第4章 運輸機械

第4章
運輸機械
1. 自動車
[Ⅰ]中国自動車産業の概況
中国の 2001 年自動車生産量は 233 万 4400 台となり、対前年度比 12.81%の伸びとなった。
2000 年にイタリア、イギリスを上回り、世界第 8 位になり、目下第 7 位のカナダに肉迫し
ている。2000 年度及び 2001 年度の生産内訳を見ると下記円グラフのようになっている。
(グラフ 1 参照)
2000 年
2001 年
グラフ 1:2000 年、2001 年の自動車生産台数比較
中国自動車産業の特徴の一つとして、商用車が全体の 7 割を占める傾向は大きく変わら
なかったが、トラックの伸びが低くなり、バス、乗用車の伸びが大きくなった。2001 年末
には WTO 加盟が決定し、自動車価格低下を期待したユーザーによる買い控え現象が 2001
年後半にあらわれたにもかかわらず、13%の成長を達成している。
以下トラック、バス、乗用車に分けて概況を説明したい。
(1)トラック産業
2001 年の生産台数 80 万 2400 台(対前年度比+5.02%)、販売台数 81 万 8400 台(同 5.62%)
となり、バス・乗用車に比し伸び率は低いものの、確実に増加している。販売状況につい
ても(グラフ 2 参照)に示すように伸びている。
又、伸びは生産量のみならず、技術水準も伸びており外国メーカー(いすゞ、日産ディ
ーゼル、ベンツ、ボルボ等)の技術導入が進み、中型、大型トラックの海外輸出も始まっ
た。
特に第一汽車は年間 20 万台以上を生産する世界的なトラックメーカーで、発展途上国を
中心に世界 55 カ国に年間 4 万台を輸出する企業に育っており、タンザニア、南ア、ウガン
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ダ等アフリカ諸国に現地組立工場を持つに至っている。中国製トラックのコストパーフォ
ーマンスは高く、ベンツやボルボを始め、いすゞや日産ディーゼル、日野、三菱等の日本
トラックメーカーも、続々と中国での現地生産を考え始めている。
2000 年
2001 年
グラフ 2:2000 年、2001 年のトラック販売台数比較
(2)バス産業
2001 年の生産台数は 82 万 8600 台(対前年比 18.24%)、販売台数 82 万 8300 台(同
17.46%)と大幅に増加した。生産台数の半分以上を 3.5m 以下の軽型バスが占めるが、2001
年は大型(10m 以上)中型(7m〜10m)小型(3.5m〜7m)も大きく伸びた。(グラフ 3
参照)
2000 年
2001 年
グラフ 3:2000 年、2001 年のバス販売台数日比較
民族系としてはアモイ金龍旅行車が新モデルの観光バスや都市バスを発売し、外資系と
しては、早くからベンツが大型バス現地生産を行なっているが、2001 年にはトヨタ自動車
が四川トヨタ汽車で中型バスコースターを、又日野自動車が瀋陽日野飛機で中型、大型バ
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スを、現代自動車が一汽延辺現通汽車で County や New Cosmos 、Gran Berd、長白山の
4 車種の発売を新たに始めた。
(3)乗用車産業
2001 年の乗用車生産台数は 70 万 3500 台(対前年度比+16.35%)、同販売台数は 72 万
1500 台(同+18.25%)と好調な伸びを示した。
(グラフ 4 参照)
2000 年
2001 年
グラフ 4:2000 年、2001 年の乗用車販売台数比較
2001 年度に新規発売された主な乗用車は天津汽車の夏利 2000、上海 GM の賽欧(Sail)、
一汽 VW の宝来(BORA)、神龍汽車の畢加索(PICASSO)、南亜汽車の派力奥(Palio)
等があり、これらは比較的廉価な家庭用車として、中国の 21 世紀入りを飾るエポックメー
キング車となった。一方、中・上級車においては広州本田のアコードや、上海 VW の Passat
は 2.5L 以上の大排気量エンジン搭載車を戦列に加え、車型充実を計り販売台数を伸ばした。
さらに、風神汽車は風神・(藍鳥)
(ブルーバード)を投入し、風神・(風度)(セフィーロ)
或は Sunny 投入を予定するなど販売量を増やしつつある。
2001 年度主要乗用車メーカーの生産・販売実績を資料 1 に示す。毎年右肩上りの直線的
な伸びを示しており、モータリゼーション真近かと思われる。
(注釈)上記セグメント
LUX:排気量=2.5L 超(AUDIA6 は、1.8L、2.4L 含む)
MED:排気量=1.6L 超、2.5L 以下
SML:排気量=1.0L 超、1.6L 以下
MINI:排気量=1.0L 以下
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<資料 1>
2001 年 1 月〜12 月国産乗用車トップ 10 メーカー別生産・販売台数
単位:台
メーカー
生産台数(台)
販売台数(台)
①
上海 VW
230281
230050
サンタナ、パサート
②
一汽 VW
133893
132700
ジェッタ、アウディー
③
天津夏利
51019
70326
シャレード
④
上海 GM
58543
58328
ビュイック、セイル
⑤
神龍汽車
53680
53190
シトロエン
⑥
広州本田
51131
51035
アコード
⑦
長安鈴木
43123
43090
アルト、カルタス
⑧
奇瑞汽車
30070
25099
⑨
吉利汽車
21171
21663
⑩
第一汽車
17094
17122
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備
紅旗
考
[Ⅱ]中国自動車産業の今後
2001 年 11 月に中国は正式に WTO に加盟し、2002 年1月1日より輸入車及び部品の関
税引下げを実施した。乗用車・バス・トラックについて 2006 年 7 月迄毎年下記表のように
引き下げられることになっている。
%
①乗用車
エンジン排気量
'01 年
'02 年
'03 年
'04 年
'05 年
'06 年/1
'06 年/7
3000cc 未満
70
43.8
38.2
34.2
30
28
25
3000cc 以上
80
50.7
43
37.6
30
28
25
②バス(ガソリン E/G、ディーゼル E/G)関税率
%
シート数
'01 年
'02 年
'03 年
'04 年
'05 年
30 シート以上の大型バス
45
37.5
33.3
29.2
25→
20 シート以上 29 シート以下
60
47.5
40
32.5
25→
10 シート以上 19 シート以下
65
47.5
40
32.5
25→
空港内バス
10
4
4
4
4→
%
③トラック
車体総重量
'01 年
'02 年
'03 年
'04 年
'05 年
'06 年
5 TON 未満
50
37.5
33.3
29.2
25
←
5 TON〜14 TON 未満
40
30
25
23.3
20
←
14 TON〜20 TON 未満
30
24
22
20
←
←
20 TON 以上
30
21
18
15
←
←
5 TON 未満
50
37.5
33.3
29.2
25
←
5 TON〜8 TON 未満
40
30
25
23.3
20
←
8 TON 以上
30
24
22
20
←
←
中国が比較的強いバス・トラックの商用車部門は輸出産業に育っていくと思われるが、
弱い乗用車産業は以下のようになるのではないかと思われる。関税引下げを受けて、2002
年 1 月には、さっそく輸入高級車が約 3 割、エコノミークラス乗用車が約 1 割大幅に値下
がりしたが、この傾向は今後も続くと思われる(2000 年 1 月)
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<輸入車の値下がり例>
ラクジャリー車
ベンツ
エコノミー車
S6000
230 万元 (3450 万円)→155 万元 (2330 万円)
レクサス LS430
124 万元 (1860 万円)→88 万元 (1320 万円)
大宇トラベラー
19.6 万元 (300 万円)→18 万元 (270 万円)
又、輸入車の値下がりを受け国産車も直ちに 1〜3 割の値下げとなり、10 万元を割る乗用
車が 9 メーカー
そのうち 5 万元を割る車が 3 メーカーより発売される状況となった。
(2002 年 1 月)
<主要な国産車価格引き下げ例>
(単位:万元)
2001 年価格
2002 年価格
引き下げ幅(%)
紅旗
24
21.8
9.1
ビュイック G2.5(2.5LvF/G)
31
25.8
16.8
PassatB5
24.5
22.5
8.1
シャレード TJ7101
4.89
3.98
18.6
シャレード 2000
11.998
9.7
19.2
羚羊 SC7101(スズキカルタス)
11.27
9.88
12.3
11.2
10.38
7.3
12.5
11.98
4.2
10
9.28
7.2
美日(シャレードコピー)
5.99
5.55
7.3
吉利豪情(シャレードコピー)
4.49
3.99
11.1
富康新浪潮(シトロエン ZX)
14.1
13.3
5.7
JettaCI
11.7
9.98
14.7
海南マツダ
12.6
11.6
7.9
江鈴全順(フォードトランジット)
24.8
22.88
7.7
Pride(ハッチバック)
6.8
5.98
12
アルト
5.58
3.58
35
車種
SLX
Sail
SLX
AT
スタンダード M/T
これらの国産車値下げ競争は弱小自動車メーカーの体力を削ぎ落とし、自然淘汰を早め
ることになる。又、同時に自動車部品の値下げ圧力となり、非効率な小規模部品メーカー
の自然淘汰も早め、21 世紀初めの中国自動車産業界戦国時代と再編成の幕開けとなると思
われる。
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2002 年度はこの戦国時代始まりにふさわしく、資料 2 のように多くの乗用車の市場投入
が計画されている。世界の有名メーカーの代理戦争で最後迄勝ち残るメーカーはどこにな
るか、予断を許さない状況である。
<資料 2>
'02 年に市場投入が計画されている家庭用乗用車
メーカー
車種
排気(L)
上海 VW
ポロ(POLO)
天津トヨタ
NBC Ⅴ
広州ホンダ
オデッセイ
上海奇瑞汽車
風神汽車
東風汽車
南京 FIAT
長安 FORD
昌河汽車
又は
DAIHATSU
風神
Ⅱ
(日産セフィーロ)
シトロエン 2.0L
307)
PALIO
Siena
4
'02 年4月
1.6
'02 年後半
1.3〜1.5
'02 年後半
'02 年
853 戦略車(DAEWOO
(PEUGEOT
投入予定時期
3BOX
Matiz
Terios)
2.0
'02 年内
2.0
'02 年内
1.3、1.5
Ikon 又は Focus
スズキ
ワゴン R
'02 年内
'02 年 1 月
'02 年 9 月
'02 年末
1.2L 1.2
'02 年 7 月
海南マツダ
Familia323
'02 年末
ハルピン汽車
新型 MPV
'02 年 10 月
北京汽車
吉利汽車
HYUNDAI
'02 年 10 月
Sonata&Avante
ULIO1.3L
1.3
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'02 年 4 月
2.オートバイ
(1)中国オートバイ産業の歴史的概況 [図 1]
国の国産オートバイが産声をあげたのは 1958 年だが、その時の生産台数は 167 台だっ
たという記録が残っている。その後、1970 年後半には、約 50 万台前後の生産規模に到達
するが、『オートバイ産業』と呼ぶには未だ小さな存在であった。
1985 年から 1993 年にかけての中国は、『経済体制改革に関する決定』⇒『経済秩序の
整頓』⇒『整備整頓の終結宣言』⇒『改革開放ブーム』⇒『社会主義市場経済の正式導入』
という激動的なステップを経る事になるが、中国のオートバイ生産はこの経済改革の流れ
に乗って新しい産業としての基盤を固めて行く事になる。それは世界のオートバイ業界に
『巨大龍・中国』を強烈に知らしめる時代の幕開けであった。同時に、日本製等の輸入オ
ートバイの商標や技術を取り込んだ模倣時代の始まりでもあった。
1997 年の輸出を含んだ総生産は『1 千万台』の大台を突破、2000 年は 1154 万台、2001
年は 1237 万台に到達し、
『世界 NO.1』のオートバイ生産国としての地位を確固たるものに
した。因みに、世界総生産台数は約 2 千 2 百万台強であり、中国の生産台数はその半分以
上に達している。
一方、中国の国産オートバイの『輸出』は、1990 年には僅か 8 千台であったが、2000
年度は 198 万台、2001 年は 288 万台と急激な成長を遂げた。主要な輸出先はベトナムを主
とする東南アジア向けが中心であるが、輸出先国数は 134 ケ国以上にまで及んでいる。未
だ品質的弱点は残るが、中国製オートバイの低価格戦略は日系現地合弁企業が長年かかっ
て築いてきた事業基盤を根底から覆すメガトン級の破壊力を有している。
日本からの『輸入』オートバイは、1986 年頃からの免税恩典(華僑のクーポンビジネス
等)により、1993 年には約 43 万台(香港経由含む)の最高記録に到達するが、その後の
免税恩典の廃止や輸入車の登録ナンバー発給停止等によって、市場は急速に収縮、今や年
間 2 千台以下と云う惨憺たる状況で見る影もない。
(2)2001年 中国の国内市場 [図 1]
1997 年の国内向け生産台数(輸出不含)は約 1000 万台に到達するが、その成長速度と
台数規模が如何に凄まじいものであるかは、世界第二位のインドの 4 百万台、或いは日本
国内の 80 万台弱と比較して見ても良く分る。まさに飛ぶ鳥も落とす勢いの国内市場である
が、その中身には幾つかの課題も垣間見える。
中国オートバイ産業の総生産台数を支えている源泉は 13 億の人口に裏打ちされた巨大
な国内市場である事は紛れも無い。しかし、生産台数が約 1 千万台に到達した 1997 年以降
の国内市場の動向を観察すると、今までの継続的な右肩上がりの市場動向が一転して右肩
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下がりへ突入している事が分る。国内市場の縮小分を輸出用オートバイの増量で補う事に
より、総生産台数の伸張を下支えしているという構造である。国内市場の下降減少の理由
は、オートバイの有力市場である中国沿海省の 114 の都市(前年の規制は 84 都市)が行っ
ているオートバイの市街地への乗り入れ禁止や走行制限規制(登録番号の発給停止 82 都市、
発給制限 32 都市)に起因するところが大きい。都市部のこのような規制は、交通インフラ
の未整備なども手伝って年々強化される傾向であり、今後も緩和される可能性はあまり期
待できない。窮余の策として、オートバイメーカーは内陸部や農村地域に広がる新市場の
開拓に方向転換する事を試みているが、現時点では都市商売の減少分を農村部で見出すま
でには至っていない。今後は農村地域のお客様の求める『品質と価格要件を備えた商品』
の創造的開発の実現が、この危機を乗り切る重要な鍵となるであろう。
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
01
20
00
20
99
19
98
19
97
19
96
19
95
19
94
19
93
19
92
19
91
19
90
19
89
19
88
19
87
19
86
19
85
19
84
19
83
19
82
19
81
19
80
19
58
19
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(3)中国からのオートバイ輸出
[図Ⅱ]
1999 年以降に急増した輸出により、品質やサービスのトラブル、知的財産権侵害、アンチ
ダンピング等の問題が世界的規模で頻発し、『低価格と低品質』が中国オートバイの代名詞
となった。中国政府は 2001 年度から量産品質とサービスレベルの条件を満たした企業群か
ら選ばれたメーカーにのみ輸出金額を割り当てるという『輸出無償入札制度』を打ち出し
て不名誉な代名詞の払拭に躍起になっている。輸出台数の 6 割強がベトナムに集中してい
る事もあって、ベトナムの中国に対する警戒感は極めて高く、関税変更等による対抗的措
置が取られつつある。中国と日本の間で起こった農業三品のセーフガードを彷彿とさせる
事象である。最近は、中国政府の指導もあって、ベトナム以外の新規国開拓に注力してお
り、米州市場でその効果が徐々に出始めている。
(4)中国における知的財産権
中国のオートバイ産業は、輸入モデルを『模倣』する事によって発展したと言っても過
言ではない。最近では、模倣する事によって大企業に成長した中国メーカーが零細企業に
自社製品を『模倣』されて、『弱肉強食』ならぬ『強肉弱食』に陥るという皮肉な現象すら
起き始めている。このような『模倣』が当たりまえの如く繰り返されるならば、国際的な
信頼を失うばかりでなく、最も大切なお客様からの信頼を喪失し、延いてはオートバイ産
業としての存在基盤すらも霧消してしまう事になりかねない。しかしながら、この問題は
被害者である個々の企業が単独で対応して解決できるような生易しいものではない。幸い
にも、中国当局は 2000 年の『全国偽造品取締協調小組』による集中取締り、2001 年から
は『市場経済秩序整頓規範化指導小組』による秩序ある市場経済の環境作りをスタートさ
せており、改善の兆候が到来しつつあると言える。この機会を捉えて、日本のオートバイ
業界も、中国の関連当局やメーカーに対して『知的財産権の研究と啓蒙活動』を積極的に
展開していく事が重要且つ効果的な方策だと考える。急がば回れの精神である。
(5)品質・環境・安全に係わる法体系と業界の整備
中国のオートバイ産業のアキレス腱と言われた品質レベルは、『量が品質を鍛える』の格
言通り、その向上には目を見張るものがある。中国の法規体系も、運用制度の曖昧な『産
品目録制度』から『型式認証制度』、『生産認定工場制度』、『車両新製品監督公示制度』等
の新しい法規体系の導入が明示されている。更に『環境・安全』についても、ヨーロッパ
並の排ガス規制値と安全基準を導入する事が既に打ち出されている。現在、正式に登録さ
れているオートバイメーカーは 155 社だが、バラ部品等を購入して組立てを行っている未
登録のパパママ工場を含めると 300 社以上あると推定されている。今後これらの新しい法
-81 -
体系が導入されると、業界整備は急ピッチに進み、最終的には 15 社程度しか生き残れない
のではないかという声もあるが、いづれにしても、2002 年 4 月前後には具体的な新法規体
系の打ち出しが発表される事になっている。
(6)WTO加盟と中国オートバイ産業への影響
日系のオートバイ各社が、生販コストの低い海外の国や地域で、自社製品の『生産/販売』
拠点を構築してきたのは衆知の事実である。巨大な二輪市場である中国大陸もこの例外で
はない。日本のオートバイメーカーは、自社製品の生産と販売を行う合弁企業や技術提携
先の拠点を積極的に築いて来た歴史がある。このような経緯を考えると、既に進出してい
る外資合弁企業が自己の体力向上のための戦略見直しを行う事は当然あるだろうが、中国
の WTO 加盟が起爆剤になって、新たな外資の進出に拍車がかかると言うのは考え難い。
更に、中国の WTO 加盟後に発表されたオートバイ関税率の引き下げ計画に影響されて、
海外モデルが中国大陸内に大量に流れ込むという事も考え難い。何故ならば、現在の完成
車オートバイの輸入関税率は優遇税制によって既に 55%になっている事、更に、最終税率
の 45%になるのは加盟後 2 年後以内である事、そして、関税以外の税制度に変更はない事
などにより、輸入オートバイの販売価格がそれほど安くなるとは思えないからである。例
外的には、公安用や警護用の大型オートバイ、趣味性の高いオフロードタイプ、1000cc ク
ラスの大型オートバイ等の可能性が少しばかりあるだけであろう。
WTO 加盟によって、中国オートバイ産業が最も大きな影響を受けるのは、知的財産権
の侵害問題に関する外圧ではないかと考える。最近、政府も『車両新製品監督公示制度』
の導入、『専利法の改定』や裁判官の再教育等による法曹界の再整備、そして現場における
取り締まりの実施強化などを相次いで打ち出しつつある。近い将来、商標権、意匠権や特
許権といった商売の基本的権利を正しく理解した上で、同じ土俵の中で正当に戦い、合法
的に解決できるような時期が到来する事を期待したい。社会的且つ法的な規範を守れない
企業が隆盛するようなオートバイ産業界に未来はない。
(7)中国オートバイ産業の将来性
●普及率からみた将来性
中国のオートバイは、総生産台数と総保有台数では『世界一』を誇る国へと成長した。
しかし、観点を変えて 1000 人当たりの保有台数率を見てみると、中国は僅か 32 台であ
り、日本の 120 台、台湾の 420 台と比較すると極めて低いレベルである。しかし、現時点
の『世界 NO.1(総生産台数)』の顔は氷山の一角であり、その水面下には日本や台湾も真
っ青の『宇宙的巨大市場』が潜在していると云う事でもある。
●地域別の台数構成比から見た将来性
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地域別の台数構成比(農村 48.9%、中小都市 40.4%、大都市 10.6%)を見ると、農
村市場の位置づけは未だ高くなく、将来的な市場としての可能性を残している。中国の
保有台数率が日本や台湾のレベルに至る鍵は、まさに農村市場が握っていると言える。
今後はこの新市場の農村地域で、日系合弁企業を含む中国のメーカーが天下分け目の陣
取り合戦をする事になる。中国の国内市場は将来が楽しみな巨大な未成熟市場である。
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