結果 考察 尿路感染症の初発までの期間を Kaplan-Meier 法で比較した ところ、スピーディカテ群が PVCカテーテル群に比べて無発症期 間が有意に延長され (p=0.038)、初発リスクが 33%軽減される ことが示唆された (ハザード比 0.666[ 95%信頼区間:0.453 ~ 0.978])。在院期間中の第 3 週と第 4 週における毎日の試験紙検 査に基づく顕微鏡的血尿も、 スピーディカテ群が有意に良好だった (p<0.0001)。 在院期間における 「症候性尿路感染症」 の発症率 (1カ月当たり) は、 スピーディカテ群が 0.539 件 (試験日数 3,339 日中 60 件) で、 (試験日数4,267日中 97件)に比べ、 PVCカテーテル群の 0.682件 「無症候性尿路感染症」の 22%有意に少なかった( p= 0.038)。 発症率 ( 1カ月当たり)も、スピーディカテ群は 0.189 件 (試験日数 3,339 日中 21 件)で、PVCカテーテル群の 0. 295 件(試験日数 (p=0.038)。 4,267日中 42 件)に比べ、36%有意に少なかった 尿路感染症を1回以上認めた被験者の割合は、 「症候性尿路 感染症」ではスピーディカテ群が 35 %で、PVC カテーテル群の ( p= 0.014)、 「無症候性尿路感染 61%に比べて有意に少なく 症」でもスピーディカテ群が 20%で、PVCカテーテル群の 37%に 比べて少ない傾向を示した (図)。 患者および介護者のカテーテルに対する主観的評価では、導尿 の習得、準備、挿入や抜去の快適さなどの各項目でスピーディカテ 群がより良好な傾向を示し、全体的満足度も PVCカテーテル群の (平均値± SD) に比べ、 スピーディカテ群では 9.3±1.4と 8.6±1.3 有意に高かった (p=0.007)。 無作為化後に試験を完遂した患者は 114 例 (スピーディカテ群 45 例、PVCカテーテル群 69 例)にとどまった。しかし、脱落理由の ほとんどが、膀胱に関連しない内科的合併症、急性期における過 剰な対処事項、看護スタッフの習熟不足で、カテーテルを嫌っての 脱落例は 3 例 (スピーディカテ群 2 例、PVCカテーテル群 1例) のみ だった。 よって、 医療従事者がカテーテルへの理解をより深め、患 者指導も拡充する必要があることが示唆された。 結語 親水性カテーテルであるスピーディカテを使用することで、急 性期の入院期間およびリハビリテーション期間における尿路感 染症の発症率が最小限に抑えられた。また、尿路感染症の発症 抑制により、治療コスト、合併症、リハビリテーション期間延長の 軽減、患者集団における抗生物質耐性の発現リスクの抑制に期待 できることも示唆された。 第27回日本老年泌尿器科学会 記録集 海外招聘講演 「カテーテル管理とケアの技術革新」 文献 1)Cardenas DD, et al. Arch Phys Med Rehabil 2004; 85: 1757-1763. 2)Cardenas DD, et al. PM&R 2011; 3: 408-417. [図] 尿路感染症が1回以上認められた被験者の割合 試験期間全体 在院期間 p = 0.055 p = 0.014 37% 35% 感染症が認められた割合 感染症が認められた割合 61% p = 0.179 p = 0.066 ノンコーティング PVCカテーテル群 (n=116) 72% 親水性コーティング スピーディカテ群 46% 45% (n=108) 27% 20% 無症候性 尿路感染症* 症候性 尿路感染症* 無症候性 尿路感染症* 症候性 尿路感染症* *:本試験における “尿路感染症” の定義は以下の通り 無症候性尿路感染症:102CFU/mL 以上の細菌尿、あるいはコンセンサスガイドラインに基づく7 症状のうち 1つ以上かつ試験紙検査にて白血球エステラーゼ陽性を認めた場合 排尿障害を有する患者では、導尿処置を中心とする排尿管理が重要になる。しかし、長期 (J Am Palaplegia Soc 1992 ; 15 : 194-204.) 留置型カテーテルは尿路感染症の引き金となり、 その防止が大きな課題となる。 その解決策 症 候 性 尿 路 感 染 症:抗生物質による治療を要する尿路感染症 としてカテーテルを使用した間欠導尿が有用である。 (Diana D Cardenas 先生ご提供) 第27回日本老年泌尿器科学会にて、海外における排尿管理の要点と親水性コーティングが 99152N www.coloplast.co.jp 〒102-0074 東京都千代田区九段南2-1-30 イタリア文化会館ビル11F 0120-66-4469 ©2014-09 無断複写・転載を禁じます。 施された使い捨て型カテーテルのメリットについて、海外の2人の演者が口演した。 日時:2014 年 6月14日 (土)13:10 ~14:50 会場:山形テルサ 第1会場 テルサホール 共催:第27回日本老年泌尿器科学会 コロプラスト株式会社 在宅での排尿管理:根拠となるエビデンスおよび導尿 患者および医療スタッフの間欠導尿に対する満足度の向上に期待 2) できることが報告されている1、(表2) 。 座長 NPO 法人 日本コンチネンス協会 会長 西村 かおる 先生 結語 演者 カナダ アルバータ大学 看護学部 教授 Katherine N. Moore 先生 留置カテーテルの問題点 排尿管理において、 カテーテルを30日以上留置した場合、 ほぼす べての患者が保菌することが明らかになっている。そして、便失 禁のある患者では、菌の定着と症候性尿路感染症のリスクがきわ めて高い。 その背景には、 カテーテルがバイオフィルムの生成場所 となることが挙げられる。特に感染頻度の高いグラム陰性菌はウレ アーゼ生成を介して膀胱結石も生じさせ、カテーテルが閉塞して 尿の逆流や漏出を招く。さらには、留置カテーテルの長期使用は、 カテーテルの膀胱への接触に起因する炎症や膀胱頸部尿路の損 傷の原因となり、尿路感染症や敗血症のリスクも高める。しかも、 感染による痛みや尿道刺激、あるいは排尿筋の過活動により患者 が錯乱を起こすと、問題行動や転倒につながることもある。例えば 錯乱を呈した男性患者では、カテーテルを自分で抜去しようとし て亀頭や陰嚢の浮腫、断裂、あるいは尿道断裂などを呈する例が ある。 以上より、尿道や膀胱頸部の外傷防止のために、カテーテルの 確実な支持が重要になるとともに、カテーテルの早期の抜去が 求められる。 間欠導尿(Clean Intermittent Catheterization;CIC)の要点 留置カテーテルの問題点を踏まえれば、長期にわたる在宅での 排尿管理には間欠導尿も推奨される。間欠導尿は、脊髄損傷、 脳卒中、二分脊椎、多発性硬化症、前立腺疾患、糖尿病などに起因 する、神経因性膀胱による排尿障害および尿閉を有する患者に有 用と考えられ、表1に示すような患者が、間欠導尿を導入できると 考えられる。 一方、間欠導尿であってもカテーテルを使用するため、尿路感染 症のリスクは排除できない。間欠導尿施行者における無症候性 細菌尿の発生率は約 60%といわれている。ただし、宿主が細菌に 対する抵抗性を発現することも示唆されている。そこで、健康な生 活習慣の維持、十分な水分摂取、1日4~ 5 回 (1回 500ml 以上)の 規則的かつ清潔な間欠導尿を心がける必要がある。 間欠導尿において、使い捨て型の親水性コーティングカテーテ ルの有用性は高く評価されているが、 未だ十分なエビデンスが蓄積 されておらず、 さらなる検討が必要と思われる。その際は、泌尿器科 による定期的なフォローアップを行い、アドヒアランス (患者の積極 的参加)、腎機能、健康状態などへの影響を逐次評価し、間欠導尿 を患者自身がしっかりと管理できているかどうかを確認すること も重要と考えられる。 [表1] 間欠導尿:理想的な対象者 認知能力があり、意欲的、かつ自分でカテーテルを挿入できる。 もしくは、介護者のサポートがある 膀胱容量>250ml 膀胱コンプライアンスが良好 年齢は障壁ではない (Katherine N. Moore 先生ご提示) [表 2 ] カテーテルの選択:親水性か再利用型か? 親水性カテーテルは、使い捨てで洗浄/再利用できない 滑りの良い (親水性の)コーティングが施されており、 潤滑剤を別途使用する必要がない 文献 1)Cardenas DD, et al. PM&R 2011; 3: 408-417. 2)De Ridder DJ, et al. Eur Urol 2005; 48: 991-995. 親水性カテーテル利用者は、使い易く挿入し易いと感じており、 満足度が高い (Katherine N. Moore 先生ご提示) 使い捨て型カテーテルの有用性 間欠導尿ではこれまで、潤滑剤を塗布して挿入する再利用型 カテーテルが汎用されてきた。再利用型のカテーテルは、毎使用 後に使用者あるいは介護者がカテーテルを洗浄し、使用すること が基本となっている。 そうした中、製品として親水性のコーティングが施され、潤滑剤 を必要としない使い捨て型のカテーテルが開発された (スピーディ カテ:コロプラスト社製) 。男性用と女性用それぞれに外径の異なる 複数の種類があり、 医療従事者は患者に合ったサイズを選択できる (図)。また、パッケージ開封後すぐに使用できるため、導尿のため の準備も短時間となる。 そして何よりも、 使い捨てであるため、 在宅 での清潔間欠導尿の継続がより簡便になる。 また、 使い捨て型親水性コーティングカテーテルであるスピーディ カテを用いると、感 染 症発生率が低下し、患者の QOL の改善や 親水性コーティングカテーテルとノンコーティング カテーテルの多施設ランダム化比較試験から得られた知見 座長 山梨大学大学院 医学工学総合研究部 泌尿器科学講座 教授 武田 正之 先生 演者 米国 マイアミ大学 医学部 教授 Diana D. Cardenas 先生 [図] 単回使用型 (使い捨て型)親水性コーティング カテーテル: スピーディカテおよびスピーディカテ コンパクト スピーディカテ 男性用 チーマン 全長 (cm)39 外径 (CH/Fr) ●10 ●12 スピーディカテ 男性用 ネラトン 全長 (cm)39 外径 (CH/Fr) ● 8 ●10 ●12 ●14 スピーディカテ 30 ネラトン 全長 (cm)30 外径 (CH/Fr) ● 8 ●10 ●12 スピーディカテ 女性用 ネラトン 全長 (cm)20 外径 (CH/Fr) ● 6 ● 8 ●10 ●12 ●14 スピーディカテ コンパクト 女性用 (本体) カテーテル有効長 (cm)7 外径 (CH/Fr) ● 8 ●10 ●12 ●14 スピーディカテ コンパクト 女性用 (内筒) 背景と目的 方法と対象 脊髄損傷受傷 後の急性期およびリハビリテーション期間に おいて、最も多い内科系合併症は尿路感染症である。また、米国の 共同研究 Model SCI (Spinal Cord Injury)Care Systems で も、脊髄損傷患者の再入院の理由では尿路感染症が最多である ことが報告されている1)。そのため、脊髄損傷患者においては、急 性期の入院治療開始時から尿路感染症の防止が最重要課題とな るが、近年その対策として、使い捨て型のカテーテルによる間欠導 尿の有用性が示唆されている。 使い捨て型カテーテルには、挿入時に潤滑剤を併用するノン コーティングの PVCカテーテルと、スムーズな挿入を可能にする 親水性コーティングが施されて製品化されたカテーテル (以下、 親水性カテーテル)がある。そこで、2 種類のカテーテルにおける 尿路感染症の発症率、患者およびスタッフの満足度の違いなどを 比較した2)。 本研究は、前向き無作為化多施設共同並行群間比較試験。対象 は、 2006 年 4月~2009 年7月に北米の15医療機関で治療を受けた 18 歳以上の脊髄損傷患者 224 例。いずれも試験組み入れ前 3カ月 以内に脊髄損傷を受傷しており、 神経因性膀胱機能障害を合併し、 1日3回以上の間欠導尿を施行していた。 対象は親水性カテーテルであるスピーディカテの使用群 (以下、 スピーディカテ群)108 例とノンコーティングの PVCカテーテルの 使用群 (以下、PVCカテーテル群)116 例に無作為割り付けされ、 両群の患者は導尿の詳細、尿路感染症の症状や検査結果などを 日々記録した。 主要評価項目は、 1) 尿路感染症の発症の有無と初発までの期 間、 および2) 尿路感染症を2種類 (無症候性尿路感染症、 症候性尿 路感染症、 それぞれの定義については次ページ図下部を参照) に定 義し、それらの発症率も比較した。 カテーテルの利便性などに関し ても、 患者および介護者が 0 (非常に困難) ~10 (容易) の11段階で 主観的に評価した。
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