高リン血症の病態と治療薬 Up-to-date

5
Vol.
The 8th Annual Meeting of the Japanese Society of Nephrology & Pharmacotherapy, Educational Lecture 4
a
sak
O
14.10.1
20
3
第8回日本腎臓病薬物療法学会 学
第8回日本腎臓病薬物療法学会
学術集会
術集会・総
総会
会「
「教育講演4」
「教育講
教育講演4」
演4」
高リン血症の病態と治療薬 Up-to-date
開催日
開催
催日:
:2014年10月13日
2014
20
14年1
14
年10月
年1
0月13
0月
13日
13
日(祝
(
(祝・
祝・月) 会場:大阪国際交流センター
月) 会場
月)
会場:大
:大
大阪国
阪国際交
際交流セ
際交
流センタ
流セ
ンター 2階 さくら西 第3会場
ンタ
さくら
くら西
ら西 第3
第3会場
会場
司会:三浦 昌朋
朋 先生(秋田大学医学部附属病院 教授・薬剤部長)
)
演者:永野 伸郎 先生(医療法人 社団日高会 腎臓病治療センター 研究統括部長/東京女子医科大学 客員教授)
Masatomo MIURA
Nobuo NAGANO
No
高リン血症は慢性腎臓病患者の生命予後を左右するきわめて重要な病
酸ランタンといったカルシウム非含有製剤が登場している。
態であるが、その治療においては、透析療法、食事療法に加え、薬物療法
2014年5月に新たなカルシウム非含有リン吸着薬として、鉄を含む
としてリン吸着薬が中心的な役割を果たしている。リン吸着薬の変遷を
クエン酸第二鉄水和物(製品名:リオナ ® 錠250mg)が発売された。
みると、
1970 ∼ 80年代のアルミニウム製剤の時代に始まり、1990年代
本講演では、医療法人 社団日高会 腎臓病治療センター 研究統括部長
に入ってカルシウム製剤が登場した。しかし、カルシウム含有製剤の問題
の永野伸郎先生に、高リン血症の病態についてご解説いただきながら、リ
点が次第に明らかになり、また、この10年間に新たにセベラマー塩酸塩や炭
ン吸着薬の変遷やリオナ錠への期待についてご講演いただいた。
骨吸収の両方を促進させ、
骨の代謝回転の ドライ
1α-OHaseの発現抑制およびビタミンDの異化酵
ビングフォース の役割を果たしている。
素である24-OHaseの発現促進により、
ビタミンD
また、
PTHは骨に作用するだけでなく、
腎臓の近位
の産生を抑制することで腸管リン吸収を低下させ
ヒトの体内ではカルシウムの99%およびリンの
尿細管に存在するリン輸送蛋白であるNaPi-2a
る。
FGF23はこの2つの働きによって血清リン低下
85%が骨に存在し、
骨はカルシウムとリンの貯蔵庫
およびNaPi-2cの発現を抑制してリンの再吸収を
作用を示す。
として機能している。
骨からカルシウムやリンを取り
低下させ、
尿中リン排泄を促進する働きも有する。
このように、
尿中リン排泄量はPTHおよびFGF23
出す働きを担うのがPTH
(parathyroid hormone:
腎臓から排泄されるリンは健常人で1日650mgに
の2系統により調節されており、血清リン濃度の
副甲状腺ホルモン)
である。
及ぶが、腎不全になるとこの尿中リン排泄が障害
1)
上昇は二重に予防されている
(図1)
。
PTHは骨芽細胞への分化と増殖を活性化し、
骨基
されるために、
高リン血症を引き起こす。
質蛋白の産生を亢進させ、
カルシウムとリンによる
もう1つ、
リン代謝に重要な役割を担うホルモンに
石灰化を促進する。
一方で、
骨芽細胞からのRANK
FGF23
(fibroblast growth factor-23:線維芽
(receptor activator of nuclear factor-κB)
細胞増殖因子-23)
がある。
FGF23は骨基質に埋
リガンドの分泌を介して破骨細胞への分化と活性化
まった骨芽細胞である骨細胞で産生され、腎臓の
腎不全患者では副甲状腺過形成
状態下でPTH高値となり、
骨から溶出したリンは血管石灰化
を誘発する
も促進し、
骨からのカルシウムおよびリンの溶出を
NaPi-2aおよびNaPi-2cの発現を抑制し、
リン再吸
リンは副甲状腺細胞に直接働きかけ、
PTH分泌、
伴う骨吸収を促進する。
すなわちPTHは骨形成と
収を低下させる。
また、
ビタミンDの合成酵素である
PTH生合成、
副甲状腺細胞増殖、
副甲状腺過形成
血中リン濃度はPTH・FGF23・
ビタミンDにより調節されている
aka
第8回日本腎臓病薬物療法学会 学術集会・総会「教育講演4」
Os
14.10.1
20
3
といったすべての現象に促進的に作用する。
ラット
の副甲状腺を器官培養し、
メディウム中のリン濃度
また、
腎不全
を上げるとPTH分泌が促進された2)。
ラットでは血清リン濃度の上昇に伴い副甲状腺細胞
シウム製剤である。
しかし、
カルシウム製剤では血管
血清リン濃度および
FGF23の高値は、
保存期および透析患者における
死亡のリスクファクターである
石灰化のリスク増大が問題となった13,14)。
カルシウム製剤服用群では、
週当たりのカルシウ
ム摂取量がカルシウム非含有製剤服用群の約3倍
15)
となることから
(図3)
、
カルシウム製剤からのカル
の増殖が著明に亢進するが、
リン吸着薬である
クエン酸第二鉄を投与すると血清リン濃度の上昇
が抑制されるほか、
副甲状腺過形成の進展が抑制
保存期CKD患者において血清リン濃度が高い
6)
死亡
ほど冠動脈の石灰化有病率リスクが増大し 、
7)
シウム摂取は異所性石灰化の独立したリスクファク
ターとして認識されている。
慢性腎臓病に伴う骨・ミ
3)
された
(図2上)
。
リスクが上昇する 。また、わが国の透析患者に
ネラル代謝異常の診療ガイドライン
(2012年)
でも
透析治療を受けている慢性腎臓病(chronic
おいて、最も死 亡リスクが低い血 清リン濃 度は
カルシウム製剤は3g/日を使用上限とするよう推
kidney disease;CKD)
患者では副甲状腺過形成
4.0∼4.9mg/dLであり、
この範囲を超え高値を
奨している。
また、J-DOPPS(Japan-Dialysis
8)
状態下で、
血中PTH高値が持続し、
骨吸収と骨形成
示すほど死亡リスクが高くなる 。
Outcomes & Practice Patterns Study)
では、
がともに亢進して高代謝回転型骨障害が生じる。
骨
また、CKDステージの進行に伴いFGF23は
血清カルシウム濃度が低ければ低いほど生命予後
形成亢進下ではオステオイド
(類骨)
産生は亢進す
上昇し、血液透析導入・維持期では正常の数百∼
が良く、
8.4mg/dL未満の患者群の死亡率が一番
9)
るものの、
カルシウム・リンによる石灰化が追いつか
数千倍という高値を呈する 。
また、新規透析導入
低いことが示されている16)。
ず、
線維性骨炎が生じるとともに、
骨吸収亢進下で
患者において、
FGF23の高値は血清リン、
カルシウ
さらには、
カルシウム高値は痒み、
メンタルヘルス
カルシウム・リンが溶出する。骨折既往のある保存
ム、
PTH等で補正してもなお、
独立した死亡のリス
などとも関連する。
われわれの施設において透析患
10)
。
さらに
者の痒みの有無と相関する因子についてロジス
が認められる 。
二次性副甲状腺機能亢進症治療薬
FGF23の高値は、
保存期CKD患者において左室
ティック解析を行ったところ、
性別、
糖尿病の有無に
であるシナカルセト塩酸塩はこのような皮質骨粗鬆
11)
やうっ血性心不全イベン
加え、
透析後の未補正血清カルシウム濃度が有意
。
このメカニズムとして、
FGF23が
な因子であり、
血清カルシウム濃度が1mg/dL増加
期CKD患者でも皮質骨の菲薄化や海綿骨の減少
4)
クファクターであることが示されている
肥大および心機能低下
12)
化を抑制できるが、
高リン血症治療剤であるクエン
トと関連する
酸第二鉄の投与でも同様に皮質骨粗鬆化の抑制が
心筋細胞に直接作用し、
心重量や左室壁厚を増加
17)
すると、
痒みを感じる確率が1.8倍上昇した
(表)
。
3)
。
みられた
(図2下)
させることが基礎試験で示されている11)。
さらに、
J-DOPPSにおいては、
血清補正カルシウム
濃 度 11. 0 m g / d L 以 上 で は S F - 3 6( M O S
一方、
PTHの作用によって骨から溶出したカルシ
メンケベルグ型石灰化病変を引き起こす。
血管平滑
カルシウム非含有製剤登場以前の
リン吸着薬:カルシウム負荷の
問題点
筋細胞の石灰化はリン濃度依存的に促進される5)
高リン血症の治療薬として中心的な役割を果た
が、
これは血管平滑筋細胞上のトランスポーター
すのがリン吸着薬である。
1970年頃に最初のリン
カルシウム非含有製剤は
FGF23の低下効果を有する
PiT-1を介し、
細胞内にリンが取り込まれることによ
吸着薬としてアルミニウム製剤が登場したが、
アル
カルシウム含有製剤服用によるカルシウム負荷
り、
平滑筋細胞自身が骨芽細胞様細胞に形質転換
ミニウム脳症や骨軟化症、
小球性貧血といった副作
および血清カルシウム濃度の上昇を防ぐために開発
し、
骨基質蛋白を産生する結果と考えられている。
用のために禁忌となった。
次いで登場したのがカル
されたのが、
カルシウム非含有製剤である。
これは
石灰化を来す。
また、血管中膜に蓄積した場合は
PTHおよびFGF23の2系統による
尿中リン排泄システム
図1
競合
FGF23
25(OH)D3
1α-OHase
500μm
>
副甲状腺
腎不全+3%クエン酸第二鉄
P; 22日目
(治療前)
:9.8±1.4mg/dL
→57日目:8.3±1.4mg/dL
P ; 22日目
(治療前)
:14.7±1.7mg/dL
→57日目:13.8±2.4mg/dL
P ; 22日目
(治療前)
:14.8±1.8mg/dL
→57日目:6.4±1.0mg/dL
<
500μm
24-OHase
500μm
皮質骨
500μm
皮質骨
皮質骨
正常対照
腎不全対照
腎不全+3%クエン酸第二鉄
PTH;22日目(治療前)
:347.3±188.6pg/mL
→57日目:289.7±120.5pg/mL
PTH;22日目(治療前)
:3,830.9±1,089.2pg/mL
→57日目:18,313.3±10,523.9pg/mL
PTH;22日目(治療前)
:3,941.6±1,521.3pg/mL
→57日目:3,242.2±3,061.8pg/mL
>
PTH
競合
P利尿
500μm
副甲状腺
腎不全対照
皮質骨
1,25
(OH)
2D3
NaPi-2a, 2c
500μm
副甲状腺
正常対照
合成酵素
協調的
抑 制
タルヘルスのスコアが有意に低かった18)。
クエン酸第二鉄による副甲状腺過形成および皮質骨粗鬆化の進展抑制効果(アデニン腎不全ラット)
図2
副甲状腺
24,25(OH)2D3
Short-Form 36-Item Health Survey)
のメン
<
ウムやリンは、
関節部に結晶沈着した場合、異所性
異化酵素
血中P
低下
提供:永野伸郎氏, 出典:Iida A, et al.: Am J Nephrol 37:346-58, 2013
Copyright ⓒ 2013 Karger Publishers, Basel, Switzerland.
1,24,25(OH)3D3
The article chapter printed herein has been translated into Japanese from the original by TORII PHARMACEUTICAL CO., LTD.
KARGER PUBLISHERS CANNOT BE HELD RESPONSIBLE FOR ANY ERRORS OR INACCURACIES THAT MAY HAVE OCCURRED DURING TRANSLATION.
永野伸郎, ほか:透析会誌 46:519-33, 2013より改変
THIS ARTICLE CHAPTER IS COPYRIGHT PROTECTED AND ANY FURTHER DISTRIBUTION REQUIRES A WRITTEN CONSENT FROM KARGER PUBLISHERS.
週当たりのカルシウム摂取量
(カルシウム製剤vs. カルシウム非含有製剤)
図3
(mg/週)
14,000
13,050mg
Ca製剤由来
透析液由来
食事由来
総
摂取量
10,000
8,000
8,400mg
(3,000 x 0.4 x 7)
6,000
450mg
4,000
2,000
0
4,200mg
4,200mg
Ca製剤服用群
Ca非含有製剤服用群
Hsu CH:Am J Kidney Dis 29:641-9,1997, 日腎会誌 39:1-37,1997, 透析会誌 45:301-56,2012より作図
02
痒みの有無と関連する因子(2項ロジスティック解析)
血清カルシウム高値が
痒みと関連する理由
12,000
Ca
表
・皮膚へのリン酸カルシウム塩の微小沈着
・カルシウムイオンが感覚神経に作用し、痒みの閾値が低下
・肥満細胞、マクロファージ、角化細胞からの炎症性物質の分泌
従属変数:痒みの有無
独立変数:年齢、性別、透析歴、糖尿病
(DM)
の有無、水分量、透析後Ca、透析後P、透析後Ca×P、Mg、Log PTH、血糖
項 目
オッズ比
Exp
(B)
オッズ比の95%信頼区間
下限
上限
有意確率
(p)
性別 男性
(vs. 女性)
2.104
1.360
3.253
0.001
DM 有り
(vs. 無し)
1.878
1.228
2.871
0.004
未補正Ca
(透析後)
(1mg/dL増加)
1.811
1.216
2.696
0.003
(判別的中率;69.7%)
野原ともい, 永野伸郎, ほか : 透析会誌 47:637-46, 2014
5
Vol.
リンを吸着するのみならずFGF23を低下させると
に考慮する必要がある27)。
それまで造血に利用されていた鉄が貯蔵鉄に加わ
いうメリットも有している。
透析患者にカルシウム非
2012年には陽性荷電ポリマー製剤のビキサロ
るため、
28週まで血清フェリチン値が上昇するが、
含有製剤を投与すると、血清リン濃度の低下に相
マーが発売された。セベラマー塩酸塩と同様に
ESA量が一定になるとヘモグロビンが定常状態に
19)
LDL-コレステロール低下作用も有する。
また、
セベ
なり、
血清フェリチン値も一定になる。
実際に、
ESA
一方、
透析患者に炭酸カルシウムを単独投与して
ラマー塩酸塩と比べ低膨潤性であることから胃腸
は25%減量された。また、静注鉄剤の使用量も
カルシウム
もFGF23の低下は認められなかった20)。
障害は軽度であり24)、代謝性アシドーシスを惹起
次 第に減 少し、最 終 的にほとんど使 用されなく
負荷によりFGF23の産生が亢進することから21)、
カ
しにくいとされる。一方、
リン吸着容量については
なった35)。
リオナ服用により吸収された一部の3価
ルシウム含有製剤では、
リン低下によってもたらされ
セベラマー塩酸塩と同程度であった24)。
鉄は、
トランスフェリンと速やかに結合する。吸収・
。
関してFGF23の有意な低下が認められる
たFGF23の低下が、
カルシウム負荷によるFGF23
蓄積の程度はヘモグロビンや血清フェリチン値、
リオナのリン低下作用および
FGF23への影響
タリングすることができる。
カルシウム非含有製剤の特徴
2014年5月に発売されたリオナは、生体内に
わが国では、
世界の他の国に比べ、
静注鉄剤の投
カルシウム非含有製剤として最初に登場した
多く存在するリン結合力の高い3価の鉄を含有
与割合および投与量が少なく、
血清フェリチン値も低
のは、2003年に発売されたポリマー製剤のセベ
リオナは250mg1錠当たり約60mgの鉄
する28)。
ただ、
血清フェリチン値に関して
く維持されている38)。
ラマー塩酸塩である。
透析患者においてセベラマー
を含有している。
一方、
炭酸ランタンは250mg1錠
は背景にある炎症の要素を排除できないことも指摘
塩 酸 塩はカルシウム製 剤に比 べ 生 存 率を上 昇
当たり250mgのランタンを金属量として含有
されており、
血清フェリチン値の上昇をどこまで許容
また、
させ 22)、冠動脈石灰化を進展させない 23)。
している。すなわち、炭酸ランタン水和物としては
できるかについては、
現在議論が重ねられている。
セベラマー塩酸塩はLDL-コレステロール低下作用
477mg/錠であり、
リオナと表示方法が異なって
われわれの検討では、
血清リン濃度と血清フェリ
も有する。
しかし一方で、塩酸塩であることから
いる29,30)。
さらに、各種リン吸着薬のリン吸着能を
チン値との間に有意な負の単相関関係が認められ、
代謝性アシドーシスを惹起する点や便秘などの
検討した試験の平均投与量を金属量で考慮すると、
血清リン濃度が高い患者ほど、
血清フェリチン値が
消化器症状が報告されている24)。
リン吸着力の推定効力比は、
リオナと炭酸ランタン
17)
低かった
(図6)
。
臨床試験では、
リオナ投与による
2009年に発売された炭酸ランタンは、
炭酸カル
血液透析患者を
はほぼ同等と計算される31,32,33)。
血清フェリチン値の上昇を投与開始12週間で比較
シウムと同様の金属塩タイプのリン吸着薬である。
対象とした国内での臨床試験において、
リオナ投与
すると、
静注鉄剤を使用していない患者では使用し
炭酸ランタンはカルシウム製剤に比べ大動脈の
により血清リン濃度は用量依存的に低下した34)。
ている患者に比べ、
有意に低かった39)。
長期投与試験においても、
血清リン濃度低下作用は
以上より、
リオナ投与時には、鉄が補充される影
の産生増加と相殺された結果と考えられる
(図4)
。
25)
石灰化を有意に抑制し
、代謝性アシドーシスを
26)
。
一方で、
炭酸ランタンは骨に蓄積し、
惹起しない
その長期的影響は未検討であることから、
非高齢の
FGF23
低下
相
殺
に、
ESAの急な減量は避ける。そして、鉄関連検査
度低下を介する作用と鉄補充によるFGF23転
値を継続してモニタリングすることにより、
リオナを
写抑制を介する作用の2つのメカニズムによると
有効かつ安全に投与可能と考えている。
考えられる。さらに、
リオナはクエン酸を含むた
これらに加えて、
リオナは、
水への溶解性が高く、
め、
リオナの投与により血液重炭酸イオン濃度の
pH非依存的にリンを吸着するため、
高齢者や歯科
33)
FGF23
上昇
リオナ投与による鉄・貧血関連
検査値への影響
便回数の増加が予想される。下痢には注意が必要
リオナの長期投与試験における鉄・貧血関連検査
であるが、便通の改善は排便によるリン排泄がス
値の推移をみると
(図5)、
リオナ投与により16週
ムーズになるため、
効率良い血清リン濃度の低下が
までヘモグロビンが上昇した
腸管Ca吸収低下
量させたことで16週以降ヘモグロビンは低下する。
鉄を含有するリン吸着薬リオナについて、
有効性・
(g/dL)
11.5
150
3,000
︵
0
2,000
4
︶
mg
10.5
0∼12週
12∼28週
-10 2 4 6 81012 16 20 24 28
28∼52週 平均
36
44
︶
ESA
50
週あたりの
静注鉄投与量
100
0
4,000
11
100
50
ヘモグロビン
200
5,000
1,000
10
52
(週)
* ESA換算量…遺伝子組換えヒトエリスロポエチン:ダルベポエチン アルファ:エポエチン ベータ ペゴル
=1:200:200で換算量を算出
Matsumura K: YAKUGAKU ZASSHI 135: 545-9, 2015
血清リン値の分布
(人)
50
(ng/mL)血清リン値と血清フェリチン値の関係
400
r =-0.132
(p=0.005)
Spearman相関係数
350
40
300
度数
12.5
維持血液透析患者における血清リン値と血清フェリチン値の関係
血清フェリチン値
6,000
12
図6
(IU/週)
(血液透析患者
平均投与量2.73g/日;n=180)
血清フェリチン
250
期待できるかもしれない。
また、
症状によっては下剤
の減量や中止が可能である。
赤血球造血刺激因子製剤︵
ヘモグロビン
ESA換算量*
血清フェリチン
。
ヘモグロビンの上
昇を受けて、
赤血球造血刺激因子製剤
(ESA)
を減
ESA使用量が25%減少、静注鉄剤が減少
300
副作用は便秘よりも下痢傾向であることから、
排
37)
リオナの長期投与試験における鉄・貧血関連検査値の推移
(ng/mL)
的問題を有する症例、
制酸剤服用例、
胃酸分泌低下
。
患者への治療にも期待できる。
提供:永野伸郎氏
図5
う。
また、
造血能を維持し、
急激に低下させないため
。
これは、血清リン濃
上昇が認められた
Ca負荷
血中Ca
上昇
1,25VD
低下
NaPi-2b抑制
腸管P吸収低下
響を考慮し、
静注鉄剤の速やかな減量や中止を行
の低下が報告されている
Ca含有
P吸着薬
P負荷低下
血中P低下
。
52週間維持された
36)
リン吸着薬の種類別のFGF23の反応性
Ca非含有
P吸着薬
35)
また、
リオナはリン低下作用に加えて、FGF23
透析患者や保存期からの長期使用については慎重
図4
TSAT
(トランスフェリン飽和度)
等で定期的にモニ
250
30
200
150
20
100
10
50
0
0
2
3
4
5
6
7 8 9
血清リン値 (mg/dL)
血清リン値(mg/dL)
5.15(4.40-5.78)
〔Q2(Q1-Q3)〕
2
3
4
5
6
7
8
9
血清リン値 (mg/dL)
血清フェリチン値(ng/mL)
36.6(20.7-65.2)
〔Q2(Q1-Q3)〕
(14.2-108.3)
(10-90パーセンタイル)
TSAT(%)
23.9(15.2-35.6)
〔Q2(Q1-Q3)〕
28.5±20.9(mean±SD)
対象:平成日高CLの外来維持血液透析患者450人
野原ともい, 永野伸郎, ほか : 透析会誌 47: 637-46, 2014
03
副作用を様々な角度から紹介してきた。
リオナは、
やすいという性質があり、リオナによる黒色
15)Hsu CH:Am J Kidney Dis 29 :641-9, 1997, 日腎 会 誌 39:1-37,1997,
透析会誌 45:301-56,2012
CKD診療における新たな選択肢として多くの可能
便とは全く違います。
17)野原ともい, 永野伸郎, ほか: 透析会誌 47: 637-46, 2014
性が期待される薬剤である。
腎臓病薬物療法のエ
永 野:確 かにそ の 通りで す。リオ ナによる
キスパートである薬剤師の皆様が、
リオナの多面的
黒色便とタール 便は見分けがつく。両者を
作用を臨床現場で実証・具現化し、
かつ副作用を最
混同しないように、
服薬指導の際に注意喚起
小限に抑える使用法を確立されることを期待する。
すべきということですね。
16)Kimata N, et al. : Hemodial Int 11 : 340-8, 2007
18)Tanaka M, et al. : Nephrol Dial Transplant 22 : 1658-64, 2007
19)Shigematsu T, et al.: Nephrol Dial Transplant 27 : 1050-4, 2012
20)Koiwa F, et al. : Ther Apher Dial 9 : 336-9, 2005
21)David V, et al. : Endocrinology 154 : 4469-82, 2013
22)Block GA, et al. : Kidney Int 71 : 438-41, 2007
23)Block GA, et al. : Kidney Int 68 : 1815-24, 2005
24)Akizawa T, et al. : Ther Apher Dial 18 : 122-31, 2014
25)Toussaint ND, et al. : Nephrology 16 : 290-8, 2011
1)永野伸郎, ほか: 透析会誌 46 : 519-33, 2013 26)松下和通, ほか: 透析会誌 43 : 763-8, 2010
2)Slatopolsky E, et al. : J Clin Invest 97 : 2534-40, 1996
27)Kazama JJ : Clin Calcium 19:224-8, 2009
3)Iida A, et al. : Am J Nephrol 37 : 346-58, 2013
28)宮崎 章, ほか:日薬理誌 144:294-304, 2014
4)Nickolas TL, et al. : J Am Soc Nephrol 22 :1560-72, 2011
29)リオナ錠250mg添付文書
5)Jono S, et al. : Circ Res 87 : e10-7, 2000
30)ホスレノール顆粒分包250mg, ホスレノール顆粒分包500mg 添付文書
純生教授)
:リオナを服用すると黒色便が出る
6)Adeney KL, et al. : J Am Soc Nephrol 20 : 381-7, 2009
31)Shigematsu T, et al. : Clin Nephrol 70:404-10, 2008
7)Kestenbaum B, et al. : J Am Soc Nephrol 16 : 520-8, 2005
32)Kasai S, et al. : Ther Apher Dial 16:341-9, 2012
ことが多いのですが、消化管出血の際に出る
8)Nakai S, et al. : Ther Apher Dial 12 : 49-54, 2008
33)Yokoyama K, et al. : Nephrol Dial Transplant 29:1053-60, 2014
質疑応答
フロアからのコメント
(熊本大学薬学部 平田
タール 便と混同される可能性があります。
9)Wolf M : Kidney Int 82 : 737-47, 2012
34)Yokoyama K, et al. : Am J Nephrol 36:478-87,2012
10)Gutierréz OM, et al. : N Engl J Med 359 : 584-92, 2008
35)Yokoyama K, et al. : J Ren Nutr 24:261-7, 2014
11)Faul C, et al.: J Clin Invest 121:4393-408, 2011
しかし、消化管出血によるタール便は生臭く
36)Yokoyama K, et al. : Clin J Am Soc Nephrol 9 : 543-52, 2014
12)Scialla JJ, et al. : J Am Soc Nephrol 25 : 349-60, 2014
37)Matsumura K: YAKUGAKU ZASSHI 135: 545-9, 2015
真っ黒で、粘稠性があり、便器にこびりつき
13)Goodman WG, et al. : N Engl J Med 342 : 1478-83, 2000
38)Bailie GR, et al.; Nephrol Dial Transplant 28:2570-9, 2013
14)Guérin AP, et al. : Nephrol Dial Transplant 15 : 1014-21, 2000
39)日本たばこ産業株式会社 社内資料
処方箋医薬品注1)
**2016年1月改訂
(第5版)
*2015年5月改訂
クエン酸第二鉄水和物
(Ferric Citrate Hydrate)錠
リオナ®錠 250mg
和 名
商 品 名
®
洋 名
Riona Tab. 250mg
一 般 名
クエン酸第二鉄水和物
(Ferric Citrate Hydrate)
日本標準商品分類番号
87219
注1)注意−医師等の処方箋により使用すること
承 認 番 号
22600AMX00005000
承 認 年 月
2014年1月
薬 価 収 載
2014年4月
販 売 開 始
2014年5月
販 売 元
鳥居薬品株式会社
製 造 販 売 元
日本たばこ産業株式会社
貯 法
気密容器、室温保存
(「取扱い上の注意」参照)
使用期限
3年
(外箱等に表示の使用期限を参照のこと)
4. 副作用
国内における本剤の主要な臨床試験において、801例中204例
(25.5%)
に副作用が認められた。
主な副作用は、
下痢、
便秘、
腹部不
快感、
血清フェリチン増加であった。
(承認時)
その他の副作用
下記の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異
常が認められた場合は適切な処置を行うこと。
頻度
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
組成・性状
有 効 成 分 クエン酸第二鉄水和物を無水物として
(クエン酸第
( 1 錠 中 ) 二鉄として)250mg含有
添
加
物
性 状 ・ 剤 形
外
セルロース、
ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコ
ール・グラフトコポリマー、
ポリビニルアルコール・アクリ
ル酸・メタクリル酸メチル共重合体、
ヒドロキシプロピ
ルセルロース、
クロスポビドン、
ステアリン酸Ca、
ヒプロ
メロース、
酸化チタン、
タルク、
ポリエチレングリコール
白色のフィルムコーティング錠
形
上面
サ
イ
ズ
識 別 コ ー ド
側面
長径 約14.9mm、短径 約6.9mm、厚さ 約4.6mm
JTP 751
効能・効果
慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
用法・用量
通常、成人には、
クエン酸第二鉄として1回500mgを開始用量とし、1日
3回食直後に経口投与する。以後、
症状、
血清リン濃度の程度により適
宜増減するが、
最高用量は1日6,000mgとする。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
・本剤投与開始時又は用量変更時には、1∼2週間後に血清リン
濃度の確認を行うことが望ましい。
・増量を行う場合は、
増量幅をクエン酸第二鉄として1日あたりの用
量で1,500mgまでとし、
1週間以上の間隔をあけて行うこと。
使用上の注意
1.慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
(1)消化性潰瘍、炎症性腸疾患等の胃腸疾患のある患者[病態を
悪化させるおそれがある。]
(2)ヘモクロマトーシス等の鉄過剰である患者[病態を悪化させる
おそれがある。]
(3)C型慢性肝炎等の肝炎患者
[病態を悪化させるおそれがある。
]
(4)
血清フェリチン等から鉄過剰が疑われる患者[鉄過剰症を引き
起こすおそれがある。
]
(5)他の鉄含有製剤投与中の患者[鉄過剰症を引き起こすおそれ
がある。]
(6)発作性夜間血色素尿症の患者[溶血を誘発し病態を悪化させ
るおそれがある。]
2. 重要な基本的注意
(1)本剤は、血中リンの排泄を促進する薬剤ではないので、食事療
法等によるリン摂取制限を考慮すること。
(2)本剤は、定期的に血清リン、血清カルシウム及び血清PTH濃度
を測定しながら投与すること。血清リン、血清カルシウム及び血
清PTH濃度の管理目標値及び測定頻度は、学会のガイドライ
ン等、最新の情報を参考にすること。低カルシウム血症の発現
あるいは悪化がみられた場合には、活性型ビタミンD製剤やカ
ルシウム製剤の投与を考慮し、
カルシウム受容体作動薬が使用
されている場合には、
カルシウム受容体作動薬の減量等も考慮
すること。
また、二次性副甲状腺機能亢進症の発現あるいは悪
化がみられた場合には、
活性型ビタミンD製剤、
カルシウム製剤、
カルシウム受容体作動薬の投与あるいは他の適切な治療法を
考慮すること。
(3)本剤は消化管内で作用する薬剤であるが、本剤の成分である
鉄が一部吸収されるため、血清フェリチン等を定期的に測定
し、鉄過剰に注意すること。
また、ヘモグロビン等を定期的に測
定し、特に赤血球造血刺激因子製剤と併用する場合には、過
剰造血に注意すること。
3. 相互作用
併用注意
(併用に注意すること)
薬剤名等
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
これら薬剤の作用を減弱 これら薬 剤と結
吸収を減少
させるおそれがあるので、 合し、
併用する場合にはこれら させるおそれが
キノロン系抗菌剤
の薬剤の作用を観察す ある。
シプロフロキサシン等
ること。
テトラサイクリン系抗生物質
テトラサイクリン等
甲状腺ホルモン剤
レボチロキシン等
種類
胃腸障害
2%以上
2%未満
下痢(10.1%)、便秘 腹部膨満、腹痛、十二指腸潰瘍、
(3.2%)、腹部不快感 排便回数増加、
胃腸障害、悪心、
(2.5%)
嘔吐、
便通不規則
γ-グルタミル
臨床検査 血 清フェリチン増 加 血中アルミニウム増加、
トランスフェラーゼ増加、
ヘマトクリッ
(2.7%)
ト増加、
ヘモグロビン増加
その他
赤血球増加症、
肝機能異常、
食欲
減退、
そう痒症、
高血圧
5. 高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので、
患者の状態を観
察しながら慎重に投与すること。
6. 妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人、産婦及び授乳婦には、
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与す
ること。
[これら患者への投与に関する安全性は確立していない。
]
7. 小児等への投与
小児等に対する安全性は確立していない
(使用経験がない)。
8. 適用上の注意
薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用す
るよう指導すること。
(PTPシートの誤飲により、
硬い鋭角部が食道粘
膜に刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を
併発することが報告されている。)
9. その他の注意
(1)本剤の投与により便が黒色を呈することがある。
(2)腹部のX線又はMRI検査で、
本剤が存在する胃腸管の画像に
未消化錠が写る可能性がある。
(3)
イヌを用いた長期反復投与毒性試験において、最大臨床用量
の鉄として約5倍に相当する用量より、
鉄の過剰蓄積に伴う肝臓
の組織障害(慢性炎症巣、細胆管の増生及び肝実質の線維
化)が認められた。
これらの変化は休薬による回復性はなく、休
薬期間中に病態の進行が認められた。
包 装
セフジニル
抗パーキンソン剤
ベンセラジド・レボドパ等
リオナ®錠250mg:100錠(10錠×10 PTP包装)
、
500錠(10錠×50 PTP包装)
、
1,000錠(10錠×100 PTP包装)
エルトロンボパグ オラミン
経口アルミニウム製剤注2) 他のクエン酸製剤との併 クエン酸との併用
水酸化アルミニウムゲル 用で血中アルミニウム濃 により、吸収が促
合成ケイ酸アルミニウム 度が上昇したとの報告が 進されるとの 報
あるので、同時に服用さ 告がある。
せないなど注意すること。
注2)透析療法を受けている患者へは投与禁忌である。
取扱い上の注意
アルミピロー開封後は湿気を避けて保存すること。
詳細は添付文書をご参照ください。
禁忌を含む使用上の注意の改訂に十分にご留意ください。
2016年7月作成
RIO TJ005B