附属書 13 環境遮断、電気防食及び環境改善の防食

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附属書 13
環境遮断、電気防食及び環境改善の防食対策(参考)
Draft
案
序文
この附属書は、環境遮断、電気防食及び環境改善の防食対策について参考のために記載するも
のであって、規定の一部ではない。
目的
1.
設備は、使用条件、使用環境等の種々の外的要因によりさまざまな損傷、劣化等を受けること
が予想され、損傷、劣化等によって設備の余寿命(供用可能期間)が短くなることが予測される。
この附属書では、この基準の対象とする損傷について、一般的に行われている余寿命の長寿命
化対策(延命対策を含む。)について、その方法と考え方を紹介する。
腐食(減肉)への延命対策
2.
2.1 延命対策の方法
設備の設計・製作段階で考慮される腐食を防止又は抑制する対策(以下、防食対策という。
)に
は、次の a)∼e) までに挙げた方法がある。これら対策の内、供用中に腐食に起因する設備の余寿
命を延命する場合は、一般に環境遮断、環境処理、電気防食による対策が適用される。
材料選択(適正材料の選択)
a)
耐食性データ、使用実績あるいは腐食試験結果に基づき、耐食性、機械的性質、加工性、
溶接性及び経済性を考慮して、使用環境(成分、温度、流速など)に対する適正材料を選択
する。
構造改善(設計・製作時に配慮する事項)
b)
設備の腐食又は損傷を防止する目的で構造上配慮する事項としては、次の 1)∼3) があり、
これらを反映して設計・製作する。
1)
異種金属との接触を避ける。
2)
局部腐食が起こらない構造とする。
2.1) 通気差電池を生じ易い隙間や凹部を避ける。
2.2) 液の滞留や沈殿物の堆積を生じないようにする。
2.3) 金属側(材質差)や環境側(温度差、濃度差、流速差)の不均一性を避ける。
3)
c)
応力の局部的集中を避け、残留応力は熱処理(応力除去焼鈍)などにより除去する。
環境遮断(金属表面を環境から遮断)
鉄鋼材料の表面を曝されている環境と遮断することにより腐食の進行を防止する方法で、
被覆材により金属被覆と非金属被覆に大別され、非金属被覆は更に有機被覆と無機被覆に分
類される。
なお、環境遮断の施工要領書の作成にあたっては、高圧ガス保安協会発行の耐食 FRP ハン
ドブック(昭和 58 年初版発行)を参考とすることができる。
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環境処理(環境条件の制御による腐食緩和)
d)
環境処理は、設備が曝されている環境の苛酷性の緩和であり、腐食成分除去や温度低下、
流速減少、水や湿気の除去など環境を改善することにより腐食の進行を抑制させる。
Draft
案
1)
大気中:脱湿、固体微粒子の除去、気化性防錆材の使用
2)
流体中:腐食成分除去、温度・流速低下、溶存酸素の除去、pH 調整、腐食抑制剤の添
加
電気防食(金属の電位を制御する防食法)
e)
電気防食は、電解質を含む水溶液又は湿った土壌と接触している金属体に直流電流を継続
的に流すことにより腐食を防止する。
1)
陰極防食法:外部電流により電位を卑方向へ変化させ金属を陰極的に防食する。
2)
陽極防食法:外部電流により電位を貴方向へ変化させ金属を不動態に保持する。
2.2 腐食(減肉)原因と対策
防食対策を適用する場合にあっては、腐食原因を推定し、対象物の仕様や構造及び使用環境、
使用条件を的確に把握し、適切な対策を選定して実施する。腐食原因に対して、一般的に適用さ
れている対策を附属書 13 表 1 に示す。腐食の種類に応じて、これらの対策を適切に組み合わせ
て実施することができる。
附属書 13 表 1 腐食(減肉)原因ごとの一般的対応
腐食(減肉)原因
腐食性流体による腐食
分類
対応内容
具体的適用例
材料選択 ・環境に適した材料の選択 ・材料の耐食性、機械的特性、溶接性、
・湿性硫化物腐食
経済性などを考慮して選択する
・湿性塩化物腐食
構造改善 ・防食構造の設計、製作
・適正流速(偏流防止)
・水硫化アンモニウム腐食
環境遮断 ・金属被覆(表面処理)
・メッキ、金属溶射、拡散浸透
・塩化アンモニウム腐食
・有機材料による被覆
・プラスチック被覆、ゴムライニング
・アルカリ腐食
・無機材料による被覆
・リン酸塩被覆、陽極酸化、着色被覆
・アミン腐食
・硫酸腐食
環境処理 ・環境の苛酷性の緩和
・有害因子の除去、希釈
・酸露点腐食
・炭酸腐食
・水(海水、工水)腐食
異種金属接触腐食
・腐食抑制剤の添加
・溶存酸素の除去、pH 調整、水注入、
温度管理、腐食性流体の濃度調整
電気防食 ・犠牲陽極法
・外部電源法
・Mg、Al、Zn など犠牲陽極の使用
・外からの電位制御
材料選択 ・環境に適した材料の選択 ・電位差の小さい金属を選択
構造改善 ・防食構造の設計、製作
・両金属間を非伝導性物質で絶縁する
・卑な方の金属の面積を大きくする
電気防食 ・犠牲陽極法
隙間腐食
・Mg, Al, Zn など犠牲陽極の使用
材料選択 ・環境に適した材料の選択 ・Cr, Ni, Mo を含有した耐食材料の採用
防食構造 ・防食構造の設計、製作
・隙間を作らない構造とする
環境遮断 ・有機材料による被覆
・プラスチック被覆
電気防食 ・犠牲陽極法
・Mg, Al, Zn など犠牲陽極の使用
・外部電源法
・外からの電位制御
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附属書 13 表 1 腐食(減肉)原因ごとの一般的対応(つづき)
腐食(減肉)原因
高温硫化物腐食
分類
対応内容
具体的適用例
材料選択 ・環境に適した材料の選択 ・低合金鋼の採用
Draft
案
高温水素−硫化水素腐食
構造改善 ・防食構造の設計、製作
ナフテン酸腐食
材料選択 ・環境に適した材料の選択 ・低合金鋼の採用
・適正流速
環境処理 ・ナフテン酸の希釈
・高 TAN※1)原油を低 TAN 原油で希釈
構造改善 ・防食構造の設計、製作
・適正流速
高温酸化
材料選択 ・環境に適した材料の選択 ・低合金鋼の採用
バナジウムアタック
環境処理 ・腐食抑制剤の添加
・燃焼灰の融点の上昇
※1:TAN(Total Acid Number)は油中に含まれる有機酸1g を中和するのに必要な KOH 量(mg)を示す。
2.3 防食対策施工後の余寿命予測
供用中に新たな防食対策を講じた設備に対して、対策施工後の余寿命を算定し、検査時期を延
長する場合は、次の a)∼e) による。
対策施工後に余寿命予測を可能とする条件
a)
対策施工後に余寿命予測を行う場合にあっては、次の 1) 及び 2) の条件を満足しなければ
ならない。
1)
環境遮断による対策は、適用した被覆材が施工後からその被覆機能又は性能を喪失する
までの期間(以下、耐用期間という。)が分かっていること
2)
対策施工後に本文 3.3.2 で定める減肉速度の評価に必要なデータが採取できること
備考
被覆材料の耐用期間は、採用被覆材に関する公知の耐用期間又は類似環境下の実績で確認され
た被覆材の標準的な耐用期間により設定するのが一般的である。
対策の効果を判定する方法
b)
防食対策の効果は、次の 1) に定める条件で測定された厚さデータから本文 3.3.2 で定める
減肉速度を求め、対策施工前の減肉速度と比較することにより 2) に定める方法で判定する。
1)
厚さ測定の条件
厚さデータは、対策を施工した以降に次の 1.1)∼1.4) までに示す条件で測定されるもの
とする。
1.1) 厚さ測定点
厚さ測定点は、対策施工前と同一(位置、方位)の測定点を選定する。ただし、これ
ら測定点以外に測定点の追加などの見直しを行う。
1.2) 測定方法
厚さ測定の方法は、原則として対策施工前と同一の厚さ測定方法による。
1.3) 測定時期と測定間隔
対策施工前に厚さを測定し最新データを採取する。対策施工後における初回の測定は、
施工前の減肉速度と比較し、効果が判定できる適切な時期に測定する。2 回目以降は、
本文 5. の次回検査時期の設定に基づき決定する。
1.4) 必要データ数
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減肉速度を求めるのに必要な数量とする。直近 2 回の厚さ測定結果から求める場合は、
対策施工後 1 回以上、最小二乗法による回帰直線から求める場合は、対策施工後 3 回
以上とする。
Draft
案
2)
判定方法
効果の判定は、対策前の減肉速度を C1、対策後の減肉速度を C2 として、次の 2.1) 及び
2.2) により判定する。
2.1) C1>C2 の場合は、減肉速度が減少傾向を示しており、効果があると評価できる。
2.2) C1≦C2 の場合は、減肉速度が同一又は上昇傾向を示しており、効果がないと判断する。
複数の対策を同時に講じた場合の効果の考え方
c)
防食対策(材料選択、構造改善、環境遮断、環境処理及び電気防食)から供用中に複数の
対策が適用できる腐食に対して、2 つの対策を選択して同時に講じた場合における対策の組
み合わせを、附属書 13 表 2 に示す。
附属書 13 表 2 防食対策の組み合わせ
材料選択 (1)
材料選択 (1)
(1)
構造改善 (2)
構造改善 (2)
①(2,1)
(2)
環境遮断 (3)
環境遮断 (3)
②(3,1)
④(3,2)
(3)
環境処理 (2)
環境処理 (2)
①(2,1)
③(2,2)
④(2,3)
(2)
電気防食 (3)
電気防食 (3)
②(3,1)
④(3,2)
⑤(3,3)
④(3,2)
(3)
備考 1 前提条件
・材料選択は、現材料を指し、完全な耐食材料(C = 0)を選定している場合、他の対策は講じない。
・構造改善及び環境処理は、効果に応じて腐食進行を抑制するが腐食は進行するものとする。
・環境遮断は、被覆材の耐用期間、腐食は防止できるものとする。
・電気防食は、被対象物の防食電位が維持できている期間、腐食は防止できるものとする。
2 表中 ( ) の数値は以下を示す。
(1) : 減肉速度C>0(耐食性能に応じた腐食が進行)
(2) : 減肉速度C>0(抑制効果に応じた腐食が進行)
(3) : 減肉速度C=0(対策施工後に腐食が停止)
3 下線部は単一対策を示す。
また、複数の対策を同時に実施した場合の効果の判断は、次の 1)∼5) までに示す考え方に
よる。ここで、C は減肉速度を表す。
1)
(1), (2) の組み合わせ ①:
C が対策前よりも減少した場合は片方、若しくは両方の (1)(2) の対策が有効であり、C
が対策前と一定か、上昇した場合はいずれの対策も無効と判断される。
2)
(1), (3) の組み合わせ ②:
C = 0 の場合は(3) の対策が有効であり、C>0 の場合は (3) の対策は無効と判断される。
3)
(2), (2) の組み合わせ ③:
①と同様となる。
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4)
(2), (3) の組み合わせ ④:
C = 0 の場合は(3) の対策が有効であり、C>0 の場合は (3) の対策は無効と判断される。
5)
(3), (3) の組み合わせ ⑤:
Draft
案
C = 0 の場合は片方、若しくは両方の(3) の対策が有効であり、C>0 の場合は (3) のい
ずれの対策も無効と判断される。
対策施工後の余寿命評価方法
d)
対策施工後の余寿命の再評価は、本文 6. の規定による。
モニタリング
e)
適用した防食対策に要求される機能又は性能や耐用期間など効果の確認方法は、対策の方
法に応じて、次の 1)∼3) までに示す方法とする。
1)
環境遮断
機器を開放した時に内部から目視検査、膜厚検査、ピンホールテスト等により被覆材の
有効性を確認する。また、被覆材の有効性を外部から確認することを目的として、厚さ測
定を行い補完する。
2)
環境処理
効果を把握するための管理項目、管理値の範囲、点検周期を定め、実測値が管理範囲内
で維持されていることを確認する。また、管理値を逸脱した場合は、速やかに改善措置を
講じると共に必要に応じて減肉速度への影響の有無を確認する。
3)
電気防食
対象物の電位を定期的に測定し、腐食環境(埋設管の場合は地表面)の電位と対象物と
の差が防食電位に維持されていることを確認する。
3.
腐食(減肉)以外の損傷への延命対策
3.1 延命対策の方法
設備の設計・製作段階で考慮される損傷を防止又は抑制する対策(以下、損傷防止対策という。)
は、2.1 の a)∼d) までの材料選択、構造改善、環境遮断及び環境処理が挙げられる。これら損傷
防止対策の内、供用中に損傷に起因する設備の余寿命を延命する場合は、一般に環境遮断、環境
処理による対策が適用される。
3.2 損傷原因と対応策
損傷防止対策の適用にあたっては、損傷を推定し、対象物の仕様や構造及び使用環境、使用条
件を的確に把握し、適切な対策を選定して実施する。余寿命予測が可能な損傷に対して、一般的
に適用されている対策を附属書 13 表 3 に示す。これらの余寿命予測が可能な損傷を含めて、損
傷に対して、一般的に適用されている損傷防止対策を附属書 13 付表 1 に示す。
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附属書 13 表 3 損傷原因ごとの一般的対応
損傷原因
分類
対応内容
具体的適用例
Draft
案
クリープ損傷
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・脆化促進元素低減材の採用
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・適切な後熱処理
・構造不連続部の形状改善
・応力集中個所の平滑化
環境処理 ・運転条件の変更
・運転温度の低下、発生応力が緩和する
運転条件の採用
水素侵食
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・使用条件がネルソンカーブの水素侵食
発生限界線以下となる鋼種の採用
環境処理 ・運転条件の変更(※1)
・水素侵食発生限界値(※2)以下となる運
転温度、水素分圧の運転
疲労
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・サポートの強化
・部材の厚肉化
・構造不連続部の形状改善
・き裂の起点となる加工傷等の除去
・応力集中個所の平滑化、溶接部の補強
※1:対象は C-0.5Mo 鋼とする。
※2:水素侵食発生限界値は、Pv、Pw パラメータであり、詳細は本文 4.3.4 による。
備考:疲労の対策は構造改善の単独となる。
3.3 損傷防止対策施工後の余寿命予測
供用中に新たな損傷防止対策を講じた設備に対して、対策施工後の余寿命を算定し、検査時期
を延長する場合は、次の a)∼d) による。
対策施工後に余寿命予測を可能とする条件
a)
対策施工後に余寿命予測を行う場合にあっては、次の 1)∼3) に示す条件を満足しなければ
ならない。
1)
クリープ損傷を受ける設備の余寿命予測を行う場合にあっては、本文 4.2 で定めるクリ
ープ寿命の予測に必要な検査データが採取できること
2)
水素侵食を受ける設備の余寿命予測を行う場合にあっては、本文 4.3 で定める水素侵食
の予測に必要な検査データが採取できること
3)
き裂状欠陥を有する設備の余寿命予測を行う場合にあっては、本文 4.4 で定めるき裂状
欠陥の予測に必要な検査データが採取できること
対策後の検査及び余寿命評価
b)
損傷防止対策の効果は、次の 1) で定める条件で実施した検査データから損傷ごとに定め
られた評価方法で余寿命を求め 2) に定める方法で余寿命評価する。
1)
検査データ
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対策を施工した以降、損傷ごとに適用する余寿命予測に必要な検査データは、次の 1.1)
∼1.4) までに示す条件で測定されるものとする。
1.1) 検査点
Draft
案
検査点は、対策施工前と同一(位置、方位)の検査点を選定する。ただし、同一の検
査点が検査できない場合は、近接した位置を選定して検査点とする。これら検査点以
外に検査点の追加などの見直しを行う。
1.2) 検査方法
検査方法は、対策施工前と同等以上の方法による。
1.3) 検査時期と検査間隔
対策施工前に検査し最新データを採取する。対策施工後における初回の検査は、施工
前の損傷と比較し、効果が判定できる適切な時期に測定する。2 回目以降は、本文 5. の
次回検査時期の設定に基づき決定する。
1.4) 必要データ数
損傷を評価するのに必要な数量とする。
余寿命評価
2)
対策施工後の余寿命評価は、本文 6.による。
複数の対策を同時に講じた場合の効果の考え方
c)
損傷防止対策(材料選択、構造改善、環境遮断及び環境処理)から供用中に複数の対策が
適用できる損傷に対して、2 つの対策を選択して同時に講じた場合における対策の組み合わ
せを附属書 13 表 4 に示す。
附属書 13 表 4 損傷防止対策の組み合わせ
材料選択 (1)
材料選択 (1)
(1)
構造改善 (2)
構造改善 (2)
①(1,2)
(2)
環境遮断 (3)
環境遮断 (3)
②(1,3)
④(2,3)
(3)
環境処理 (2)
環境処理 (2)
①(1,2)
③(2,2)
④(3,2)
(2)
備考 1 前提条件
・材料選択は、現材料を指し、損傷が発生しない材料を選定している場合、他の対策は講じない。
・構造改善及び環境処理は、効果に応じて損傷発生を抑制するが発生する可能性がある。
・環境遮断は、被覆材の耐用期間、損傷発生を防止できるものとする。
・損傷の種類に応じて推定される損傷発生までの潜伏期間などは考慮しないものとする。
2 (1) :材料特性に応じた損傷発生の可能性有り
(2) :損傷抑制効果に応じた損傷発生の可能性有り
(3) :損傷発生の可能性無し
3 下線部は単一対策を示す。
また、複数の対策を同時に実施した場合の効果の判断は次の 1)∼4) までに示す考え方によ
る。
1)
(1), (2) の組み合わせ ①:
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損傷が発生していない場合は(1)及び/又は (2) の対策が有効であり、損傷が発生して
いた場合は (1)及び(2) の対策はいずれも無効と判断される。
2)
(1), (3) の組み合わせ ②:
Draft
案
損傷が発生していない場合は (3) の対策が有効であり、発生していた場合は (3) の対
策は無効と判断される。
3)
(2), (2) の組み合わせ ③:
損傷が発生していない場合は (2) 構造改善及び環境処理両方の対策が有効であり、損傷
が発生していた場合は、両方又はいずれか片方の (2) の対策は無効と判断される。
4)
(2), (3) の組み合わせ ④:
損傷が発生していない場合は (3) の対策が有効であり、発生していた場合は (2), (3) の
対策は無効と判断される。
対策施工後の余寿命評価方法の取扱い
d)
対策施工後の余寿命の再評価は、本文 6. の規定による。
モニタリング
e)
適用した損傷防止対策に要求される機能又は性能や耐用年数など効果の確認方法は、次の
1)∼3) までに示す方法とする。
1)
環境遮断
機器を開放した時に内部から目視検査、膜厚検査、ピンホールテスト等により被覆材の
有効性を確認する。
2)
環境処理
効果を把握するための管理項目、管理値の範囲、点検周期を定め、実測値が管理範囲内
で維持されていることを確認する。また、管理値を逸脱した場合は、速やかに改善措置を
講じると共に必要に応じて損傷への影響の有無を確認する。
3)
構造改善
疲労に対する応力緩和を目的とした外部からのサポートの設置や振動周波数の低減など
の改善措置については、当該部の振動特性など疲労の要因となる管理項目、管理値の範囲、
点検周期を定め、実測値が管理範囲内で維持されていることを確認する。
補修
4.
4.1 補修方法
検査及び試験の結果、損傷に対する補修が、必要と判定された場合の補修の方法は、次の a)∼
c) までに示す手順による。
備考
a)
補修とは、設備の配置又は主要部を変更することなく、耐圧部材に対する損傷個所を修復する
ことをいう。
損傷の発生原因を特定し、製造履歴及び供用条件を的確に把握し、損傷の種類に応じた適
切な補修方法を選定する。補修の方法は、次の 1) 及び 2) に区分できる。
附属書 13−8
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1)
溶接を伴わない補修方法
1.1) 研削除去
設備の内外表面に検出された減肉(孔食や溝状減肉)又はき裂状欠陥(以下、欠陥と
Draft
案
いう。)を対象にして、グラインダー等によるスムーズ加工により損傷部を取り除く補
修方法
1.2) 環境遮断
鉄鋼材料の表面を曝されている環境と非金属被覆材料で遮断することにより腐食の進
行を防止する補修方法
溶接を伴う補修方法
2)
石油精製装置で発生する代表的な損傷とその溶接補修方法を附属書 14 表 1 に示す。
補修を行う場合は、補修作業着手前に次の 1) 及び 2) により補修の施工要領を定めた補修
b)
施工要領書を作成し、要領書に基づき補修する。
溶接補修の場合にあっては、補修溶接の施工要領、溶接後の非破壊検査要領等を定めた
1)
溶接施工要領書を作成する。溶接は溶接施工法確認試験で確認された施工法とする。
補修要領書の作成にあたっては、次に掲げる資料を参考とする。
2)
・KHK 補修技術ハンドブック
・石油学会規格(JPI−8R−16)
・日本溶接協会:補修溶接施工法指針
補修を行った場合は、補修個所、補修の方法、施工要領及び検査記録等を網羅した補修施
c)
工記録を作成する。
4.2 補修後の検査
補修後の検査は、原則として補修施工要領書によるが、次の a) 又は b) に示す方法を含めて実
施する。
溶接を伴わない補修方法の場合
a)
1)
研削除去
欠陥が完全に除去されたことを欠陥の種類に応じて、目視検査又は非破壊検査(浸透探
傷試験、磁粉探傷試験等)で確認する。
2)
環境遮断
非金属被覆材の仕様を満足していることを目視検査、膜厚検査、ピンホールテスト等で
確認する。非破壊検査は、被覆材の特性に応じて適切に選定して行う。
b)
溶接を伴う補修方法の場合
補修溶接部については、健全性確認のためあらかじめ計画された非破壊検査要領に従って
検査を行い、要求基準を満足すること。
4.3 補修後の余寿命評価
対策施工後の余寿命の再評価は、本文 6. の規定による。
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附属書 13 付表 1 損傷の種類ごとの一般的対応
損傷原因
水素誘起割れ
分類
対応内容
材料選択 ・環境に適した材料の選択
具体的適用例
・耐 HIC 鋼の採用
Draft
案
環境遮断 ・コーティング、表面処理
・非金属皮膜(樹脂コーティング)
、金属
溶射の実施
水素侵食
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・使用条件がネルソンカーブの水素侵食
発生限界線以下となる鋼種の採用
環境処理 ・運転条件の変更
・ネルソンカーブの水素侵食発生限界線
以下となる運転温度、水素分圧の運転
475 脆化
焼戻し脆化
−
・装置停止時の取扱注意
環境処理 ・装置のスタートアップ、シ ・スタートアップ時は昇温先行型、シャ
ャットダウン時の操作
クリープ損傷
・衝撃荷重がかからないように注意する
材料選択 ・環境に適した材料の選択
ットダウン時は降圧先行型等を採用
・脆化促進元素低減材の採用
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・構造不連続部の形状改善
脆
・応力集中個所の平滑化
化
シグマ脆化
環境処理 ・装置のスタートアップ、シ ・急激な熱応力がかからないように配慮
ャットダウン時の操作
等温時効脆化
して操作する。
環境処理 ・装置のスタートアップ、シ ・スタートアップ時は昇温先行型、シャ
ャットダウン時の操作
ットダウン時は降圧先行型等を採用
黒鉛化
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・Cr、Mo 添加による炭化物の安定化
脱炭・浸炭
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・オーステナイトステンレス鋼や HK40、
IN519、HP 材を代表する耐熱鋳鋼の採
用
環境処理 ・局部加熱の防止
・コーキング防止、周期的なデコーキン
グ実施
チタン水素脆化
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・純チタン、パラジウム処理した材料の
採用
機
疲労
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・サポートの強化
械
・部材の厚肉化
的
・構造不連続部の形状改善
損
・応力集中個所の平滑化
傷
・溶接部の補強
エロージョン
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・表面硬化肉盛材(Co-Cr-W 合金)の採
用
侵
食
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・ロングエルボ、ベンドの採用
・厚肉材の採用
・耐摩耗ライニング施工スリーブの挿入
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附属書 13 付表 1 損傷の種類ごとの一般的対応(つづき)
損傷原因
塩化物 SCC
分類
対応内容
材料選択 ・環境に適した材料の選択
具体的適用例
・塩化物 SCC 感受性の無い鋼種の採用
Draft
案
アミン SCC
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・アミン SCC が発生しない材料の採用
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・応力除去焼鈍の実施
環境遮断 ・コーティング、表面処理
・非金属皮膜(樹脂コーティング)
、金属
溶射の実施
ポリチオン酸 SCC
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・ポリチオン酸 SCC が発生しない材料の
採用
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・応力除去焼鈍の実施
環境処理 ・装置停止中の操作
・酸素侵入防止、水分浸入防止
・中和洗浄の実施
応
力
アンモニア SCC
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・アンモニア SCC が発生しない材料の採
用
腐
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・応力除去焼鈍の実施
食
割
アルカリ SCC
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・アルカリ濃度と温度の相関で SCC 発生
領域以外となる材料の採用
れ
環境遮断 ・コーティング、表面処理
・非金属皮膜(樹脂コーティング)
、金属
溶射の実施
カーボネイト SCC
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・カーボネイト SCC が発生しない材料の
採用
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・応力除去焼鈍の実施
硫化物割れ
環境遮断 ・コーティング、表面処理
・非金属皮膜(樹脂)、金属溶射の実施
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・全圧とガス中 H2S 濃度の相関で割れ発
生領域以外となる材料の採用
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・応力除去焼鈍の実施
脆
環境遮断 ・コーティング、表面処理
・非金属皮膜(樹脂)、金属溶射の実施
水素脆化
環境処理 ・装置停止時における操作
・シャットダウン中の脱水素操作
熱疲労
材料選択 ・環境に適した材料の選択
・線膨張係数の小さい材料の採用
・熱伝導率の大きい材料の採用
機
械
的
損
傷
・クリープ破断強度の高い材料の採用
構造改善 ・損傷防止構造の設計、製作 ・急激な温度勾配を避ける構造
・伸縮性を持たせた構造
・構造不連続部の応力集中部の排除
・板厚の変化を最小限とする
・線膨張係数の異なる異種金属の溶接を
最小限とする
附属書 13−11
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