原生地と産地形成

ダイダイ
1.原生地と産地形成
1)原生地と伝播
ダ イ ダ イ は 、イ ン ド 東 北 部 の ア ッ サ ム を 中 心 と し た 地 域 が 原 生 地 で あ
る 。西 方 へ の 伝 播 は シ ト ロ ン に 次 い で 早 く 、10 世 紀 に は 中 近 東 に 伝 わ っ
た 。 さ ら に 、 北 ア フ リ カ 、 イ タ リ ア を 経 て 、 12 世 紀 末 ~ 13 世 紀 に ス ペ
インに達し、ヨーロッパで早くから知られたカンキツの 1 つとなった。
こ れ は 、日 本 の ダ イ ダ イ と は 系 統 が 異 な る サ ワ ー オ レ ン ジ と し て 知 ら れ
る品種群である。
そ の 後 、サ ワ ー オ レ ン ジ は 新 大 陸 の 発 見 、移 民 に よ り 西 イ ン ド 諸 島 へ 、
さ ら に 中 南 米 、北 米 各 地 に 伝 播 し た 。サ ワ ー オ レ ン ジ の 果 実 は マ ー マ レ
ー ド 、花 は 香 水 の 原 料 、ま た 、樹 は 街 路 樹 等 の 観 賞 樹 と し て 利 用 さ れ て
きた。
原 生 地 か ら 東 進 し た も の は 、中 国 で ダ イ ダ イ 品 種 群 に 分 化 し た 。中 国
名 は 酸 橙 で あ る 。わ が 国 へ は 古 い 時 代 に 中 国 か ら 伝 来 し た と 考 え ら れ て
いる。
現 在 、一 般 に 使 わ れ て い る ダ イ ダ イ( 代 々 )の 名 称 は 室 町 時 代 後 期 に
な っ て 普 及 す る よ う に な っ た と さ れ る 。ダ イ ダ イ と い う 言 葉 は 、成 熟 し
て も 落 果 し に く く 、新 旧 代 々 の 果 実 が 同 一 樹 上 に 見 る こ と が で き る こ と
か ら 生 ま れ た と い わ れ る 。わ が 国 に は 古 く か ら カ ブ ス( 臭 橙 )と 回 青 橙
の 2 品 種 が あ り 、 と も に 単 に ダ イ ダ イ と 呼 び 混 同 す る 場 合 が 多 い 。『 増
訂 南 海 包 譜 下 巻 』( 1685、 山 中 信 古 ) で は 回 青 橙 を ダ イ ダ イ と し 、 カ ブ
ス と 区 別 し て い る 。『 紀 州 柑 橘 録 』( 1882、福 羽 逸 人 )に お い て も 同 様 に
扱 わ れ て い る 。 田 中 諭 一 郎 は 『 日 本 柑 橘 図 譜 下 巻 』( 1948) の 中 で 、 ダ
イダイの名を両者共通の名称として使っている。
2)わが国における栽培概況
ダ イ ダ イ は わ が 国 で 長 い 歴 史 を 持 つ カ ン キ ツ で 、各 地 で 庭 先 果 樹 と し
て 自 家 消 費 中 心 の 栽 培 、利 用 が 行 わ れ て き た 。古 く は 薬 用 、酢 の 代 用 と
し て 利 用 さ れ 、ま た 、新 旧 代 々 の 果 実 が 見 ら れ る こ と か ら 縁 起 物 と し て
正 月 の お 飾 り に 用 い ら れ る よ う に な っ た 。こ の 様 に ダ イ ダ イ は 、長 年 主
に 正 月 の お 飾 り に 利 用 さ れ る 以 外 は 、ほ と ん ど 商 品 価 値 が な か っ た 。し
か し 、大 正 3 年 に ヨ ー ロ ッ パ で 第 1 次 世 界 大 戦 が 起 こ っ た こ と か ら 、米
国 、カ ナ ダ に お い て マ ー マ レ ー ド 製 造 の 主 原 料 で あ る ヨ ー ロ ッ パ 産 サ ワ
ー オ レ ン ジ の 供 給 が 途 絶 え た た め に 、北 ア メ リ カ へ の ダ イ ダ イ 輸 出 が 始
ま っ た 。こ の 後 、毎 年 数 千 箱( 40 ポ ン ド 入 )の 輸 出 が 行 わ れ 、大 正 時 代
中 期 に は か な り の ダ イ ダ イ の 増 植 が 行 わ れ た 。 し か し 、 昭 和 10 年 代 初
めには競争力が無くなり、北アメリカ市場を失い栽培も衰退した。
昭 和 40 年 代 ~ 55 年 頃 ま で は 園 地 栽 培 面 積 と 散 在 樹 を 合 わ せ て 100ha
弱 で あ っ た 。 そ の 後 新 植 は ほ と ん ど な く 、 平 成 15 年 の 栽 培 面 積 は 96ha
で あ る 。そ の 内 訳 は 、静 岡 県 が 36.6ha で 全 体 の 38% 、和 歌 山 県 が 22.1ha
で 23% 、福 岡 県 9.1ha、広 島 県 8.8ha、愛 媛 県 6.1ha 等 で あ る 。し か し 、
栽培面積の半分近くは散在樹である。