フーコーの振り子

2002
栃木県立宇都宮女子高等学校
小嶋 美保子 馬場 はるか
雪原 萌 米村 美紀
フーコーの振り子
「地球は回っていますか?」最初の物理の授業で投げかけられた問いをきっかけ
に、天動説と地動説をテーマとした自由研究を2年次に行った。その研究はおもにガ
リレオなどの原典や資料から天動説と地動説との論争の歴史を追うものとなり、新
しい科学的考察には至らなかったが、その過程で『フーコーの振り子』のことを知
った。それは、1851年フーコーが長さ67mの糸に28kgのおもりをつけた振り子を振
らせ、その振動面の回転によって地球の自転を示す実験であった。
今日、科学館などではおなじみのフーコーの振り子だ
が、自分で作り自分の目で確かめたいと思い、教室で振
り子を振らせる実験を始めた。
おもりを静かに放す難しさ、減衰を減らし振らせ続け
ることの難しさ、振動面を測定する難しさに直面した。
現在、地球の自転を見るために、これらの困難を一つ
ずつ解決することを目指して実験を重ねている。この結
果については当日ポスターでご覧下さい。
ー 162 ー
2003
玉川学園高等部・中学部
鈴木 葵 増田 広大 斉藤 栄輝 高藤 倫行 高橋 卓巳
須山 勝光 田中 修 尾崎 陽介 山岡 一太
ソーラーカーの製作
1. 研究の目的
玉川学園高等部ソーラーカーチームは平日の放課後と休
日を使いソーラーカーの製作を行っており、より性能の良
いエコカーの開発を目指して日々研究している。そして毎
年大潟村で行われるWSBR(ワールド・ソーラー・バイ
シクル・レース)に出場し、研究の成果を試している。
ソーラーカーはバッテリーの力でモーターを動かし走行し、減少していくバッテ
リーの電気をソーラーパネルによって太陽光から発電し、再度走行しながら充電
していくというエコカーである。そのため車両の性能を上げるには動力源である
モーターとバッテリーの負荷を減らすことが重要になる。我々はこの負荷を減ら
すために車重の軽量化と車体の空気抵抗の軽減に焦点をあて、研究している。
2. 研究方法と結果
空気抵抗とは車体が動く時に周りの空気から受ける抵抗の事であり、その車体
が受ける抵抗の大きさは外見の形状によって変化する。そこで我々はより空気抵
抗の少ない形のカウルを考え、ミニチュアモデルによる風洞実験で空気抵抗の少
ない流線型で無駄の無い理想的な形状を研究し、今年までの12年間で4回のモデル
チェンジを行ってきた。その結果年々消費電力の削減に成功し、航続距離を伸ば
すことができた。
風洞実験(形状の違いによる空気抵抗係数の比較)
空気抵抗係数 小
空気抵抗係数 大
歴代車両
初代 イエローコスモス
二代目 全人1号
三代目 全人2号
四代目 ペガサス
ー 163 ー
2004
新潟県立新潟南高等学校
江川 博之 矢部 健太
大田 啓 二野宮 晟大
垂直発射型アセチレンロケットを高く飛ばす研究
一昨年の先輩は写真のような「ピアノ線滑走型アセチレンロケットを遠くへ飛ば
す研究」を行いました。遠くへ飛ばすには、当量反応以上のアセチレンガスを燃料
とすること、適切な大きさの噴射口を設定することなどがきわめて効果的であるこ
とを発表してきました。
その結果、最大速度80km/h、3秒あまりで50メートル以上の滑走を可能としました。
私たちは先輩の研究を垂直発射型にかえて、少しでも高く飛ばす研究をしています。
今まで以下の研究、開発実験を行ってきました。
①簡単なランチャーの開発・・・スタンドと傘の骨を利用、どこでも実験が可能に
②圧電素子を利用した点火装置の開発・・・使い捨てライターを利用、点火の安全
を確保した。
③研究に適したペットボトルの発見・・・耐圧性ペットボトルで50gのものを利用
④翼をつけたボトルの安定飛行に関する研究・・・スチロールを用いた翼を取り付
けたが、飛行の安定性、到達高度のいずれに対しても現在まで成果がない。
⑤アセチレンの爆発とそれに伴う水の噴射により推進力を
アップさせる研究・・・ペットボトルに水を入れるこ
とで噴射ガスの質量を増加、到達高度を飛躍的に高め
ることができた。現在までの研究で滞空時間4.3秒、校
舎の5階屋上(地上23メートル)を優に超える高さまで
飛ばすことが可能になっている。
今後は点火装置の改良、水の量と到
達高度の関係などについて研究し、
更に高い到達高度を目指したいと考
えています。
点火の瞬間と点火装置の写真
ー 164 ー
2010
大阪府立大手前高等学校
澤田 晃一郎 西浦 珠央 塩見 準
既約分数の和について
澤田 晃一郎
「分母が6である、0以上10以下の既約分数の和を求めよ」という問題を考える中
で、m、nを正の整数とするとき、nを分母とする0以上m以下の既約分数の総和がm
の2乗に比例することを発見し、一般的に成立することを証明した。さらに、n以下
の自然数のうち互いに素であるものの個数を与えるオイラー関数を用い、その総和
を具体的に記述することに成功した。倍数判定法や素因数分解の方法などにも触れ
ながら、具体的な数値m、nに対して既約分数の総和を計算した例を紹介する。
フラクタルに関する考察
西浦 珠央
自己相似図形としてのフラクタルを調べる中で、位相次元とハウスドルフ次元の
考え方を用いてフラクタルを定義すること、自己相似ではないフラクタルの存在な
どを知った。具体的なフラクタルの例を通してこれらのことを紹介する。また、コ
ッホ曲線やシェルピンスキーのギャスケット等の具体的な図形で曲線の長さや面積
に関する計算を行い、フラクタルの性質を確認する。さらに、身近に存在するフラ
クタルを探る。
四次元図形を見る
塩見 準
立体物を見るということは、三次元図形を平面に投影することであると考えられ
る。そこで、まず三次元図形を二次元の座標平面に投影する方法について考える。
次に、三次元空間と同様に四次元空間に座標系を定義し、四次元図形を座標で表現
することを考える。そして、それらを基礎に四次元図形をより低い次元に投影し、
最終的に座標平面に投影することで視覚化する方法を、計算により明らかにする。
さらに、その成果をふまえて、実際に具体的な四次元図形である超立方体を、コン
ピュータを用いて二次元の座標平面に投影し、視覚化することを試みる。
ー 165 ー
2012
兵庫県立神戸高等学校
臼井 健 辻野 亮 宮本 ちさと 井谷 理彦
色素増感型太陽電池の研究
私たちは、「色素増感型太陽電池」について、その発電効率を高めるための研究
を行った。今回の実験では、①酸化チタンペーストの濃度②酸化チタン膜の焼成
時間③染色料この3つの条件をそれぞれ設定し、その発電効率を比較した。
実験の結果①に関しては、私たちが設定したものの中では最も濃度が薄かった
ものが発電効率がよく、②に関してはゆっくりと焼成したものがよく、③に関し
てはハイビスカスを用いた染色で最もよい発電結果が得られた。また、それぞれ
の条件下で作成した酸化チタン膜面を、染色前と染色後で顕微鏡を用いて観察す
ると、その表面の結晶の状態に大きな差が見られた。この表面の状態が発電効果
に何らかの影響を及ぼしたと思われる。表面の結晶の状態に差が生じた原因は、
一つに酸化チタンの濃度の違い、そして焼成時間の違いによるものだと思われる。
今回の実験では、いろいろな条件を変えることで、発電効率にどのような違い
が生じるかを具体的に知ることができた。
波動の研究
以前テレビで人の声でワイングラスを壊すという番組を見て、我々が普段聞い
ている音はエネルギー持っていることを実感した。今回は音波が持つエネルギー
の性質について、音のエネルギーと距離との関係などを調べるために、実験Ⅰと
Ⅱを行った。
実験Ⅰでは実験室内に84箇所の座標点を
格子状に定め、それらの点で35μ秒間隔で
音源から発した音を音センサを用いて測定
した。その結果として、図のような結果が
得られた。距離が遠くなるとエネルギーも
小さくなる、という予想とは異なるグラフ
となった。その理由として考えた結果、①
平面でしか音の広がりを考えてなかったこ
と、②実験室の壁や柱、机などによる反射の干渉を考えてなかったこと、の2つが
わかった。しかし、この実験で音を効率よく反射によって集められると音源付近
よりも大きなエネルギーを得られるとわかり、実験Ⅱへと移った。
今回の実験で最も困ったことは、音は目に見えないのでどのくらい反射してい
るのかがわからないため、どうしても結果に対する考察に確信が持てないことだ
った。
ー 166 ー
1601
福島県立相馬高等学校
課題研究 物理班7名 化学班4名
『身近な疑問を解決しよう』∼万華鏡・イカ墨液晶の研究∼
1. 万華鏡の構造の研究(物理班)
私達は、小さい頃から慣れ親しんだ万華鏡の構造について
調べた。万華鏡で立体的な像を作るために三角錐のような形
状を作り、像を映し出した。この像が万華鏡の構造とどのよ
うな関係にあるのかを調査した。
材料には、市販されているポリカーボネイトミラー(厚さ
1mmのもの)を使用した。台形の型を3枚切り取り、それら
をビニールテープでつないで、万華鏡を作った。のぞき穴と
して、大小の三角形があるが、小さい方に平面上の模様を取り
付け、大きい方からのぞき込んだ。さらにいくつかの万華鏡を
作り、立体像を得た。
現在のところ、小さい方ののぞき穴の一辺に関係する角度が、
立体像により作られる多面体の面の数に関係していると考えら
れる。これらの結果を基に、この点についてより詳しく実験・
解析を進めている。
ポリカーボネイトミラーで
作った万華鏡の1つ
のぞき口から見える像の様子
2. イカ墨液晶の研究(化学班)
私達は日本百景である地元相馬市の松川浦研修会に参加して、松川浦にはイカ
が生息し、そのイカは液晶の性質を含むイカ墨を持っていることを知り、ぜひ自
分たちの手で「イカ墨液晶を作ってみたい」と考えた。まず、液晶とはどのよう
な性質を持つのかを知る目的で、化学的に液晶状態を示す物質を利用して、リオ
トロピック液晶(ある種の物質を液体に溶かして、濃度を適当に調節したときに
液晶状態になるもの)およびサーモトロピック液晶(物質を加熱・冷却したりし
たときに、ある温度範囲だけで液晶状態になるもの)の研究を行った。
リオトロピック液晶
サーモトロピック液晶
ヒドロキシプロピルセルロース2gに対して 37℃前後で発色し温度が上がるにつれて赤褐色∼
赤色∼緑色∼青紫色に変化する様子
これまでの実験結果から、液晶の発色には温度と濃度が関係していることが分
かった。次にイカ墨からコレステロール分をエーテル溶媒に抽出して、それが液
晶(コレステリック液晶)の性質を示すかどうか、濃度や温度条件を変えながら
検証する実験を行った。さらに将来的にイカ墨液晶を作成する目的で、本研究を
進めている。
ー 167 ー
1603
千葉県立柏高等学校
神谷 啓介 菊地 聡史 久保木 翔一 棚鰭 宏樹
西井 淳雄 深谷 崇成 須田 健人 岡田 拓也
1. 化学強化ガラス
ガラスは引っ張りに弱い。その弱点を補うために、ガラス表面のナトリウムイ
オンを、それよりイオン半径が大きく、同じアルカリ金属のカリウムイオンに置
き換える。このようにして表面を圧縮し、引っ張りに強くすることで耐久力を強
化したものを、化学強化ガラスという。私たちは、硝酸カリウムの融解塩を用い
た強化ガラスについて、融解塩に浸す時間と強化の前後における質量の変化に着
目し、強化のされ方について検証を行う。
2. 消臭
消臭効果があると言われている酸化チタンと、消臭効果があると予想される硝
酸銀、硫酸ニッケル、硫酸銅、塩化パラジウムを使用し実験を行った。光触媒の
酸化チタンを利用した実験では、密閉された箱の中にアンモニアを入れ紫外線を
箱の中の酸化チタンに当て、実験を行った。硝酸銀、硫酸ニッケル、硫酸銅、塩
化パラジウムについては金属とイオンに分け、それぞれについて同様の実験を行
った。実験の効果はパックテストを用いて行った。その結果、酸化チタン、金属
銀に消臭効果がみられた。
3. 角材の浮かび方
前回の実験では、「断面が正方形の直方体の角材を水に浮かべると、①角材の辺
が水面に対して平行、②角材の対角線が水面に対して平行、③どちらでもない中
間、という①②③の浮かび方が、密度により連続的に変化していることがわかっ
た。このとき、全体の重心と沈んだ部分の重心が同一鉛直線上にあり、かつ最小
のとき最も安定する。」という結果を得ることができた。今回の実験では、この結
果が、断面が三角形の角材の場合、浮かび方とどのような関係にあるのかを調べ
た。
ー 168 ー
1604
芝浦工業大学柏高等学校
平井 貴典 氏家 義弘 松島 怜達
坂野 星羅 崎山 滉平 村山 雄太
風力発電のモデル実験
平井 貴典 氏家 義弘 松島 怜達
1. 動機
現在、環境等の観点から注目されている風力発電であるが、その発電量に問題
を抱えている。そのため、発電量を増やすにはどのような条件が最適か、モデル
実験を行った。
2. 方法
①必要な材料を用意し、モーターとプロペラを組み立てる。
②それらを組み立てて、扇風機を回し、プロペラを回して発電する。
③4つの条件を変えて実験を繰り返す。
3. 結果と考察
風力によって最適条件が異なる(プロペラの角度)ことがわかった。しかし発
電量はとても微弱で今後改良しなければならないと考えている。
今回の実験ではフィルムケースにコイルを巻きつけているので、鉄芯に直接コ
イルを巻きつけ発電量を向上させ、磁石もより強力なものに変更し、より多くの
電力を発電させる。当日はこの二点を変更した結果を発表する予定である。
バイオディーゼル燃料の考察
坂野 星羅 崎山 滉平 村山 雄太
1. 動機
動物油脂から作ったBDFと植物油から作ったBDFをある割合で混ぜ合わせ、常
温で液体になる比率を求める。また、混合したBDFの粘性を調べ、燃料の代わり
になるか調べる。
2. 方法
植物性BDFと動物性BDFを割合を変えて混ぜ合わせ、どの程度の割合で常温で
液体を保つかを調べた。また、生成したBDFはしっかりと燃焼したので、灯油や
水、原料として用いた油脂の粘度と比較し、灯油と近い粘度になっているか調べ
る。
各溶液100mlを用意し、同じ重さの玉を同時に落とし、底部に着くまでの時間を
測定する。
3. 結果
動物性BDFが25%以下で、常温で液体となった。また、混合したBDFから灯油
に近い粘性のものが得られた。
ー 169 ー
1608
福井県立藤島高等学校
黒川 達也 早川 悠介 山口 拓也
複素数平面上の幾何学
∼双曲三角形によるタイリング∼
1. 目的
エッシャーの「天使と悪魔」(図1)というトリックアートを数学的に解析する。
同様の図形をコンピュータを用いて描く。
図1
図2
図3
2. 天使と悪魔と鏡像
「天使と悪魔」は天使と悪魔をそれぞれ双曲三角形とみると、円に対する対称
変換(これにより写された像を鏡像と呼ぶ)で繰り返し写していくことでタイリ
ングされていく。その際、初めの三角形の内角により出来上がる図形が決定する。
これは、三角形をパタンパタンと転がすようにとらえると、イメージしやすい。
(図2)
図4
図5
3. 鏡像と複素数の一次分数変換
鏡像は複素数の一次分数変換と共役複素数を使い表わされる。一次分数変換と
は(図3)の形であらわされる変換である。図4は点がどのように鏡像に写るか示
している。
4. コンピュータで図形を描く
自動的に座標を計算し、図形を描くプログラムを作成しようと試みたが、時間
の問題もあり、今回の研究では既存のプログラムを使用した。(図5)ポスターセ
ッションでは、初めの三角形を変えることで、どのように図形が変化するか実演
する。
ー 170 ー
1612
三重県立松阪高等学校
2年 梅谷 彩子 中野 莉沙
3年 中井 沙織 西出 裕梨 吉田 早紀
鯨類の行動や生態を飼育下と野生下で調査する
1. 研究の目的
私たちは、国際的にも保護と利用の意見が対立している鯨類について、飼育下
および野生下での行動や生態についての調査法の検討や基礎的データを得ること
を目的に、三重大学生物資源学部の吉岡基教授の指導のもと、水族館でのイルカ
の行動観察および熊野灘での野生鯨類の調査を行ったので、その結果について報
告する。
2. 水族館でのイルカの行動観察
2007年8月、愛知県の水族館(南知多
ビーチランド)において、瞬間サンプ
リング法によって飼育下のバンドウイ
ルカ5頭の日中の行動観察を行った。
その結果、観察した水槽(屋内プー
ルと屋外プール)や個体によって1日の
行動パターンが大きく異なることや、
図 屋外プールでの観察例
プールに投げ込まれたボールなどの遊
具の利用が個体によって異なることが示された。そして、これらのデータから示
された個々のイルカの行動や性格の違いは、飼育経歴や同時に飼育されているイ
ルカ間の優劣関係などが関係しているのではないか考えられた。また、1日の行動
パターンの変化には、観客数の増減やショーといった人間との関係が大きく影響
することがわかった。
3. 熊野灘の鯨類について
熊野灘の野生鯨類について知るため、2007年8月および9月、ウォッチング船を
利用した野外調査を行った。9月の調査では、潮岬の東方約30km位置でハナゴン
ドウの群れを発見することができたが、その他の鯨類は発見できなかった。
ウォッチング船の過去4年間(2004∼2007)
の観察記録を整理したところ、那智勝浦町の
熊野灘沖では2007年に14種の鯨類が確認さ
れ、そのうちマッコウクジラとハナゴンドウ
が最も多く観察されることがわかった。この
2種の月別の発見率から、マッコウクジラは
大きく回遊をしており、毎年4∼5月にこの近
海に出現すること、ハナゴンドウはこの近海
の熊野灘沖に常時生息していることが確かめられた。
ー 171 ー
1701
青森県立八戸北高等学校
沼沢 邦朗 長坂 朋哉 稲森 洋平
大塚 勇介 工藤 昌保 佐藤 翔平
上村 駿洋 加藤 裕介 坂上 彰啓 瀬川 友樹 吉田 拓馬
1. 人体の構成成分による鋳鉄の変化
古代中国の伝説に登場する名剣「干将莫耶」は、髪爪を混ぜて作られたと記述さ
れている。それを科学的に検証してみたいと思ったのが研究動機である。手始めに、
今回はまずその基礎実験として、鋳鉄に髪爪を加えるととどうなるか、を調べてみ
ることにした。粉末状の鋳鉄にあらかじめ焼成した髪爪または生の髪爪を加えて融
解したところ、分析可能な試料を得ることができた。試料表面の組織観察、硬さ測
定、元素分析の3つのデータから、鋳鉄は粉末にして融解すると硬くなること、髪爪
を加えると腐食されにくくなること、また、髪爪を加えると炭素量が増大すること
などが分かった。「干将莫耶」は本当に名剣足りえたのか、その研究成果について報
告する。
2. 続 八戸港における海水の循環について
八戸港は、北西には工業地帯が広がり、南東に
は鮫漁港、蕪島があり種差海岸へと続いている。
本研究では取得した八戸港内の流向・流速データ
を可視化ソフトにより画像化することを試みた。
これらの画像及び観測・実験結果をもとに、港内
の海水の循環について検討・考察を行った。その
結果、次の3点が明らかになった。(1)八戸港の海
水循環は、馬淵川から中央防波堤に向かう線を境
にして、大きく2つの循環が存在している。(2)白 満潮から干潮に向かう水深5mでの流向・流速の可視
銀西・白銀北防波堤と岸壁に囲まれている新井田 化画像
川河口、鮫漁港、蕪島付近は流出が乏しく海水の
循環が悪くなっている。(3)昨年同様全窒素、全リンの検出が再現されたことから、
港内には定常的にこれらの物質が存在していると考えられる。
3. 新しいタイプのブロックコポリマーの合成と応用
ポリマーとは分子量が一万以上の分子であり、そのよい例としてビニールがあり、
我々の生活には欠かせないものとなっている。そこで、我々は、ラジカル重合を用
いた新しいタイプのブロックコポリマーの合成について実験を行った。まず、ビニ
ル基を複数持つ原料に過酸化フルオロアルカノイルを反応させた後、さらに、ラジ
カル重合性のモノマーであるN,N-ジメチルアクリルアミドを反応させ、2つのブロッ
クを有するポリマーの合成に成功した。このポリマーは、水やアルコールなどの溶
媒に対して良好な溶解性を示し、界面活性効果が見られた。そのため応用として、
このポリマー水溶液を用いてフラーレンの水への可溶化を行ったところ、効率よく
水に可溶化させることができた。本発表では、これらの研究の成果を報告する。
ー 172 ー
1702
群馬県立高崎高等学校
平野 貴大 山根 慎平
久保田 解 上原 拓峻
2年次「SSH実験講座」の活動報告
高崎高等学校2年SSHクラスにおける活動の中心は「SSH実験講座」である。
生徒の希望により、生命科学班・ロボット製作班・フロンティア班を編成し、各分
野の研究に関する実験・実習を行う。これまでに実施した活動について紹介する。
1. 生命科学班
群馬大学医学部附属病院を訪問した。がん治療
の方法は外科的治療・化学療法・放射線治療の3
つがあり、重粒子線治療は放射線治療に属する。
重粒子はヘリウム原子核よりも重いイオンのこ
とで、群馬大学では炭素イオンが使用される。
重粒子線治療は、従来の放射線治療より正常細
胞に与える影響が少なく、がん細胞の破壊効率
も高い。
2. ロボット製作班
千葉工業大学・未来ロボット技術研究センタ
ーの古田貴之先生にご指導いただいた。ロボッ
ト技術は未来の社会・生活・文化などの面で重
要な役割を担う。そんなロボット技術の一端に
触れるために、最先端ロボットにも組み込まれ
ている市販のキットを用いて簡易ロボットを製
作した。
3. フロンティア班
前橋工科大学工学部を訪問した。サイフォン
現象を応用し、逆サイフォンによる間欠泉のよ
うな噴水装置を製作した。エアチューブから送
られた空気がたまり、水位が一定以下となりパ
イプを通して空気が外に放出されるとき、水も
一緒に噴出する。この装置では小さな噴水を出
すため、比較的省電力で稼動する装置への応用
が考えられる。
ー 173 ー
1703
埼玉県立大宮高等学校
SS保健体育研究部
大宮高校生の心拍数について
1. SS保健体育(心肺持久力授業)について
SSH保健体育として
従来の
保健体育
保健分野−(心臓・関節・筋肉の構造学習)
体育分野−(持久走・筋トレ・柔軟運動の実施)
SSH
保健体育
特に心肺持久力の授業時間において、心拍数と心臓機能を学習するとともに持
久走を行い、ハートレートモニター(左写真)を使用し400mごとの心拍数測定・
ラップ時間を記録(右図)、その後自己分析レポートを書いた。
(測定評価学習)
2. 大宮高校生徒(1年男子生徒)の心拍数について
上記学習をSS保健体育研究部が調査研究した。平成19年度男子(207名)の
持久走時の心拍数、ラップ時間と心臓機能の関係、一週間の運動日数・一日の運
動時間・食事・部活動・勉強時間等々の関係をSSH保健体育研究部(7名)が調査
研究した。
左図は今回研究した大宮高校
生の心拍数の研究項目のひとつ
である。
持久走授業における運動部
員・文化部員の心拍数変化のグ
ラフを表したもので、日頃の運
動量の違いから、安静時と運動
時、運動後の心拍数変化、回復
力の違い等がよくわかる。
ー 174 ー
1704
早稲田大学本庄高等学院
小林 亘 大谷 崇人 戸谷 章人
車軸のない車とPICマイコンによる遠隔操作の研究
1. 目的
本研究の最終目的は、超伝導によるピンニング効果を使っ
た車軸のない車を制作し、タイヤの回転を遠隔操作で制御す
ることである。
今回の研究では、その基礎実験である、
①タイヤを回転させる方法
②図1のようなPICマイコンを使った遠隔操作の研究を行っ
た。
図1 PICの写真
2. 実験内容
①の実験は図2のように磁石に直接電流を流す方法と図3の
ように磁石の上に銅線を張りそこに電流を流す方法をとり、
磁場と電流の相互作用いわゆる「フレミングの左手の法則」
を利用して磁石を回転させることを試みた。
②では、流す電流の向きをPICを使って遠隔操作で制御す
ることを試みた。
PICにはスイッチをON、OFFすることで電流の向きを変
えるプログラムを書いた。
図2
実験の様子
図3 銅線を張った一例
3. 結果
電流を流す実験では、図3のような磁石の上に張った銅線に電源装置から5V、3A
の電流を流してみたが回らなかった。しかし、直接磁石に電流を流したところ回
転をすることがわかった。
また、磁石の回転方向を遠隔操作で制御する実験は成功したが、磁石の回転力
が弱く磁石表面の氷に邪魔されて止まってしまうこともあった。
4. 考察
実験①、②の実験結果から磁石に電流を直接流しPICを使う
ことで磁石を回転、制御できることがわかった。しかし、銅線
と磁石との摩擦や磁石表面の凍結などの問題がありその改善の
ために図4のようなすべての機材を上に載せるということを考
えた。今後はプログラムの改良、磁力線の遮蔽などを課題に研
究していきたい。
図4
ー 175 ー
完成予想図
1705
東京工業大学附属科学技術高等学校
科学的に考え、技術的に取り組む課題研究
1. 群知能のアリゴリズムの研究
我々は単純な知能をもつ生物が集団になることで、
様々な問題に適応できる「群知能」に興味を持ち、研究
することにした。研究に当たり群知能を用いる身近な生
物である蟻に着目し、蟻の採餌活動を取り上げた。蟻は
フェロモンと呼ばれる揮発性の化学物質を用いて、フェ
ロモンコミュニケーションと呼ばれる効率的な採餌活動
を行っている。この「蟻が餌を見つけ巣に戻る」という
一連の動作をするプログラムを作成することにより、巣
から餌までの距離が最適化されるまでのアルゴリズムを
研究し、群知能のさらなる有用性について調べている。
図 プログラムの実行結果
2. 有機ELにおける発光体の検討と素子の試作
今日、環境問題が叫ばれる中、環境に配慮した製品作りは避け
て通れない重要な要素である。その中にあって、従来の液晶テレ
ビより格段に省エネを可能とする有機ELは、将来のディスプレ
ーとして大変期待できる新技術として注目されている。私たちは
この有機ELを高校生の力で制作できるか挑戦し、発光体の検討
と素子の作製の2項に目標を定めた。現在、私たちは緑色に発光
するAlq3の合成と陰極アルミの真空蒸着に成功し、有機EL素子の
作製に取り組んでいる。
図 合成したAlq3
3. マルチプラットフォーム対応P2Pファイル共有ソフトの開発
インターネットの個人利用が当たり前となった今日では、データの送受信をい
かに「手軽」かつ「高速」に行うかが課題となって
いる。しかし、現状のファイル転送ソフトの多くは
「転送速度が遅い」「設定が難しく初心者には扱えな
い」などの問題がある。そこで我々は「手軽」かつ
「高速」にファイル共有を行えるソフトウェアの開
発を行った。現在までに開発したソフトウェアの動
作にはサーバーが必要であるため、手軽に共有でき
図 ソフトウェアの動作例
るとは言い難い。そのためサーバーを不要にする仕
組みの導入を検討している。
ー 176 ー
1706
神奈川県立西湘高等学校
理科部生物班 花井 正実 川口 美咲 加藤 豪
理科部地学班 五十嵐 蓮 岡 健太郎
理数実践 内藤 幸平 飛田 智広 内田 晃士 岸 淳矢
SSHの取り組みから
1. ハエトリグモの威嚇誇示行動について その2
理科部生物班 花井 正実 川口 美咲 加藤 豪
ハエトリグモが示す威嚇誇示行動、求愛誇示行動の動画記録を昨年に引き続き
行った。今までに成体十数種類の威嚇・求愛誇示行動に加え、幼体での威嚇誇示
行動も観察できた。その結果、動画記録を元に種ごとに行動を分類し、その特徴
を調べた結果、性的二型の小さい種や幼体は視覚的な誇示行動をあまりしなかっ
た。また、現在は性的二型や幼体の行動などについて新たな仮説を検証中である。
2. 学校の地盤と耐震性についての研究について
理科部地学班 五十嵐 蓮 岡 健太郎
プレート境界に流れる1級河川酒匂川は足柄平野を作り、その末端の台地に西湘
高校が位置している。しかも活断層が隣接していることから直下型地震も心配さ
れている。建築時や耐震工事時に作成された多数のボーリング資料から地盤のデ
ータを調べ、資料の砂粒を観察したところ、縄文海進の堆積物に河川堆積物が重
なっていることがわかった。また地表から約3∼6mの深さに新富士火山の最後の
山体崩壊の堆積物(御殿場泥流)があることがわかった。さらに私たちの学校は
耐震性において安全なのか。どのような防災上の注意が必要なのか考察した。
3. ∼アルコールの起源∼ パンからのエタノール合成について
理数実践 内藤 幸平 飛田 智広 内田 晃士 岸 淳矢
昨年実施された「SSHアサヒビール工場・研究所研修」の講義で、『アルコール
の起源は、偶然雨曝しになったパンが発酵したものである。』と教わった。数多く
のアルコール飲料があるが、それらのルーツがパンだとは意外であった。そこで、
自分達の手でこの現象の再現を試みた。
再現にあたり、可能な限り原料は天然由来にこだわった。自分達で手作りした
パンを粉末状したもの、自宅栽培のミカンから培養した酵母、大根の発芽種子か
ら得た酵素、これらを丸底フラスコに入れ、30℃の恒温槽で2週間発酵させた。発
酵終了後、反応溶液を1H-NMRとアルコール屈折計を用いて計測した結果、アル
コール濃度25%が生成している事がわかった。
よって、研究目的を達成することができた。
ー 177 ー
1707
山梨県立都留高等学校
数学班 生物班 地学班
都留高等学校SSHグループ研究
1. はじめに
都留高校では各年次にSSHクラスを1クラス設置し、所属生徒を数学及び物化
生地の5つの班に分け、さらにその中でグループをつくり、研究を行っている。今
回は、いくつかの研究について、研究成果及び今後の研究計画等を報告する。
2. 素数について
素数とは、1とその数自身以外に正の約数を持たない、1より大きな自然数です。
インターネットなどで利用されているRSA暗号には素数の性質が使われていま
す。RSA暗号の仕組みを理解し、簡単に暗号を作ったり複合したりします。
3. 風散布種子のメカニズムについて
植物が移動できるのは、主に花粉と種子のステージである。
種子の散布距離はその個体の繁殖率と大きな関係があるた
め、遠くまで運ぶ装置をもつ種子は多い。今回は風散布種子
であるヒマラヤスギの種子について、1)種子の重量や翼の
面積と散布距離(滞空時間とした)との関係、2)翼と種子
本体の比率、3)落下軌道と翼の形態との関係、という3点に
着目した。ヒマラヤスギの種子を落下させながら、その形状
の機能について考察したい。
【写真】ヒマラヤスギの種子
大きな翼が付いている
4. 山中湖砂嘴(さし)の成因について
主に砂嘴は、沿岸の波や流れによって砂など
が堆積してつくられる。しかし山中湖は湖なの
で海流のような流れや、また、流れを作るよう
な大きな河川の存在もない。そこで、湖水の流
れを生じさせる要因として「吹送流」というも
のを考えた。吹送流とは風が一定の方向に吹き
続けることにより表層の水が風に引きずられ生
【写真】砂嘴の様子(先端部)
ずる流れのことである。今回は、気象庁の過去の
風向データを調べることにより山中湖に吹く風の特徴を明らかにし、また、山中
湖と同じ形の模型を作り水を入れ扇風機で風を送ることにより、砂嘴が形成され
るような流れが検証できると思い実験を試みた。
ー 178 ー
1708
長野県諏訪清陵高等学校
松枝 知香 菊池 大地 菅沼 雅博
「海外科学セミナー」アラスカ研修
SSH事業の海外科学セミナーでS講座の生徒24名が今年の2月5∼10日に米国アラ
スカ州フェアバンクスを訪れてオーロラ観測をはじめとする極地観測を行った。こ
の研修の柱でもある課題探究として一人一テーマを実施している中から3つを紹介す
る。
1. オーロラの速度測定
オーロラは3日間の観測
のうち2日間で観測に成功
した。同じ条件で連続して
オーロラの写真をとり2つ
の写真の差を求め、写真の
みかけの大きさ(視覚)か
ら、実際にオーロラが動いた距離を調べ、そこからオーロラの速度を求めた。
また、CCDカメラによる動画を利用しオーロラ観測用ロケットが描いた軌跡雲
を利用してオーロラ帯の風速を計算した。
2. 気象観測
自動観測装置を用いて、気温・湿度・気圧・照度・騒音・不快指数の6項目につ
いて測定を行った。ただし、気温については自動測定
可能範囲が零下20度までであるため、環境メーターを
用いて手動で測定を行った。今回の研修ではオーロラ
観測やアラスカ大学の講義を通して様々な場所を訪れ
たため、あらゆる地点での観測結果をもとに比較考察
した。
3. 凝固点降下の違い
本校がSSH指定校になり、アラスカ研修が始まった年から継続されてきた研究
を今年も継続して行った。シャボン玉液に砂糖、塩を違う割合で加え凍結までの
時間を計測した。方法は昨年と同様にしようと思ったが、風対策として今回は針
金で作った輪に薄い膜を作り計測をした。
また、興味があったので滞在中の気温も測定しようとし−40℃まで計測可能な
計測器を購入した。しかし、今年度は数年来の寒波の到来で計測範囲を超えてし
まった。公式記録として滞在中の最低気温は−44℃であった。
ー 179 ー
1709
兵庫県立尼崎小田高等学校
永澤 延元
藤堂 寛文
合田 麻梨恵
PCR−RFLP法によるDNA解析
ミトコンドリアDNAは人間の歴史を調べるうえで都合がよく、分子人類学者
によく使用されている。学者たちに習って、私たちはシークェンサーを用いずに
実験をし、縄文人、弥生人に見られる代表的なハプロタイプに分けることができ
た。また、その結果から地域差についても考察した。
実験方法は
・頬から抽出したミトコンドリアDNAの、5178、10398・10400番目の塩基の
前後を2種類のプライマーで増幅する。次にAluⅠで制限酵素処理し、EtBr
を入れたアガロース3%ゲルで電気泳動し、紫外線下で写真をとり、「M」「N」
「D」のハプロタイプに分ける。
・「N」だったもの→4958番前後の塩基を増幅するプライマーと、制限酵素を
MaeⅢにして同様に実験し、「N9b」であるかを決定する。
・「M」だったもの→13183番前後の塩基を増幅するプライマーと、制限酵素をN
laⅢにして同様に実験し、「M7a」であるかを決定する。
結果 注)ハプロタイプ「M7a」、
「N9b」に該当されている人種はほぼ間違いなく、また「D」
についてはあくまで可能性が高いと言われている。
今回の実験では文献値に比べM7aが多いので、尼崎における地域の偏りとして
は、沖縄に住んでいて近畿地方に移住してきた縄文人が多く、よってこの地域は、
それらと弥生時代に中国方面から移住してきた人とで主に構成されていて、その
名残が残っているのではないかと思われる。
この研究は本年度の全国SSH校の重点研究に選ばれ、8月20∼22日に本校化学
室で県内の高等学校及び全国のSSH指定校の生徒と教員を対象にした講習、実
験を予定している。
ー 180 ー
1710
京都市立堀川高等学校
大橋 昂史 馬場 翔子
赤外線を用いたチョウの蛹の観察
完全変態昆虫は幼虫から成虫になる過程で、自らの体の形態を変化させる。特に
蛹の間では、幼虫の体から成虫の体へと大きな変化を遂げる。しかし、蛹の中の変
化の様子を観察することは困難である。そこで、観察が困難な蛹の中の変化の様子
を生きたまま観察するために、赤外線を用いて蛹の内部を観察する手法を開発した。
ある波長の近赤外線は、脂肪や水を透過する性質を持っている。蛹化した直後の
蛹には脂肪が比較的多く含まれているた
め、近赤外線は透過しやすい。蛹が成長
するにつれて、蛹の中では成虫の体が大
部分を占めるようになるので、近赤外線
は透過しにくくなる。この性質を利用し
て、一方から近赤外線を蛹に照射し、反
対側から赤外線カメラでこれを撮影す
図 実験の概要
る。今発表会では、透過画像等を紹介し、
この手法の実用性について報告する。
二酸化窒素の鉛直分布
近年光化学スモッグの発生率は増加している。光化学スモッグの主な原因物質は
二酸化窒素である。光化学スモッグの発生リスクを詳細に計算するためには、二酸
化窒素がどのように拡散もしくは風に運ばれるかを知る必要がある。拡散や風は水
平方向だけでなく鉛直方向にも生ずるので、濃度の変化を把握するには、地上にお
ける観測だけでなく、鉛直分布測定が重要となる。
しかし、鉛直分布の観測はセスナ等航空機を使ったものであり、簡便に行うこと
ができないので、あまり頻繁に測定されていない。しかも、高い高度しか測定する
ことはできない。そこで、本研究では、0m∼300mでの二酸化窒素の鉛直分布測定
を簡便に行う手法を開発することを目的とする。
分子は高濃度から低濃度へ移動するという分子拡散則を元に作られ、暴露期間の
平均濃度を測定できるパッシブサンプラーを自作し、約100mのビルに一定の高さご
とに1日間設置、濃度分布を測定する。測定の際にはザルツマン法を使用、市販の小
川サンプラーとの比較を元に濃度計算をする。また300m程の高さに上げることがで
きるバルーンを借り、300mのチューブを取り付け、地上からポンプで一定の高さご
とに空気を直接捕集、濃度分布を測定する。測定の際にはザルツマン法を使用する。
ー 181 ー
1711
立命館高等学校
上杉 翠
色素増感型太陽電池でステンドグラスを作る
1. 色素増感型太陽電池について
色素増感型太陽電池とは、一般的によく見かけ
る黒っぽい色の太陽電池と異なり、色素を吸着さ
せることで様々な色を表現できる太陽電池であ
る。具体的な製法は、酸化チタンのペーストを導
電性ガラスに焼き付け、色素につけ込む。そのガ
ラスと、別に用意した炭素を塗った導電性ガラス
を挟み、間に電解質溶液(ヨウ素液)を流し込む
というものでいたってシンプルである。
現在の研究課題は、発電効率ではなく、酸化チ
タンのペースト部分の色素吸着についてである。
2. 酸化チタンペーストの混合比率と色素吸着についての実験
「酸化チタン(アナターゼ型)、酢酸、PEG(分子量20000)、水をそれぞれ
1.5:1:1:1の比率で混合すると、導電性ガラス上にペーストを焼き付ける際に
剥がれ落ちにくい」ということが、文献に載っていた。しかし、この混合比率で
ペーストを焼き付けると色素がうまく吸着しないことが実験を重ねるうちにわか
ってきた。
そこで、使う色素は固定した上で、混合比率を0.5ずつ前後させ、色素が吸着し
やすい条件を調べた。値を変えたのは酸化チタンとPEGで、それぞれ違った比率
で9通り作成し、実験を行った。
3. 今後について
色素をペーストに安定して吸着させるこ
とが可能になり次第、ペースト部分に型抜
きをする方法や、部分的に色素の色を変え
る方法などについて調べようと思っている。
この研究はまだ研究途上である。
ー 182 ー
1712
京都教育大学附属高等学校
中野 哲也 西澤 太知 桝井 共太 飛田 哲志 早見 拓朗
Sensor Project
∼反応値が変わるセンサー∼
1. 研究の動機と目的
私たちの身の回りには多くのセンサーがあります。携帯電話を例に挙げると、
声を認識する音センサー、赤外線通信の光センサー、ボタンの圧力センサーなど
たくさんあります。ほかにも様々な場所で使われているのは言うまでもありませ
ん。そのセンサーの仕組みや原理に興味を持ったので、今回、私たちは、あらか
じめ決めた温度に到達すると反応するセンサーを作ってみようと思いました。
2. 光センサー
CdSを用いた光センサーです。光センサーとは、周りの光が変化したことを
示すものです。CdSとは、周りの光の量に反応して暗くなる(光量が少ない)
と抵抗値が大きくなる性質を持っている可変抵抗です。
また、図1のように回路をつなぐと、暗くすると電子オルゴールが鳴るようになる
暗さに反応するセンサーができます。
3. 温度センサー
温度センサーは、周囲の温度の変化に反応するものです。サーミスタとは、周
囲の温度の違いによって抵抗値を変化させる可変抵抗です。サーミスタにはいく
つか種類があり、グラフに示す通り、PTCと呼ばれる温度上昇に伴って抵抗値
が大きくなるものや、逆にNTCと呼ばれる温度上昇に伴って抵抗値が小さくな
るものがあることが分かります。
このことから、用途に合わせて適したサーミスタを選択しなければなりません。
4. 今後の計画と方針
今後は、上記の光センサーと温度センサーの精度向上を目指し、また、組み合
わせることによって様々な新しいセンサーを開発していきたいと思っています。
ー 183 ー
1713
奈良女子大学附属中等教育学校
中嶋 研人
西田 惇
樋口 幸太郎
新しいインターフェースの開発
1. 研究成果
昨年度までの研究において、Webカメラを使った高精度のモーションキャプチ
ャシステム(特定物体の三次元座標自動解析システム)の独自開発に成功した。
その後、これを利用した「Cubic Control」を完成させ、直感的で分かりやすいPC
インターフェースを実現することができた。
また、ロボット開発などで培った電子工学技術を土台にして、人間の筋肉電位
(EMG;electromyogram)を読み取れるレベルまで増幅(10万倍)するアンプを自
作し、この信号を利用したハードウェアのインターフェース開発に一部成功した。
2. 研究背景
現在、PCやロボットなど、様々な電気機器が発達し続け、高度化している。し
かし、それに伴って、操作方法が複雑化し、便利だが使いにくい状態にある例が
たくさんある。
そこで私たちは、ここ数年、直感的で分かりやすいインターフェースの開発に
取り組み、ソフトウェアとハードウェア両面で具体的な成果を上げることができ
ている。
3. 研究内容
(1)Cubic Controlについて
PCやPCに接続された機器を操作することが
できる「Cubic Control」の開発に成功した。
キーボード、マウスとともに利用する第3のイ
ンターフェースという位置づけとなる。(図は
使用風景)
(2)EMGインターフェースについて
皮膚から取り出した人間の筋肉電位(EMG)
で、ラジコンなどのハードウェアを操作する
EMGインターフェースの開発に成功した。
(図は、EMGをPCで表示している様子)
ー 184 ー
1714
岡山県立倉敷天城高等学校 秋山 直也 浅尾 慎介 岡部 晃幸(セルロース分解菌)
千葉 和也 中島 康博 山本 倫大(フタホシコオロギ)
身近な植物に生息するセルロース分解菌のスクリーニング
∼有用物質を生産する微生物の獲得を目指して∼
1. 概要
筆者は今回スクリーニングにより発見することができたセルロース分解菌を
SANと命名した。SAN1∼5をHPLC、TLCで測定した結果、セロビアーゼ活性があ
ることが分かったので、セロビオースが生成されていることが分かった。また、
特にSAN3が最も活性が強かった。その菌の特性としてSAN1、2、3には好酸性お
よび好塩基性があることが確認され、SAN4、5には好塩基性があると分かった。
今後の課題としてはSAN1∼5の遺伝子が既存のセルロース分解菌の遺伝子とを比
べ、新種かどうかを確認したい。次に、既存のセルロース分解菌と筆者のSAN1∼
5の能力を調べ、どちらが優れているかを確認したい。次にSAN1∼5の性質を詳し
く調べ、もう一度HPLC、TLCで測定し、グルコースまで生成されているかを確認
したいと考えている。
光学顕微鏡によるフタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)の
血球の観察:特に血球の分類と捕食について
1. 概要
採血直後の状態のまま血球を観察するために酢酸オルセイン染色を行い、採血
後も生きた状態で観察するためにニュートラルレッド染色を行って観察し、フタ
ホシコオロギの血球を、エノシトイド、プラズマ細胞、顆粒細胞、コアギュロサ
イトの4種類に区別した。
Guputa(1979)の報告によれば、直翅目昆虫(コオロギ類を含む)の血球には、
原白血球、プラズマ細胞、顆粒細胞、小球細胞の4種類が存在しているとされてい
るが、今回の研究では、コアギュロサイトとエノシトイドを新たに観察すること
ができた。
ー 185 ー
1715
広島県立広島国泰寺高等学校
吉田 怜史 瀧口 慶子
岡田 朋香
リン酸イオンの定量法とその除去法
1. リン酸イオンの定量法について
本研究ではアスコルビン酸と酒石酸アンチモニルカリウムを添加するモリブデ
ンブルー法を採用した(図1)。この方法で水道水を測定すると1時間後に薄い青色
を呈し、測定したスペクトル(図2)は、文献にあるケイ酸イオン由来のスペクト
ルとほぼ同じであった。しかし、モリブデンブルーの濃度と発色時間との関係を
検討した結果、図3のようにモリブデンブルーの吸光度は1分以内に急激に上昇し、
発色時間が5分以内では、ケイ酸イオン由来の883nmの吸収はほとんど見られなか
った。したがって、ケイ酸イオンが含まれている環境水中のリン酸イオン分析に
は、酸性モリブデン溶液添加後、「5分間の発色時間」が最も適していると判断し
た。
図1:リン酸イオン由来のモリブデン
ブルーの吸光度スペクトル
図2:水道水の吸光度スペクトル
発色時間 a: 5分、b: 30分
c: 60分、d: 24時間
図3:モリブデンブルー発色の時間変化
点線:15℃、実線:15℃、破線:35℃
次に、測定できるリン酸イオン濃度の範囲につ
いて検討した。図4に示すように30μmol/ より
濃い濃度ではリン酸イオン濃度に対する883nmの
吸光度(883nm)の増加率は少しずつ減少した。
この結果から、本研究では、試験液のリン酸イオ
ンの濃度の範囲を0∼20μmol/ となるよう調整し
て吸光度を測定することにした。
2. リン酸イオンの除去法
私たちは、植物と無機化合物を使って除去する方法を検討した。リン酸イオン
を取り込ませる植物としてオオカナダモ、不溶性の無機化合物として回収する方
法として、アルミニウム塩やアルミニウム金属を用いて実験した。いずれの場合
もリン酸イオンを効率よく吸収する結果が得られた。
ー 186 ー
1716
愛媛県立松山南高等学校
金岡 雄太 射場 亮太 東 孝行
「ブラックバスの食性に関する研究」
―オオクチバスは何を食べているのか―
1. はじめに
私たちは普段からバス釣りを趣味としている3人で、オオクチバスの食性に興味
を持ち、どのようなエサを好むのかを調査した。モデルを使用した実験を試みる
ことでオオクチバスの食いつきについて研究した。
2. 実験方法
(写真Ⅰ)
(1)昨年の3月上旬∼5月下旬にかけ、オオクチバ
スを採集し、解剖して胃内容物を調べた。
(2)形状の異なる大・中・小3種類のモデル(写
真Ⅰ)を自作し、それに対するオオクチバス
の反応を観察した。
(3)6色の同じ形状のモデル(写真Ⅱ)を自作し、
それに対するオオクチバスの反応を観察し
た。
(写真Ⅱ)
3. 結果
(1)エビやオオクチバスの稚魚など、一口で飲み込めるサイズのエサを多く捕食
していることがわかった。
(2)小さいモデルにより高い食いつきの度合いをしめした。
(3)食いつきの度合いが高い順に白・黄・黒・赤・緑・青であった。
4. 考察
(1)オオクチバスは様々なものを捕食するが、主に一口で飲み込める小さい生物
を捕食していた。
(2)食いつきの度合いの変化と記録していた水温のデータを照らし合わせてみた
ところ、水温の変化に伴い食いつきの度合いが変動していることに気づいた。
ヒトと同様、オオクチバスも食欲が増す適温があると思われる。
(3)オオクチバスは明度の高いものへの関心が高いと考えられる。しかし、黒色
モデルは明度が低いにも関わらず食いつきの度合いが高いことから、明度の
他にも別の要因があると思われる。
ー 187 ー
1717
福岡県立小倉高等学校
SS環境科学研究会とSS天文研究会の研究成果について
1. 北九州における酸性雨の研究(SS環境科学研究会)
近年、酸性雨により銅像や銅製の屋根などから銅イオンが溶け出す現象が報告
されている。本研究では、福岡県北九州市小倉北区における酸性雨による銅製屋
根からの銅イオンの溶出に関する季節変化を観測し、雨水中に含まれる陰イオン
の季節変動との関係について検討した。また、代表的な酸を用いた人工酸性雨を
調製し、銅製屋根の溶解反応のモデル実験を行った。
観測結果からは、冬、北西の風が吹き、NO3−やSO42−が多く含まれる雨水では、
pHが低くなる傾向が見られ、銅製屋根の銅の溶解量が増加することが示された。
このことから、黄砂のように北西の季節風に乗り大陸から飛来する酸性物質の供
給によって、北九州地区の雨水の酸性化とNO3−およびSO42−濃度の増加が起こり、
銅の溶解量に影響を与えているものと考えられる。人工酸性雨による銅製屋根の
溶解モデル実験では、硝酸、硫酸、塩酸のいずれの場合にも、pHが4を下回る領
域で銅の溶解量が飛躍的に増加し、銅の溶解量と銅製屋根通過における前後のpH
変化、すなわちプロトン消費量と相関があることが示唆された。また、陰イオン
の種類により銅の溶解量に差が見られた。
2. 2重小惑星の正体に迫る(SS天文研究会)
本校の天文研究会では、小惑星の研究を始めて本年度で4年目になる。小惑星の
光度変化を観察する中で、当初は小惑星のいびつな形を研究してきたが、研究を進
める中で、小惑星には複数の小惑星が重力の影響を受けて相互に回っているものが
あることがわかった。そこで、我々は90Antiopeと216Kleopatraの2つに着目した。
90Antiopeは本年度小惑星が恒星を隠す掩蔽が起きて、2つの直径がおよそ90km
であることが確かめられた。本校では、この2つの小惑星同士が食を起こすときの
明るさの変化に着目して、2つの小惑星相互の公転周期やこのときの速さを調べ、
小惑星の質量を算出して小惑星の密度を求めることに成功した。この値は1.5g/cm3
と地球上に存在する岩石の密度に比べても小さい。さらに216Kleopatraは、非常に
いびつな形をしており、短軸に対して長軸が3倍近くあることがわかっている。こ
の小惑星は2重小惑星が非常に接近した形で回っている可能性がある。そこで今回
明るさの変化をもとにその可能性を確かめてみた。その結果この小惑星では2つに
分かれておらず、1つのいびつな形の小惑星として存在することがわかった。
ー 188 ー
1718
長崎県立長崎西高等学校
ウィルキンソン 悠仁賢一
加永 沙織
平 華子
アルファルファタコゾウムシの研究 Ⅰ
1. 研究の動機
2004年の春に初めてアルファルファタコゾ
ウムシを捕獲し、この昆虫がレンゲソウなど
のマメ科植物を食害する害虫であることがわ
かった。まだ、生態が詳しく知られていない
この昆虫の生態的特性を調べて、防除方法の
開発に役立てたいと考えた。
羽化するアルファルファタコゾウムシ
2. 研究方法
飼育容器を開発し、いろいろな明暗周期の飼育条件を設定することで、アルフ
ァルファタコゾウムシの日周行動の特性を明らかにできた。
ペーパークロマトグラフィーを中心とした分離方法で、アルファルファタコゾ
ウムシの集合フェロモンの存在を探究した。
3. 研究成果
アルファルファタコゾウムシの羽化成虫は、
幼虫時期に短日条件で生育すると昼行性を示
し、長日条件で生育すると夜行性を示し休眠
に入ることがわかった。また、これまでアル
ファルファタコゾウムシの集合フェロモンは
報告されていないが、アルファルファタコゾ
集合して休眠する成虫
ウムシの糞から集合フェロモンと同じ作用を持
つ誘引物質を発見した。
本研究によって、アルファルファタコゾウムシは、羽化成虫が発生する時期に
よって行動パターンが異なる可能性が高いことがわかった。この結果は、時期に
合わせた捕獲防除法を検討する基礎資料となる。
発見した誘引物質が、今後集合フェロモンであることとその効果が十分なもの
であることが確認されれば、フェロモントラップによるこの害虫の防除に役立て
ることができる。
ー 189 ー
1719
大分県立大分舞鶴高等学校
微生物の浄化作用
1. 目的
深刻な環境汚染物質として問題になっている『PCB(ポリ塩化ビフェニル)』を
分解する微生物を見つけ分類・同定し、菌の芳香族化合物の分解能を試験するこ
とを目的とした。
2. 方法・結果
まず、PCBと類似した構造を持つ『ビフェニル』を分解できる微生物を探索し
た。採取した土をビフェニルのみを炭素源として繰り返し培養した結果、ビフェ
ニルだけを炭素源とする菌を20株分離した。次にPCR法により得られた菌の同定
を試みたが、失敗した。そこでグラム染色による分類の結果、分離した20株の菌
のうち7株がグラム陽性、9株がグラム陰性であった。また、炭素源の分解試験を
通して分離した菌の分解特性を調べたところ、複数の炭素源を分解する能力を持
つことが明らかとなった。
別府市・春木川における微生物について
∼ケイソウと温泉の関係を探る∼
山村 駿太郎 甲斐 逸平 永井 聡 岩男 政志 亀田 雅弘
私達は水中の微生物に興味を持っていた。19年度は、温泉地で有名な別府市の河
川に注目し、市の中央部を流れている「春木川」を総合的に調査した。米国の温泉
地域であるイエローストーン国立公園へ研修に班員が行ったので、そこのケイソウ
のデータを使って水質判定や別府との類似度も調べた。
まず判明した事は、春木川の水温が温泉の影響で高いと言う事。次に、pHは8∼9
−
のアルカリ性で、中流より下流は富栄養状態で、電気伝導度も高く、Cl 濃度も高い
−
ことも判った。各調査地(St.)の温泉による影響度はCl 濃度の判定よりも、水温
と気温の差を見たほうがよいことが分かった。
次に、微生物の種類数が大分市内の河川に比べ少ないことが判明した。その理由
は、完全にコンクリートで護岸工事が行われており、微生物の生育にふさわしくな
い環境だからと思う。さらに、春木川においては、肉眼で見える動植物の種類数・個
体数共に少なく、単純な生態系になっていた。そのため、この川の改修工事の必要
性を感じた。また、微生物の季節的変動は、微細藻類には見られたが、微小動物に
は見られなかった。
さらに、ケイソウを用いて水質判定を行った。最上流のSt.1は「貧富水性」だが、
それより下流は「βor α-中腐水性」と分かった。次に、類似度については「Jaccardの係数」による公式があるが、優占度を全く加味していないので、実情にあった
結果が得られず、悩んだ末に「舞鶴方式」という優占度を中心にした類似度(R)を
算出する公式を導き出し、納得のいく結果を得た。
今回の調査では、イエローストーン国立公園近傍のケイソウと、別府・春木川のケ
イソウは、大変異なっており、原因はpHの違いにある可能性があることも判明した。
ー 190 ー
1720
鹿児島県立錦江湾高等学校
SSH オトシブミ班
(藏滿 司夢 笹山 駿介 岩本 愛梨 花房 愛美 松久保 舞優 山下 志保 秋廣 駿 泉 紗貴)
鹿児島県南九州市におけるオトシブミとその寄生蜂に関する研究Ⅱ
1. はじめに
オトシブミ類に関して揺籃の形成過程や揺籃の構造に関する研
究は多いが、寄生者についての研究は非常に少ない。そこで南九
州市川辺町八瀬尾に生息する複数種のオトシブミ類に対する複数
種の寄生蜂の寄生の様子について調べた。
2. オトシブミについて
図1 エゴツルクビオトシブミと
その揺籃→
オトシブミは10mm前後の甲虫である。幼生の保護と食物確保のために葉を巻
き、揺籃(図1)を作ることで知られる。孵化した幼虫は内側から葉を食べて成長
し、揺籃の中で蛹から成虫になり脱出する。調査地にはエゴツルクビ、ヒメコブ、
ウスモン、ゴマダラ、ヒメクロの5種が生息している。
3. 卵寄生蜂について
卵寄生蜂であるオトシブミタマゴバチは、3種のオトシブミから
348個体が確認され、その内約97%にあたる337個体がエゴツルク
ビに寄生していた。寄生の割合はヒメコブ、ウスモ
ンに比べエゴツルクビが有意に高かった(X2検定p=
5×10−12)。
4. 幼虫寄生蜂
オトシブミの幼虫寄生蜂としてはオトシ
ブミコマユバチが知られているが、本調査
では幼虫寄生蜂の可能性がある大型のハチ
が計8種類確認され、仮にA種∼H種とした。
常習的寄生蜂と思われる2種のうち、A種
はエゴツルクビに特異的に寄生し、B種は
ヒメコブを中心に、ウスモンやゴマダラにも寄生する。この2種はそれぞれ宿主が
全く違っており、“食いわけ”が見られた。
C種∼H種の6種は1∼数個体のみしか確認されずオトシブミの常習的寄生蜂とは
考えにくく、①様々な種の昆虫に寄生するジェネラリスト、②他種の昆虫の寄生
蜂、③A種やB種に寄生する高次寄生蜂等の可能性が考えられる。
ー 191 ー
1721
池田学園池田中学・高等学校
鶴留 えりか 三角 香奈 宮内 詩乃
アリを遺伝子から探る
1. はじめに
生物班では、アリの研究を行ってきた。そこで、アリの種間、属間での遺伝子
レベルでの違いを調べることができればその進化の道筋の一端を知ることが可能
ではないかと考え、アリの遺伝子配列を決定することを目指している。
遺伝子配列が登録されており、アリに最も近いと考えられるミツバチ、ゲノム
の全体配列が決定しているショウジョウバエ、類似の配列が登録されていたダニ
のインスリンレセプターのcDNA配列の共通性から、アリの類似の配列部分をPCR
によって検出し、研究を進めていこうと考えた。目的の遺伝子が大きいこと、情
報が少なすぎることでなかなか研究が進まなかった。
今回、データベース上にアリのチオレドキシンリダク
ターゼの情報を見つけた。ただ、データのあるアリと鹿
児島で見られるアリが同じ遺伝子配列を持っているとは
限らない。また、配列の情報も160bpと短く情報が限られ
ている。そこで、ミツバチのチオレドキシンリダクター
ゼについてまず実験を進め、PCRにかけ目的の遺伝子の増幅が確認されたとき、
アリも似たような条件でPCRにかけることができるのではないかと予想をしてい
る。
2. 実験の方法
ミツバチからDNAを抽出し、PCRにかけ、その後、マーカーと一緒に電気泳動
し、ゲルをCCDカメラで撮影し、目的となる部分が増幅したか確認をする。
増幅が確認できたら、シークエンスし
て遺伝子配列を読み取り、アリについて
も同じように実験をしていく。
ミツバチのDNAをPCRにかけること
で、今後、アリのDNAをPCRにかける際
の条件設定の参考にすることができる。
3. 結果と今後
今回PCRに使用するプライマーを4種類準備した。しかし、増幅が確認されたも
のと確認できないものがあった。確認できないものについてはイントロンをはさ
んでいる配列であった。アリとミツバチで、あるいは、アリどうしでも、イント
ロンの長さが違うかもしれないと考えられる。
今後は、温度の条件設定などを見直し、また、新しいプライマーの設計をし、
増幅したものについてはシークエンスをしていきたい。
ー 192 ー
1722
沖縄県立開邦高等学校
3年 山口 詩織 座覇 里奈 前城 空子 富本 めいな
石川 琴恵 伊禮 由紀子 玉城 紫乃
「理数探求」について
開邦高等学校では、高校2年生の理数科において週に2時間「理数探求」の授業を
設け、個人・グループ各々のテーマを9ヶ月間かけて研究します。研究の成果は、12
月に行われる校内SSH研究発表会で発表し、青少年科学作品展などに出展します。
立体映像を作ろう
3年 山口 詩織 座覇 里奈 前城 空子 富本 めいな
立体映像のしくみを調べ、立体映像の撮影
に適したカメラの位置やカメラ間の距離を調
べ、赤青フィルターや偏光板を用いて投影し
ました。偏光板を使う方法では普通のスクリ
ーンは、光を乱反射するため適しませんでし
た。いろいろなスクリーンで実験していくう
ちに偶然アルミ板でうまくいくことを発見し
ました。アルミホイルの裏(つや消し面)で
スクリーンを製作してみると立体映像の映写
に成功しました。今回のポスター発表では、
実際に撮影した映像をご覧ください。
モデル実験を利用した沖縄県の津波被害の研究
3年 石川 琴恵 伊禮 由紀子 玉城 紫乃
1960年に発生したチリ地震によって起きた
津波が、地球のほぼ反対側にある沖縄本島の
北部に位置する屋我地島に被害をもたらした
という話を聞き、どうしてそのような場所に
津波被害が出たのかを疑問に思い、沖縄本島
における津波被害の研究を行いました。大型
の実験水槽と沖縄本島の模型を作成し、津波
の発生方向を変えることで被害地がどのよう
に変化するかを調べました。
ー 193 ー
【ポスターセッション参加校】
ブースNoと右ページのレイアウト中ブース番号とを併せてご確認ください。
ブースNO
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
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29
30
31
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33
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35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
ブースNO
48
1802 茨城県立水戸第二高等学校
49
1803 佐野日本大学高等学校
50
1804 群馬県立高崎女子高等学校
51
1805 埼玉県立川越女子高等学校
52
1806 埼玉県立川越高等学校
53
1807 東京都立小石川高等学校
54
1808 早稲田大学高等学院
55
1809 石川県立金沢泉丘高等学校
56
1810 石川県立小松高等学校
57
1811 長野県屋代高等学校
58
1812 岐阜県立岐山高等学校
59
1813 静岡県立磐田南高等学校
60
1814 名古屋市立向陽高等学校
61
1815 名城大学附属高等学校
62
1816 名古屋大学教育学部附属中・高等学校
63
1817 滋賀県立膳所高等学校
64
1818 立命館守山高等学校
65
1819 大阪府立泉北高等学校
66
1820 兵庫県立加古川東高等学校
67
1821 兵庫県立豊岡高等学校
68
1822 武庫川女子大学附属中学校・高等学校
69
1823 和歌山県立向陽高等学校・中学校
70
1824 鳥取県立鳥取東高等学校
71
1825 島根県立松江東高等学校
72
1826 ノートルダム清心学園清心女子高等学校
73
1827 徳島県立城南高等学校
74
1828 香川県立三本松高等学校
75
1829 佐賀県立致遠館高等学校
76
1830 熊本県立第二高等学校
77
1831 宮崎県立宮崎北高等学校
78
1901 福島県立福島高等学校
79
1902 茨城県立日立第一高等学校
80
1903 清真学園高等学校
81
1904 群馬県立桐生高等学校
82
1905 埼玉県立浦和第一女子高等学校
83
1906 筑波大学附属駒場高等学校
84
1907 東京都立科学技術高等学校
85
1908 東京都立戸山高等学校
86
1909 東京都立日比谷高等学校
87
1910 東海大学付属高輪台高等学校
88
1911 石川県立七尾高等学校
89
1912 山梨県立甲府南高等学校
90
1913 岐阜県立恵那高等学校
91
1914 静岡県立清水東高等学校
92
1915 静岡北高等学校
93
1916 愛知県立岡崎高等学校
94
学校名
1801 岩手県立水沢高等学校
ー 196 ー
学校名
1917 三重県立津高等学校
1918 三重県立津西高等学校
1919 滋賀県立彦根東高等学校
1920 京都府立洛北高等学校
1921 大阪府立天王寺高等学校
1922 大阪府立住吉高等学校
1923 奈良県立奈良高等学校
1924 西大和学園高等学校
1925 和歌山県立海南高等学校
1926 和歌山県立日高高等学校
1927 島根県立益田高等学校
1928 岡山県立玉島高等学校
1929 広島大学附属高等学校
1930 山口県立宇部高等学校
1931 高知県立高知小津高等学校
2002 栃木県立宇都宮女子高等学校
2003 玉川学園高等部・中学部
2004 新潟県立新潟南高等学校
2010 大阪府立大手前高等学校
2012 兵庫県立神戸高等学校
1601 福島県立相馬高等学校
1603 千葉県立柏高等学校
1604 芝浦工業大学柏高等学校
1608 福井県立藤島高等学校
1612 三重県立松阪高等学校
1701 青森県立八戸北高等学校
1702 群馬県立高崎高等学校
1703 埼玉県立大宮高等学校
1704 早稲田大学本庄高等学院
1705 東京工業大学附属科学技術高等学校
1706 神奈川県立西湘高等学校
1707 山梨県立都留高等学校
1708 長野県諏訪清陵高等学校
1709 兵庫県立尼崎小田高等学校
1710 京都市立堀川高等学校
1711 立命館高等学校
1712 京都教育大学附属高等学校
1713 奈良女子大学附属中等教育学校
1714 岡山県立倉敷天城高等学校
1715 広島県立広島国泰寺高等学校
1716 愛媛県立松山南高等学校
1717 福岡県立小倉高等学校
1718 長崎県立長崎西高等学校
1719 大分県立大分舞鶴高等学校
1720 鹿児島県立錦江湾高等学校
1721 池田学園池田中学・高等学校
1722 沖縄県立開邦高等学校
【ブースレイアウト】