4 ヶ月未満で発熱のため入院されたお子さんのご家族へ このたびは、急な入院でご心配のことと思います。ここでは、お子さんの診断のための検 査、今後の治療方針について説明させて頂きます。 ①4 ヶ月未満のお子さんの発熱 小児の場合、発熱の原因の多くは、病原性微生物による感染症です。そして、4 ヶ月未満の 小さなお子さんの場合は、次のような理由からより大きなお子さんに比べて注意が必要で す。 ○4 ヶ月未満のお子さんは、お母さんからもらった免疫を持っているので、4 ヶ月以降の お子さんに比べて感染症に対する抵抗力が強く、一般にはあまり熱を出しません。それ なのに熱を出すということは、重症の感染症である可能性があります。 ○症状がはっきりせず、自分で症状を教えてくれないので、風邪の熱と、髄膜炎や敗血 症、 尿路感染症、重症肺炎といったすぐ治療が必要な病気との区別が困難です。そのため、 十分な検査と厳重な経過観察が必要です。 ○体の予備能力が小さいため重症の感染症の場合進行が早く、また脱水などの重篤な症 状に陥りやすいため、早期に治療を開始する必要があります。 感染症以外の発熱の原因には、脱水やうつ熱(高温環境や着せすぎによって熱を放出でき ず、体温が上昇した状態)があります。こうした発熱と感染症の区別は、感染症の症状(咳 や鼻水など)の有無、母乳やミルクの飲み・機嫌といった全身状態、水分を摂らせたり薄 着にさせることで熱が下がるかどうか、などを参考にします。 ②入院時の検査 感染症が疑わしいときには、入院して検査・治療を行います。発熱の原因に応じて治療内 容が変わるため、以下のような検査をして発熱の原因を調べます。 ○血液検査:白血球・CRP などの炎症反応が上昇している場合、感染症の疑いが強まり ます。また、炎症の程度を見ることもできます。その他、肝臓や腎臓の機能などを調べ ることで合併症の有無を調べます。 ○尿検査:尿に細菌が混じっている場合、尿路感染症を疑います。抗生物質の治療が必 要です。また、脱水の程度を知ることもできます。 ○胸部レントゲン:肺炎の有無を調べます。 ○細菌培養検査:鼻腔・のど・尿・便・血液などに感染の原因菌がいないか調べます。 結果が出るのまで 3 日 1 週間かかります。 ○髄液検査:腰椎穿刺とも言います。髄膜炎の有無を調べる重要な検査です。 *髄膜炎とは 髄膜とは、頭蓋骨の中や脊椎で脳・脊髄を包んでいる膜です。髄液は、髄膜と脳の間を満 たしている液体ですから、脳は髄膜の中で髄液に浮かんでいる状態と言えます。この髄膜 に細菌やウイルスが感染すると髄膜炎になり、発熱・嘔吐・頭痛(小さいお子さんでは、一 時も泣き止まない不機嫌)などの症状が出ます。細菌性髄膜炎は、治療が遅れると亡くなっ たり後遺症が残ったりする非常に怖い病気です。そのため、疑わしいときは髄液検査をし て髄膜炎の有無を確認します。 髄液検査(腰椎穿刺)は、腰の骨と骨の間に細い針を刺して髄液を少量採取する検査です。 ・検査後、1 時間は抱き上げるなどして頭を上に上げないで下さい(頭痛が起こることがあ ります) ・数日、腰や足が痛むことがあります。 ・非常にまれな合併症として、脳ヘルニアがあります。脳の腫れ・腫瘍などがある場合、 検査によって脳がずれて様々な症状を来たすことです。心配なときは頭部 CT を撮影して脳 ヘルニアの危険がないことを確認し、検査の危険性よりも検査による利益が大きいと判断 したときのみ検査を行います。 実際には、症状や診察の結果から必要なものを選んで行います。 ③入院後の治療と今後の方針 入院後の治療・退院の目安などは、発熱の原因によって違います。多くの場合点滴による 水分の補給を、また必要に応じて抗生物質の点滴・吸入や鼻汁の吸引などを行います。 髄膜炎・尿路感染症・敗血症・重症の肺炎などいくつかの重篤な病気が否定されれば、お 子さんの発熱についての心配はずっと小さくなります。その場合、多くは風邪のウイルス による感染で、数日で解熱することがほとんどです。 入院中は、原因に応じた治療とともに、新たな症状の出現や全身状態の悪化などがないか 厳重に経過観察します。万一、そうした徴候が出現した場合は上記検査などを繰り返して お子さんの状態を再評価します。
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