ハイリスク薬のポイントブック<2> 精神神経用剤

ハイリスク薬のポイントブック<2>
精神神経用剤
~統合失調症治療剤編~
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目
◆ 参考 診療報酬におけるハイリスク薬の考え方
◆薬学的管理指導において
特に注意すべき事項 ・・・・・ 2
◆対応時の注意 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
◆統合失調症とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
◆統合失調症の発生率・有病率 ・・・・・・・・・・・ 3
◆危険因子 ◆成因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
◆診断 1.ICD-10 2.DSM-IV ・・・・・・・・・・・ 4
◆症状 統合失調症の主な症状 ・・・・・・・・・・・ 6
◇陽性症状 ◇陰性症状 ・・・・・・・・・・・・・・・ 7
◇認知機能障害 ◇感情障害 ・・・・・・・・・・・ 8
(1)思考障害(2)知覚の障害・幻覚 ・・・・・・・ 8
(3)自我障害(4)感情障害 ・・・・・・・・・・・・・・ 9
(5)意欲障害、行動障害(6)知的障害 ・・・・・ 9
◆病型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
◆経過 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
◆再発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
◆予後 <予後不良に関わる因子> ・・・ 12
◆治療法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
◇電気けいれん療法 ◇心理・社会的治療 14
1.急性期の治療 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
2.回復期の治療 3.安定期の治療 ・・・・ 15
◆薬物療法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
1.定型抗精神病剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2.非定型抗精神病剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
定型抗精神病剤と非定型抗精神病剤の比較 18
◇治療抵抗性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
◇統合失調症患者に「禁忌」な薬剤 ・・・・・ 19
◇高齢者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
◇妊娠中の服用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
次
・・・・・・・・・・・ 1
◇授乳中の服用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◇副作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
副作用と薬剤の選択 ・・・・・・・・・・・・・・・・
受容体の機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
抗精神病剤の副作用とその対策 ・・・・・・・
□錐体外路症状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
□悪性症候群
□抗コリン作用 ・・・・・
□高プロラクチン血症 ・・・・・・・・・・・・・・・・
□体重増加
□性機能障害 ・・・・・・
□糖尿病・耐糖能異常 ・・・・・・・・・・・・・・・
□脂質代謝異常 □起立性低血圧 ・・・・
□過鎮静
□抑うつ状態 ・・・・・・
□認知機能障害 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
□けいれん発作、脳波異常 ・・・・・・・・・・・
□多飲、水中毒、
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 ・・
□QT延長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
□肝機能障害
□無顆粒球症 ・・・・・
□皮膚症状
□網膜色素沈着 ・・・
□耐性・身体依存 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◇スイッチング(薬剤の切り替え) ・・・・・・・
◇相互作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◇喫煙 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◇飲食・健康食品などとの併用 ・・・・・・・・・
◆身体合併症 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆自殺 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆患者・家族への指導 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◇服薬指導 <服薬指導のポイント> ・・
◆自動車の運転・運転免許 ・・・・・・・・・・・・・・
<表>定型抗精神病剤の分類と特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
非定型抗精神病剤の分類と特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
抗精神病剤の薬理学的作用と副作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
統合失調症・精神病患者に対して「禁忌」と記載のある薬剤 ・・・・・・・・・・・
統合失調症治療剤の注意すべき副作用と初期症状 ・・・・・・・・・・・・・・・
添付文書に「QT延長」の記載がある抗精神病剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
統合失調症治療剤一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
健康食品・サプリメント等食品との相互作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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この冊子は、現在、愛知県薬剤師会 情報室と岐阜県薬剤師会 ぎふ薬事情報センターが共同し
県薬剤師会ホームページの会員情報に提供している『ハイリスク薬の薬学的管理指導 薬局向け参
考資料』より作成しました。
近年、
「向精神薬等の処方せん確認の徹底等について」薬食総発 0910 第 1 号厚生労働省医薬食品
局総務課長(平成 22 年 9 月 10 日)でも見られるように、精神神経用剤が注目されています。
そこで、今回はハイリスク薬の精神神経用剤の中の「統合失調症治療剤」について冊子にまとめま
した。日常業務にお役立てください。
参考 診療報酬におけるハイリスク薬の考え方
ハイリスク薬の薬学的管理指導を実施する上で必要な、薬局・薬剤師が行うべき標準的な業務を
示したものが、
「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第 2 版)」
[(社)日本薬剤師会 平成 23 年 4 月 15 日]です。このガイドラインは、平成 24 年度調剤報酬点
数表「特定薬剤管理指導加算」の参考にするものです。
特にハイリスク薬については、5-Components を意識した服薬指導が望まれています。
① 薬剤の効果(作用)
:どういう効果があるか、いつごろ効果が期待できるか
② 副作用(副作用の自覚症状)
:どのような副作用が起こりうるか、いつ頃から、どのように自覚されるか
③ 服薬手順
:どのように、いつ、いつまで服用するか、食事との関係、最大用量、服用を継続する
意義
④ 注意事項
:保管方法、残薬の取り扱い、自己判断による服薬や管理の危険性
⑤ 再診の予定(次回受診日)
:いつ再診するか、予定より早く受診するのはどのような時か
個々の患者さんを薬剤のハイリスクから守るため、薬局薬剤師が投薬時に患者さんと対面におい
て、情報収集し考え、フォロー・指導を行うものであり、画一的な内容では網羅しきれない綿密な
薬学的管理指導です。患者さん又はその家族等に対して確認した内容及び行った指導の要点につい
ては、薬剤服用歴の記録に記載することが基本となります。
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●診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)
平成 24 年 3 月 5 日保医発 0305 第 1 号より
特定薬剤管理指導加算は、薬剤服用歴管理指導料を算定するに当たって行った薬剤の管理及び指
導等に加えて、患者又はその家族等に当該薬剤が特に安全管理が必要な医薬品である旨を伝え、当
該薬剤についてこれまでの指導内容等も踏まえ適切な指導を行った場合に算定する。
なお、
「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」
(日本薬剤師会)
等を参照し、特に安全管理が必要な医薬品に関して薬学的管理及び指導等を行う上で必要な情報に
ついては事前に情報を収集することが望ましいが、薬局では得ることが困難な診療上の情報の収集
については必ずしも必要とはしない。
-1-
統合失調症治療剤
◇薬学的管理指導において特に注意すべき事項
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服薬に対する意識が低い患者及び患者家族への教育とアドヒアランスの向上
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育
(ア) 原疾患の症状と類似した副作用(錐体外路症状、パーキンソン症候群等)
(イ) 致死的副作用(悪性症候群、セロトニン症候群等)
(ウ) 非定型抗精神病薬による、血液疾患、内分泌疾患等
(エ) 転倒に関する注意喚起
4) 薬物の依存傾向を示す患者等に対して、治療開始時における適正な薬物療法
に関する情報を提供
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認
6) 自殺企図等による過量服薬の危険性のある患者の把握と服薬管理の徹底
<対応時の注意>
1.患者の興奮を誘発するような刺激的言動を避ける
一方的な説明とならないように配慮して、議論を避けて友好的な態度を保つ。
2.休養、服薬の必要性を説明する
病識に乏しく、病気に対する理解も得られにくいので、本人も自覚できる問題を取り上げ治療(服薬)の必
要性を説明する。
3.患者に接する際の基本は「安心」を与える。「優しい」、「暖かい」雰囲気で対応する
同じ説明でも「○○しなければダメ」と言うよりは「○○すれば大丈夫」と説明するなど伝え方を工夫する。
4.相手に即して対応する(先入観や偏見を持たない)
一般的には非常識なこと(例えば、幻覚、幻聴など)であっても、病気自体が由来する状況から患者にとっ
ては現実的な可能性がある。
5.対応者によって説明が違うことで不安を与えない
医師からどの様に説明を受けたのか尋ねたりして、医師、薬剤師及び薬剤への不信感を持たさない。
6.ポジティブな方向への説明を心がける
□統合失調症とは
統合失調症は、躁うつ病と並ぶ代表的な内因性の精神疾患で、「主として思春期から青年期にかけて発病
し、特異的な思考障害、自我障害、感情障害、人格障害などを主徴とし、多くは慢性に経過する原因不明の
精神疾患。」と定義される。
統合失調症(Schizophrenia)という病名は、1911 年に Bleuler.E.によってはじめて使用された名称で、
さまざまな精神機能が統合できず、分裂した状態がこの疾患の中心的病像である。ギリシャ時代の医者が魂
-2-
は横隔膜にあると考えていたことにより、ギリシャ語の schizo (分裂)+phren(横隔膜、こころ)に由
来して、命名された。
我が国では、ドイツ語の Schizophrenie の訳語として、2002 年まで精神分裂病と訳されていた。
□統合失調症の発生率・有病率*-1
年間発症率はおおよそ人口 1,000 人対 2.0~3.0 といわれている。WHO/DOSMeD 研究の報告では、広義
の統合失調症の年間発症率は人口 1,000 人対 0.15~0.42 で、我が国(長崎)では広義の統合失調症は 0.2、
狭義の統合失調症は 0.1 と報告されている。
有病率は多くの報告があり、人口 1,000 人対 2.0~8.0 とかなりの幅がある。我が国では、精神科病院に
入院中患者の 60%余が統合失調症で、特に長期入院患者の大部分を占める。
*-1 発生率・有病率:
・発生率とは、単位期間(通常 1 年)当たり新たに発病した患者の頻度
・有病率とは、調査期間内に罹患していた患者の頻度
疾患の分布や頻度を知るときの指標(疾病率)として一般的なのは発生率と
有病率であり、それらから推算した生涯発病危険率を利用することもある。
□危険因子
発症年齢は 10 代後半から 30 代半ばでの発症がほとんどであり、男性に高率とされ、発症年齢のピーク
は男性の方がやや若いことが知られている。有病率では明らかな性差をみず、既婚者に対する独身者の罹患
の危険率比 2.6~7.2 といわれている。また、時代や地域による差が非常に少ないこともひとつの特徴であ
る。
疫学調査によると、統合失調症の危険因子として、①遺伝的素因、②発達早期の障害、③冬期の出産、④
母親が高齢の4つが同定されている。統合失調症の近親者における本疾患の罹患率は、子が 16.4%、同胞
10.8%、孫 3.0%で、一般成人中の発現頻度 0.85%より著しく高い。また、両親とも統合失調症の場合、子
のリスクは 40%、一卵性双生児の一致率は 50%、二卵性双生児の場合は 10~15%である。このように遺
伝的要因はあるものの、その他多くの因子の複合的な影響で発症する疾患であると考えられている。
環境因子として、妊娠中の母体のインフルエンザや麻疹感染などのウイルス感染やヒト白血球抗原
(Human Leukocyte Antigen:HLA)、低栄養、ビタミン D の低下、糖尿病、喫煙と産科合併症(新生児
脳に対する低酸素症による細胞毒性をきたす)などの胎生期前期あるいは胎生期の要素が統合失調症の発病
リスクを高めることも報告されている。また、大規模な疫学研究からは貧困、低所得、都市部の生活などが
社会的因子として発生率を高めることも予想されている。
□成因
統合失調症の原因や発症メカニズムは数多くの仮説が提唱されてきたが、現在のところ不明である。様々
な因子が複雑に関連して、統合失調症が形成されていると考えられる。
(1)ストレス-脆弱性仮説
統合失調症の発症メカニズムを説明する有力なモデルとして Zubin が提唱する「ストレス-脆弱性仮説」
があげられる。これは遺伝的素因をもとに胎生期、周産期など発達早期に形成される生物学的脆弱性に加え
-3-
て、思春期以後に閾値以上の外的ストレスが加わったことによって精神病のエピソードの発症に至るという
ものである。
このモデルは、発症に関わるメカニズムだけでなく、疾患の経過に関しても統合失調症が生涯にわたり持続
するものではなく、ストレスがなくなることによって寛解しうることを示唆している。
(2)神経発達障害仮説
1980 年代後半に Murray らは統合失調症の病因仮説として神経発達障害仮説を唱えた。これは、統合失
調症の起源は妊娠出産時の合併症、出産季節、奇形などが誘因になって脳に微細な分化・発達の障害が起こ
り、非進行性の障害として存在し続けると仮定している。
しかし、近年の画像診断の進歩により、統合失調症患者の海馬や上側頭回などの体積減少が進行性である
ことが明らかに成りつつあり、この仮説の修正も検討されている。
(3)神経伝達物質異常
①ドパミン仮説
ドパミン仮説は古くから提唱されており、脳内(特に中脳辺縁系)でドパミン生成が過剰な状態になり、
ドパミンに対する感受性が亢進していると考えられている。
ドパミン神経路は中脳辺縁系、中脳皮質系、黒質線条体系、漏斗下垂体系の 4 つに分類されている。統合
失調症では、中脳辺縁系におけるドパミンの働きが過剰になっているため陽性症状が生じ、中脳皮質系に
おけるドパミンの働きが低下しているために陰性症状が生じると考えられている。黒質線条体系、漏斗下
垂体系におけるドパミンの働きは正常である。黒質線条体系での低下により錐体外路症状(EPS)が、漏
斗下垂体系での低下により高プロラクチン血症が生じる。
この仮説の根拠はクロルプロマジンやハロペリドールなどの第1世代(定型)抗精神病剤がドパミン D2
受容体に拮抗し、妄想や幻覚などの陽性症状に有効であり、また、ドパミン作動剤であるアンフェタミン
が統合失調症に似た幻覚、妄想などの神経障害を起こすことにもあるが、ドパミン放出過多によるのか受
容体増加か受容体感受性の増加か、いずれかによるのかは未だ不明である。
最近では、セロトニン受容体、特に 5-HT2 受容体に拮抗作用をもつクロザピン、リスペリドン、オラン
ザピンなどの第2世代(非定型)抗精神病剤が統合失調症の陽性、陰性両症状に有効なことがわかり、セ
ロトニンの関与が注目を集めている。
②グルタミン酸仮説
興奮性アミノ酸機能異常仮説も提唱されており、これは神経細胞の興奮に重要な役割を果たす興奮性アミ
ノ酸のグルタミン酸の機能低下が、統合失調症の陽性症状および、陰性症状に関与し、またグルタミン酸
NMDA 受容体拮抗剤のフェンサイクリジンやケタミンが統合失調症様症状、特に陰性症状を示すこと、
統合失調症死後の脳でグルタミン酸受容体異常がみられたことから考えられている。この仮説に基づいて
D-サイクロセリンやグリシンが治療薬として開発されている。
(4)発症の引き金
発症の引き金として、失恋、異性への興味、結婚、家庭からの独立、出立、親との心理的葛藤などがあり、
これらから不安、不眠、離人症などの症状を呈する。
□診断
統合失調症の診断基準としては、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類である「ICD-10」と、米国精神
医学会の「DSM-IV」の 2 つが主に使われている。これらの診断基準では、統合失調症にみられる症状を記
-4-
述した診断項目を多数あげて、それらに当てはまる項目がいくつあるかによって決めるが、ICD-10 と DSMIV の間には特徴的な症状項目の数、症状の持続期間、単純型の有無、前駆期・残遺期の扱いなどで違いが
みられる。どちらも Schneider の診断上重要な 8 つの症状である一級症状(FRS)*-2 を重視しており、ICD-10
の項目(1)に列挙されている(d)を除いては、すべて Schneider の一級症状である。幻覚・妄想や陰性症状は
1 つのみでは統合失調症の症状を代表するものとみなさない点が共通している。
*-2 Schneider の一級症状(FRS):
Schneider は統合失調の陽性症状を中心とした 8 つの基本的な症状を診断的な価値が高い一級症状とした。
身体的な基礎疾患がないことを前提に FRS が紛れもない形で明瞭に認められたときに統合失調症と診断す
ることを提唱した。
①思考化声、②応答形式の幻聴、③自分の行為を批判する声の幻聴、
④身体への影響体験、⑤思考奪取と思考干渉、⑥思考伝播、⑦妄想知覚、
DSM-IV は、発症後のエピソード期間の大部分は仕事・学業・対人関係・自己管理などのうち1つ以上の領
域の機能が、発病前よりも著しく低いことを要件としている。また、6 ヵ月基準と機能低下基準による診断
は、ICD-10 よりも狭い範囲の統合失調症を選択している。
1.ICD-10
ICD-10 は WHO の定める国際疾病分類第 10 版のことである。診断基準では特徴的な精神症状が1ヵ月
以上にわたり存在することが必須としている。1ヵ月未満の場合は急性精神病性障害に分類される。
ICD-10 の統合失調症(F20)の診断基準
次の項目(1)の症状のうち1項目以上、または項目(2)の症状のうち2項目以上が 1 ヵ月以上持続する
(1)次のうち、少なくとも1項目があること
(a) 考想化声(自分の考えが声になってきこえてくる)、考想吹入(自分の考えではない考えが頭に入ってくる)
あるいは考想伝播(自分の考えていることが、他人にわかってしまう)。
(b) 他者に支配される、影響される、あるいは抵抗できないという妄想で、身体や四肢の運動、特定の思考、
行動や感覚に関連づけられているもの、および妄想知覚(直観的に非現実的な意味づけを思いつくこと)。
(c) 患者の行動に対して絶えず注釈を加えたり、仲間たちの間で患者のことを話題にする形式の幻聴、あるい
は身体のある部分から発せられる幻聴。
(d) 宗教的・政治的な身分、超人的な力や能力といった、文化的に不適切で実現不可能なことがらについての
持続的な妄想(たとえば、天候をコントロールできるとか別世界の宇宙人と交信しているといったもの)。
(2)または次のうち少なくとも2項目あること
(a) 持続的な幻覚が、感傷的内容を持たない浮動性あるいは部分的な妄想や支配観念に伴って継続的に(数
週から数ヶ月)現れる。
(b) 思考の流れに途絶や挿入があり、その結果、まとまりのない話し方をしたり、言語新作(奇妙な言葉を作っ
て使用する)が見られたりする。
(c) 興奮、常同姿勢、蝋屈症、拒絶症、絨黙、昏迷(無動、無反応状態)などの緊張病性行動。
(d) 著しい無気力、会話の貧困、情動的反応の鈍麻や不適切さのような、社会的引きこもりや、社会的能力の
低下をもたらす「陰性症状」。
-5-
2.DSM- IV
DSM- IV は米国精神医学会(APA)が定めた精神疾患の分類と診断手引き第 4 版である。陽性症状また
は陰性症状が 2 つ以上みられ、認知機能障害による社会的・職業的機能の低下を含めた状態、前駆期あるい
は残遺期を含めて 6 ヵ月以上としており、6 ヵ月未満の場合には統合失調様障害とする。
DSM- IV の統合失調症の診断基準
A.
特徴的症状
以下のうち2つ(またはそれ以上)、各々は、1ヶ月の期間(治療が成功した場合はより短い)ほとんどいつも存在。
(1) 妄想
(2) 幻覚
(3) 解体した会話(例:頻繁な脱線または滅裂)
(4) ひどく解体したまたは緊張病性の行動
(5) 陰性症状、すなわち感情の平板化、思考の貧困、または意欲の欠如
* 妄想が奇異なものであったり、幻聴が患者の行動や思考を逐一説明するか、または2つ以上の声が互いに
会話しているものであるときには、基準の症状1つを満たすだけでよい。
B. 社会的または職業的機能の低下
障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得してい
た水準より著しく低下している(または小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準に
まで達しない)。
C.
期間
障害の持続的な徴候が少なくとも6ヶ月間存在する。この6ヶ月の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活
動期の症状)は少なくとも1ヶ月(または治療が成功した場合はより短い)存在しなければならないが、前駆期また
は残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性
症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(たとえば、風変わりな信念、
異常な知覚体験)で表されることがある。
D.
分裂感情障害と気分障害の除外
統合失調感情障害と気分障害、精神病性の特徴を伴うものは除外する。
E.
物質や一般身体疾患の除外
障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)、または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではない。
F.
広汎性発達障害との関係
自閉性障害や他の広汎性発達障害の既往歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が少なくと
も1ヶ月(治療が成功した場合は、より短い)存在する場合にのみ与えられる。
□症状
統合失調症の精神症状は、思考、感情、意欲、認知機能など様々な領域に多彩な症状や障害を示す。
-6-
統合失調症の主な症状
a. 妄想気分・妄想知覚
1.思考障害
b. 妄想(被害妄想、誇大妄想)
c. 思考過程の異常(連合弛緩、支離滅裂)
a. 幻聴
2.幻覚
b. 体感幻覚
3.自我障害
a. 考想察知
b. 考想伝播
a. 感情鈍麻、不調和な感情反応
b. 両価性
4.感情障害と自閉
c. 表情・態度の異常
d. 自閉症
e. 疎通性障害
a. 能動性低下
5.意欲障害・行動障害
b. 緊張病症候群(自発運動低下、硬直、寡黙、堂同、了解不能な運動暴発、衝動行動)
c. 行動障害(独語、空笑、自閉的生活、通学・通勤の休止)
6.認知・行動障害
a. 言語性能力の低下
b. 動作性能力の低下
(病態生理と治療薬,じほう)
◇陽性症状(positive symptoms)
本来ならばないものが存在する症状を陽性症状といい、派手な症状、幻覚、妄想、滅裂思考、させられ体験、
奇異な行動などがこれに当たる。これらは統合失調症の特徴的な症状として Schneider の一級症状(FRS)
とされている。脳 CT 検査では異常は認められず、ドパミン作動性神経の機能異常(中脳辺縁系における過
剰)などが関与していると考えられており、急性発症、急性増悪・寛解を示し、抗精神病剤に良く反応する。
◇陰性症状(negative symptoms)
陰性症状は、正常の精神機能の低下あるいは本来あるはずのものが欠如していることを意味する欠陥症状で
ある。感情の鈍麻・平板化、無感情、意欲・自発性の欠如、会話の貧困、自閉などを主とし、Bleuler が 4
つの基本症状*-3 をあげている。抑うつ症状と区別が困難なことも少なくない。脳 CT、MRI 検査で、脳室
の拡大、皮質の委縮がみられるので、脳の慢性の病的過程、器質変化などに由来していると考えられており、
慢性進行性である。抗精神病剤に抵抗性である。
*-3 Bleuler の基本症状:
Bleuler は統合失調に共通してみられる症状として、陰性症状を中心に 4 つの基本症状をあげ、特に
連合弛緩を重視した。
①思考障害、②自閉、③感情障害、④両価性(同一の対象に対し相反する感情や意志を同時に持つ)
Crow,T.J.(1980)は統合失調症を陽性症状主体のⅠ型と陰性症状が主のⅡ型に分類した。Ⅰ型はドパミ
ン受容体の異常を基盤として、急性に進行し、抗精神病剤の反応性が良好である。一方、Ⅱ型では脳神経細
-7-
胞の器質的変化により、慢性に進行し、抗精神病剤の反応性が不良である。
Crow,T.J.(1980)の陽性・陰性症候群
タイプⅠ(陽性症状)
タイプⅡ(陰性症状)
特徴的症状
幻覚・妄想・支離滅裂
感情平板化・会話の貧困・意欲欠如
神経遮断薬の反応
良好
不良
予後
可逆的で良好
不可逆的?
知的機能障害
なし
存在することあり
想定される病理過程
ドパミンレセプターの増加
細胞の減少と構造の変化
◇認知機能障害
近年、統合失調症の中核をなす基礎的障害と考えられている。言語の流暢さ、細かい運動機能、記憶力、計
画、思考、集中、判断、問題解決など日常生活に支障をきたす。統合失調症の発現前から既に認められて、
進行性に経過する。
◇感情障害
感情の平板化や感情の鈍麻がしばしば認められ、ときに快楽消失と考えられる程の重篤な情動的反応低下と
極度の怒り、幸福感、不安などの過度の激しい不適切な情動が出現することがある。
(1)思考障害
①妄想気分・妄想知覚:
妄想はまず妄想気分・妄想知覚から起こる。妄想気分では、外界が何となく変わった、不気味、悪いこと
が起こると不安になる。これが進行すると、大きな天災が起こる、世界が崩壊するなどと考える。妄想知
覚では妄想気分がさらに進んで、それぞれの現象に特別な妄想的意味づけがされる。また、何もきっかけ
もないのに突然非現実的な考え(着想)が浮かび、それを確信する「妄想着想」
。
②妄想:
被害妄想と誇大妄想とに大別され、初期には被害妄想が多い。
被害妄想には自分を敵視する者によって付け狙われたり、危害を加えられたりする「迫害妄想」、自分に
関係ないことを関係があるように感じる「関係妄想」、いつも誰かに見張られている、すべての人が自分
を観察していると感じる「追跡妄想」、誰かに毒を盛られるのではと思いこむ「被毒妄想」などがある。
慢性化すると自己を非現実的な過大評価して確信する誇大妄想がみられる。誇大妄想には、自分は神であ
ると思いこむ「宗教的誇大妄想」、自分が高貴な血を引く人間であると信じ込んでいる「血統妄想」、重大
な発明をしたと考える「発明妄想」
、特定の人から愛されていると信じる「恋愛妄想」などがある。
③思路の異常:
思路の異常は、患者との会話を通して推測できる。話のまとまりがなくなる「連合弛緩」、話題が次々に
飛ぶ「観念奔逸」が生じ、さらに悪化すると話がばらばらで内容が支離滅裂になる「滅裂思考」、話の進
行が急に止まる「思考途絶」などがみられる。
(2)知覚の障害・幻覚
幻覚とは、統合失調症の約 70%に認める症状で「対象のないところに対象を認識すること」と定義され
-8-
る。感覚器により幻聴、幻視、幻触、幻臭などに分類される。触覚、嗅覚、味覚に関する妄想は少なく、こ
れだけがみられる場合は他の身体的な原因を考慮に入れるべきである。
一般に、急性期の幻覚は現実味を強く帯びて不安を伴うのに対し、慢性期のものは荒唐無稽で強い不安を
示さない傾向がみられる。
①幻聴:
統合失調症では幻覚は高頻度に出現するが、幻聴が主体である。物音よりも人の声が多く、遠くから聞こ
えたり、天井や床から聞こえたりする。自己の行動を非難、批判したり、命令するなど被害的内容が聞こ
えたり、自分に話しかけて対話する形式のものや、複数の人物の声が聞こえることもある。
②体感幻覚:
幻聴に次いで多く、
「脳が溶ける」、「内臓を引っ張られる」など異常体験がある。
(3)自我障害
自我障害は自己の知覚、思考、行為において、自分と他者、自分と外界の区別の意識が希薄となって生じ
る。
自分の頭に浮かんだことがすく相手に分かってしまう「考想察知」、自分の考えが直ぐに他人に伝わる「考
想伝播」、自分の考えや行動が、他者によって操られる、行動させられる「させられ体験」などがある。考
えが外から吹き込まれる「思考吹入」などがある。
(4)感情障害
通常は感情の変化をあらわすはずの出来事に対しても、自然な感情の変化が起こらなくなり、周囲に対し
て無関心になってくる「感情鈍麻」
。表情の硬さ、冷たさがみられる。終日何もせず、人の話しかけにも反
応が少なくなり、自閉の状態になる。意思の疎通ができず、共通の感情がもてない「疎通性障害」。また、
泣くと同時に笑う、不安と歓喜、愛と憎しみなどの相反する感情を同時に併存するという「両価性」を示す
場合もある。
(5)意欲障害、行動障害
①意欲の低下
表情の硬さ、冷たさがあり、感情の平板化がみられるが、行動においても能動性、自発性が低下する。幻
聴に対する応答もあるが、意味なく眉をひそめたり、笑ったり、独り言をつぶやく。何もする気が起こら
ず、家で一日中無為に過ごしても退屈を感じない。被害妄想から他人に危害を加えることがある。慢性化
になると能動性はさらに低下してくる。
②行動の異常
急激に不可解な興奮をし、自分を傷つける「緊張病性興奮」、意欲が極端に低下し、外界からの反応にも
応じない「昏迷」、話をしない「無言症」、他者に手足の姿勢を変えられると不自然な姿勢であっても長時
間保持する「カタレプシー」、同じ行動を長時間続ける「常同症」、外部の命令を拒否する「拒絶症」など
の症状がある。
(6)知的障害
健常者や他の精神病患者に比べて知能が劣るとされている。この傾向は特に破瓜型でみとめられる。また、
陽性症状よりも陰性症状を主とする患者で認知・行動障害があるとされる。その刺激が見慣れているものか、
見慣れていないものかを識別して素早く対応し、予期せぬ重要な刺激にのみ反応するが、統合失調症の患者
は意味のある刺激か、無意味な刺激かを認識する能力が障害されている「選択的注意の欠損」など、認知機
能の欠損が不安や抑うつと共にしばしば共存する。これは約 10%の頻度で自殺の原因になる。通例、若い
-9-
患者では幻覚、妄想、制御不能の行動をもって劇的に発症するが、より年配の患者では感情の平板化や社会
的ひきこもりのような陰性症状を示す。
□病型
DSM-IV は主に臨床症状に基づいて、統合失調症を、解体型(破瓜型)、緊張型、妄想型、残遺型として
分類している。
ICD-10 では、妄想型、破瓜型、緊張型、鑑別不能型、統合失調症後抑うつ、残遺型、単純型、その他に
分類される。
①妄想型
20 歳後半もしくは 30 歳代に発病することが多く、最も頻度が高い。主に妄想や頻繁な幻聴を症状とし、
迫害妄想、誇大妄想、嫉妬妄想などが多い。徐々に進行して悪化し、妄想が強くなるが、人格の崩壊は比
較的軽微で、軽い時期は妄想があっても社会生活はある程度可能である。顕著な残遺状態を起こさず、予
後は比較的良い。
統合失調症の病型分類
DSM-IV
ICD-10
解体型(破瓜型)
破瓜型
緊張型
緊張型
妄想型
妄想型
鑑別不能型
鑑別不能型
残遺型
統合失調症後抑うつ
残遺型
単純型
他の統合失調症
特定不能のもの
②解体型(破瓜型)
統合失調症でこの型が最も多く、念頭に置いて定義されている。一般に発症が早く 10 歳後半~20 歳代前
半に発症することが多く、徐々に進行し、予後不良である。症状は陰性症状が主で、意欲の減退、不適切
な感情表出、滅裂した会話や思考(解体)、自閉、ひとり言や空笑などの行動がある。幻覚、幻想などの
出現は一時的である。長期的には人格荒廃に至る。
③緊張型
20 歳前後に急激に発症し強い興奮を示す。精神運動の異常が主な症状で、不可解な興奮や衝動行動など
緊張病性興奮及び自発運動停止、カタレプシー、無言症、拒絶症などの緊張病性昏迷が現れる。病状は消
退と増悪を繰り返し、抗精神病剤に対する反応性がよく、長期的にも若年期発症の一部を除いて重篤な精
神障害を残さない。
④残遺型(単純型)
思春期に発病し、①、②、③のエピソード後にみられ、緩徐に進行する。主な症状は感情障害、意欲低下、
-10-
軽度の連合弛緩、自閉、奇異行動などの陰性症状が主体である。幻覚や妄想などの陽性症状が出現しても
長くは続かず、無気力で自閉的となり、次第に社会的に不適応となる。
⑤鑑別不能型
諸症状が混在していて①~③のいずれにも分類できない病型。
⑥統合失調症後抑うつ
急性期後に多い。
□経過
統合失調症は段階的に進行する疾患と考えられ、経過型は多様であるが、発病前期、前駆期、急性期、回
復期、安定期に分かれるものや前兆期、急性期、休息期(消耗期)、回復期の 4 段階に分ける場合もある。
多くの場合は、思春期あるいは 20 歳代に発症するが、発症前の不気味な周囲の変容感を覚える前兆期の
あと、幻覚・妄想状態や激しい興奮状態を呈する陽性症状が出現する急性期が訪れる。急性期を過ぎるとエ
ネルギーが消耗した状態で陰性症状が出てくる。これらの症状は再発により慢性化すると社会生活が困難に
なることがある。
一般的に急性期は数週間単位、休息期は数週間から数カ月単位、回復期は数カ月から数年単位で経過する
とされている。
1.前兆期
発症初期にみられることが多く、頭重、倦怠感、昜疲労感、不眠などを訴え、周囲の出来事に関心を示さ
なくなり、抑うつ気分に陥る。あるいは、逆に不自然な意気高揚を感じる。この時期には、まだ統合失調症
の特徴的な症状は出現しない。診断・治療に至までの期間は、平均 3 年と考えられている。はじめは本人も
家族も精神症状とは思わず、内科などを受診することもある。神経衰弱様症状は解体型には明確に認められ、
緊張型では認められない。
統合失調症の経過
(ヤンセンファーマ㈱HP・メンタルナビ-統合失調症より)
-11-
2.急性期
病気の勢いが止まらず、前兆期の後に訪れる急性期では、次第に統合失調症の症状があらわれてくる。病
状が非常に不安定な時期で、数週間~2 年以上と続く。男性の方が女性よりも期間が長く、またこの期間が
長いと予後が悪いとされる。過度に覚醒のレベルが高まって、不安や緊張感、敏感さが極度に強まり、幻覚・
妄想、興奮などの陽性症状が現れ、幻覚や妄想といった現実を歪曲した知覚・判断のために極度に頭が混乱
し、周囲とのコミュニケーションがとりにくくなる。この時期の治療は薬物療法が中心となる。
3.休息期 (消耗期)
嵐のような急性期が過ぎると、心身とも疲れ切ってしまうことが多く、陰性症状を中心とした、活動が鈍
くなる休息期に入る。この時期は年単位におよび、急性期の状態が長かった場合は休息期も長くなる傾向が
ある。感情の起伏がなくなり意欲の低下、過眠、引きこもった状態になり、不安定な精神状態のため、ちょ
っとした刺激で過覚醒となり、急性期の状態に逆戻りしやすい時期でもある。この時期は心身の休養をとり、
エネルギーの回復に努める。
4.回復期
休息期を経ると社会との関わりを持とうとする気持ちが出て、症状が徐々に治まり、やれることが少しず
つ増えてくるというなだらかな回復期が続く。また、回復レベルは多様で、一方では急性期の症状が残りこ
れら陰性症状や陰性症状のほかに認知機能障害が現れることがあり、これがその後の生活上の障害や社会性
の低下へとつながっていく場合が少なくない。
□再発
統合失調症は、再燃と寛解を繰り返す慢性的経過をとる疾患である。特に晩期発症例では慢性かつ進行性
である。統合失調症では、疾患過程が存在し、再発しやすいと考えられているため、通常「治癒」ではなく
「寛解」が用いられる。
WHO/DOSMeD 研究による統合失調症国際共同研究(ISoS)の長崎大学の報告では、15 年追跡で累積再
発率は、1 年目が 55%、2 年目 70%、5 年目 70%、10 年目 90%、15 年目 93%であった。1~2 年で 55~
70%が再発している。2 年目と 7 年目の発生率が同じであるが、2 年目は精神病性症状持続型が、5 年目は
不完全寛解型が多く、慢性化の進行がうかがえる。さらに社会対応状態に関しては、40~50%が適応良好で
あった。
Hogarty らによる研究では、薬物療法のみの治療よりも薬物療法に家族教育や生活技能訓練(SST)など
の心理社会的療法を併用した方が再発を予防できる可能性が数段に高くなることを報告している。
□予後
予後は、発病年齢の時期、発病様式の緩急、誘発因子の有無などによって異なる。4 割は社会的・職業的
にごくわずかな障害がある程度で、自立した生活を営んでおり、1 割が中程度の障害をもち、50%は家庭内
での適応、社会的に重度の障害を有するか、あるいは入院中であると考えられる。病型に関しては、緊張型
の予後は良く、解体型は重い経過をたどることが多い。
-12-
統合失調症の予後
因子
予後不良
予後良好
発病年齢
早い
遅い
発病様式
緩徐
急激
誘発因子
なし
あり
病前性格
分裂気質
循環気質
知能
低い
高い
治療開始
遅い
早い
感情精神病様症状
なし
あり
男
女
遺伝負因
あり
なし
脳の形態変化
あり
なし
病前の社会適応の良し悪し
悪い
良い
性別
(薬剤師のための疾患別薬物療法Ⅱ.精神・脳神経系疾患/消化器疾患:南江堂より)
<予後不良に関わる因子>
・男性で早期の発症
・統合失調症の家族歴
・未治療期間が長期間
・小児期の社会機能の低さ
・高い「感情表出」の家族との長時間の接触
・画像診断での脳の構造上の異常
・IQ の低さ、教育到達度の低さ
など
一方、追跡期間 10 年以上の前向き経過研究における統合失調症者の自殺率は 10%前後である報告がある。
5 年で 1~9%、10 年で 3~14%と若年男性の自殺率が高かった。自殺以外にも統合失調症患者は一般人口
より 2~4 倍死亡率が高く、少なくとも平均 10 歳若く死亡するといわれている。
統合失調症患者は心臓血管系疾患、がん、事故、自殺、脳血管系疾患、心臓発作、呼吸器系疾患すべてに
おいて相対危険度が高かった。およそ 50%が身体的併存症を抱えているが、きちんとその治療ができてい
ない。罹患しやすい疾患としては、2 型糖尿病、骨粗鬆症、過敏性腸症候群が挙げられている。また、心疾
患による死亡率が 1.5 倍高い。
□治療法
統合失調症は、発症後、慢性的に進行し、再発を繰り返すことで再発しやすくなり、社会適応能力の低下
を引き起こす。従って治療目標は、①症状を早期に軽減・消失させる、②生活の質と適応機能をできる限り
高める、③疾患による生活機能の低下を回復・向上することにある。
統合失調症の治療法を選択するにあたっては、病相が急性期、回復期、安定期のどの時期にあるかを考慮
に入れる。従来、入院加療中心となっていたが、近年では外来加療が中心となってきている。治療法には薬
物療法、電気けいれん療法、心理・社会的療法などがあるが、どの時期であっても薬物療法が中心となる。
-13-
◇電気けいれん療法(electroconvulsive therapy:ECT)
麻酔を併用して、頭部に通電することによりけいれん発作を誘発させる治療法で、十分な抗精神病剤の治療
にもかかわらず、改善がみられない、緊張病症状が著明、興奮や攻撃性、衝動性が亢進、強い希死念慮があ
る場合などに適応となる。
◇心理・社会的治療
精神疾患をもつ人のニーズや環境に配慮しながら、社会機能を回復することを目的とした治療の総称である。
その一つである社会生活技能訓練(Social Skills Training:SST)は、認知行動療法の技法と理論を用いて、
対人関係を良好に維持する能力やストレスに適切に対処する能力を高め、生活技能の修得を支援する治療・
援助技法である。
現在行われている治療は、統合失調症の発生機序が不明なため、原因療法ではなく対処療法となる。多く
の患者は長期間にわたって治療を継続することになり、抗精神病剤(非定型抗精神病剤)を中心とした薬物
療法が行われるが、心理社会的介入やリハビリテーションなどの治療も重要な役割を担う。
統合失調症の治療法
急性期
回復期
安定期
◎
◎
○
○(適応のある場合)
-
-
①環境調整
○
○
○
②生活指導
○
○
○
③作業療法
-
○
○
④社会生活技能訓練
-
△
○
⑤認知行動療法
△
○
◎
薬物療法
電気けいれん療法
心理社会的療法
◎:かなりの効果は期待 ○:効果は期待 △:効果は曖昧 -:効果は期待できない
(田
亮介他:レシピ Vol.6,No.2,南山堂,2007)
抗精神病剤は原則として単剤で使用し、多剤併用は行わないことが推奨させており、再発・再燃患者には、
まず最初に以前効果があった薬剤の使用を考慮する。選択した薬剤で良好な反応がみられなかったり、副作
用で服用できず切り替える場合は、他の化学構造をもつものが望ましいとされる。
一般に、精神医学的な管理は、急性期、回復期、安定期に分けて、各病期に応じた治療方針をたてている。
1.急性期の治療
急性期は、幻覚・妄想、興奮などの陽性症状が顕著で、患者の病識がないことが多い。治療は、まず症状
を早期に軽減・消失させ、安静を保つことが重要とされ、薬物療法をなるべく速やかに開始する。治療開始
が遅れると回復が遅れたり、自殺や危険な行動のリスクが高くなることがある。また、自傷・他害(攻撃性)
の恐れが切迫している場合は、それを防ぐ緊急措置を講じる必要がある。この時期は抗精神病剤が用いられ
る。
第一選択として、興奮がそれほど強くない場合は、定型抗精神病剤より非定型(新規)抗精神病剤の経口
-14-
投与を推奨している。興奮が強い場合には、定型抗精神病剤を選択するが、できるだけ単剤で治療すること
を原則とする。薬物の効果発現は増量のタイミングより遅れるため、一定用量で 2~4 週間観察したうえで
必要に応じて増量し、4~6 週間後に判定する。
2.回復期の治療
回復期は、急性期の精神病状態から回復しつつある時期であり、通常は急性期エピソードが回復したのち
半年以上にわたって続く。
治療目標は、症状の寛解を維持し、再発の可能性を最小にするための支援を行うことである。薬剤による
改善がみられる場合は、さらに 6 ヵ月間は同じ薬剤と投与量を継続し、その後に減量して維持量を定めてい
く。早急の減量や薬剤の中断は、容易に再発を引き起こすことになる。
3.安定期の治療
安定期は、精神病状態が改善して病状が安定している時期であるため、寛解あるいは軽快した状況を維持
し、再発の危険性を最小限にして、機能水準の向上を図る。
この時期においても再発を防止するために、抗精神病剤の治療は必要であり、服用を継続することで、再
発頻度は 30%以下に抑えることができるが、服用しない場合は 1 年以内に 60~70%、2 年以内に 90%以上
の再発リスクがあるとされる。
□薬物療法
→ 統合失調症治療剤一覧 ・・・ P43
治療の中心は薬物治療であり、抗精神病剤が用いられる。抗精神病剤は、受容体への親和性と活性に基づ
き定型抗精神病剤と非定型抗精神病剤に大別されている。
脳内ドパミン作動性神経経路に存在する、ドパミン D2 受容体を遮断することで、幻覚、妄想などの陽性
症状を改善する。統合失調症のほとんどの臨床状況に対して、非定型抗精神病剤を推奨している。これは急
性期症状に対して従来の定型抗精神病剤とほぼ同等の有効性をもち、しかも錐体外路症状、遅発性ジスキネ
ジア、過鎮静等の有害事象が低いためである。しかし、精神運動興奮が著しい急性期の場合においては速効
性の鎮静を期待してベンゾジアゼピン系薬剤を併用したり、焦燥感、攻撃性、興奮など抗精神病剤単独では
十分に改善されない場合は、リチウムやパルプロ酸、カルバマゼピンなどの気分安定剤を併用することで効
果が期待できる。
一方、現在では、むしろ定型抗精神病剤の選択を、①定型抗精神病剤の使用で状態が安定している場合、
②興奮などによって筋肉内注射が必要な場合、③服薬アドヒアランスが不良、または攻撃性・暴力に対する
緊急処置が必要としている場合に限定している。
1.定型抗精神病剤
→ 定型抗精神病剤の分類と特徴 ・・・ P36
定型抗精神病剤は、ドパミン D2 受容体(特に中脳辺縁系のドパミン神経)をはじめアドレナリンα1、ヒ
スタミン H1、セロトニン 5-HT2A、アセチルコリンなどの受容体遮断作用をもち、抗幻覚、鎮静作用などが
主体となり、陽性症状に効果を示すが、陰性症状や認知障害に対して効果が乏しく、錐体外路症状をはじめ
とする副作用を発現しやすい。
力価により高力価、低力価に分類し、高力価のものはドパミン受容体遮断作用が中心で強力な抗幻覚・妄
想作用を有し、低力価のものは主に抗コリン作用、アドレナリンα1 受容体遮断作用、ヒスタミン H1 受容
-15-
体遮断作用などをもち、強い鎮静作用を有する。
定型抗精神病剤は初発患者の約 70%に効果を示し、症状の改善は数時間~数日のうちにみられることが
多いが、完全寛解には通常 6~8 週を要する。
①フェノチアジン系
ドパミン D2 受容体遮断作用以外に抗コリン作用、アドレナリンα1 受容体遮断作用、ヒスタミン H1 受容
体遮断作用をもつ。鎮静作用、催眠作用が強い。
<プロピル側鎖化合物>
・クロルプロマジン(コントミン、ウイタミン)
低力価で鎮静作用、催眠作用、抗コリン作用が強い。錐体外路症状が起きにくい。
・レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)
・トリフロペラジン(トリフロペラジン)
<ピペラジン側鎖化合物>
・フルフェナジン(フルメジン)
・ペルフェナジン(ピーゼットシー)
・プロクロルペラジン(ノバミン)
高力価で、ドパミン D2 受容体遮断作用が強いため、錐体外路症状が起きやすい。
鎮静作用、催眠作用、抗コリン作用は弱く、アドレナリンα1 受容体遮断作用の関与により、少量投与
で精神機能賦活作用を示す。
<ピペリジン側鎖化合物>
・プロペリシアジン(ニューレプチル)
中間・異型群で、錐体外路症状が起きにくい。
②ブチロフェノン系
ドパミン D2 受容体遮断作用以外にヒスタミン H1 受容体遮断作用、弱い抗コリン作用、アドレナリンα1
受容体遮断作用をもつが、錐体外路症状の発現は高い。
・ハロペリドール(セレネース)
高力価で、幻覚・妄想に対する作用が強く、鎮静作用が弱い。抗コリン作用、アドレナリンα1 受容体
遮断作用は弱いが、錐体外路症状は起きやすい。
③ベンザミド系
ドパミン D2 受容体選択的遮断作用
・スルピリド(ドグマチール)
セロトニン 5-HT2A 受容体遮断作用をほとんどもたず、脳内移行が悪いため高プロラクチン血症が出や
すい。錐体外路症状も起きやすい。
低用量で消化器系に用いて、中用量で抗うつ作用が認められる。
④イミノジベンジル系
・モサプラミン(クレミン)
ドパミン D2 受容体遮断作用、ヒスタミン H1 受容体遮断作用をもち、陽性症状と陰性症状に効果があ
る。
⑤その他
・ゾテピン(ロドピン)
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中間・異型群で、効果発現が速く、強いセロトニン 5-HT2A 受容体遮断作用をもつ。
意欲賦活作用、抗幻覚・妄想作用、鎮静作用を示す。
・クロカプラミン(クロフェクトン)
・カルピプラミン(デフェクトン)
中間・異型群で、意欲賦活作用がある
・オキシペルチン(ホーリット)
中間・異型群で、抗幻覚・妄想作用、慢性患者の意欲賦活作用がある。
錐体外路症状は起こりにくい
2.非定型抗精神病剤
→ 非定型抗精神病剤の分類と特徴 ・・・ P37
非定型抗精神病剤は、ドパミン D2 受容体とセロトニン 5-HT2A 受容体に対する親和性が強く、陰性症状、
感情症状、認知機能などの陽性症状以外の改善もみられる。
黒質線条体では、ドパミンの放出をセロトニンが調節している。セロトニンがドパミン神経前シナプス細
胞にあるセロトニン受容体に結合するとドパミンの放出にブレーキがかかる。
非定型抗精神病剤は、ドパミン受容体よりもセロトニン受容体に対する親和性が高いため、セロトニンに
先回りしてセロトニン受容体に結合し、シグナルが伝わらない状態を作り出し、ドパミン放出のブレーキが
外れ、ドパミンが増えた状態となる。セロトニン受容体と結合していない薬剤は、遅れてドパミン受容体と
結合して遮断作用を示すが、既にドパミンが増えている状態なので、相対的に錐体外路症状は生じにくい。
また同じことが漏斗下垂体系でも起こるために、高プロラクチン血症や性機能障害が起こり難いとされる。
中脳辺縁系においては、セロトニン受容体の分布が少ないので、セロトニンによる影響は少なく、ドパミン
受容体遮断作用が強く働くことになる。
統合失調症のほとんどの臨床状況に対して、非定型抗精神病剤を推奨している。これは急性期症状に対し
て従来の定型抗精神病剤とほぼ同等の有効性をもち、しかも錐体外路症状、遅発性ジスキネジア、過鎮静等
の有害事象が低いためである。
①セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)
ドパミン D2 受容体遮断作用とそれより強いセロトニン 5-HT2A 受容体遮断作用をもつ。
・リスペリドン(リスパダール)、パリペリドン(インヴェガ)
陽性症状と陰性症状に有効。抗幻覚作用、鎮静作用が早く急性期に使用しやすい。リスペリドンの剤形
に錠剤、散剤、内用液、口腔内崩壊錠、デポ剤があり、効果発現時間が異なる。
・ペロスピロン(ルーラン)
陽性症状に対する作用は比較的弱く、抗不安作用もあり、維持期に適している。副作用が少なく、高プ
ロラクチン血症も起こしにくい。食後に服用。
・ブロナンセリン(ロナセン)
思春期妄想型、陰性症状、認知障害にも有効。高プロラクチン血症を起こしにくい。食後に服用。
②多元受容体作動剤(MARTA)
ドパミン D2 受容体遮断作用とセロトニン 5-HT2A 受容体遮断作用、他に複数の受容体に高い親和性を示
す。
・クエチアピン(セロクエル)
静穏化作用、抗不安作用が強いが、陽性症状に対する作用が弱い。起立性低血圧を起こしやすい。
-17-
・オランザピン(ジプレキサ)
陽性症状と陰性症状に有効。鎮静作用が比較的強いことから急性期~慢性期まで使用することができる。
錐体外路症状、高プロラクチン血症の副作用は比較的少ないが、体重増加、血糖値の上昇、糖尿病患者
には禁忌である。過鎮静に注意。剤形は、錠剤、細粒、口腔内崩壊錠がある。
③ジベンゾチアゼピン系
・クロザピン(クロザリル)
ドパミン D2 受容体に対する親和性が低い。治療抵抗性統合失調症にも効果があるが、血圧低下、けい
れん、心疾患、無顆粒球症の副作用が多い。
④ドパミン受容体部分作動剤(DSS)
ドパミン D2 受容体パーシャルアゴニスト(部分作動薬)と呼ばれ、自らがシグナルを発する。シナプス
間隙のドパミン濃度に応じて、内因性のドパミンが強いときは神経伝達を抑制し、逆に活性が低いときは
神経伝達を促進して神経伝達を安定させる。
・アリピラゾール(エビリファイ)
鎮静作用、体重増加、糖代謝異常、錐体外路症状の副作用が少ないが、精神症状、消化器症状の副作用
がある。他薬からの急激な切り替えは病状を不安定にする場合があるため時間をかけて十分な観察を行
いながら行う。
定型抗精神病剤と非定型抗精神病剤の比較
特徴
比較結果
コメント
クロザピンとオランザピンは、陽性症状への効果が定型薬
有効性
副作用
陽性症状
同等か非定型薬の方が良い
陰性症状
非定型薬の方が優れる
再発予防
非定型薬の方がはるかに良い
定型薬よりも非定型薬による治療例で再入院が少ない。
急性錐体外路症
非定型薬の方がはるかに優れて
治療用量の上限を投与しても錐体外路症状が生じにくいこ
状の軽減
いる
とが明確。
遅発性ジスキネ
非定型薬の方がおそらく優れて
ジアの予防
いる
患者自身の好み
非定型薬の方がはるかに良い
非定型薬を好むことがずっと多い。
非定型薬の方がはるかに優れて
定型薬と異なり、多くの非定型薬はプロラクチンを上昇させ
いる
ない
非定型薬の方がかなり生じる。
定型薬でも非定型薬でも体重増加はみられるが、非定型
問題有り
薬で問題になることが多い。
無月経の改善
体重増加
よりも優れている。
陰性症状に対する非定型薬の効果は定型薬よりも優れて
いることが多い。
非定型薬によるリスクは定型薬のほぼ半分とされている。
(病態生理と治療薬 第 2 版,じほう)
新規入院した統合失調症患者の急性期治療においてオランザピン、リスペリドンは、クロザピン、アリピ
プラゾールよりも優れていることが示唆された。
また、近年の大規模な非定型抗精神病剤の head-to-head 比較試験のメタアナリシスの結果、PANSS 合
-18-
計スコアにおいての有効性の高さは、オランザピン=クロザピン≧アリピプラゾール、リスペリドン>クエ
チアピンと報告されている。
◇治療抵抗性
統合失調症患者の 10~35%は、抗精神病剤によって十分な治療効果が得られない場合がある。2 つの薬
理学的クラスから選択した 2 種類以上の抗精神病剤による治療を適切に行ったにもかかわらず、治療に成功
しなかった場合のことを治療抵抗性という。抗精神病剤の代謝能低下者もしくは代謝亢進者、または薬剤を
服用していない可能性があるため血中濃度を測定することが勧められる。
クロザピンは数種類のドパミン受容体遮断剤に反応しない患者に使用した場合に有効であることが認め
られている。
◇統合失調症患者に「禁忌」な薬剤
→ 統合失調症・精神病患者に対して「禁忌」と記載のある薬剤 ・・・ P38
定型・非定型抗精神病剤ともにバルビツール酸誘導体などの中枢神経抑制作用の強い環境下や昏睡状態、
エピネフリンを投与中の患者では使用禁忌である。また、オランザピンやクエチアピンでは、糖尿病、糖尿
病の既往歴のある患者も使用禁忌である。
◇高齢者
加齢に伴った各器官の生理的機能の低下、蛋白結合の変化、脂質・水分の体組成変化があるため、高齢者
にはより低用量で治療を開始し、維持する必要がある。高齢者は低力価抗精神病剤による鎮静作用や抗コリ
ン作用のため、混乱や認知障害を受けやすい。また、起立性低血圧や転倒による骨折が引き起こされること
が多くなるため注意する。
◇妊娠中の服用
定型抗精神病剤が中心で処方されていた以前は、ドパミン D2 受容体遮断作用による薬剤性高プロラクチ
ン血症から排卵障害が起こり、薬剤を服用しながらの妊娠はほとんどなかった。しかし、現在は非定型抗精
神病剤が薬物治療の中心となってきているため妊娠も可能となっている。
催奇形性の問題は、フェノチアジン系薬剤全体については、催奇形性は否定的であった。ハロペリドール
においても大奇形発生率の増加はみられず、非定型抗精神病剤(オランザピン、リスペリドン、クエチアピ
ン、クロザピン)でも大奇形のリスク増加と関係しない可能性があると報告されている。ただ、アリピプラ
ゾール、ブロナンセリン、ペロスピロン、ゾテピン等の情報はない。
胎児毒性や新生児毒性については、出産前に母親が連用していた場合、出産直後に薬剤の作用による影響
がある。フェノチアジン系抗精神病剤を全妊娠期間または分娩直前まで使用していた母親から生まれた児に
錐体外路症状、出生後離脱症状がみられた報告がある。
統合失調症の妊婦の場合、妊娠自体が心身のストレスとなり、又妊娠を理由に薬剤を急に減量する患者も
おり、原疾患の悪化をみることもあるので注意を要する。妊娠というストレスによる精神症状悪化を防ぐた
めにも出産時まで最少量の薬剤を服用し続ける場合もある。
産褥期は、健常な母親でも精神的に不安定になったり、産後うつ病を発症することがある時期である。統
合失調症の母親の場合、育児困難に陥ることもあるので特に気をつける。十分に子供に目を向けられる状態
-19-
に安定するのには、1~3 ヵ月は育児支援が必要と考える。
◇授乳中の服用
乳汁中への移行についてのデータは限られているが、ペルフェナジン、ハロペリドール、クエチアピン、
リスペリドン(6mg/日まで)では母乳中の濃度は低く、乳児への影響はないとされる。オランザピン使用
においては、母乳を飲んだ乳児の血清中にはほとんど検出されず、ほとんどの症例では乳児に短期の副作用
は報告されていないが、鎮静が起こったとの報告はある。
スルピリドは乳汁分泌促進に用いられることがあるが、有害作用の報告はない。
授乳すること自体、母胎の体力消耗率が高く、統合失調症の母親にとっては多くの場合がストレスとなる。
産後はホルモンのバランスが崩れて不安となり、錯乱状態に陥り自殺する母親も少なくない。それを防ぐた
めにも抗精神病剤の再開、維持量に戻すなどの対応が必要となる。統合失調症の母親の場合は、授乳を勧め
るよりも精神状態の安定を優先させる。母親が精神的に安定している方が子供に与える影響は良く、授乳の
ために服用を中止する必要はない。
◇副作用
→抗精神病剤の注意すべき副作用と初期症状 ・・・ P39
→ 抗精神病剤の薬理学的作用と副作用 ・・・ P37
統合失調症では、通常長期にわたって薬剤の服用を必要とするため、副作用の発現はドパミン D2 受容体
遮断作用が強いほど錐体外路症状の発現が高く、高プロラクチン血症をきたす危険性も高い。
定型抗精神病剤と比較して錐体外路症状の副作用が少なくなったが、体重増加、耐糖能、脂質代謝異常と
いった副作用に注意しなくてはいけない。特にオランザピンやクエチアピンは体重増加や肥満、血糖値の上
昇が起こりやすく、リスペリドンは他の非定型抗精神病剤に比べて、アカシジアや高プロラクチン血症が多
く、クエチアピンは眠気が出やすいとされる。非定型抗精神病剤が第一選択に選ばれることが多いが、副作
用発現の違いにより薬剤の選択を行う。
副作用と薬剤の選択
副作用
高頻度薬剤
選択薬剤
錐体外路症状
ハロペリドール、クロルプロマジン、レボメプロマジン
リスペリドンの高用量使用を避ける
遅発性ジスキネジア
定型抗精神病剤
クロザピン、クエチアピン、オランザピン
体重増加
オランザピン、クロザピン、クエチアピン
アリピプラゾール、ブロナンセリン
オランザピン、クエチアピン
アリピプラゾール、ブロナンセリン
脂質代謝異常
オランザピン、クエチアピン
アリピプラゾール、ブロナンセリン
高プロラクチン血症
リスペリドン、スルピリド
クロザピン、クエチアピン、アリピプラゾール
悪性症候群
ハロペリドール、フルフェナジン
オランザピン、クエチアピン、リスペリドン
耐糖能異常、高血糖、
糖尿病性ケトアシドーシス
クロルプロマジン、レボメフムロマジン、クロザピン、
抗コリン性
ハロペリドール、フルフェナジン、リスペリドン
オラザピン
抗ノルアドレナリン性
クロルプロマジン、スルピリド
アリピプラゾール、ブロナンセリン
心電図異常、QT 延長
ピモジド、クロルプロマジン
ハロペリドール、フルフェナジン
-20-
受容体の機能
←
利
点
→
←
欠 点・ 副 作 用
5-HT2C 遮断
H1 遮断
M1 遮断
→
5-HT1A 刺激
5-HT2A 遮断
D2 遮断
α1 遮断
抗不安作用
睡眠の改善
抗精神病作用
食欲増進
体重増加
便秘
起立性低血圧
ESP の軽減
情動の安定
ESP
肥満
過鎮静
口渇
過鎮静
ESP の軽減
高 PRL 血症
認知障害
EPS:錐体外路症状、PRL:プロラクチン
抗精神病剤の副作用とその対策
分類
副作用
鎮静・催眠
原因
対策
α1 アドレナリン受容体阻害
減薬、処方を就寝前に 1 回にまとめる、DSS に変薬
ヒスタミン H1 受容体阻害
肝障害
起立性低血圧
SDA、DSS に変薬
α1 アドレナリン受容体阻害
減量、変薬
定型抗精神病剤
ムスカリン受容体阻害
不整脈
(抗コリン作用)
減量、変薬
α1 アドレナリン受容体阻害
パーキンソン症状
ドパミン D2 受容体阻害
MARTA や DSS に変薬
悪性症候群
ドパミン D2 受容体阻害
起因薬剤中止、補液、ダントレン(ダントリウム)投与
遅発性ジスキネジア
ドパミン D2 受容体阻害
減薬、MARTA へ変薬、抗コリン剤の中止、ビタミン E 投与
乳汁分泌
ドパミン D2 受容体阻害
月経異常
(高プロラクチン血症)
テルグリド(テルロン)の投与、減量、MARTA や DSS へ変薬
乳汁分泌
非定型抗精神病剤
SDA
月経異常
ドパミン D2 受容体阻害
テルグリド(テルロン)の投与、減量、MARTA や DSS へ変薬
(高プロラクチン血症)
射精不能
体重増加
ヒスタミン H1 受容体阻害
SDA や DSS へ変薬、食事療法、運動療法、定型剤も考慮
5-HT2c 阻害作用
MARTA
血糖上昇
ヒスタミン H1 受容体阻害
SDA に変薬、定型剤も考慮
不眠・不安
ドパミン刺激
ベンゾジアゼピン投与
胃腸症状、嘔気
ドパミン刺激
メトクロプラミド(プリンペラン)、ドンペリドン(ナウゼリン)投与
DSS
(今日の治療薬 2012,南江堂)
◆錐体外路症状(EPS;Extrapyramidal symptom)
黒質線条体のドパミン受容体の 78%以上を抗精神病剤が遮断したときに起こる副作用とされる。
黒質線条体は、黒質から大脳基底核までを繋ぐ経路で、正常な黒質線条体経路では、コリン作動性神経に
よる「興奮」とドパミン神経による「抑制」との均等が保たれて運動が調節されている。しかし、抗精神病
剤によりドパミン受容体が遮断されて、均等が崩れ、アセチルコリンの遊離が抑制できなくなり、興奮信号
-21-
が過剰に伝達される。これにより大脳基底核が担っている運動の調整機能が乱れ、錐体外路症状が起こる。
錐体外路症状は急性のパーキンソニズム、アカシジア、ジストニアと遅発性のジスキネジアに大別される。
頻度は少ないがアカシジア、ジストニアには遅発性のケースもある。
錐体外路症状と発現する時期
症状
発現する時期
・手足や全身にみられる反復的でリズミカルな震え(振戦)
・筋肉が固くなって抵抗が強くなる(筋強剛)
パーキンソンニズム
多くは投与開始 2~3 週間後
・顔の表現が乏しくなる仮面様顔貌、動きが鈍くなる(動作緩慢)
・唾液分泌過多による流涎
・じっとしていられない、下肢のムズムズ感やソワソワ感(静座不能)
アカシジア
・落ち着かない、イライラする(不安、焦燥感)
投与後比較的早期
・足踏み、足のくみかえ、体の揺り動かし、ウロウロ歩き
ジストニア
・舌の捻転突出、体幹のねじれ、四肢の突っ張り、眼球上転、斜頚
多くは投与後数時間~数日
ジスキネジア
・顔面、口部、舌、四肢などにあらわれる無目的で持続的な不随運動
多くは長期投与後
(レシピ
Vol.6,No.2,2007,南山堂)
:薬剤性パーキンソニズム
黒質線条体ドパミン受容体遮断により、ドパミンに対してアセチルコリンが相対的に優位となるために起こ
ると考えられ。振戦、筋強剛、無動が三徴候で、流涎や脂漏などもみられる。
定型抗精神病剤による発現率はおよそ 20~30%で、副作用の発現時期は、投与開始数日から数週間のこと
が多く、全患者の 90%以上で 20 日以内に発症しているとされる。
振戦は手指や四肢・口部などにみられ、最初から両側性に比較的急速に進行することを特徴とする。薬剤性
パーキンソニズムでは、ジスキネジア、アカシジアを伴うことが多い。また、副作用が発生しやすい条件と
して、高齢者・女性・非喫煙者・使用薬剤の量が多いなどが挙げられる。
<治療・対処方法>
抗精神病剤の減量または中止、非定型抗精神病剤への変更、抗コリン剤であるビペリデンやトリヘキシフェ
ニジルなどの投与。抗パーキンソン剤のレボドパやブロモクリプチンは抗精神病剤による薬剤パーキンソン
ニズムには無効である。
:急性ジストニア
後シナプスドパミン受容体遮断に反応して前シナプスからのドパミン放出が亢進し、受容体遮断作用を上回
ることで起こると考えられる。
定型抗精神病剤でおよそ 10~20%の頻度で発現し、30 歳以前の若年男性に多く、服用開始後、数時間から
1 週間以内に最も起こりやすい。症状としては、80%が午後に生じて、肉体的、精神的な疲労時にみられる
こともあり、頸部後屈や斜頸、嚥下障害、眼球上転、舌突出などが特徴とされる。咽頭部に生じると、気道
が閉塞して窒息に陥ることがある
<治療・対処方法>
原因薬剤の減量・中止もしくは非定型抗精神病剤への変更、速効性を期待する場合は、ビペリデンなどの抗
コリン剤の筋注、抗ヒスタミン剤の筋注・静注、ベンゾジアゼピン系剤のジアゼパムの静注で対応する。
-22-
:遅発性ジスキネジア(TD)
抗精神病剤の 6 ヵ月以上の長期投与による、黒質線条体の後シナプスドパミン受容体遮断により起こると考
えられる。発現率はおよそ 10~20%とされる。症状としては、75%以上は口顔面に生じる不随運動で、繰
り返し唇をすぼめる、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせる、口を突き出す、歯を食いしばる等という症
状で始まる。
クロザピン、クエチアピン、オランザピンは遅発性ジスキネジアを起こしにくい。
<治療・対処方法>
有効な治療法が確立されていないため、非定型抗精神病剤に変更するか投与量を必要最小限として、予防に
努める。対症療法としては、ビタミン E、バルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム等の投与を行う。抗コリン
剤は、遅発性ジスキネジアを悪化させる。
:アカシジア(静座不能)
中脳辺縁系あるいは中脳皮質系ドパミン D2 受容体遮断作用に加えて、ノルアドレナリン系の亢進やγ-アミ
ノ酪酸(GABA)受容体の関与も考えられる。
アカシジアを引き起こす可能性のある薬剤
○抗精神病薬
フェノチアジン系:プロクロルペラジン、クロルプロマジン、ペルフェナジンなど
ブチロフェノン系:ハロペリドール、ブロムペリドール、チミペロンなど
ベンザミド系 :スルピリド、スルトプリド、ネモナプリド、チアプリドなど
非定型抗精神病薬:リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ペロスピロン、ブロナセリン、アリピプラゾール、
○抗うつ薬
三環系:アミトリプリチン、アモキサピン、イミプラミン、クロミプラミンなど
四環系:マプロチリン、ミアンセリンなど
その他:スルピリド、トラゾドンなど
SSRI:フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン
SNRI:ミルナシプラン
○抗けいれん薬・気分安定薬:バルプロ酸ナトリウム
○抗不安薬:タンドスピロン
○抗認知症薬:ドネペジル
○消化性潰瘍用薬:ラニチジン、ファモチジン、クレボプリド、スルピリド
○消化器用薬:ドンペリドン、メトクロプラミド、イトプリド、オンダンセトロン、モサプリド
○抗アレルギー薬:オキサトミド
○血圧降下薬:マニジピン、ジルチアゼム、レセルピン、メチルドパ
○抗がん剤:イホスファミド、カペシタビン、カルモフール、テガフール、フルオロウラシル
○その他:ドロペリドール、フェンタニル、インターフェロン等の製剤
(医薬品医療機器総合機構:重篤副作用疾患別対応マニュアル(医療関係者向け)-アカシジアより)
最も頻度の高い急性アカシジアは、原因薬剤の投与開始か増量後、時には原因薬剤によるパーキンソン症
-23-
候群やアカシジアなどの予防目的で併用投与されていた抗コリン剤の減量ないし中止後、6 週間以内に症状
が発現するといわれている。錐体外路症状の中でも発現頻度が高く、定型抗精神病剤ではおよそ 25~40%
で女性や中年に多い。
典型的な自覚症状は、強い不安焦燥感や内的不隠と、手足や体全体を揺り動かしたくなる、駆り立てられ
るような強い衝動である。患者は足をじっとしていられず、足を動かしたい欲求に気づいており、静止を強
いられると内的不隠が増強する。患者にとっては非常に苦痛で、自殺念慮や攻撃的行動を誘発する可能性が
あるので、注意する。
<治療・対処方法>
原因薬剤の減量、抗コリン剤、β遮断剤のプロプラノロール、クロナゼパムなどの投与で対応する。
◆悪性症候群(NMS:Neuroleptic Malignant Syndrome)
薬剤の突然の中止や変更などにより 1 週間以内に発症し、高力価の薬剤で起こりやすい。40℃以上の高
熱、筋固縮、血清クレアチニンキナーゼ(CPK)の上昇を三徴とし、高血圧や頻脈などの自律神経症状を
伴う。発症は急激で予測困難で、治療しなければ死亡に至るおそれがあるため、早期発見が重要である。発
熱や精神状態の悪化により脱水の危険性があり、筋固縮では筋壊死の危険性がある。また、筋肉の崩壊によ
りミグロビン尿が持続すると腎不全に至る可能性もある。
抗精神病剤を中止しなければならないために精神状態の悪化を来す可能性がある。この場合は、ベンゾジ
アゼピン系薬剤や電気けいれん療法が行われる。
<治療・対処方法>
抗精神病剤の中止、補液、発熱や循環器症状に対する対処療法を行い、ダントロレンナトリウムのような
末梢性筋弛緩剤やプロモクリプチンなどのドパミン作動剤(保険適応外)を投与する。合併症がない場合は、
原因薬剤中止により平均 7~10 日で症状は改善する。
◆抗コリン作用
特にクロルプロマジンなどの低力価の抗精神病剤では、抗コリン作用が強く、口渇、鼻閉、便秘、麻痺
性イレウス、排尿障害、羞明・眼圧上昇、頻脈などの副作用症状の出現頻度が高い。非定型抗精神病剤の
中でもクロザピンとオラザピンは抗コリン作用を起こしやすい。
また、高力価抗精神病剤では、錐体外路症状の発現対策として抗コリン性のパーキンソン剤を併用すると
抗コリン性副作用が生じることになる。
特に重度の便秘に伴い出現する麻痺性イレウスは、多剤併用や抗パーキンソン剤が併用になっているとき
が多く、クロルプロマジン換算量が 1,500mg を超えると起こしやすい。ときに致死的となるため早急に対
処する。
◆高プロラクチン血症
抗精神病剤によって視床下部・漏斗下垂体系のドパミン D2 受容体が遮断され、プロラクチンの産生が促
進される。女性では、乳汁の漏出や無月経が生じ、男性の場合でも乳房が腫脹して痛みを感じたり(女性化
乳房)、乳汁の漏出、勃起障害などが起こる。長期的には骨粗鬆症につながる。
定型抗精神病剤では、通常量で血中プロラクチン濃度をおよそ 5 倍上昇させると言われている。それに対
して、クロザピンとクエチアピンは血中プロラクチン値に影響を及ぼさず、用量を最大適応量までにしても
-24-
上昇せず、むしろ正常化させる傾向がある。非定型抗精神病剤でもクロザピンやクエチアピン、アリピプラ
ゾール以外は、用量依存的に血中プロラクチン値を上昇させ、特にリスペリドンではその発現は高い。リス
ペリドンはドパミン D2 受容体の遮断が強固で、クエチアピンは D2 受容体への親和性が緩く、解離が速い
ためとされる。
<治療・対処方法>
抗精神病剤の減量やドパミン作動剤であるプロモクリプチンの少量投与。また、非定型抗精神病剤(クエ
チアピンやクロザピン)に変更する。
◆体重増加
現状では体重増加を起こす機序は不明であるが、ほとんど全ての抗精神病剤で投与開始から 12 週間まで
に食欲亢進、体重増加が発現する。定型抗精神病剤より三環系構造(ヘテロ三員環)を有する語尾に-ピン
(pine)がつく、クロザピンやオランザピンなどの非定型抗精神病剤の方が発現頻度は高いとされ、クエチ
アピンはやや低く。リスペリドン、ペロスピンは体重増加が軽度で、アリピプラゾール、ブロナンセリンは
体重増加を起こしにくい。これはドパミン D2 受容体遮断作用やヒスタミン H1 受容体遮断作用だけではな
く、食欲亢進作用のあるセロトニン 5-HT2A、
2C 受容体遮断作用も関与しているとも考えられている。10
週
間後にはクロザピンでは平均 4.5kg の増加、オランザピンでは平均 4.15kg、リスペリドンでは平均 2.10kg、
クエチアピンでは平均 2.16kg の増加がみられたとする報告がある。体重増加は約 40 週で平行になり、増
え続けることはないようである。体重増加は、抗精神病剤との関連ばかりではなく、統合失調症の患者は、
もともと体重増加を示すものが多く、加えて運動不足や食事の過剰摂取なども要因として考えられる。
<治療・対処方法>
体重を明らかに抑制する治療法は確立されていない。体重増加の兆しが認められた場合は、早期に運動療
法や食事療法を検討し、必要であれば原因薬剤の変更も考える。
◆性機能障害
ドパミン D2 受容体遮断作用による高プロラクチン血症は、無月経、女性化乳房、性欲低下、射精障害、
インポテンツなどの性機能障害を引き起こす。
持続勃起症は、アドレナリンα1 受容体遮断作用が関与するとされ、性的興奮と関係なく有痛性・持続性
に陰茎勃起を起こす。発症後直ちに原因薬剤を中止し、泌尿器科的処置を施さないと高率にインポテンツに
移行することが知られている。
◆糖尿病・耐糖能異常
統合失調症自体が糖尿病の発病率が高いことが知られているが、未だ糖尿病発症の機序は解明されていな
い。
発症リスクの高い薬剤は、定型抗精神病剤ではクロルプロマジンなどの低力価抗精神病剤で、非定型抗精
神病剤のクロザピン、次にオランザピン、クエチアピンである。オランザピン、クエチアピンは 2002 年 4
月より、クロザピンは 2009 年の発売時より、警告を設け、糖尿病または糖尿病の既往歴がある患者には禁
忌、糖尿病の家族歴、高血糖、肥満などの糖尿病の危険因子を有する患者には慎重投与となった。
<治療・対処方法>
原因薬剤の中止により改善する場合が多いが、耐糖能異常が持続して糖尿病剤の治療が必要とされること
-25-
もある。
◆脂質代謝異常
一般的に脂質代謝異常症患者ではⅡa 型(高コレステロール血症、中性脂肪不変)の頻度が高いのに対し
て、統合失調症患者ではⅡb 型(高コレステロール血症、高中性脂肪)の頻度が高い。特に血中トリグリセ
リド値、血中総コレステロール値の増加はクロザピン、オランザピンに多く、オランザピンほどではないが
クエチアピンでも報告がある。リスペリドン、ペロスピロン、アリピプラゾールには少ないとされる。ペロ
スピロンで脂質代謝異常が少ないのは、5-HT1A 遮断作用が関与しているのではないかと推測されている。
三環系構造(ヘテロ三員環)を有する抗精神病剤の方がリスクは高いとされる。
◆起立性低血圧
アドレナリンα1 遮断作用により、治療開始後の 2~3 日間に低血圧や起立性低血圧、ふらつきが最も起
こりやすいが、クロルプロマジンやチオリダジンといった低力価抗精神病剤において最も頻度が高く、用量
に依存する。特に高齢者においては転倒事故を招き骨折の原因となるため注意する。
<治療・対処方法>
低血圧がみられた場合は、通常、頭より足を高くして横たわらせ、それから自転車を漕ぐように足を上下
に動かすことで対処できる。抗精神病剤誘発性低血圧においては、アドレナリン投与は禁忌とされ、αアド
レナリン昇圧剤であるノルアドレナリンが選択される。
◆過鎮静
定型・非定型にかかわらず抗精神病剤の多剤・大量投与により、ドパミン受容体が遮断され過ぎた時に起
こりえる。ヒスタミン H1 受容体遮断作用による眠気、ムスカリン受容体遮断作用による認知障害、アドレ
ナリンα1 受容体遮断作用による過鎮静などがある。
低力価において強く発現し、精神運動興奮を呈する患者に対する初期治療においてはむしろ治療的となり
うるが、長期的には認知機能の低下や QOL の低下に直結するため、抗精神病剤の投与量を最小限とする必
要がある。
◆抑うつ状態
抑うつ状態はそもそも統合失調症では合併しやすい疾患であるが、特に定型抗精神病剤により抑うつ症状
態をきたす可能性が高い。急性の精神病用症状が消退後に呈する抑うつ状態を統合失調症後抑うつ
(postpsychotic depression)と称して、SSRI などの抗うつ剤と併用して治療するが、必ずしも効果は高く
ない。
一方で、非定型抗精神病剤により、目覚め現象(awakenings)という問題があらわれた。これは、認知
機能の急激な改善や病的体験の消退・減少に伴って現実と直面し、これまでの人生に対する悔根や自らが置
かれた社会的境遇に対する絶望感などの不快感情や混乱を招くことである。この現象には、薬物療法だけで
なく、支持的精神療法、患者や家族に対する心理教育などのサポート体制が必要になる。
◆認知機能障害
主にムスカリン M1 受容体遮断作用によって生じる記銘力障害が問題とされる。
-26-
<治療・対処方法>
薬剤の減量、非定型抗精神病剤など他剤への変更を行う。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)
やアセチルコリンエステラーゼ阻害剤のドネペジルの併用が推奨されている場合がある。
◆けいれん発作、脳波異常
ドパミン受容体遮断により、脳波異常が出現することやけいれん閾値が低下することはよく知られている。
高力価より低力価の方がけいれんを起こしやすく、なかでもクロザピン、ゾテピンが高率で、用量依存的で
ある。トリフロペラジンやペルフェナジンの発生率は中程度で、チオリダジン、フルフェナジン、ハロペリ
ドールでは低い。
脳波異常では、徐波化を起こすことが多いが、突発性異常波が認められることもある。
<治療・対処方法>
けいれん発作が出現した際には、フェニトインやパルプロ酸などの抗けいれん剤を併用する。
◆多飲、水中毒、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
統合失調症患者の慢性期において 20%前後に起こるともいわれている多飲は、心因性多飲、強迫的多飲
とも呼ばれ、低ナトリウム血症や低浸透圧血症を合併することが知られている。習慣的に 1 日に 3L 以上の
水分を摂取する人が多飲症患者とし、重症例では 1 日に 10L 以上の水分を摂取し、意識障害、けいれん発
作を伴う水中毒を引き起こす。水中毒とは、希釈性の低ナトリウム血症と脳浮腫により、意識障害や精神・
神経症状を認める状態のことである。時に致命的となりうるため、日常の飲水行動観察、体重、血清ナトリ
ウム値、尿比重の測定を行い、予防と早期発見に努める。
抗精神病剤による発生機序は、慢性のドパミン受容体遮断が視床下部に作用し、飲水惹起作用のあるアン
ジオテンシンⅡを増加させ、これがさらに ADH を分泌して多飲水および水分貯留を起こす。腎処理能力を
超えると多飲は電解質異常を招き、希釈性の低ナトリウム血症を生じる。
抗精神病用剤のなかで、クロザピン、オランザピン、クエチアピンが多飲患者に有効であることが知られ
ている。
<治療・対処方法>
水中毒を発症した場合は、直ちに飲水制限を行うと共に補液による電解質補正を行うが、急速な血清ナト
リウム値の上昇は橋中心髄鞘融解を誘発するため注意が必要である。
多飲水症の治療として、β遮断剤のプロプラノロール、ACE 阻害剤、ナロキソンなどのオピオイド拮抗
剤、カルバマゼピン、クロザピンが使用される。
◆QT 延長
→ 添付文書に「QT 延長」の記載のある抗精神病剤 ・・・ P41
心・血管系の疾患による死亡率は統合失調症患者では一般人口よりも高いことが報告されている。ドパミ
ン受容体遮断剤は、心筋収縮能、心筋細胞内の収縮能を低下させ、カテコラアミンの血中濃度を上昇させ、
心房と心室の伝導時間とそれぞれの不応期も延長させる。低力価抗精神病剤は高力価よりも心毒性が強く、
抗精神病剤の種類にかかわらず、量が増えると QT 延長を起こす頻度は増す。クロルプロマジンは、QT お
よび PR 間隔延長、T 波変形、ST の低下を起こし、特にチオリダジンは QT 延長や torsades de pontes へ
の影響が大きい。抗精神病剤は CYP2D6 や CYP3A4 で代謝されることが多いため三環系抗うつ剤、マクロ
-27-
ライド系抗生物質などとの併用で抗精神病剤の血中濃度が上昇し、QT 延長を起こす危険性が増加する。
また、アドレナリンα1 受容体遮断作用による副作用として突然死の報告が多くされている。
◆肝機能障害
一過性であるが、クロルプロマジンのようなフェノチアジン系で肝機能障害が起こりやすく、直接ビリル
ビンやアルカリホスファターゼの上昇を伴う胆汁うっ滞性黄疸を呈することがある。黄疸は通常、治療開始
1 ヵ月以内に出現し、初期症状として、上腹部痛、悪心、嘔吐があらわれる。
<治療・対処方法>
原因薬剤を中止し、肝庇護剤の投与や肝機能障害を起こしにくいブチロフェノン系薬剤への変更を考える。
◆無顆粒球症
定型抗精神病剤でも主にフェノチアジン系薬剤に、治療開始 2~3 週間で生じる。特にクロザピンでは 1
~2%と高率に出現する。対処が遅れると致死的であるため、発症した際には直ちに原因薬剤を中止し、血
液内科を受診する。
◆皮膚症状
一般には治療開始 2~3 週間以内に起こり、自然寛解するが、クロルプロマジンのようなフェノチアジン
系で、低力価の抗精神病剤では光過敏性を有しており、重度の日焼けや SLE 様皮疹の原因となりうる。ま
た、大量服用により色素沈着も起こりうる。
◆網膜色素沈着
クロルプロマジンやチオリダジンで角膜混濁や網膜色素変性が生じることが知られており、高用量を長期
服用している場合は視力に影響する場合がある。チオリダジンを 1 日 1,000mg 以上投与した場合に、夜間
視力に障害が起こり、非可逆的な網膜色素沈着が起こる可能性がある。この場合は、チオリダジンの投与を
中止した後も症状は進行し、最終的には失明に至るため、推奨最大投与量は 1 日 800mg とされている。
一方、クロルプロマジンによる色素沈着は、水晶体前方と角膜後方に集中する白茶色の顆粒状沈着物によ
って特徴づけられる。時に結膜が茶色に変色することがあるが、網膜障害はみられず、視力もほとんど損な
われず、クロルプロマジンを中止すると徐々に改善する。
◆耐性・身体依存
抗精神病剤では精神依存はない。ある程度の身体依存は、長期投与後に突然投与を中止した場合、中止し
た数日後から倦怠感と睡眠障害を起こすことがあるが、禁断症状はない。また、鎮静効果に対するある程度
の耐性が、数日~数週間して発現するが、長期間投与による効力の欠如は知られていない。
◇スイッチング(薬剤の切り替え)
新しい薬物の切り替えには、①前薬剤を中断して一度に切り替える、②前薬を減量しながら新しい薬剤を
増量していく漸減漸増法、③前薬に新しい薬剤を追加して、その後前薬を減量していく、3 つの方法があり、
結果は大差ないとされている。しかし、①による切り替えは、最も簡単ではあるが、症状が再燃する可能性
が他の方法より高く、前薬の離脱・断薬症状の可能性が増加する。抗パーキンソン病剤(抗コリン作用剤)
-28-
や低力価抗精神病剤などを急激に減量・中止する場合は注意を要する。②は新しい薬剤と共に切り替えを開
始できるが、減量速度が速すぎると前薬も新しい薬剤も治療有効域に達さない。③は、切り替えによる再発
の危惧においては最も安全とされており、切り替え方法としては進められているが、完全に単剤処方に切り
替わらない可能性が高いとされる。
陽性症状が消退して安定期での薬物療法の中止には、数ヵ月をかけて維持量の 1/5 を目途に緩やかな漸減
を行い、漸減中は通院間隔を短くし、患者の観察を十分に行う。
◇相互作用
統合失調症の薬物療法では、多剤併用投与や大量投与が日常的に行われているが、多剤量は有害事象の増
加を招く原因となりえる。
統合失調症の陰性症状に対して、SSRI や気分安定剤が併用される場合があるが、薬物代謝に関わるチト
クローム P450(CYP)による相互作用により、精神病状、攻撃性、錐体外路症状などが増悪される可能性
がある。また、抗コリン作用を有する薬剤、降圧剤、アルコールなどの中枢性抑制剤との併用に注意する。
ピモジドは、QT 延長、心室性不整脈を起こすおそれがあるため QT 延長を起こす薬剤および肝代謝酵素
CYP3A4 を阻害する薬剤との併用は避ける。
各薬剤の主な代謝酵素
分類
フェノチアジン系
定型抗精神病剤
ブチロフェノン系
その他
SDA
非定型抗精神病剤
MARTA
DSS
薬剤名
主な代謝酵素
クロルプロマジン
CYP2D6>CYP3A4
レボメプロマジン
CYP2D6
フルフェナジン
CYP2D6
ペルフェナジン
CYP2D6
トリフロペラジン
CYP1A2
ハロペリドール
CYP3A4>CYP2D6
ブロムペリドール
CYP3A4、CYP2D6
ピモジド
CYP3A4>CYP2D6
ゾテピン
CYP3A4>CYP1A2
リスペリドン
CYP2D6
パリペリドン
3A4、2D6 肝での代謝率は低い
ペロスピロン
CYP3A4>CYP2D6
ブロナンセリン
CYP3A4
クエチアピン
CYP3A4
オランザピン
CYP1A2>CYP2D6
クロザピン
CYP1A2>CYP3A4
アリピプラゾール
CYP3A4>CYP2D6
◇喫煙
統合失調症患者は一般人と比較して喫煙率は高く、平均寿命が約 20%低い。喫煙と関連する呼吸器疾患
や心疾患に罹患している割合が高く、心疾患のリスクに喫煙が最も大きく関与していることが報告されてい
-29-
る。また、経済面においても統合失調症患者の月収の 1/3 をタバコ代に費やしているとの報告もある。
喫煙による相互作用は、タバコ煙に含まれるがん原物質である多環芳香族炭化水素類(PAHs)が薬物代
謝酵素 CYP1A1、1A2、2E1 を誘導することによるとされる。特に抗精神病剤のクロザピン、オランザピ
ン、ハロペリドールは CYP1A2 で代謝される薬剤であり、喫煙により薬剤の代謝が促進され、クリアラン
スの上昇や血中濃度の低下が起こり、薬効が減弱する。これらの相互作用は、タバコ煙に含まれる PAHs
によって引き起こされるので、受動態喫煙者においても代謝酵素誘導が起こる可能性がある。
禁煙によって CYP1A2 の酵素活性が誘導前の状態に戻るために要する時間は、個人差は大きいが、1 週
間以上といわれている。
◇飲食・健康食品などとの併用
→ 健康食品・サプリメント等食品との相互作用 ・・・ P47
・セントジョーンズワートを含む健康食品→CYP3A4 を誘導し、薬剤の血中濃度が低下
・グレープフルーツジュース→CYP3A4 を阻害、薬剤の血中濃度が上昇
・アルコール(飲酒)→作用の増強
・カフェイン→CYP1A2 を阻害し、本剤の代謝が阻害
□身体合併症
統合失調症患者には身体疾患合併症が多い。入院患者ではおよそ 40~60%、外来患者では 20%前後に認
められており、その存在が気づかれておらず、治療を受けていないことが多い。その理由に、統合失調症患
者は、痛みに対する感受性が鈍いことや抗精神病剤がもつ鎮痛作用が、痛みに対する閾値を上昇しているこ
と、また、錯乱状態や連合弛緩によりコミュニケーション能力が高度に障害されており、自らの症状を適切
に伝えることができていないということがあげられている。
合併症は多彩で、肺炎、脳血管疾患、消化性潰瘍、イレウス、骨折などが報告されている。肝疾患は少な
いが、その中では肝炎が主である。
□自殺
統合失調の患者では自殺の危険を予測することが難しく、突然、自殺が起きる。De Hert らの総説による
と、統合失調患者の約 10%が自殺しており、自殺率は人口 10 万人当たり 350~650 という報告が多く、一
般人口の自殺率よりも 30~40 倍高い。
統合失調の患者の自殺の危険因子は一般的な危険因子と異なる特徴を示す。
・急性の精神症状
発病初期や再燃期の病的な症状に支配されて、
「電車に飛び込め」といった命令性の幻聴や妄想が直接、
自殺行動に結びつくことがある。
・急性症状の消退直後
急性の幻覚妄想状態が改善したものの明確な病識が戻ってきて、自己価値の頽落に目覚め自殺を企図す
る。
・慢性経過をたどる
自殺の大多数が、明らかな精神病症状がないか、あるいは非常に少ない症状で生じている。
・抑うつ症状
-30-
慢性の統合失調症患者にもしばしば抑うつ症状の合併を認める。平均 67%の患者で自殺直前の時点で
何らかの抑うつ症状を認めている。
・生と死の境界が不分明
生と死の境界自体が健常者に比べて明瞭ではなく、統合失調症のサブタイプとしては解体型(破瓜型)
の患者が多い。
□患者・家族への指導
統合失調症は、再発と軽快を繰り返し、長期にわたり治療を行う必要があり、患者自身と家族との関わり
方が予後に影響すると報告されている。病状、服用の必要性、副作用などについて家族に理解してもらう必
要がある。
①規則正しい服用・継続の重要性
統合失調症の 40~60%の患者において服薬ノンコンプライアンスが生じるとされる。
再発を防止するために、抗精神病剤の治療は必要であり、服用を継続することで、再発頻度は 30%以下
に抑えることができる。また、再燃を繰り返すたびに症状が寛解しづらくなる。
副作用についても説明し、副作用に対する対応とそれよりも服薬の必要性を理解してもらう。
②生活環境の重要性
退院後・急性期後に多くみられる過眠傾向や疲労しやすい傾向など、休養を必要とする時期があらわれ、
昼夜逆転など生活リズムが狂いやすい状況になりがちである。このため、患者が規則正しい生活を送れる
よう家族が見守り、本人に不安を与えないように配慮し、支援するよう説明する。批判や巻き込まれの感
情表出(expressed emotion;EE)の高い家族(highEE)と同居すると再発率が高いことが示されてい
る。
③病状の変化に気づく重要性
再発・再燃の兆候や副作用に家族が気づくことで、早期発見、早期介入を行いことができる。また、緊急
時の措置の理解および協力も必要である。
④家族が休養をとる重要性
長期にわたって支援を行っていくと家族も疲弊してくる。余裕を持って患者と接していくためにも時には
患者と離れて自分の時間をもつことも必要である。
◇服薬指導
統合失調症患者に対する服薬指導は、良好なコンプライアンスの維持、アドヒアランスの向上、副作用
の早期発見を目的として、本人および家族へ薬物療法の必要性と服用維持の重要性を理解するように説明
する。
<服薬指導のポイント>
①話を最後まで聴く
脳における情報処理機能に障害を起こしているため、話にとりとめがなく、よく理解できなかったり、ゆ
っくりだったりする。また、話したがらない場合には、無理に話を聞きださない。待つことも必要。
②コミュニケーションを図る
共感しながらコミュニケーションを図る。患者の行動を否定することなく、良好な信頼関係を築くことが
必要。
-31-
③一度に多くを伝えない
多くのことを一度に処理することが困難な状態なので、わかりやすい言葉を用いて一度に 1 つずつ話す。
□処方内容の確認
・用量の確認
・既往歴の確認
・会話の中で、医師がどのような説明をしているか確かめる
□患者の自覚症状を確認する
・陽性症状・・・幻覚、幻聴、妄想、滅裂思考、まとまりのない行動
・陰性症状・・・感情の鈍麻と平板化、無感情、意欲・自発性の欠如
・自分の病気に対して理解できているか
・不眠→昼夜逆転していないか
□服薬状況の確認
・医師の指示どおりに決められた時間に、決められた量を服用できているか
→勝手に増量または減量していないか
・効果がでるまでに 4~6 週間かかるため、自己判断で増減しないよう説明する
・本人および家族が服薬継続の必要性を理解しているか→服薬の維持が再発再燃を予防する
・のみ忘れがないか、足りない薬剤、余ったりする薬剤はないか→一包化調剤の検討
・コンプライアンス不良の原因の確認→副作用による拒薬はないか
□リスク因子の有無
・ストレス、男性、遺伝的背景
・予後不良因子・・・男性で早期の発症、長期の未治療期間、高い感情表出(批判的、敵意的な感情、過保
護、過干渉)の家族との長時間の接触
□他の疾患にかかっていないかの確認
・緑内障、閉尿(排尿困難)、心筋梗塞・不整脈などの心疾患
・糖尿病
・重症の心不全、不整脈
□他の薬剤との併用の確認
・抗パーキンソン剤、抗不安剤、睡眠剤
・エピネフリン
・抗うつ剤(SSRI、三環系)、β遮断剤などの CYP2D6 阻害剤
・アゾール系抗真菌剤、クラリスロマイシンなどの CYP3A4 阻害剤
・QT 延長を起こすおそれのある薬剤
□生活習慣の確認
・食事・・・食欲不振または過食になっていないか、適正な食事をとっているか
・体重の変化→食事療法、運動療法の勧め
・睡眠状況・・・日中の眠気、不眠はないか
・十分な休養をとっているか
-32-
・自動車の運転
・アルコール摂取の有無
・喫煙の有無→CYP1A2 を誘導することで薬剤の血中濃度が低下
・コーヒーを多量に摂取していないか→CYP1A2 を阻害することで薬剤の血中濃度が上昇
・多飲、特に清涼飲料水の多飲
□服用忘れの対応
・飲み忘れもなく、指示どおりに服用できているか→のみ忘れのない工夫(のむ日付や時間、カレンダー
の作成など)
・医師の説明を理解しているか
・服用に対して不安、質問がないか
□副作用の発症の有無を確認
・急激な発熱、筋肉のこわばり、手足の震え
・転倒
・眠気、めまい→自動車の運転など危険を伴う機械操作する際には十分注意させる
・体重の増加→食欲の亢進、水分摂取過多、運動不足になっていないか
・振戦、動作緩慢などの錐体外路症状の発現
・口渇、便秘などの抗コリン作用→清涼飲料水などを多飲しないように説明する
・女性化乳房、性機能障害→高プロラクチン血症
・口渇、多飲、頻尿、多尿→血糖値の上昇
・息切れ、四肢の疼痛、胸痛、浮腫→肺閉塞症、深部静脈血栓症
□OTC薬や民間療法の使用状況の確認
・健康食品や民間薬などを摂っていないか、また摂りたいと考えていないか
・・・セントジョーズワート、イチョウ葉エキスなど
・むやみに OTC 薬や民間薬を使用して、薬物療法の妨げにならないよう注意し、治療薬との併用に問題
がないか
□家族への協力
・自殺のサイン(自殺を口にするなど)を家族に説明しているか
・長期薬剤の服用の必要性が理解できているか→再発防止、再燃を繰り返すたびに症状が寛解しづらくな
る
・医師への連絡先の確認ができているか
・薬剤管理の協力ができるか
・本人と家族の両方から情報収集ができるか
□自動車の運転・運転免許
平成 13 年の道路交通法改正により、これまで、一定の病気にかかっている人に対して免許が取得できな
いとしていた欠格事由が廃止され、自動車の安全に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを個別に判断するこ
とになった。具体的には、試験に合格しても、自動車等の安全運転の観点から、免許が取得または更新でき
ない場合もあり、免許申請や更新申請においては、各地で運転適性相談を受け付けている。
-33-
〔参考〕
統合失調症(令第33条の2の3第1項関係)
(1) 以下のいずれかの場合には、免許の拒否、保留、取消し又は効力の停止(以下「拒否等」という。)は行
わない。
ア
医師が「残遺症状がないか又は残遺症状は認められるが、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、
判断又は操作のいずれかに係る能力(以下「安全な運転に必要な能力」という。)を欠いていないと認め
られ、今後、安全な運転に必要な能力を欠くこととなるおそれがある症状(以下「運転に支障のある症状」
という。)が再発するおそれはないと認められる」旨の診断を行った場合
イ
医師が「残遺症状がないか又は残遺症状は認められるが、安全な運転に必要な能力を欠いていないと認
められ、今後、x年(xは1以上の整数。以下同じ。)程度であれば、運転に支障のある症状が再発する
おそれはないと認められる」旨の診断を行った場合
(2) 医師が「6月以内に、上記(1)に該当すると診断できることが見込まれる」旨の診断を行った場合には、6
月の免許の保留又は効力の停止(以下「保留又は停止」という。)とする。
(医師の診断を踏まえて、6月よ
り短期間の保留・停止期間で足りると認められる場合には、当該期間を保留・停止期間として設定する。)
保留・停止期間中に適性検査の受検又は診断書の提出の命令を発出し、
① 適性検査結果又は診断結果が上記(1)の内容である場合には拒否等は行わない。
② 「結果的にいまだ上記(1)に該当すると診断することはできないが、それは期間中に○○といった特殊
な事情があったためで、さらに6月以内に上記(1)に該当すると診断できることが見込まれる」旨の内
容である場合にはさらに6月の保留又は停止とする。
(医師の診断を踏まえて、6月より短期間の保留・
停止期間で足りると認められる場合には、当該期間を保留・停止期間として設定する。)
③ その他の場合には免許の拒否又は取消し(以下「拒否又は取消し」という。)とする。
(3) その他の場合には拒否又は取消しとする。
(4) 上記(1)イの場合には、一定期間(x年)後に臨時適性検査を行うこととする。
-34-
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〔参考〕
精神医学講座担当者会議監修:統合失調症治療ガイドライン第 2 版,医学書院,2009
山田和男他監訳:カプラン精神科薬物ハンドブック第 4 版,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2007
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三輪高市:病気と薬パーフェクトブック 2011,薬局 Vol.62 No.4,1040-1048,南山堂
木村 健:45 疾患の薬学管理チェックシート,じほう,2008
日本薬剤師会編:「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」
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日本病院薬剤師会精神病院特別委員会編:精神科薬剤師業務標準マニュアル,薬局 Vol.58 9 月臨時増刊号,
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堀
美智子:ハイリスク薬 説明支援ガイドブック,じほう,2011
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グッドマン・ギルマン:薬理書第 11 版,廣川書店,2007
樋口宗史他:ラング・デール薬理学,531-541,西村書店,2011
田中千賀子他:NEW 薬理学 改訂第 6 版,南江堂,2011
清野裕他:病態生理に基づく臨床薬理学,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2008
田
亮介他:統合失調症,レシピ Vol.6 No.2,南山堂,2007
浦部晶夫他:今日の治療薬 2012,南江堂
特集 統合失調症 UPDATE,薬局 Vol.61 No.1,南山堂,2010
宮本謙一編:薬物療法管理マニュアル,132-151,じほう,2010
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医薬ジャーナル社,2011
梅田賢太:抗精神病薬の副作用がうまく防げない,月刊薬事 Vol.51 No.7,39-45,2009
河井良智:身体疾患をもつ患者の精神疾患にアプローチできない,月刊薬事 Vol.51 No.7,77-81,2009
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長嶺敬彦:精神科薬物療法と「身体副作用」,月刊薬事 Vol.53 No.13,19-25,2011
各社
添付文書及びインタビューフォーム
(2012/02/28 作成)
-35-
定型抗精神病剤の分類と特徴
分類
一般名(主な商品名)
剤形
クロルプロマジン
錠、細、注
(コントミン、ウイタミン)
特徴
α1 受容体遮断作用、H1 受容体遮断作用が強い⇒鎮静、催眠作用が強い。抗
コリン作用が強いが、EPS が起きにくい。
レボメプロマジン
錠、細、散、
(ヒルナミン、レボトミン)
注
鎮静、催眠作用が強い。α2 受容体遮断作用⇒精神機能賦活作用
フェノチアジン系
フルフェナジン
抗幻覚・妄想作用は強力だが、鎮静作用は弱い。
錠、散、注
(フルメジン)
D2 受容体遮断作用が強い⇒EPS が起きやすい
ペルフェナジン
錠、散、注
(ピーゼットシー)
鎮静作用、催眠作用が弱いが、精神機能賦活作用が強い。
トリフロペラジン
錠、散
(トリフロペラジン)
プロクロルペラジン(ノバミン)
D2 受容体遮断作用が強い。
錠、注
プロペリシアジン
錠、細、液
鎮静、催眠作用をもち、EPS が起きにくい。
ハロペリドール
錠、細、液、
幻覚・妄想に対する作用が強く、鎮静作用は弱く、H1 受容体遮断作用をもつ。
(セレネース)
注
抗コリン作用、α1 受容体遮断作用が弱いが、EPS、高 PRL が起きやすい。
(ニューレプチル)
ブチロフェノン系
ブロムペリドール
錠、細
(インプロメン)
ピパンペロン(プロピタン)
H1 受容体遮断作用をもつ。抗コリン作用、α1 受容体遮断作用が弱いが、EPS
が起きやすい。
錠、散
D2 受容体遮断作用より 5-HT2A 受容体遮断作用が強い。EPS が起きにくい、精
神機能賦活作用をもつ。
ベンザミド系
スピペロン(スピロピタン)
錠、散
H1 受容体遮断作用をもつ。抗コリン作用、α1 受容体遮断作用が弱く、EPS が
チミペロン(トロペロン)
錠、細、注
起きやすい。
ピモジド(オーラップ)
錠、細
作用時間が長い。比較的強い D2 受容体遮断作用と Ca 拮抗作用をもつ。
スルピリド(ドグマチール)
錠、細、注、
効果発現速やかで、抗うつ作用をもつ。EPS が起きにくいが、高 PRL が起きや
パリペリドン(インヴェガ)
カ
すい。 パリペリドン:リスペリドンの徐放剤
スルトプリド(バルネチール)
錠、細
チアプリド(グラマリール)
錠、細
パ:錠
抗幻覚・妄想作用をもち、鎮静作用が強い。
脳梗塞後遺症に伴う興奮、徘徊、せん妄の改善に有効で、効果発現が速い
が、鎮静作用は弱い。
ネモナプリド(エミレース)
錠、細
抗幻覚・妄想作用をもつ。
モサプラミン(クレミン)
錠、顆
意欲賦活作用、5-HT2A 受容体遮断作用をもつ⇒陽性・陰性症状に有効
ゾテピン(ロドピン)
錠、細
効果発現が速く、強い 5-HT2A 受容体遮断作用、意欲賦活作用、抗幻覚・妄想
その他
作用、鎮静作用をもつ。
クロカプラミン(クロフェクトン)
錠、顆
カルピプラミン(デフェクトン)
錠、散
意欲賦活作用がある。
意欲賦活作用、5-HT2A 受容体遮断作用をもつ⇒抗精神病作用と抗うつ作用を
併せもつ。
オキシペルチン(ホーリット)
錠、散
抗幻覚・妄想作用、慢性患者意欲賦活作用があり、EPS は起こりにくい。
EPS:錐体外路症状
-36-
PRL:プロラクチン
非定型抗精神病剤の分類と特徴
一般名
分類
剤形
特徴
リスペリドン
錠、OD 錠、
陽性・陰性症状に有効で、代謝異常のリスクが比較的低いが、EPS、高 PRL 血症
(リスパダール)
細、液、注
が起こりやすい。持効性注射がある。
(主な商品名)
陽性・陰性症状に有効で、不安、抑うつ改善作用がある。
ペロスピロン
A
D
S
錠
代謝異常のリスク、EPS、心血管系の副作用発現が比較的低い。
(ルーラン)
食事の影響を受けやすい。
ブロナンセリン
陽性・陰性症状に有効で、EPS、過鎮静、高 PRL 血症、体重増加の発現が比較的
錠、細
(ロナセン)
低い。食事の影響を受けやすい
クエチアピン
陽性・陰性症状に有効で、鎮静作用が強い。糖尿病患者は禁忌。
錠、細
(セロクエル)
EPS、高 PRL 血症の発現が低いが、代謝異常のリスクは高い。
オランザピン
錠、細、ザイ
陽性・陰性症状に有効で、1 日 1 回投与が可能。糖尿病患者は禁忌。
(ジプレキサ)
ディス錠
EPS の発現が低いが、代謝異常のリスクは高く、喫煙が代謝に影響する。
A
T
R
A
M
アゼピン系
ジベンゾジ
クロザピン
陽性・陰性症状に有効で、治療抵抗性統合失調症にも有効。
錠
(クロザリル)
糖尿病性昏睡、無顆粒球症などの重篤な副作用が起こりえる。
アリピプラゾール
ドパミン神経伝達調節作用をもつ。陽性・陰性症状に有効で、抗不安作用がある。
錠、細、液
(エビリファイ)
EPS、代謝異常、高 PRL 血症の発現頻度が低いが、切り替えが難しい。
S
S
D
EPS:錐体外路症状、PRL:プロラクチン
SDA:セロトニン・ドパミン遮断薬、MARTA:多元受容体作動剤、DSS:ドパミン受容体部分作動剤
抗精神病剤の薬理学的作用と副作用
薬理学的作用
副作用
錐体外路症状(振戦、歩行障害、筋硬直、流涎、アカシジア、ジストニア、遅発性ジスキネジア)、
抗ドパミン D2 作用
悪性症候群、高プロラクチン血症(乳汁分泌、無月経)
抗ヒスタミン H1 作用
鎮静、肥満、食欲亢進
ムスカリン様抗コリン作用
便秘、口渇、排尿障害、視力調節障害、不整脈、認知機能障害
抗α1 アドレナリン作用
心・循環器系症状(心電図変化、突然死)、起立性低血圧
抗α2 アドレナリン作用
持続性勃起
アレルギー反応
光線過敏症
その他
高血糖、水中毒、顆粒球減少、肝機能障害
亮介他:統合失調-処方の読み方・とらえ方,レシピ Vol.6 No.2,18-31,2007
〔参考〕田
松元
一明他:神経症の薬物療法と精神科専門薬剤師の役割,医薬ジャーナル Vol.44 No.1,111-118,2009
-37-
統合失調症・精神病患者に対して「禁忌」と記載のある薬剤
分類
一般名(商品名)
セレギリン
抗パーキンソン病剤
(エフピー)
食欲抑制剤
マジンドール
(サノレックス)
対象者
記載内容
統合失調症又はその既往
精神症状の悪化が報告されている。
歴のある患者
不安・抑うつ・異常興奮状
態の患者及び統合失調症 症状が悪化するおそれがある。
等の精神障害のある患者
ヒドロコルチゾン
(コートリル)
コルチゾン(コートン)
フルドロコルチゾン
(フロリネフ)
デキサメタゾン
(デカドロン)
ベタメタゾン
(リンデロン)
ベタメタゾンリン酸エス
副腎皮質ホルモン剤 テルナトリウム
精神病の患者
(ステロネマ注腸)
トリアムシノロン
(レダコート)
プレドニゾロン
(プレドニン)
プレドニゾロンリン酸エ
ステルナトリウム
(プレドネマ注腸)
メチルプレドニゾロン
(メドロール)
ベタメタゾン、d‐クロル
副腎皮質ホルモン・ フェニラミンマレイン酸
精神病の患者
抗ヒスタミン複合剤 塩配合 (セレスタミ
ン)
重度のうつ病、自殺念慮又
リバビリン
は自殺企図等の重度の精
抗ウイルス剤
(コペガス、
神病状態にある患者又は
レベトール)
その既往歴のある患者
抗マラリア剤
禁煙補助剤
メフロキン
(メファキン)
バレニクリン
(チャンピックス)
原則禁忌:精神病を増悪させるおそれが
ある。
原則禁忌:中枢神経系に影響し、精神病
が増悪するおそれがある。
原則禁忌:大脳辺縁系の神経伝達物質に
影響を与え、症状が増悪することがある。
原則禁忌:症状を悪化させるおそれがあ
る。
原則禁忌:中枢神経系に影響し、精神病
が増悪するおそれがある。
原則禁忌:中枢神経系に影響し、精神病
が増悪することがある。
うつ病が悪化又は再燃することがある。
精神病の患者又はその既
精神症状を悪化するおそれがある。
往歴のある患者
警告:禁煙は治療の有無を問わず様々な
症状を伴うことが報告されており、基礎疾
患として有している精神疾患の悪化を伴う
ことがある。本剤との因果関係は明らかで
統合失調症、双極性障害、
はないが、抑うつ気分、不安、焦燥、興
うつ病等の精神疾患のある
奮、行動又は思考の変化、精神障害、気
患者
分変動、攻撃的行動、敵意、自殺念慮及
び自殺が報告されているため、本剤を投
与する際には患者の状態を十分に観察す
ること。
('09.12.25)
-38-
統合失調症治療剤の注意すべき副作用と初期症状
フェノチアジン系
重大な副作用
初期症状
クロルプロマジン
コントミン
ウイタミン
ベゲタミン-A
ヒルナミン
-B
悪性症候群
高熱(37℃以上)、汗をかく、
ぼやっとする、手足が震える、
○(不明)
身体のこわばり、話しづらい、
よだれが出る、脈が速くなる
○(不明)
突然死
前触れなしの突然の死(発症
○(不明)
24時間以内)
○(不明)
昏睡
意識が完全に消失した状態
呼吸抑制
呼吸をしにくい、動くと呼吸し
にくい
痙攣
めまい、ふらつき、四肢のしび
れや痙攣、意識を失う
低ナトリウム血症
食欲がない、気分が悪い、吐
き気、痙攣、頭痛、意識がうす
れる
遅発性ジスキネジア
口の周囲の絶え間ない不随
意運動
遅発性ジストニア
持続的に筋肉が収縮する、上
下肢が勝手に長くゆっくりとし ○(不明)
た動きが続く
心室頻拍
めまい、動悸、胸が痛む、胸
(Torsades de pointesを含
部の不快感
ブチロフェノン系
レボメプロマ フルフェナジ
トリフロペラジ
ペルフェナジン
ジン
ン
ン
フルメジン
ピーゼットシー
トリフロペラジ
ン
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(類薬)
○(不明)
プロクロルペ プロペリシアジ ハロペリドー ブロムペリ
ラジン
ン
ル
ドール
再生不良性貧血
溶血性貧血
無顆粒球症・白血球減
少
血小板減少
過敏症症候群
麻痺性イレウス
ノバミン
インプロメン プロピタン
スピロピタン トロペロン
オーラップ
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(0.1%未満)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(0.1%未満)
○
(0.1~5%未
満)
○(0.1%未満)
○
(0.1~5%未
満)
○(不明)
○
○
(0.1~5%未満)
(0.1~5%未
満)
○(不明)
○(不明)
○
○
○
(0.1~5%未満) (0.1~5%未満) (0.1~5%未満)
○
○
(0.1~5%未満) (0.1~5%未満)
○(不明)
○
○(不明)
(0.1~5%未
満)
○、心室細
○(類薬)
動(不明)
○(不明)
胸痛、動悸、胸部不快感
○(類薬)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(類薬)
○(類薬)
○(類薬)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(0.1%未満)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
腸管麻痺
腸管麻痺
○(不明)
○(0.1%未満) ○(0.1%未満) ○(不明)
○(不明)
○(類薬)
○(類薬)
○(類薬)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(0.1%未満)
○(不明)
○(不明)
○(0.1%未満) ○(不明)
高熱(38℃以上)、のどが痛
い、親指大の赤い湿疹、唇や
中毒性表皮壊死融解症 口の中のただれ、皮膚が焼け
るように熱く感じる、水ぶくれ
ができる
○(0.1%未満)
○(不明)
○(不明)
○(0.1%未満) ○(0.1%未満) ○(0.1%未満) ○(0.1%未満) ○(0.1%未満) ○(不明)
むくみのない短期間での体重
抗利尿ホルモン不適合
増加、頭痛、吐き気、めまい、 ○(0.1%未満) ○(0.1%未満) ○(0.1%未満) ○(0.1%未満) ○(類薬)
分泌症候群(SIADH)
体がだるい
手足・肩・腰・その他の筋肉が
が痛む、手足がしびれる、手
横紋筋融解症
足に力が入らない、こわばる、 ○(不明)
○(不明)
○(不明)
全身がだるい、尿の色が赤褐
色になる
発熱、体がだるい、体重が減
全身性エリテマトーデス 少、筋肉や関節の痛み・腫
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(類薬)
○(不明)
(SLE)様症状
れ、発疹、皮膚が斑状に赤く
なる、リンパ節が腫れる
高熱(38℃以上)、のどが痛
い、関節が痛い、体がだるい、
皮膚粘膜眼症候群
皮膚が斑に赤くなる、水ぶくれ
○(0.1%未満)
ができる、口の中がただれる、
目の充血
○(類薬)
○(類薬)
○(不明)
○(不明)
○(0.1%未満)
剥脱性皮膚炎
顔に発疹ができる、顔が斑に
赤くなる、全身の皮膚が赤くな
る、皮膚のカスがぼろぼろ落
ちる、発熱
○(不明)
肝機能障害、黄疸
意識がぼんやりする、疲れ
る、食欲がない、体がだるい、
○(不明)
皮膚がかゆい、皮膚や眼が黄
色くなる
○(不明)
肺塞栓症、深部静脈血
栓症
息切れ、胸痛、四肢の疼痛、
浮腫
眼障害 長期、大量によ
角膜・水晶体の混濁、網膜・
り
角膜の色素沈着
[ ]はその他の副作用
ピモジド
○(不明)
あおあざかできやすい、歯茎
や鼻の粘膜からの出血、発
熱、のどの痛み、皮膚や粘膜 ○(不明)
が青白く見える、疲労感、動
悸
疲労感、動悸、息切れ、黄
疸、発熱、赤褐色尿、耳鳴り、 ○(不明)
めまい
発熱、のどの痛み、体がだる
○(不明)
い、口内炎
手足に赤い点、赤いあざ、出
血しやすい
発熱、寒気、ふらふら感、呼吸
困難、発疹、紅潮
お腹が張る、著しい便秘、腹
痛、吐き気、嘔吐
チミペロン
ニューレプチル セレネース
む)
QT延長、心電図異常
ピパンペロン スピペロン
○(5%未満)
○(不明)
○(不明)
○(不明)[縮
瞳,眼内圧亢
進,視覚障害
5%以上又は
不明]
○(不明)[縮
○(不明)[縮
○(不明)[縮
○(不明)[縮
○(不明)[縮
瞳,眼圧亢 ○(不明)[視
○(不明)[視覚 瞳,眼圧亢
○(不明)[調
瞳,眼圧亢
瞳、視覚障害
瞳,眼圧亢進,
進,視覚障害 覚障害5%以
障害5%以上又 進,視覚障害
節障害5%未
進,視覚障害
5%以上又は
視覚障害 5%以
5%以上又は 上又は不明]
は不明]
5%以上又は
満]
不明]
不明]
上又は不明]
不明]
不明]
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)[調 視調節障害、
[霧眼
[調節障害0.1
[調節障害0.1
節障害0.1%~ かすみ目0.1%
0.1~5%未満] ~5%未満]
~5%未満]
5%未満]
~5%未満
その他の副作用
口渇
のどが渇く
○(5%以上) ○(不明)
○(5%以上) ○(5%以上/不 ○(5%以上/不 ○(5%以上/不
眠気
ねむい
○(5%以上) ○(不明)
○(5%以上)
不眠
寝られない
○(不明)
○(不明)
衝動行為、健忘、自殺企 無表情になる、不自然な言動
図、せん妄
をする、物忘れ、自殺願望
○(不明)
おしっこが出ない
○(不明)
○(不明)
体重増加
体重が増える
○
○(不明)
(0.1~5%未
生理が乱れる、男性又は授乳
月経異常、乳汁分泌、女 期でないのにお乳が出る、男 ○
(0.1~5%未
性化乳房、射精不能
性で乳房が女性のように腫れ 満)
る
起立性低血圧
手のふるえ、手足のこわばり、
動作がゆっくりになる、表情が ○
固くなる、歩きにくい、歩き方 (5%以上/不
がおかしい、首が傾く、顔がひ 明)
きつる、じっとしていられない
起き上がると頭がボーとした
り、ふらふらする、めまい
○(5%以上/不
明)
○(0.1~5%未
満)
満)
○(不明)
○
(0.1~5%未
満)
○
○
○(5%以上) (5%以上/不
明)
○(不明)
○(5%以上/不 ○(5%以上/不
明)
明)
○(5%以上/不
明)
尿に糖が出る
○(不明)
シミやそばかすのように、肌の
一部が黒ずむ
日光の照射による過度の日
焼け、痒み、色素沈着
○(5%以上/
○(不明)
○(5%以上/不
発汗
満)
満)
満)
○(5%以上/不 ○(5%以上/不
明)
明)
○(5%以上)
満)
満)
満)
○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(5%以上)
満)
満)
満)
○(5%以上)
衝動行為
○(5%以上/不
明)
○(0.1~5%未
満)
○(5%以上/不 排尿困難
(不明)
明)
○(0.1~5%未 ○(5%未満)
満)
○
○
(0.1~5%未
満)
排尿困難
排尿困難
(0.1~5%未
(0.1~5%未
○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未
満)
満)
満)
排尿困難
(0.1~5%未
○
○
(5%以上/不
明)
○
(5%以上/不明)
○(不明)
(0.1~5%未満) (0.1~5%未満)
○
(5%以上/不
明)
○
(5%以上/不明)
○(0.1%未満) ○(不明)
○(不明)
(0.1%未満)
月経異常
○(5%以上)
(0.1~5%未
満)
パーキンソン パーキンソン パーキンソン パーキンソン パーキンソン パーキンソン
症候群
症候群
症候群
症候群
症候群
症候群
(5%以上/不
(5%以上)
(5%以上)
(5%以上)
(5%以上)
(5%以上)
明)
○(5%以上)
○(不明)
不明)
○
(0.1~5%未満) (0.1~5%未満) (0.1~5%未満)
○(不明)
熱が出る
満)
○
○(不明)
頻拍数の増加(100/分以上) ○(不明)
発熱
○(5%未満) ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
動悸、胸痛、胸部不快感、め
まい、失神
光線過敏症
○(5%以上/不 ○(5%以上/不
明)
明)
○(5%未満) ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(5%以上)
○(5%以上/不 ○(5%以上/不 ○(5%以上/不
明)
明)
明)
不整脈
皮膚の色素沈着
明)
基本的注意
頻脈
糖尿
明)
錯乱、せん妄
(不明)
閉尿
錐体外路症状
明)
○(5%以上/不 ○(5%以上/不
明)
明)
○(5%以上/不
明)
○(5%以上/不
明)
○(5%以上/不
明)
○(5%以上/不
明)
○(5%以上/不
明)
○(不明)
○(5%以上/不 ○(5%以上/不
○(不明)
○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未
満)
満)
満)
満)
満)
○(0.1~5%未
満)
明)
明)
明)
○(5%以上/
不明)
○(不明)
○(5%以上/不 ○(5%以上/不 ○(5%以上/不 ○(5%以上/不
明)
明)
明)
明)
○(5%以上/不 ○(5%以上/不
明)
明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(5%未満) ○(0.1%未満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
○(5%未満) 満)
○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未 ○(0.1~5%未
汗をかく
-39-
○(不明)
○(0.1%未満) ○(0.1%未満)
満)
満)
満)
統合失調症治療剤の注意すべき副作用と初期症状
ベンザミド系
重大な副作用
初期症状
スルトプリド
チアプリド
アビリット
ドグマチール
バルネチール
グラマリール エミレース
○(0.1%未満)
悪性症候群
高熱(37℃以上)、汗をかく、
ぼやっとする、手足が震える、 ○
身体のこわばり、話しづらい、 (0.1%未満)
よだれが出る、脈が速くなる
突然死
前触れなしの突然の死(発症
24時間以内)
昏睡
意識が完全に消失した状態
呼吸抑制
呼吸をしにくい、動くと呼吸し
にくい
痙攣
めまい、ふらつき、四肢のしび ○
(0.1%未満)
れや痙攣、意識を失う
低ナトリウム血症
食欲がない、気分が悪い、吐
き気、痙攣、頭痛、意識がうす
れる
遅発性ジスキネジア
口の周囲の絶え間ない不随
意運動
遅発性ジストニア
持続的に筋肉が収縮する、上
下肢が勝手に長くゆっくりとし
た動きが続く
心室頻拍
めまい、動悸、胸が痛む、胸
(Torsades de pointesを含
部の不快感
○
(0.1~5%未満)
その他
イミノジベンジル系
スルピリド
ネモナプリド モサプラミン
○(0.1%未満)
ゾテピン
クロカプラミン カルピプラミン
クレミン
ロドピン
クロフェクトン
デフェクトン
ホーリット
○(0.1%未満)
○(0.1%未満)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(類薬)
○(類薬)
オキシペルチン
○
(0.1~5%未満)
○
○
○
(0.1~5%未満)
(0.1~5%未満)
(0.1~5%未満)
○(0.1%未満)
○(0.1%未満)
○(0.1%未満)
○(不明)
○(0.1%未満)
○(0.1%未満)
○(類薬)
む)
QT延長、心電図異常
再生不良性貧血
溶血性貧血
無顆粒球症・白血球減
少
血小板減少
過敏症症候群
胸痛、動悸、胸部不快感
○(0.1%未満)
あおあざかできやすい、歯茎
や鼻の粘膜からの出血、発
熱、のどの痛み、皮膚や粘膜
が青白く見える、疲労感、動
悸
疲労感、動悸、息切れ、黄
疸、発熱、赤褐色尿、耳鳴り、
めまい
発熱、のどの痛み、体がだる
○(0.1%未満)
い、口内炎
手足に赤い点、赤いあざ、出
血しやすい
発熱、寒気、ふらふら感、呼吸
困難、発疹、紅潮
お腹が張る、著しい便秘、腹
痛、吐き気、嘔吐
むくみのない短期間での体重
抗利尿ホルモン不適合
増加、頭痛、吐き気、めまい、
分泌症候群(SIADH)
体がだるい
手足・肩・腰・その他の筋肉が
が痛む、手足がしびれる、手
横紋筋融解症
足に力が入らない、こわばる、
全身がだるい、尿の色が赤褐
色になる
発熱、体がだるい、体重が減
全身性エリテマトーデス 少、筋肉や関節の痛み・腫
(SLE)様症状
れ、発疹、皮膚が斑状に赤く
なる、リンパ節が腫れる
高熱(38℃以上)、のどが痛
い、関節が痛い、体がだるい、
皮膚粘膜眼症候群
皮膚が斑に赤くなる、水ぶくれ
ができる、口の中がただれる、
目の充血
○(不明)
○
○(0.1%未満)
○(不明)
(0.1~5%未満)
○(不明)
○
麻痺性イレウス
(0.1~5%未満)
○(不明)
○(0.1%未満)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(類薬)
○(類薬)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(類薬)
○(類薬)
○(不明)
○(不明)
高熱(38℃以上)、のどが痛
い、親指大の赤い湿疹、唇や
中毒性表皮壊死融解症 口の中のただれ、皮膚が焼け
るように熱く感じる、水ぶくれ
ができる
剥脱性皮膚炎
顔に発疹ができる、顔が斑に
赤くなる、全身の皮膚が赤くな
る、皮膚のカスがぼろぼろ落
ちる、発熱
肝機能障害、黄疸
意識がぼんやりする、疲れ
る、食欲がない、体がだるい、
○(0.1%未満)
皮膚がかゆい、皮膚や眼が黄
色くなる
肺塞栓症、深部静脈血
栓症
息切れ、胸痛、四肢の疼痛、
浮腫
眼障害 長期、大量によ
角膜・水晶体の混濁、網膜・
り
角膜の色素沈着
[ ]はその他の副作用
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
○(不明)
[視力障害、眼
球冷感・重感、
眼のちらつき
0.1%未満]
[調節障害0.1%
~5%未満、羞
明・散瞳0.1%未
満]
[霧眼
0.1~5%未満]
○(類薬)[調節
障害0.1%未満]
[視覚障害0.1%
~5%未満]
○(類薬) [複
視0.1%未満]
○(類薬) [複視5%以
上又は不明]
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未満) ○(0.1~5%未
○(不明)
その他の副作用
口渇
のどが渇く
眠気
ねむい
不眠
寝られない
衝動行為、健忘、自殺企 無表情になる、不自然な言動 物忘れ
(0.1%未満)
図、せん妄
をする、物忘れ、自殺願望
閉尿
おしっこが出ない
体重増加
体重が増える
生理が乱れる、男性又は授乳
月経異常、乳汁分泌、女 期でないのにお乳が出る、男 ○
性化乳房、射精不能
性で乳房が女性のように腫れ (0.1~5%未満)
る
錐体外路症状
起立性低血圧
手のふるえ、手足のこわばり、
動作がゆっくりになる、表情が
固くなる、歩きにくい、歩き方 ○
(0.1~5%未満)
がおかしい、首が傾く、顔がひ
きつる、じっとしていられない
起き上がると頭がボーとした
り、ふらふらする、めまい
頻脈
頻拍数の増加(100/分以上)
不整脈
動悸、胸痛、胸部不快感、め
まい、失神
糖尿
皮膚の色素沈着
光線過敏症
発熱
発汗
○(0.1%未満)
満)
○(0.1~5%未満) ○(5%以上)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(5%以上)
○(0.1~5%未満)
○(0.1~5%未満)
○(5%以上/不明)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(5%以上)
衝動行為、健
忘(0.1%未満)
排尿困難
(0.1~5%未満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
(0.1~5%未満) 満)
食欲亢進
○(0.1~5%未
満)
(0.1%未満)
排尿困難
○(0.1~5%未
満)
○
○(0.1~5%未満) 排尿困難
○(0.1%未満)
○(5%以上/不
明)
○(0.1%未満)
乳汁分泌
(5%以上/不明)
月経異常
(0.1%未満)
○
(0.1~5%未満)
○
○
(0.1~5%未満)
女性型乳房、射
(0.1~5%未満) (0.1~5%未満) 女性型乳房
精不能
(0.1%未満)
(0.1%未満)
パーキンソン症 パーキンソン パーキンソン
候群
症候群
症候群
(0.1~5%未満) (5%以上)
(5%以上)
乏尿(0.1~5%未満)
(0.1~5%未満)
パーキンソン症
候群
(5%以上)
○(0.1~5%未満)
パーキンソン症 パーキンソン
パーキンソン症候群
候群
症候群
(5%以上/不明)
(5%以上/不明)
(5%以上)
○(5%以上)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
○(0.1~5%未
○(0.1~5%未
○(0.1~5%未
満)
満)
○(0.1~5%未
満)
満)
満)
○(0.1~5%未満)
○(0.1%未満)
尿に糖が出る
シミやそばかすのように、肌の
一部が黒ずむ
日光の照射による過度の日
焼け、痒み、色素沈着
熱が出る
汗をかく
○(0.1%未満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1%未満)
○(0.1~5%未
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未
満)
満)
○(0.1~5%未満) ○(0.1%未満)
○(0.1~5%未満) ○(0.1%未満)
○(0.1~5%未
満)
○(0.1~5%未満)
● [ 妊婦、産婦、授乳婦等への投与] の項に追記('11.3)
「妊娠後期に抗精神病薬が投与されている場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性等の離脱症状や錐体
外路症状があらわれたとの報告がある。」 ※詳細はP19参照
(最終改訂'11.3 '12.03.19確認)
-40-
添付文書に「QT延長」の記載がある抗精神病剤
テルフェナジン、アステミゾール、チオリダジンの併用によるQT延長は省
分類 (薬効番号)
一般名(商品名)
スルトプリド
(バルネチール)
警告
禁忌
併用
スルトプリド
(バルネチール)
○
重大な
副作用
その他の 過量
副作用 投与
頻度不明 頻度不明
QT延長を起こしやすい患者、薬剤
①QT延長のある患者、QT延長を起こしやすい患者
②QT延長を起こすことが知られている薬剤(イミプラミ
ン、ピモジド)
併用-① ○-②
頻度不明
①QT延長を起こすことが知られている薬剤(イミプラミ
ン、ピモジド等)
②QT延長のある患者、QT延長を起こしやすい患者
○-①
クロルプロマジン
(ウインタミン、
ベゲタミン)
プロペリシアジン
(ニューレプチル)
レボメプロマジン
(ヒルナミン)
プロクロルペラジン
フェノチアジン (ノバミン)
ペルフェナジン
(ピーゼットシー)
レボメプロマジン
(レボトミン)
フルフェナジン
抗
(フルメジン)
精
モサプラミン
神
(クレミン)
用
ハロペリドール
剤
(セレネース)
(117)
ブロムペリドール
(インプロメン)
チミペロン
ブチロフェノン
(トロペロン)
スピペロン
(スピロピタン)
ピパンペロン
(プロピタン)
併用-②
①QT延長のある患者、QT延長を起こしやすい患者
②QT延長を起こすことが知られている薬剤(ハロペリ
ドール等)
0.1%未満
頻度不明
突然死、心室頻拍(QT間隔の延長)
頻度不明
突然死(QT間隔の延長)
頻度不明
突然死(QT間隔の延長)
頻度不明
突然死(QT間隔の延長)
頻度不明
突然死(QT間隔の延長)
頻度不明
突然死(QT間隔の延長)
(類薬)
突然死(QT間隔の延長)
0.1~5%未
満
○-①
○
頻度不明 ○
頻度不明 ○
頻度不明 ○
頻度不明 ○
○
頻度不明 ○
ブロナンセリン
(ロナセン)
○
クロザピン
(クロザリル)
○
1%未満
○
ピモジド
(オーラップ)
○-①
併用-②
クロミプラミン
(アナフラニール)
○
四環系抗うつ剤
(117)
併用-③ 0.1%未満
○-①
不整脈の既往歴のある患者、先天性QT延長症候群の
患者又はQT延長を起こすことが知られている薬剤を投
与中の患者
QT延長の家族歴のある患者、QTを延長させる又は電
解質異常を引き起こすことが知られている薬剤を投与
中の患者
①先天性QT延長症候群のある患者、先天性QT延長
症候群の家族歴のある患者、不整脈又はその既往歴
のある患者、QT延長を起こしやすい患者
②HIVプロテアーゼ阻害剤、アゾール系抗真菌剤(外用
剤を除く)、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、パロ
キセチン、フルボキサミン
③グレープフルーツジュース
MARTA
併用-② 頻度不明 頻度不明 ○
アミトリプチリン
(トリプタノール)
ノルトリプチリン
(ノリトレン)
マプロチリン
(ルジオミール)
不整脈の既往歴のある患者、先天性QT延長症候群の
患者又はQT延長を起こすことが知られている薬剤を投
与中の患者
5%未満
パリペリドン
(インヴェガ)
イミプラミン
(トフラニール)
①QT延長を起こしやすい患者
○
リスペリドン
(リスパダール)
三環系抗うつ剤
(117)
記載内容
併用-② 頻度不明
チアプリド
(グラマリール)
SDA
注意
○-①
スルピリド
(ドグマチール)
ベンザミド
慎重
投与
①低カリウム血症のある患者
②QT間隔延長を起こすことが知られている薬剤 (スニ
チニブ、ダサチニブ、マプロチリン等)
○
○-①
①QT延長症候群のある患者
②QT間隔延長を起こすことが知られている薬剤(スニ
チニブ、ダサチニブ、マプロチリン等)
併用-② 頻度不明 頻度不明
頻度不明
○
頻度不明
-41-
○
QT間隔延長を起こすことが知られている薬剤(スニチ
ニブ、ダサチニブ、イミプラミン等)
添付文書に「QT延長」の記載がある抗精神病剤
テルフェナジン、アステミゾール、チオリダジンの併用によるQT延長は省
分類 (薬効番号)
SNRI (117)
一般名(商品名)
デュロキセチン
(サインバルタ)
フルボキサミン
(デプロメール、
ルボックス)
パロキセチン
(パキシル)
セルトラリン
(ジェイゾロフト)
警告
禁忌
慎重
投与
注意
重大な
副作用
その他の 過量
副作用 投与
併用
ピモジド
併用
ピモジド、シサプリド
併用
ピモジド
併用
ピモジド
併用-① ○-②
①ピモジド
②不整脈又はその既往歴のある患者、先天性QT延長
症候群の患者又はQT延長を起こすことが知られてい
る薬剤を投与中の患者、うっ血性心不全、低カリウム
血症の患者
③肝機能障害患者、高齢者、遺伝的にCYP2C19の活
性が欠損していることが判明している患者(Poor
Metabolizer)
SSRI (117)
エスシタロプラム
(レクサプロ)
その他抗うつ剤
(117)
中枢神経刺激剤
(117)
多動性障害治療
剤 (117)
トラゾドン
(デジレル、レスリン)
メチルフェニデート
(コンサータ)
アトモキセチン
(ストラテラ)
記載内容
併用
○-③
1%未満
頻度不明
○
5%未満
○
1%未満
-42-
サキナビル
臨床検査
○
心疾患、先天性QT延長症候群の患者又はQT延長の
家族歴のある患者
(愛知県薬剤師会薬事情報室 '11.11.25)
定
型
フ
ノ
チ
ア
ジ
ン
系
分類
-43-
統合失調症、躁病、神経症
における不安・緊張・抑う
つ、悪心・嘔吐、吃逆、破傷
風に伴う痙攣、麻酔前投
薬、人工冬眠、催眠・鎮静・
鎮痛剤の効力増強
効能・効果
糖衣錠:0.25、0.5、1mg
散:0.2%
糖衣錠:2、4、8mg
散:1%
糖衣錠:2.5、5mg
散:1%
錠:5mg
錠:5、10、25mg
細粒:10%
液:1%
ペルフェナジン
(ピーゼットシー)
田辺三菱=吉富
トリフロペラジン
(トリフロペラジン)
田辺三菱=吉富
プロクロルペラジン
(ノバミン)
塩野義
プロペリシアジン
(ニューレプチル)
塩野義
(レボトミン)
錠:5、25、50mg
散:10、50%
細粒:10%
(ヒルナミン)
錠:5、25、50mg
散:50%
細粒:10%
クロルプロマジン12.5mg、
フェノバルビタール30mg
(ベゲタミン-B)
低
(100)
(当価用量)
力価
高
(2)
高
(5)
統合失調症
中・異型
(20)
統合失調症、術前・術後等 高
の悪心・嘔吐
(15)
統合失調症
統合失調症、術前・術後の
高
悪心・嘔吐、メニエル症候
(10)
群(眩暈、耳鳴)
統合失調症
統合失調症、躁病、うつ病 低
における不安・緊張
(100)
躁病、うつ病又はうつ状
態、神経症
クロルプロマジン25mg、フェ
統合失調症、老年精神病、
ノバルビタール40mg
(ベゲタミン-A)
(ウイタミン)
錠:12.5、25、50、100mg
散:10%
(コントミン)
糖衣錠:12.5、25、50、
100mg
散:10%
顆粒:10%
剤形・容量
フルフェナジン
(フルメジン)
田辺三菱=吉富
レボメプロマジン
(ヒルナミン)
塩野義
(レボトミン)
田辺三菱=吉富
クロルプロマジン/プロ
メタジン/フェノバルビ
タール配合
(ベゲタミン-A、-B)
塩野義
クロルプロマジン
(コントミン)
田辺三菱=吉富
(ウイタミン)
塩野義
一般名
(商品名)
会社名
統合失調症治療剤一覧
ェ
10~60mg分服
精神科:15~45mg分服
5~30mg分服
6~48mg分服
1~10mg分服
25~200mg分服
鎮静:3~4錠分服
催眠:3~4錠就寝前
30~100mg分服
用法・用量(/日・成人)
3~5
20~40
9~12
14.7
15~30
ク:30.5
プ:12.7~13.7
フ:5.1
30
(β相)
血中半減期(h)
++
+++
+++
+++
++
++
D2
++++
D3
-
+
-
+
D4
ドパミンD2受容体ファミリー
+
++
+
++
+
ドパミンD1受容体
ファミリー
D1
D5
+++
++
++
++
++
+++
5-HT2
-
-
-
±
5-HT1A
セロトニン
++++
++
±
+
+++
+++
α1
++
++
++
++++
+++
H1
+
++
+
+
++
+++
M1
ムスカリ
アドレナリ
ヒスタミン
ン
ン
排泄
(ク)尿:50%
(代)、糞:50%
1A2
2D6
2D6
2D6
尿
胆汁
尿
糞
(24h・ラット)
尿:6%
糞:44%
尿:44%
糞
尿
糞(代)
尿:1%(24h・未)
糞
(24h・未)
(代)、汗
(プ)胆汁、尿
2C19、3A4 (フ)
(フ)尿:25%
2D6 (ク、プ)
(代、未<0.03%)
尿:50%
2D6(主)、1A2 (代、未<1%)
、3A4
糞:50%
代謝酵素
(CYP)
鎮静・催眠作用をもち副作用は比較
的少ない
抗コリン、抗ヒスタミン、抗アドレナリ
ン作用はクロルプロマジンの1/5~
1/25
・D2受容体選択的遮断
・不安、緊張、幻覚、妄想等の症状を
改善
・錐体外路症状は少ない
・賦活効果あり
・抗幻覚妄想作用は強力
・クロルプロマジンに比べ抗ドパミン、
抗セロトニン作用は2倍、抗ノルアドレ
ナリン作用は3.5倍、鎮静効果が強い
・不安、不眠、焦燥感に対応
・フェノバルビタールを含有するため
依存性が高い、過量服用で致死的と
なりうる
・抗ドパミンD2作用はハロペリドール
より弱い
・抗うつ作用、抗不安作用あり
・鎮静効果が強い
特徴
定
型
ノ
ン
系
ブ
チ
ロ
フ
分類
錠:1、3mg
細粒:1%
錠:0.25、1mg
散:0.3%
スピペロン
(スピロピタン)
サンノーバエーザイ
ピモジド
(オーラップ)
アステラス
錠:50mg
散:10%
ピパンペロン
(プロピタン)
サンノーバエーザイ
錠:0.5、1、3mg
細粒:1%
錠:1、3、6mg
細粒:1%
ブロムペリドール
(インプロメン)
ヤンセン=田辺三菱
チミペロン
(トロペロン)
第一三共 =田辺三菱
錠:0.75、1、1.5、3mg
細粒:1%
液:0.2%
剤形・容量
ハロペリドール
(セレネース)
大日本住友
一般名
(商品名)
会社名
統合失調症治療剤一覧
ェ
-44-
高
(1.3)
中・異型
(4)
①統合失調症
②小児の自閉性障害、精
神遅滞
高
(1)
低
(200)
中・異型
(2)
高
(2)
(当価用量)
力価
統合失調症
統合失調症
統合失調症
統合失調症
統合失調症、躁病
効能・効果
+++
①初期量:1~3mg、症状に
応じ4~6mg、1回朝又は2~
3回分服、9mgまで
55
維持:6mg以下
②1~3mg、1回分割、6mgま
で、場合により2回に分服
++++
+
+++
+++
D2
+++
+++
++
D3
+
++++
+
+
D4
ドパミンD2受容体ファミリー
++++
20~31
18
血中半減期(h)
5.9
初期:0.5~3mg
維持:3~12mg分服
最初約1週間:0.5~1.5mg
(散:0.45~1.5mg)
以後:1.5~4.5mg
初期:50~150mg
維持:150~300mg 3回分
服
3~18mg
36mgまで
初期;0.75~2.25mg
維持:3~6mg
用法・用量(/日・成人)
-
-
±
+
ドパミンD1受容体
ファミリー
D1
D5
+
+++
+++
++++
±
+
5-HT2
++
++
5-HT1A
セロトニン
±
±
+
++
±
+
α1
±
-
±
++
-
-
H1
+
-
±
+++
-
-
M1
ムスカリ
アドレナリ
ヒスタミン
ン
ン
排泄
3A4(主)、
2D6、1A2
-
-
-
3A4、2D6
(未・72h)
尿:0.12%
(72h・ C)
14
尿:36%
糞:53%
(7日・ラット・3H)
尿:74%
糞:28%
尿:49%
糞:44%
(ラット)
糞
(72h、代)
尿:18%
(96h・3H)
尿:40%
3A4(主)、2D6 糞:42%
代謝酵素
(CYP)
・作用発現は比較的緩徐
・作用持続時間長い
・D2受容体選択的遮断
・抗メタンフェタミン、抗アポモルフィン
作用、条件回避反応抑制作用が強
い
・錐体外路症状が弱い
・作用発現時間、持続時間が長い
・D2受容体選択的遮断
・D2受容体選択的遮断
・幻覚・妄想等を早期に消退させる
・ハロペリドールより効果発現が速い
・錐体外路症状が少ない
強力な神経遮断作用と鎮静作用あり
特徴
-45-
定
型
そ
の
他
イ
ン
ミ
ジ
ノ
ル
ジ
系
ベ
ベ
ン
ザ
ミ
ド
系
分類
糖衣錠:25、50mg
散:10%
錠:20、40mg
散:10%
オキシペルチン
(ホーリット)
第一三共
錠:10、25、50mg
顆粒:10%
クロカプラミン
(クロフェクトン)
田辺三菱=吉富
カルピプラミン
(デフェクトン)
田辺三菱=吉富
錠:25、50、100mg
細粒:10、50%
ゾテピン
(ロドピン)
アステラス
錠:3、10mg
細粒:2%
ネモナプリド
(エミレース)
アステラス
錠:10、25、50mg
顆粒:10%
錠:25、50mg
細粒:10%
チアプリド
(グラマリール)
アステラス
モサプラミン
(クレミン)
田辺三菱=吉富
錠:50、100、200mg
細粒:50%
カプセル:50mg
錠:50、100、200mg
細粒:10、50%
剤形・容量
スルトプリド
(バルネチール)
バイエル
スルピリド
(ドグマチール)
アステラス
(アビリット)
大日本住友
一般名
(商品名)
会社名
統合失調症治療剤一覧
中・異型
中・異型
(40)
中・異型
(66)
中・異型
(33)
高
(4.5)
中・異型
(200)
中・異型
(200)
(当価用量)
力価
統合失調症
中・異型
(80)
(他の抗精神病薬の効果が不 (100)
十分な場合に、付加して使
用)
意欲減退、抑うつ、心気を
主症状とする慢性統合失
調症
統合失調症
統合失調症
統合失調症
統合失調症
脳梗塞後遺症に伴う攻撃
的行為、精神興奮、徘徊、
せん妄の改善
躁病、統合失調症の興奮
及び幻覚・妄想状態
①統合失調症
②うつ病・うつ状態
効能・効果
血中半減期(h)
最初:1回20mg 2~3回分服
漸次増量:1回40~80mg 2
~3回分服、場合により1回
100mg 3回分服
75~225mg 3回分服
30~150mg 3回分服
75~150mg分服
30~150mg 3回分服、
300mgまで
9~36mg食後、60mgまで
75~150mg 3回分服
300~600mg分服
0.9~2.3
(動物)
46
8
15
2.3~4.5
3.91
3
①300~600mg分服、
1,200mgまで
6~15
②150~300mg分服、600mg
まで
用法・用量(/日・成人)
+
++
++
++
+++
++++
+
++
+
D2
+++
+++
+++
+++
D3
-
-
+
+
+++
-
+
D4
ドパミンD2受容体ファミリー
+
+
-
-
-
-
-
-
ドパミンD1受容体
ファミリー
D1
D5
+++
++
++
±
++
±
-
-
-
5-HT2
-
±
-
5-HT1A
セロトニン
++
-
+
++
±
-
-
-
-
α1
+++
-
±
+
±
-
-
-
±
H1
-
-
-
+++
-
-
-
-
-
M1
ムスカリ
アドレナリ
ヒスタミン
ン
ン
-
-
-
-
排泄
糞
(24h・代)
尿:14.9%
(24h・未)
尿:71.7%
(72h・未)
尿:88%
尿:27.8%(24h)
尿
糞
(72h・ラット・3H)
糞:50%
(24h・ラット・3H)
糞:80%
3A4(主)、1A2、
2B6、2C9、
尿
2D6、2C19、
3A5
3A4
-
-
-
代謝酵素
(CYP)
・他の向精神薬と異なる構造を持つ
・ドパミン枯渇作用
・錐体外路症状は少ない
・D2、5-HT2遮断作用
・抗精神病作用と抗うつ作用を併せ
持つ
・D2受容体選択的遮断
・幻覚、妄想に効果あり
・強い5-HT2遮断作用
・効果発現が速い
・鎮静に優れる
・D2、5-HT2遮断作用
・陽性、陰性症状に効果あり
・D2受容体選択的遮断
・D2受容体選択的遮断
・効果発現が速い
・ジスキネジア改善
・D2受容体選択的遮断
・強力な鎮静作用
・幻覚、妄想に効果あり
・D2受容体選択的遮断
・効果発現速やか
特徴
(
新
規
非
定
型
S
D
A
)
多
元
M
受
A
容
R
体
T
作
A
動
剤
セ
ロ
ト
ニ
ン
・
ド
パ
ミ
ン
遮
断
剤
分類
)
-46-
(
ド
パ
ミ
ン
受
D
容
S
体
部S
分
作
動
剤
ジ
ベ
ン
ゾ
チ
ア
ゼ
ピ
ン
系
)
錠:3、6、12mg
散:1%
内用液:0.1%
①統合失調症
②双極性障害における躁
症状の改善
中・異型
(4)
低
中・異型
(2.5)
低
(66)
高
中・異型
(8)
高
(1)
高
(1)
(当価用量)
力価
+++
++
++
+++
初日:12.5mg、2日目:25mg
1回、3日目以降:25mgずつ
増量し、原則3週間かけて
200mgまで増量、50mgを超
える場合には2~3回分服
15
維持:200~400mg 2~3回
分服、1回の増量は4日以上
の間隔をあけ、増量幅とし
ては100mgを超えない、
600mgまで
①開始:6~12mg 1回又は2
回分服
維持:6~24mg 1回又は2
回分服、30mgまで
61
②開始:24mg
維持:1日1回12~24mg、1
日量は30mgまで
++
開始:1回25mg 2又は3回
分服
3.3~3.5
維持:150~600mg 2又は3
回分服、750mgまで
開始:1回5~10mg 1回
21~54
維持:10mg 1回、20mgまで
+++
開始:1回4mg 2回分服
維持:8~16mg 2回食後分 10.7~16.2
服、24mgまで
4~6
開始:1回4mg 3回分服
維持:12~48mg 3回食後
分服、48mgまで
+++
D2
++
-
++
++
++
-
+
+
D3
+
+++
++
+
-
-
+
+
D4
ドパミンD2受容体ファミリー
+++
20
血中半減期(h)
6mg 1日1回朝食後
増量は5日間以上の間隔を
20~23
あけて1日量として3mgずつ
12mgまで
開始:1回1mg 2回分服
維持:2~6mg 2回分服、
12mgまで
用法・用量(/日・成人)
〔参考〕櫻井美由紀他:ハイリスク治療薬2010,じほう
佐川 朝子他:統合失調症治療薬,レシピ Vol.6 No.2,37-52,2007
今日の治療薬2009,南江堂
-:影響なし ±:どちらでもない +:軽度 ++:中等度 +++:中等度~高度 ++++:高度 +++++:最大 代:代謝物 未:未変化体 14C、3H:放射能活性
アリピプラゾール
(エビリファイ)
大塚製薬
錠:25、100mg
クロザピン
(クロザリル)
ノバルティス
治療抵抗性統合失調症
統合失調症
双極性障害における躁症
状及びうつ症状の改善
錠:2.5、5、10mg
OD錠:5、10mg
細粒:1%
統合失調症
オランザピン
(ジプレキサ)
イーライリリー
錠:2、4、8mg
散:2%
ブロナンセリン
(ロナセン)
大日本住友
統合失調症
統合失調症
錠:4、8、16mg
ペロスピロン
(ルーラン)
大日本住友
統合失調症
錠:25、100mg
細粒:50%
錠:3、6、9mg
パリペリドン
(インヴェガ)
ヤンセン
統合失調症
効能・効果
クエチアピン
(セロクエル)
アステラス
錠:1、2、3mg
OD錠:1、2mg
細粒:1%
内用液:0.1%
剤形・容量
リスペリドン
(リスパダール)
ヤンセン
一般名
(商品名)
会社名
統合失調症治療剤一覧
(
+
-
+
±
±
±
+
+
-
-
+
-
-
-
-
-
ドパミンD1受容体
ファミリー
D1
D5
+
++
+++
+++
++
++++
+++
+++
5-HT2
++
±
-
+++
-
+++
-
-
5-HT1A
セロトニン
+
+++
++
+++
+
+
++
++
α1
+
+++
+++
++++
-
+++
++
++
H1
-
++
++
+
-
-
-
-
M1
ムスカリ
アドレナリ
ヒスタミン
ン
ン
尿:80%
糞:15%
(72h、未2%、代
20%)
尿:70%
排泄
・リスペリドンの徐放剤
・D2、5-HT2遮断作用
・陽性、陰性症状に効果あり
特徴
糞:30%
(未7%)
尿:57%
糞:20%
(168h・14C、未
<1%)
尿:73%
(11日・ C、未
<5%)
14
糞:30%
(11日・14C、代)
尿:59%
警告:無顆粒球症(初期)、心筋炎、
糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性
昏睡等
・治療抵抗性統合失調症に使用
・陽性症状にはD2受容体阻害によら
ない
警告:著しい血糖値の上昇→糖尿病
性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等
の発現
警告:著しい血糖値の上昇→糖尿病
性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等
の発現
・D2、D3>5-HT 2遮断作用
・鎮静は弱い
・吸収は食事の影響を受けやすい
・D2、5-HT2遮断作用
・5-HT1A遮断作用し抗不安作用あり
・吸収は食事の影響を受けやすい
愛知県薬剤師会 薬事情報室('12.03.10)
警告:著しい血糖値の上昇→糖尿病
性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等
の発現
(未・検出されず) ・D 受容体部分アゴニスト作用、52
3A4(主)、2D6
糞:60%
HT1A受容体部分アゴニスト作用及び
(未18%・14C)
5-HT2A受容体アンタゴニスト作用を
併せ持つ
尿:27%
(21日・14C)
尿:50%
1A2(主)、3A4 糞:30%
1A2(主)
3A4(主)
3A4(主)
3A4(主)、1A1、 尿:0.3%
(48h、未)
2C8、2D6
肝での代謝率は (7日・14C、未59%) ・D2、5-HT2遮断作用
低い
・陽性、陰性症状に効果あり
糞:11%
3A4、2D6
2D6
代謝酵素
(CYP)
健康食品・サプリメント等食品との相互作用-抗精神病用剤
医薬品名
ブチロフェノン系製剤
ハロペリドール(セレネース)
健康食品・飲食物
ビタミンE
機序
文献
併用により、ハロペリドールによる遅発性ジスキネジ
アの症状が緩和され、予防効果が認められたとの報 2
告がある。
4,8
タバコ
キャベツ
セント・ジョーンズ・ワート
ナツメグとニクヅク
ブドウジュース
薬剤の代謝促進により効果や眠気などの副作用が
減少する。
10
チェストツリー(チェストベリー)
チェストツリーのドパミン様作用により薬効を減弱す
る可能性あり。
5,6,
10
イチョウ
エキナセア
エゾウコギ
カバ
クリシン
グレープフルーツジュース
ジャーマン・カモミール
スルフォラファン
タンポポ
フィーバーフュー
フォーチ(ツルドクダミ)
ペパーミントオイル、葉
ユーカリ油
アカツメクサ(レッドクローバー)
肝薬物代謝酵素CYP1A2を抑制するので医薬品の作
10
用が増強され副作用が強く現れるおそれがある。
フェノチアジン系製剤
フルフェナジンマレイン酸塩(フルメ ビタミンC(アスコルビン酸)
ジン)
プロクロルペラジンマレイン酸塩(ノ
ビタミンB2(リボフラミン)
バミン)
クロルプロマジン塩酸塩(ウインタミ
ン、コントミン) 他
ビタミンB1(チアミン)
併用によりフェノチアジン系薬剤の効果が減弱したと 1,3,
の報告がある。
6,10
リボフラミンの吸収を阻害する。
ビタミンB1とメラニンの結合を阻害したという報告があ
5
る。
発作のリスクが高まる可能性があるので注意を必要
5
とする。
メマツヨイグサ
タンニン高含有飲食物(コーヒー、紅茶、
緑茶等)
タンニンと難治性のキレートを作成することにより消
化管吸収が減少し血中濃度が低下する。
ガラナ
マテ
ツキミソウ油中のgamolenic acidによりけいれん閾値
ツキミソウ油
が低下するため、フェノバルビタールの効果が減弱
する。
タバコ
薬剤の代謝促進により効果が減少する。
チェストツリー(チェストベリー)
チェストツリーのドパミン様作用により薬効を減弱す
る可能性あり。
ベンズアミド系製剤
チェストツリー(チェストベリー)
スルピリド(ドグマチール)
チアプリド塩酸塩(グラマリール) 他
5HT2/D2拮抗剤
ペロスピロン塩酸塩水和物(ルーラ チェストツリー(チェストベリー)
クエチアピンフ
リスペリドン(リスパダール)
ブロナセリン(ロナセン)
多元受容体作用抗精神病剤
(MARTA)
クエチアピンフマル酸塩(セロクエ
ル)
オランザピン(ジプレキサ)
7
チェストツリーのドパミン様作用により薬効を減弱す
る可能性あり。
チェストツリーのドパミン様作用により薬効を減弱す
る可能性あり。
グレープフルーツジュース
<併用注意>
グレープフルーツジュースとの併用により本剤の主
要代謝酵素であるCYP3A4を阻害するため、AUC、
Cmaxが1.8倍に増加したとの報告があるので、観察
を十分に行い、必要に応じて減量するなど慎重に投
与すること。
チェストツリー(チェストベリー)
チェストツリーのドパミン様作用により薬効を減弱す
る可能性あり。
3,5,
6,7,
9,10
3
3,4,
8,9
5,6,
10
5,6,
10
5,6,
10
5,6,
-47-
10
医薬品名
オランザピン(ジプレキサ)
健康食品・飲食物
タバコ
キャベツ
セント・ジョーンズ・ワート
ナツメグとニクヅク
ブドウジュース
イチョウ
エキナセア
エゾウコギ
カバ
クリシン
グレープフルーツジュース
ジャーマン・カモミール
スルフォラファン
タンポポ
フィーバーフュー
フォーチ(ツルドクダミ)
ペパーミント
ユーカリ油
アカツメクサ(レッドクローバー)
ピモジド(オーラップ)
薬剤の代謝促進(肝薬物代謝酵素CYP1A2誘導)に
より効果が減少する。
文献
3,4,
8
10
肝薬物代謝酵素CYP1A2を抑制するので医薬品の作
10
用が増強され副作用が強く現れるおそれがある。
グレープフルーツジュース
<併用注意>
グレープフルーツジュースが肝薬物代謝酵素
CYP3A4を阻害し、本剤の血中濃度が上昇するおそ
れがあり、QT延長、心室性不整脈等の重篤な副作
用を起こすおそれがあるので、グレープフルーツ
ジュースとの同時服用をしないように注意する。
イチョウ葉エキス
イチョウ葉エキスが肝薬物代謝酵素CYP3A4を阻害
または誘導し薬剤の血中濃度が変化する可能性あ
り。
セント・ジョーンズ・ワート
6
これらが肝薬物代謝酵素CYP3A4を誘導し薬剤の血
6
中濃度が低下する可能性あり。
ニンニク
ドパミン受容体部分作動剤(DSS)
アリピプラゾール(エビリファイ)
クロザピン(クロザリル)
機序
5,6,
10
5,6,
10
チェストツリー(チェストベリー)
チェストツリーのドパミン様作用により薬効を減弱す
る可能性あり。
チェストツリー(チェストベリー)
チェストツリーのドパミン様作用により薬効を減弱す
る可能性あり。
ニコチン
<併用注意>
肝薬物代謝酵素CYP1A2を誘導することから本剤の
代謝が促進され、本剤の血中濃度が低下し、効果が
減弱されるおそれがある。
なお、喫煙については、喫煙の中止により肝薬物代
謝酵素CYP1A2活性が低下し、本剤の代謝が低下す
る可能性がある。
キャベツ
セント・ジョーンズ・ワート
ナツメグとニクヅク
ブドウジュース
肝薬物代謝酵素CYP1A2を促進するのでその作用が
10
減弱するおそれがある。
カフェイン
<併用注意>
肝薬物代謝酵素CYP1A2を阻害することから本剤の
代謝が阻害されると考えられる。
カフェインの摂取により本剤の血中濃度が上昇し、5
日間カフェインの摂取を中止すると、本剤の血中濃
度が50%減少したとの報告がある。
マテ
イチョウ
エキナセア
エゾウコギ
カバ
クリシン
グレープフルーツジュース
ジャーマン・カモミール
スルフォラファン
肝薬物代謝酵素CYP1A2を抑制するので医薬品の作
5,10
用が増強され副作用が強く現れるおそれがある。
-48-
医薬品名
クロザピン(クロザリル)
健康食品・飲食物
タンポポ
フィーバーフュー
フォーチ(ツルドクダミ)
ペパーミント
ユーカリ油
アカツメクサ(レッドクローバー)
機序
文献
5,10
肝薬物代謝酵素CYP1A2を抑制するので医薬品の作
用が増強され副作用が強く現れるおそれがある。
愛知県薬剤師会 薬事情報室
東海四県情報システム委員会(TOP/NET)より
〔参考文献〕
1. 「飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用」研究班:飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用第3版,じほう,1998
2. 堀美智子:サプリメントの基礎知識,薬事日報,2005
3. 大西憲明:医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とそのマネージメント,フジメディカル出版,2007
4. 福岡県薬剤師会薬事情報センター:飲食物・嗜好品とくすりの相互作用,2005
5. 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト:独立行政法人 国立健康・栄養研究所ホームページ(2009.08.18ダウンロード)
6. 吉川敏一:医療従事者のためのサプリメント・機能性食品事典,講談社,2009
7. 清水俊雄:機能性食品素材便覧,薬事日報,2006
8. 澤田康文:薬と食の相互作用,医薬ジャーナル社,2005
9. 独立行政法人 国立健康・栄養研究所監訳:健康食品データーベース,第一出版
10. 田中平三他監訳:健康食品のすべて 第二版,同文書院,2008
-49-
岐阜県薬剤師会
愛知県薬剤師会 薬事情報室 http://www.apha.jp/
ぎふ薬事情報センター http://www.gifuyaku.or.jp/
平成 24 年 3 月作成