日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 スペインにおける風力発電の地域間比較 ユイス バユス(京都外国語大学) 目次 初めに 1.スペインにおける再生可能エネルギーおよび風力発電の状態 1.1.スペインにおける再生可能エネルギーの状態 1.2.スペインにおける風力発電の状態 2.スペイン中央政府の再生可能エネルギー発電振興政策 2.1.スペインにおける再生可能エネルギー発電振興政策の流れ 2.2.スペインの電気市場 2.3.スペインのエネルギー政策における権限分配 3.スペインにおける風力発電普及の地域間相違 3.1.各州における風力発電 3.2.カスティリャ・イ・レオン州とカタルーニャ州における風力発電の普及の比較 4.インタビュー調査による風力発電振興政策の地域間比較 4.1.調査の目的と調査方法 4.2. 調査の結果 4.2.1. 風力発電振興政策の流れ 4.2.2. 風力発電振興政策についての評価 5.結論 初めに 福島原発事故以降、日本におけるエネルギーについての議論は原子力発電の削減、二酸化炭素排出の 削減、再生可能エネルギーの普及やエネルギー供給の安全性というテーマに集中している。福島原発事 故までに原子力発電の発展に基づいた日本のエネルギー政策はもうはや続けられない状況になっている。 このため、再生エネルギーの発展の先駆けになっている欧州連合(EU)の政策を分析する意義がある。 EU のエネルギー政策と環境政策は、二酸化炭素排出の削減、再生可能エネルギーの普及やエネルギー 供給の安全性を目標としている。さらに、EU エネルギー政策の目標に達成するためにまた、エネルギー 輸入依存を減らすために、90 年代末からスペインで行ったエネルギー政策は風力発電の著しい普及とい う成果を見せている。このため、スペインにおける風力発電政策を分析し、どのような政策を行ったの かまた、具体的にどのような成果があったのかを説明するのはこの研究の目的である。しかし、スペイ ンの地域によってその発展の程度はかなり異なっている。本論文は、その地域間相違の原因を把握する ために聞き取り調査の結果に基づいて地域を2つ比較する。 1 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 1.スペインにおける再生可能エネルギーおよび風力発電の状態 1.1.スペインにおける再生可能エネルギーの状態 スペイン政府のエネルギー目標は、1990 年代後半から 2000 年代末まで、エネルギーの輸入率を減らす ことと二酸化炭素排出を制御することであった。その後、EU のリスボン戦略における 2020 年のエネルギ ー目標が定められて 2009 年から、スペイン政府のエネルギー目標はエネルギーの輸入率の高い数値(7 4.8%(IDAE,2010 ) )を減らすこととリスボン戦略の目標を達成することである。それらの目標の 中に消費されるエネルギーにおける再生可能なエネルギーの割合を20%まで増やすことや二酸化炭素 排出を1990年のレベルより20%削減することという目標がある(表1) 。 スペインにおけるエネルギー政策を見ると一方、二酸化炭素排出の推移は 2007 年までに増え続けて目 標から遠くなった。2007 年以降、経済危機の影響を受けて二酸化炭素排出は減ったが、2010 年に 1990 年のレベルより 26%高い数値にとどまって、2020 年の目標に近づいていない。他方、スペインで消費さ れたエネルギー全体の中で再生可能エネルギー(大規模水力を含めて)2004 年から 2010 年、6 年の間で、 6.3%から 11.3%まで上がった(表 2)。さらに、発電だけを見ると、スペインにおける発電の中で再生 可能エネルギー(大規模水力を含めて)は 2004 年から 2010 年、6 年の間で、19.4%から 32.4%まで上 がった(表 3)。 表 1.スペインにおける EU のエネルギー2020 年目標とその現実 2 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 表 2.スペインにおける再生可能エネルギーの状態 1.2.スペインにおける風力発電の状態 スペインで消費されたエネルギー全体の中で再生可能エネルギー(大規模水力を含めて)の中で、風 力発電が占めている割合は 2010 年に 2.9%である(表 2) 。しかし、発電だけを見ると、スペインにおけ る発電の中で風力発電は 2004 年から 2010 年、6 年の間で、5.4%から 14.7%まで上がった。2010 年に消 費された電気における再生可能なエネルギーの割合は33.3%でその中、風力の他に、水力は14. 1%、風力は14.6%、光電は2.1%、熱電は0.2%とバイオマス等は1.4%(表 3)。 3 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 表 3.スペインの発電における各エネルギーの割合(%) 整備された再生可能エネルギーによる発電能力の推移を見ると、水力は横ばいで限界に達成したそし て、他の再生可能エネルギーの発展が遅いのに風力発電が 2000 年代に早く発展し、2009 年以降、水力を 乗り越えて再生エネルギーの中で一番多いになっている(図 1)。毎年あたりの設備されている風力発電 メガワット(MW) (発電能力)は、特に 2004 年から 2009 年まで高い、その年以降減っている(図 2)。 図1 図2 4 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 Asociacion Empresarial Eolica, 2013 2.スペイン中央政府の再生可能エネルギー発電振興政策 2.1.スペインにおける再生可能エネルギー発電振興政策の流れ スペインにおける再生可能エネルギー発電振興政策は六つの段階で発展した。 1.1998 年に再生エネルギーのフィットインタリフ(feed-in tariff)制度が実行された。この制度に よって、風力による発電企業が受ける値段の決定方法は二つある。一つは、政府が定めた値段によ って電気を販売する方法である。もう一つは、市場による値段に政府が定めたプレミアムが加えら れる方法である。 2 . ス ペ イ ン の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 計 画 :2000-2010(IDAE, 1999) 、 2005-2010 (IDAE, 2005b) 、 2011-2020(IDAE, 2010)。これらの計画はそれぞれの再生可能エネルギーの目標を定める。2011 -2020計画はEUによる目標を達成するための計画である。 3.持続可能な経済法(Ley 2/2011)(Jefatura del Estado, 2011)によってEUによる目標に達成す る政府の責任が強調される。また、スペインの全ての州で再生可能なエネルギー生産が発展させる ために計画決定の政府の責任が強調される。 4.それぞれ州政府による独自のエネルギー政策が決定され、実行される。 5.再生可能エネルギー発電の新設備の速度を治まらせるために、2009年にそれぞれの再生可能な エネルギーの新設備可能な電力の制限が定められる。 6.2012 年に料金における再生可能エネルギーのためのプレミアム制度が廃止され、全てのエネルギー による発電の料金は市場によって定められることになった。 2.2.スペインの電気市場 スペインの電気市場は 1997 年に自由化され、発電、送電と小売りは分離された。発電と電気の小売り は法的に分離されたので発電会社と小売会社が同じ持ち株会社に経営されるケースもある。送電は独占 5 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 的に Red Electrica 社によって行われる。この会社は 1984 年に設立され、配電網を運営し、電気需給調 整を行っている準公共企業である(政府は株の 20%を所有している) (Red Electrica, 2013) 。 発電会社が受ける料金は、全ての発電エネルギーによっての発電のプールで最も高い発電エネルギー の値段で決定されている。このシステムによって、最初にプールに入るのはゼロ値段で再生可能エネル ギーと原発による発電である。需要が上がると、ほかのエネルギーは安い値段からの順番で次々プール に入る。最後に入ったエネルギーの高い値段で全てのエネルギーの値段が決められる。しかし、生産者 が受けるべき決定された料金と消費者が払う料金は異なる。消費者が払う料金は政府によって規制され、 生産者が受ける権利がある料金より低いので、政府が保証している発電企業の負債が膨らんでいる (Couture, 2011, 2012)。 2.3.スペインのエネルギー政策における権限分配 スペインが連邦国家であるので、エネルギーについての権限は分離し ていて、中央政府も州政府 (Comunidades Autonomas)も独自の権限がある。一方、中央政府は料金制度の決定・実行の権限があり、 再生可能エネルギーの目標を含む国の全体のエネルギー目標を定め、発電設備の基準を設ける。他方、 州政府は再生可能エネルギーの目標を含む州の全体のエネルギー目標を定め、再生可エネルギー振興政 策の決定・実行の権限があり、環境基準も決定し、風力発電所の設備可能な場所を決定し、新設の発電 所の認可の権限もある。だから、スペインの全ての州に共通の電気料金制度および電気システムがある のにそれぞれの州政府は独自の再生可能エネルギー振興政策を展開して、州における風力発電の普及へ 大きな影響を与えている。それに加えて、自治体は町作り政策決定・実行および建築の認可の権限があ る。さらに、自治体が生産者から税金を受けるまた、土地の保有者であることも多いので風力発電所が 設備されたら家賃を受ける。だから、自治体の政策も風力発電の普及に影響を与えている。 3.スペインにおける風力発電の普及の地域間相違 3.1.各州における風力発電 スペインで設備された風力発電所による可能な発電は世界の四番目多い、ヨーロッパで二番目多い、 2011 年に 21,673MW となっている(表 4)。その中、カスティリャ・イ・レオン州は 5,233MW で 4 分の 1 を占めている。その他に、3,000MW 以上を設備した州はカスティリャ・ラ・マンチャ州、ガリシア州とア ンダルシア州である。これに対して、他の州は風力発電による設備された可能な発電は比較的に少ない。 目立つのは、スペインの最初の風力発電所を設備したカタルーニャ州である。カタルーニャ州はスペイ ンの中で産業が最も発展している州であり、電気を大量に消費している。しかし、設備された風力によ る可能な発電は 1,000MW にとどまっている(表 4) 。 表 4.各州における風力発電(2011年) 6 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 Asociacion Empresarial Eolica, 2012 3.2.カスティリャ・イ・レオン州とカタルーニャ州における風力発電の普及の比較 カスティリャ・イ・レオン州とカタルーニャ州の地理を比較して見ると、カタルーニャ州は山が多く、 イベリア半島の北東極に位置づけしていて、地中海の海岸もあることに対して、カスティリャ・イ・レ オン州は平たい地面が多く、山は北部だけに集中していて、海岸はなく、イベリア半島のほぼ真ん中に 位置づけしている(地図 1) 。そして、カタルーニャ州は人口密度が高いものの、カスティリャ・イ・レ オン州は人口密度が低く農地が多い。 また、風資源を見ると(地図 2)、カタルーニャ州は風力が北・南の山と沿岸に多く、他の地域では少 ないことがわかる。カスティリャ・イ・レオン州は一方、強い風が少なく北部の山だけに少しあり、他 方、ほとんど全ての地域に発電可能な風力がある。 地図 1.カタルーニャ州と カスティリャ・イ・レオン州 地図 2.スペインにおける風資源 7 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) カスティリャ・イ・ レオン州 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 バルセロナ市 マドリッド市 カタルーニャ州 IDAE, 2011b IDAE, 2011b 地理の特徴と風資源の位置づけの結果として、カスティリャ・イ・レオン州では平たな農地や町の郊 外で風景をあまり崩壊しない風力発電所の設備が可能である(写真 1、写真 2) 。発電所が北部の山で設 備された時および文化遺産があるところで設備する計画があった時だけに風力発電所設備への地元の人 から反発があって、反対運動は比較的に少ない。しかし、カタルーニャ州は風力発電所設備の適切な場 所は山の頂上であり(写真3)、風景を崩壊することは少なくて、観光産業や地元の人から反発が比較的 に強い。 写真 1.パレンシア市郊外の風力発電所 写真2.パレンシア市郊外の風力発電所 (カスティリャ・イ・レオン州) (カスティリャ・イ・レオン州) 8 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 写真3.Trucafort 風力発電所(Baix Camp、カタルーニャ州) EOLICCAT, 2013 カスティリャ・イ・レオン州における風力発電振興政策は 1997 年の認可手続き規制法(Junta de Castilla y Leon, 1997)で始まったものである。また、1999 年に風力発電計画(Junta de Castilla y Leon, 1999)が作成され、実行されてきた。この計画によって、風力発電による設備される可能な発電の予想 は 2006 年までに 2,750MW、2010 年までに 3,500MW であった(Junta de Castilla y Leon, 2002)。現実 の風力発電による設備された可能な発電は 1999 年までに 53MW、2006 年までに 2,048MW(Junta de Castilla y Leon, 2012)そして、2011 年までに 5,233MW で(カスティリャ・イ・レオン風力発電協会、2012)、州 政府の予想を超えた。また、2010 年に発電における再生可能エネルギーの割合は76%で、発電におけ る風力の割合は30.7%であった(Asociacion Empresarial Eolica, 2012)。 カタルーニャ州政府は 1997 年に風力発電所計画 1997-2000 (Generalitat de Catalunya, 1998)によ って風力発電振興政策を始めた。その後、計画における目標に達成できなく、さまざまな振興計画が次々 に作成された。しかし、他の州と比べて風力発電の普及も、ほかの再生可能エネルギーの普及も遅れて いる。2007 年に消費されたエネルギーにおける再生可能エネルギーの割合は2.8%、消費される電気 における風力発電は1.1%、再生可能なエネルギーによる発電における風力の割合は10.9%、設 備された風力発電による可能な発電は342.4MWであった(カタルーニャ州政府エネルギー局、 Generalitat de Catalunya, 2012a)。 カタルーニャエネルギー計画2006-2015(Generalitat de Catalunya, 2006)における20 15年の目標は、消費されるエネルギーにおける再生可能エネルギーの割合は11%で、再生可能エネ ルギーによる発電における風力の割合は25.7%で、設備された風力発電所による可能な発電は33 00MWであった(Generalitat de Catalunya, 2012a)。しかし、2011 年までに設備された風力発電所 による可能な発電は 1003.35MW だけであった(表 4)。さらに、2007 年から 2011 年、4 年間で、661MW だ け新しく設備されたので、2011 年から 2015 年、4 年間で、計画の 2015 年の目標の 3300MW に達成できる ために 2297MW を新たに設備しなければならない。これは不可能としてしか思えなく、カタルーニャ州政 府による風力発電振興政策は成功していると言いづらく、上述のカスティリャ・イ・レオン州のケース と対照的である。振興政策を改善するために現在、エネルギー計画 2012 年~2020 年があり、2020 年ま 9 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 でに設備された風力発電による可能な発電は 5000MWという厳しい目標がある(カタルーニャ州政府エ ネルギー局、Generalitat de Catalunya, 2012a)。 両州は風資源がありながら、なぜカスティリャ・イ・レオン州とカタルーニャ州における風力発電の 普及はそのように異なっているのか。風力発電の普及にあたって、地理の面でも人口の面でもカタルー ニャ州のほうが複雑な状況であるが、その状況に合わせて適切な政策が実行されれば、風力発電は普及 しないわけがない。したがって、州で行った政策や風力発電に関係を持つアクター達は両州における風 力発電の普及にどのような影響を与えているのか調べる必要がある。その第一歩として、風力発電振興 政策について風力発電の関係者の意識調査を両州で行った。その結果は、次のテーマである。 4.意識調査による風力発電振興政策の地域間比較 4.1.調査の目的と調査方法 カタルーニャ州およびカスティリア・イ・レオン州における風力発電普及の相違の要因を把握するの は本調査の目的である。このために、各州で風力発電振興政策当局、風力発電専門企業、風力発電協会、 発電大企業と自然保護団体で1時間半~2時間の聞き取り調査を行い、州における風力発電振興政策の 展開や州における風力発電振興政策の成果とその評価というテーマについて聞いてインタビューを進め た。また、同じテーマについて、政策計画、統計集、レポート、意見書などの書類を訪問先から受けた。 インタビュー先の組織に関して、自然保護団体はスペインの最大自然保護団体である Ecologistas en Accion の各州局、企業・協会はカタルーニャ州で風力発電協会、カスティリア・イ・レオン州で風力発 電企業一社と発電大企業一社そして、両州政府のエネルギー局の風力発電担当部を訪問し、インタビュ ーを行った。 表5.本調査におけるインタビュー先 10 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 4.2.調査の結果 4.2.1.風力発電振興政策の流れ インタビュー先で州における風力発電振興政策の流れについて聞いた。カタルーニャ州における答え のまとめたものとカスティリア・イ・レオン州における答えのまとめたものは次のようなものである(表 6)。 カタルーニャ州における風力発電のための主な政策としてインタビューを受けた人によって5つのも のが挙げられた。①風力発電計画 1997-2010(Generalitat de Catalunya, 1998)は、風資源位置づけ によって発電所の設備可能な場所を指定した。しかし、環境条件を無視したので環境団体から反発が起 こった。②風力発電計画 2010 年(Generalitat de Catalunya, 2002)は前の計画の改善として風資源と 環境条件を合わせて発電所の可能な場所を指定した。しかし、地元からの反発を治めなく、配電網不足 問題も現れた。③エネルギー計画 2006-2015(Generalitat de Catalunya, 2006)は前の計画の少ない 結果を乗り越えようとし、風資源も、環境条件も、配電網の新設備の計画も含めいていた。しかし、発 電所設備計画も 配電網設備計画も地元の反発を起こした。 ④認可手続き規制法( Generalitat de Catalunya, 2009 年)は風力発電所認可の手続きを決定し、風資源も、環境への少ない影響も、配電網へ 接続の可能性も条件として付けられた。しかし、成果はあまりなかった。⑤エネルギー計画 2012-2020 (Generalitat de Catalunya, 2012a)は前の計画が遭った困難を克服しようとし、発電所認可の新しい 制度を導入した。これは、前の計画の場合の開発業者による申請と州政府による認可と違って、入札制 度を導入し、州政府が発電所の事前準備(土地の確保、自治体の認可など)をし、高い目標も付けてい る。また、風力発電発展の位置づけ計画(Generalitat de Catalunya, 2012b)によって、風力発電所の 設備可能な地域を 7 つ指定し、落札した開発者が地域一つ全体で独占的に発電所の開発することになる。 しかし、2012 年に入札が行ってからその結果が地元の自然保護団体と落札されなかった企業によって控 訴されて裁判の判決が待たされている。カタルーニャ州における風力発電振興政策の結果は、地元の反 対運動と風力発電所の少ない設備である。 カスティリア・イ・レオン州における風力発電のための主な政策としてインタビューを受けた人にと って2つのものがある。①認可手続き規制法(Junta de Castilla y Leon, 1997)は、風力発電所の認 可制度を定めた。これによって、発電所の開発業者が新設備の申請をしてから、その計画が公表され、 他の開発者も独自の同じ場所で発電所計画を競争的に申請できる。最後に州政府が審査して開発者を選 んで、発電所を認可する。しかし、発電所の設備可能な場所を指定する計画がなくて環境および風景へ 強い影響を与える発電所も設備されて地元で反対運動も起こった。これに加えて、発電所の申請が殺到 していたので風力発電計画作成するまでに州政府は新設備認可を見合わせた。②風力発電計画 (Junta de Castilla y Leon, 1999)は風資源、環境への影響と配電網接続の可能性によって風力発電所の設備可能 な場所を指定した。また、発電所認可にあたって、州の企業との取引とう条件を付けた。認可制度は以 前のままである。風力発電振興政策の結果は、地元の最初の反対運動が治められて、風力発電所が多く 設備されたことである。 表6.調査の結果(1) 11 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 4.2.2. 風力発電振興政策についての評価 次、インタビュー先で州における風力発電振興政策の自分の評価について聞いた。カタルーニャ州に おける答えのまとめたものとカスティリア・イ・レオン州における答えのまとめたものは次のようなも のである(表 7) 。 カタルーニャ州における風力発電が遅れているとインタビューされた人全員が思っている。州の地理 と人口の特徴による困難は別として、その遅れの重要な原因は、州の人口が大体風力発電に賛成してい るものの、北海岸地域と南部地域の地元の環境保護団体、観光産業や自治体の反対運動であると全員が 答えた。風力発電協会と州政府にとって、政策の計画性の不足によって環境や配電網の状況が無視され て、このため風力発電計画の実行が困難にあって遅れたことで地元の反対運動は組織化する時間があっ た。このため、反対運動は風力発電の普及の妨害になることができた。また、風力発電の普及の遅れの もう一つの原因として、州政府の政策と中央政府の政策との調整不足が全員に挙げられた。調整不足と いうのは、風力発電が遅れている州があるのに、中央政府が全国の料金制度による風力発電へのサポー ト制度を廃止したことである。 地元の反対運動をなくすために、二酸化炭素排出削減が風車の存在を伴うことを認める文化を育つ必 要があると全員が思っている。また、環境護団体にとって、カタルーニャ南部に集中している火力発電 所と原発が次第に閉鎖されなければ、風力発電所の新設備は地元の人に認めにくいそして、大企業だけ でなく、協同組合などの小開発者も発電市場に参加できる制度を設立するエネルギー政策への総合アプ ローチが必要である。また、新たに導入された落札制度は大企業に向かっているので改善するべきであ ると環境保護団体が思っている。 中央政府による風力発電へのプレミアム制度廃止の影響について、一方、風力発電協会と州政府は、 これからの風力発電の新設備を遅らせると思っている。しかし、風力発電協会にとって、今度の発電所 は今の発電所より効率になる。他方、環境保護団体はプレミアム制度廃止によって風力発電がこれ以上 12 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 普及しないと思っている。 カスティリア・イ・レオン州における風力発電がスペインの中で一番進んでいるのであるとインタビ ューされた人全員が思っている。州の地理の特徴、人口の低い密度と配電インフラの面でこの州は優位 であることを全員が認めている。それは別として、成果の重要な原因は、中央政府によるプレミアム制 度と州政府の政策であると全員が思っている。州政府の政策について、一方、企業と州政府にとって、 州政府の政策は、安定した政策であり、認可制度によって落札制度によくある控訴を避けることができ たそして、風力計画によって発電所設備の可能な場所が明記されて、最初の反対運動を治めて、優れた 政策である。しかし、企業と環境保護団体にとって、認可手続きが長過ぎるという批判がある。他方、 環境保護団体にとって、風力発電の著しい普及を認めながら、州政府の規制が弱くて発電所の設備認可 を巡る投機問題が起こったまた、局地的に環境問題が起こって北部の山地域で反対運動が続いていると いう政策の弱点がある。 地域経済へ風力発電普及の影響についての意見は、一方、企業と州政府にとって、州の風力発電関係 企業と雇用が発展したまた、発電所からもらっている家賃のおかげで経済活動あまりない地域が新たな 収入を得るようになったのである。他方、環境保護団体にとって、州の風力発電関係企業と雇用が発展 したものの、プレミアム制度が廃止されてからたくさんの企業が閉鎖を得ざるを得なかったまた、州外 の大企業が利益を得ながら、発電所のある地域で土地持ち主だけ利益を得ることになって、地域経済へ 影響があまりなかったのである。 中央政府による風力発電へのプレミアム制度廃止の影響について、一方、大企業にとって、今度の発 電所は今の発電所より効率になる。他方、中小企業と州政府にとって効率が低い風力発電所はこれから 倒産し、風力発電関係製造企業も倒産する予想がある。さらに、環境保護団体はプレミアム制度廃止に よって風力発電がこれ以上普及しないと思っている。 表7.調査の結果(2) 13 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 5.結論 上述のカスティリア・イ・レオン州とカタルーニャ州における風力発電振興政策についての分析の結果 から次の仮の結論に達成できる。 1.地域の地理と自然環境の特徴、人口密度と配電インフラの状況は、風力発電振興政策を検討すると きに考察するべき大事なものである。それらの特徴は、カスティリア・イ・レオン州の場合は風力 発電普及を比較的に簡単にしたのに対して、カタルーニャ州の場合は複雑にした。また、カタルー ニャ州の場合、それらの要因が風力発電計画に反映されたのは遅かったので風力発電の普及も遅く なった。 2.最初の段階から当局、企業、環境保護団と地元の自治体と市民とのコンセンサスを作るのは、風力 発電が発展するために重要な条件である。これは風資源位置づけの地図、環境保護のために発電所 と配電網の設備の可能な場所と発電所の認可のための条件についてのコンセンサスである。また、 地元の人や環境保護団体に受け入れられるために、エネルギーと環境について教育が必要である。 さらに、再生ではないエネルギーへの依存の減少、二酸化炭素排出の削減と原発閉鎖へ向かう幅広 い環境・エネルギー政策の一部として発展されなければ、風力発電振興政策は地元の人や環境保護 団体にとって受け入れにくい政策である。特にカタルーニャ州の場合はこの実態がある。 3.風力発電所の設備権利を割り当てる制度として入札制度は問題があると考えられる。それは、結果 が控訴されやすく、手続きを止めることが多い。また、落札の対象は広域である時、控訴によって 設備が止まる発電所の数が多くなる。これは、カタルーニャ州の新エネルギー計画の実態である。 4.カスティリア・イ・レオン州で行った風力発電所の割当制度は、問題がないわけではないが、効果 的であると考えられる。この制度は風力発電所計画の質を上げさせる開発者の間の競争を保ちなが 14 日本進化経済学会第17回大会(中央大学) 欧州の地域・環境・エネルギー政策(1) 2013 年 3 月 ら、手続きが明確であるから控訴されにくいと考える。 5.風力発電の普及においてはさまざまなコンフリクトがある: ・ 発電大企業と中央政府は風力発電の普及を止めるプレミアム制度廃止に賛成している。しかし、 中小企業、環境保護団体と州政府はそれに反対している。 ・ 風力発電所が設備される地域の地元の環境保護団体が反対運度を起こしている。しかし、国レ ベルの環境保護団体は風力発電の普及を支持している。また、国レベルの環境保護団体の組織 内で生物多様性部とエネルギー部とも風力発電を巡って対立が起こっている。 ・ 風力発電企業が発電所の土地を安く借りるために土地持ち主に圧力をかけている。しかし、土 地持ち主が高い家賃を定めようとしている。 最後に、今度の課題として、政策関係の資料確認、風力発電へ反対運動の分析のためのケーススター ディそして、大企業・中所企業・協同組合などによって風力発電所の占有率と占有条件を分析すること で、上述の 3 つのコンフリクトを詳しく分析することがある。 参考文献 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