(n = 12)
0.4
mean±SD
0.2
平均カンデサルタン
投与量:
追
跡
症
例
0週
12週
24週
12
9
7
12
11
10
カンデサルタン群で
は、透析後の低血圧
のため脱落症例が認
められた。
Fig.6
(cm2)
n.s.
PTA による拡張面積の比較
p<0.05
n.s.
25
カンデサルタン群(n = 6)
20
継続群(n = 6)
15
10
5
追
跡
症
例
0週
12週
24週
4
5
3
5
6
6
拡張方法の検討
過拡張、過剰圧による局所の炎症を
抑えるべきではないか。
低圧(10気圧以下)
拡張時間(30秒~180秒)で1~2回
十分なスリルが生じたら手技を終了
PTA時の最大拡張圧平均値の比較(CB以前との比較)
完全拡張
1786回
982回
2003年4月~
~2002年8月
AVF
8.9±2.4
11.5±3.6
※
AVG
9.0±1.4
12.1±3.4
※
n.s
1045回
n.s
不完全拡張 AVF
9.8±2.3
14.8±3.5 ※
AVG
9.9±4.3
741回
16.6±4.3
※ t-Test p<0.05
※
単位:atm
Comparison of the maximum dilation pressure mean values
when it is PTA
1786 times
543 times
Apr.2003~Sep.2006
Oct.2006~Oct.2008
1045 times
317 times
Complete dilation
AVF
8.9±2.4
8.2±2.8
※
AVG
9.0±1.4
9.6±3.2
※
n.s.
Noncomplete dilation
741 times
226 times
AVF
9.8±2.3
7.6±3.1
※
AVG
9.9±4.3
9.3±3.7
※
※ t-Test p<0.05
mean±SE unit:
n.s.
〈低圧拡張による開存曲線〉
新規AVF 279症例
100
90
80
70
開 60
存 50
率 40
30
20
10
0
再建術34例
PTA単独 58例
1年 76%
5年
64%
平均atm: 9.8±2.3
0
50
100
150
開存期間
200
250
300
(週)
Kaplan-Meier 開存曲線
〈AVFに対する2次開存曲線〉
再建術 34症例(全270例)
100
80
開
存
率
開存率:1年87%
60
40
5年83%
平均atm: 8.9±2.4
20
0
0
50
100
150
200
250
300
開存期間
Kaplan-Meier 生存曲線
Pre PTA
狭窄部 0.6mm
(症例1)
Post PTA
10atm
1.5mm
(症例2)
Pre PTA
狭窄部 0.7mm
5mm balloon
1.7mm
10atm
(Case) loop graft (forarm)
Symptom:
vein pressure >160 mmHg
A little sounds of anastomosis
artery
vein
anastomosis
Graft
stenose
Noncompliant Balloon
6mmX2cm
3 atm x 30 seconds
VAに対してのPTAの治療戦略
AVF
AVG
スコアリングによる決定
スコアリングによる決定
通常のバルーン
2ヶ月未満
通常のバルーン
5ヶ月以上
2~4ヶ月
2ヶ月未満
2~4ヶ月
硬度の
高い例
PCB
再建術?
2ヶ月未満
硬度の
高い例
PCB
再建術?
通常のバルーン
2~4ヶ月
(上腕中枢部に限り)
STENT
(Run off vein の確保)
5ヶ月以上
2ヶ月未満
通常のバルーン
2~4ヶ月
Elastic recoil
の場合
STENT
STENT
(Drainage veinの確保)
Non-compliant balloon
Semi-compliant balloon
Dog bone 現象
過拡張部位に炎症、再狭窄の誘引
New cutting balloon
> φ3.5㎜
4 stainless blades
Working: length:
Balloon diameter:
15mm
2.0 ~4.0mm 1/2
< φ3.00㎜
3 stainless blades
AVF、AVGの狭窄
スコアリングによる決定
通常のバルーン(non-compliant balloon)
2ヶ月未満
2~3ヶ月
4ヶ月以上
短期再狭窄症例
再建術
2ヶ月未満
?
通常のバルーン
拡張で拍動がthrillになったら終了
KEY WORD
Non-compliant balloon
Low pressure
Thrill
再狭窄の抑制
PTAのエンドポイントはどこ
なのか?
VAの作製時期から維持管
理法まで治療標準を提示す
るのがガイドライン。
当院における10年間の手術及びPTA
391
(症例数)
451
408
416 404
310
275
357
500
400
300
64
144
165
31
200
PTA
100
154 118 213 255 203 239 265 269 291 318
0
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
手術総数
(year)
福岡赤十字病院 腎センター
表 1
シャントトラブルスコアリング(S・T・S)第Ⅰ版
Co-medical staffのために
(点数)
1)異常なし
0
2)狭窄音を聴取
1
3)狭窄部位を触知
2
4)静脈圧の上昇160mmHg
AVF:1、AVG:3
5)止血時間の延長
2
6)脱血不良(開始時に逆行性に穿刺)
5
7)透析後半1時間での血流不全
1
8)シャント音の低下
AVF:2、AVG:3
9)ピロー部の圧の低下
2
10)不整脈
1
合計点数 3点以上でDSA or PTAを検討
表 2
氏名( )
PTA経験 ( 有 無 )
シャント(自家 or グラフト)
原疾患( )
日付
シャントトラブルスコア
点数
異常なし
0
1)狭窄音を聴取
1
2)狭窄部位を触知
2
3)不整脈
1
4)脱血不良
5
(逆行性穿刺でも開始時から)
5)静脈圧の上昇(自家:グラフト)
1:3
*通常( )mmHg
6)シャント音の減弱(自家:グラフト)
2:3
7)ピロー部の圧の低下
2
8)透析後半1時間での血流不全
2
9)止血時間の延長
2
*A( )分 V( )分
*
*
サイン
合計点数
PTA施行日
STSの普及率
図 1
STSの普及率は平成17年の50%(10/20施設)と比べて
56%(15/27施設)と上昇した。
100%
90%
80%
70%
60%
56%
50%
50%
40%
H17年
H21年
STS普及率
STSの有用性
図 2
STSはVAの状況把握、異常の早期発見に役立っているか?
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
12施設
3施設
役に立っている
役に立っていると回答した施設
対処が決まっている
対処が決まっていない
役に立っていない
役に立っていないと回答した施設
対処が決まっている
対処が決まっていない
図 3
STSの使用法による閉塞率の比較
閉塞率=
1年間の閉塞件数
維持透析患者数
20%
15%
閉塞率
10%
11.1%
5%
6.7%
0%
STSを使用しており
対処法が決まっている
(11施設)
STSを使用しているが
対処法が決まっていない
(4施設)
図 4
STSを使用していない理由
3施設
5施設
2施設
2施設
主に医師が穿刺し、こまめに診察している為。
STSを知らない
STSの使い方が分からない。使用に不安がある。
無回答
図 5
VAトラブル率の比較
VAトラブル率=
1年間のVAトラブル件数
維持透析患者数
VAトラブル率
20%
15%
10%
13.0%
5%
6.6%
0%
STS未使用で医師の
穿刺が行われている
施設
(3施設)
7.1%
全施設
(27施設)
使用方法が分からず
STS未使用施設
(4施設)
表 3
シャントトラブルスコアリング(S・T・S)第Ⅰ版
Co-medical staffのために
(点数)
1)異常なし
0
2)狭窄音を聴取
1
3)狭窄部位を触知
2
4)静脈圧がVA作製時に比べて
(前回PTA後と比較して)
+40mmHg以上上昇
AVF:1、AVG:3
5)止血時間の延長
2
6)脱血不良(開始時に逆行性に穿刺)
5
7)透析後半1時間での血流不全
1
8)シャント音の低下
AVF:2、AVG:3
9)ピロー部の圧の低下
2
10)不整脈
1
合計点数 3点以上でDSA またはエコー。
6点以上でPTAを予約。
表Ⅰ:シャント トラブル スコアリング (S.T.S) 第Ⅰ版
Co-medical staff のために
1) 異常なし
0
2) 狭窄音を聴取
1
3) 狭窄部位を触知
2
4) 静脈圧の上昇160mmHg以上
(自家:1,グラフト:3)
5) 止血時間の延長
2
6) 脱血不良(開始時に逆行性に穿刺)
5
7) 透析後半1時間での血流不全
1
8) シャント音の低下
9) ピロー部の圧の低下
10) 不整脈
(自家:2,グラフト:3)
2
1
*3点以上でDSA or PTAを検討
臨床透析:「インターベンション治療ー適応範囲と新しい器材・技術の発展ー」2005;21
1994:The Treatment Of Vascular Access Graft
Dysfunction:A Nephrologist`s View And Experience
Gerald A.Beathard
‘Advances in Renal Replacement Therapy’
Clinical Indicators for Venous Stenosis
1)静脈圧の上昇
2)繰り返す血栓形成
3)止血時間の延長
4)穿刺困難
5)疼痛
6)上肢の腫脹
7)再循環
シャント トラブル スコアリング の客観性
主観(狭窄の触知や狭窄音のみ)では、DSAは
施行してもPTAとはならなかった症例が21例(412
例中)5.1%存在した。
客観的シャント不全の項目がなければ、
DSAをも早期に施行しない。
4)5)8):
再循環を示唆。
6)7)9):
血流不足を示唆。
静脈圧(mmHg)
120
18G:細径
100
18G:太径
80
17G:細径
60
40
17G:太径
20
太径:4.6mm
0
細径:3.7mm
-20
-40
血流量(ml/min)
100
150
200
250
図1
(本村内科 臨床工学士 高取)
スコアリングは、いくつかのあわせ技
でVA不全を見つけるツールである。
相対的狭窄1点で、道具としての
AVF,AVG狭窄が問題となることは
少ない。
図1.
相対的狭窄
10mm
10mm
6mm
絶対的狭窄
4mm
2mm
4mm
福岡市内の透析施設での現況と問題
#1
約20施設でスコアシートを使っている。
#2
スコアリングが施設で浸透し閉塞で紹介さ
れることがなくなるのに1年は必要。
#3
紹介時点で記載されているスコアより当院
にてPTA前に付けたスコアのほうが高くなっ
ている。
#4
狭窄音の聞き取り方が、聴診器、部位で難
しいため考慮が必要。
VAの維持・管理・ガイドラインへの意識
採用抄録数の年度別推移
(抄録数)
70
70
60
26.1%
50
35.7%
51
40
30
20
10
0
維持・管理
ガイドライン
17.8%
30
26
6
2006
6
2007
2008 (年)
〈VAの維持・管理の意義〉
透析療法の入り口、道具としての維持・管理
1)透析効率の確保(十分な血流量、再循環の防止など)
2)インターベンション治療の有用性と適正使用の必要性
3)心機能への影響の認識(動脈表在化の有用性)
4)グラフトやカテーテルの必要性、材質の改良
(透析患者の高齢化、長期生存)
5)感染症対策
修復の時期と方法をどのように選択するのか
を考慮しなければならない。