平成16年度研究成果概要 - 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合

平成16年度研究成果概要
(1)特別研究
府内企業の技術又は当所の技術力の発展に極めて重要であると思われる研究で、国・事業団等からの
受託・補助事業、産学官の連携により行われる中核的研究事業によって推進される研究。
《中小企業技術開発産学官連携促進事業》
中小企業の活性化及び新規産業の創出を促進し、ものづくりを支える地域の中小企業が抱える技術的
課題を解決するため、公設試験研究機関を中心とした広域的な産学官の連携の下に、地域における技術
開発を実施し、中小企業の技術開発能力の向上を図り、技術開発成果の普及促進等を推進する事業。
[題
目]ナノポリイミド微粒子による精密コーティング技術の開発
[期
間]H14.9.1~H17.3.31
[担当者]化学材料:浅尾勝哉、山元和彦、吉岡弥生、舘
秀樹
[成果の概要]成果普及発表会を 2 回開催した。また、本事業で開発したナノポリイミド微粒子による
精密コーティング技術の応用が可能な分野とその市場規模、および他産業界での本技術を利用した市場
の可能性など、耐熱、絶縁、被覆機能を持つ機能性塗料コーティング材料の市場動向を調査した。
《地域新生コンソーシアム研究開発事業》
地域における産学官の強固な共同研究体制(地域新生コンソーシアム)を組むことにより、高度な実用
化研究開発を行い、地域の新規産業の創出に貢献しうる製品・サービス等を開発することを目的とした
経済産業省の事業。
[題
目]次世代超精密加工のための環境補償装置の開発
[期
間]H15.7.1~H17.3.31
[担当者]加工成形:山口勝己、足立和俊、本田索郎
制御情報:大川裕蔵
金属材料:小栗泰造
[成果の概要]実用化に向けた性能試験・機能試験・信頼性評価などの詳細評価を実施するとともに、
環境一定制御チャンバーと環境補正装置の改造・改良、及び制御システム全体のチューニング・補正機
能の最適化を実施し、環境補償の限界を同定した。また、アイプロテクション金型とBinary型回折格子
金型の製品金型加工によって環境補償効果の有効性を実証した。チャンバー内の気圧を制御・補正した
環境下で超精密加工を行うこと自体が全く新しい試みであり、環境補償装置を稼動する際に加工機周辺
装置で発生する種々の課題の解決のため、これら周辺技術に関する研究開発を併せて実施した。
[題
目]Cr-P-C合金めっき及びNi-W-P合金めっきの基礎研究
[期
間]H15.7.1~H16.3.31
[担当者]金属表面処理
:森河
務、中出卓男、横井昌幸、左藤眞市、西村
崇、塚原秀和、浦谷
文博
金属材料
:武村
守、出水
敬
環境・エネルギー・バイオ:中島陽一、山崎
清
[成果の概要]イオン交換膜プロセスを導入したCr-P-C合金めっき装置を試作し、陽極材料とめっき装
置材料の検討、電極配置、めっき皮膜のつき回りなどを調べた。また、金属クロムの補給法を確立する
とともに不純物の蓄積の影響とその除去法を検討し、連続めっきにおける液の安定性などを調べるとと
もに、密着試験、応力試験、硬さ測定等のめっき皮膜物性の評価を行った。さらに、高硬度が要求され
るロールの試作を支援した。次に、Ni-W-P合金めっきの表面物性(表面硬さ、酸化層形成による影響、
耐摩耗性など)を調べるとともに小規模無廃浴めっき装置を用いて、高温下での利用を前提としたガラ
ス成型用金型へのめっき試作を行った。
[題
目]省エネ型高精度マイクロ流量センサの開発
[期
間]H.15.7.1~H17.3.31
[担当者]電子・光材料:村上修一、井上幸二、田中恒久、松元光輝、宇野真由美
制御情報
:大川裕蔵
[成果の概要]昨年度までに試作したセンサチップのダイアフラムは耐振動性に欠けていたことと、信
号処理方式を変更したことから、センサチップ上に白金薄膜で形成するヒータ兼温度センサとダイアフ
ラムの構造や配線について設計変更を行った。その後、センサチップを試作し、流量特性、耐圧性など
良好な結果が得られた。製品化を実現するため、同一設計でセンサチップの作製を依頼し、現在までに
ほぼ予想通りの結果を得ている。一方でセンサチップのパッケージング方法についても検討を重ね、低
コスト化、高スループット化、高い歩留りが期待できる方法を考案した。
[題
目]超高速核酸増幅による臨床現場用遺伝子検査キットと装置の開発
[期
間]H.16.9.1~H17.3.31
[担当者]電子・光材料:森脇耕介、福田宏輝、楠
情報電子部
:四谷
文経
任
[成果の概要]流路を形成したスライドガラス大の検査チップとそれを装填し高速 PCR 反応を誘起する
装置の開発を目的としている。検査チップを樹脂で量産するための金型の母型となる微細構造(フィル
タリング機能を有する)の形成に必要な加工プロセスを開発した。フィルタ構造(ナノフィルタ)を、
シリコン基板上の形状を電鋳によってニッケル材に転写し、これを金型として樹脂製品の量産を行うた
めに、電子ビーム描画とエッチングにより、ナノフィルタ構造を実際に作成した。フィルタ前後につな
がる流路と同等以上の開口面積がフィルタ部に必要であり、実験により、隙間 200nm 程度で深さ 4μm
程度のエッチングが可能であることを実証した。
[題
目]インテリジェントナノ粒子の大量製造とその複合化技術の開発
[期
間]H.16.9.17~H17.3.31
[担当者]化学材料:浅尾勝哉、山元和彦、吉岡弥生、舘
秀樹
[成果の概要]インテリジェントナノ粒子の連続合成法のモデル装置を試作し、実証実験を行った結果、
従来の実験室的合成法をスケールアップしたバッチ式法に比べ粒度分布、収率、再現性に優れているこ
とが分かった。次に、インテリジェントナノ粒子の電着塗料化技術としては、電着塗装液の安定性およ
び塗装膜に与える影響を調べた。また、ハイブリダイゼーション法によるポリイミド粒子の乾式表面改
質、超臨界凍結造粒法によるポリイミドナノ粒子と機能性基材との微細混合および流動性の向上、回転
流動層を用いた流動化特性の解析による機能性ポリイミド粒子のハンドリング技術の確立、およびハイ
ブリダイゼーション法による不定形粒子の球状化処理に取り組み、ポリイミド微粒子の造粒、セラミッ
クスとの複合化、多孔体の調製に成功した。
《戦略的基盤技術力強化事業》
中小企業の技術力・国際競争力を強化し、我が国製造業全体の国際競争力の優位や、我が国の経済活
性化につなげるため、基盤技術力の強化を図ることを目的に、中小企業総合事業団が研究開発を委託す
る事業。
[題
目]光学ガラス素子用超精密金型設計・製造技術の確立
[期
間]H.15.9.1~H18.1.31
[担当者]加工成形:大山
博、藤原久一、中塚藍子、木下俊行、本田索郎
[成果の概要]高精度なレンズ形状精度を左右する成型時のガラス収縮現象を、シミュレーション技術
を用いて明らかにした。さらに、硝材の諸物性測定、硝材、金型、雰囲気の加熱冷却時の熱分布測定と
解析し、それぞれの熱伝達率を求め、その値を適応することにより、成型品の精度を予測することが可
能になった。ブルーレイ用ピックアップレンズ金型の加工では、斜軸クロス研削方式の採用と機上計測
装置の精度管理技術の把握、形状補正プログラムの採用で、形状精度77nm、表面粗さRa8nmを達成す
ることができた。レンズアレイ金型加工については、ベースマシーンの基本性能のみで、形状精度600nm
が実現できた。
[題
目]マグネシウム合金のプレス成形シミュレーション
[期
間]H.15.10.1~H18.1.31
[担当者]加工成形:白川信彦、宮田良雄、中塚藍子、中本貴之
[成果の概要]輪郭形状測定機を用いて、手仕上げ修正された超硬金型の三次元形状測定を行い、IGES
面データを作成・出力し、コンピュータシミュレーションでの金型形状について検討した。コーナ部の
ダイ肩半径,直辺部からコーナ部にかけての可変R付けの長さ、しわ抑え力、ブランクのサイズおよび
コーナカット量を検討項目に取り上げ、種々の条件がプレス状況に及ぼす影響を明らかにした。また、
実際のプレス成形に近い状態で摩擦特性を評価できる試験金型を開発することを目的として、ハット曲
げ式高温トライボシミュレータを試作した。該当マグネシウム合金板と潤滑剤を対象に実験を行い、摩
擦係数の算出や潤滑剤の性能評価に十分適用可能であることを確認した。
[題
目]自律移動ロボットのリアルタイム3次元計測用超音波マイクロアレイセンサに関する研究
[期
間]H.15.9.10~H18.1.31
[担当者]電子・光材料:田中恒久、李
昇穆、井上幸二、筧
芳治、岡本昭夫
[成果の概要]超音波マイクロアレイセンサの共振周波数の均一化を目指して、フッ素系樹脂を用いた
超音波マイクロアレイセンサの作製プロセスの開発を行った。フッ素系樹脂はスピンコート法により簡
単に塗布かでき、熱処理することにより強い耐薬品性を示す。その性質を利用してフッ素系樹脂を異方
性エッチング液の保護膜として使用した。フッ素系樹脂を表面膜として用いた超音波センサを試作し受
信特性を評価した結果、共振周波数分布を±3%以下に抑えることに成功した。開発した超音波マイクロ
アレイセンサは、フェイズド・アレイ方式の電子走査に最適な特性を有していることが示された。
《産業技術研究助成事業》
産業技術力強化の観点から競争的研究資金を活用して国内の、大学・国立研究所・独立行政法人・公
設試験研究機関等の若手研究者が産業応用を意図した研究開発に取り組むことにより、産業界のニーズ
や社会のニーズに応える産業技術シーズの発掘や産業技術研究人材の育成を図ることを目的として実
施されるNEDOの事業。
[題
目]多孔性ポリイミドナノ微粒子を用いた低誘電率層間絶縁膜の開発
[期
間]H14.9.1~H17.3.31
[担当者]化学材料:舘
秀樹、吉岡弥生
[成果の概要]絶縁膜に用いる多孔性ポリイミド微粒子は、反応条件・濃度・反応時間等により微粒子
のサイズ(500nm~1μm程度)を任意に選択することが可能であり、単分散の多孔性ポリイミド微粒
子を得ることができた。次に、155nmポリイミド微粒子を含有する脂肪族ポリイミド溶液を調製しスピ
ンコートにより薄膜を作製した結果、良好な膜状態の薄膜が得られ比誘電率はεr=2.55を示し、多孔性
ポリイミド微粒子添加による比誘電率の低減効果が得られた。また、ポリイミド前駆体溶液を調製し、
シリコンウェハー上にスピンコートにより薄膜(膜厚ca.0.6~1.0μm)を作製し、加熱イミド化・溶媒
洗浄を行い、多孔性ポリイミド膜を基板上に直接作製した。得られた多孔性ポリイミド膜の比誘電率は
εr=2.20と非常に優れた絶縁性能を示した。
《地球環境保全等試験研究費》
環境行政のニーズに対応するため、「試験研究の重点的強化を図る必要がある事項」を毎年度定める
とともに、関連する研究分野ごとに「総合研究プロジェクト」を編成し、試験研究の総合的推進を図る
環境省の事業。
〔題
目〕生分解性プラスチックの適正使用のための分解菌データベース作成に関する研究
〔期
間〕H14.9.10~H17.1.31
〔担当者〕環境・エネルギー・バイオ:増井昭彦、藤原信明
〔成果の概要〕全国8ヶ所の土壌を採取し、含水率の測定を行った。さらに、生分解性プラスチックを
乳化させた培地上に、これらの土壌抽出液を接種し、分解によって形成されるハロー数を定量した。そ
の結果、全国8ヶ所の土壌中の分解菌数は、ポリカプロラクトン(PCL)分解菌の菌数とほぼ同じである
ことがわかった。さらに、土壌以外に2ヶ所の河川水サンプルについて、分解菌のスクリーニングを行
った。その結果、河川水中の一般微生物数及び分解菌数は、土壌サンプルの場合に比べて約2桁少ない
ことがわかった。
《環境技術実証モデル事業》
既に適用可能な段階にある環境技術について、エンドユーザが安心して使用できるよう、その環境保
全効果等を第三者機関が客観的に実証する事業を試行的に実施する環境省の事業。
[題
目]小規模事業向け有機性排水処理技術実証試験
-実証試験装置から発生する汚泥の評価-
[期
間]H16.6.30~H17.3.31
[担当者]環境・エネルギー・バイオ:岩崎和弥、井本泰造
[成果の概要]平成15年度から環境省が実施している環境技術実証モデル事業「小規模事業場向け有機
性排水処理技術実証試験」について、今年度も環境情報センター、食とみどりの総合技術センター、関
西環境管理技術センターと共同で2ヶ所の排水処理施設について実証試験を実施した。当研究所では食
とみどりの総合技術センターと協力して、排水処理施設から発生する汚泥の化学成分及び肥料効果等に
ついて評価した。
《皮革産業振興対策補助事業》
大学、企業、公設試等の皮革研究機関において革の製造、加工に関連する技術開発を行うことにより、
皮革関連産業の振興を図ることを目的とした経済産業省の事業。
[題
目]海外産ウエットブルーの実用化に関する研究
[期
間]H16.11.29~H17.2.25
[担当者]皮革応用:奥村
章、稲次俊敬、道志
智
[成果の概要]ウエットブルー(WB)の特性評価(即時分析、溶脱クロム量、溶脱窒素量)、製品革
の品質評価(化学的・機械的性質)、試作革の品質評価(風合官能検査)について検討した。その結果、
今年試験輸入した中国およびスペイン産WBは各種用途の製品革として実用化できることが実証された。
また、同一処方による試作革製品の結果から、これまでの各々のWB間の比較が可能になり、今回試験
輸入したスペイン産WBは、この数年間のWBの中で、ソフトナッパ袋物用革に適していることが明らか
になった。
《実用化の可能性試験》
実用化のための可能性試験が望まれる新技術(研究課題)について、科学技術振興機構
研究成果活
用プラザ大阪から大学等へ研究委託等を行い、実施する試験研究。
[題
目]ナノ・ミクロポリイミド微粒子の製造方法に関する研究
[期
間]H16.10.1~H17.3.31
[担当者]化学材料:浅尾勝哉、山元和彦、吉岡弥生、舘
秀樹
[成果の概要]本研究事業において、新規ポリイミドゲルの開発を行った。新規ポリイミドゲルは従来
のものと比べて、合成方法が簡単で、触媒や脱水剤などの添加剤の必要が無く、自己支持性があり安定
である事が分かった。また、新規ポリイミドゲルを用いて30nmのポリイミド微粒子の新規調製方法を
見いだした。得られたポリイミド微粒子は比表面積が非常に大きく優れた熱的性質を示した。
《科学研究費補助金》
人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研
究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、ピ
ア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対して日本学術振興会が助成を行う。
[題
目]ポリシランの紫外光分解を利用したマイクロレンズアレイの作製に関する研究
[期
間]H16.6.18~H17.3.31
[担当者]化学材料:櫻井芳昭、佐藤和郎
[成果の概要]ポリシランとしてpoly[methyl(phenyl)silane](PMPS)を用い、ガラス基板上にトルエ
ン溶液からのスピンコート法により製膜し、直径10mm円形パターン配列にUV光分解パターニングを
行った。この試料を、カチオン性ポリマーコロイド分散水溶液(ハニー化成より提供, ハニレジスト
E-2000)に15分間浸漬し、ポリマー粒子の吸着を行った。引き上げ後、脱イオン水でのリンスを行い、
大気下オーブン中で130℃にて加熱処理を行った。得られた試料の表面形状観察から、広範囲に渡り凸
レンズ状の構造が形成されていることを確認した。
《大阪府試験研究機関提案型調査研究事業》
大阪産業の再生と府立試験研究機関の技術力向上のため、創出が必要な産業分野で国の提案公募型プ
ロジェクト(国プロ)や企業との共同研究につながる調査研究課題を庁内公募し、外部評価制度を取り
入れた上で課題を選定し、技術的可能性、事業化可能性等の調査研究を実施するとともに、成果を広く
普及させるため府立特許情報センターが成果の特許化を図る。
[題
目]分散安定性に優れた機能性芳香族ポリアミド微粒子の開発
[期
間]H16.4.26~H17.3.31
[担当者]化学材料:吉岡弥生、
[成果の概要]表面改質による効果を最大限生かすため、粒子表面における多量の官能基の導入を試み
た結果、例えばモノマー単位あたり2個のアミノ基を有するような微粒子の合成に成功した。この粒子
は多くの官能基を有するとともに、単分散性に優れた球状粒子でありかつ粒径も50~500nmの間でコン
トロール可能である。ポリアミド微粒子と機能性化合物との反応においては、粒子の特定溶媒による処
理が非常に有効であることがわかった。また、SEMによる形態観察、粒度分布、ゼータ電位などの測定
により、アミノ基を有するポリアミド微粒子はそれ自身で極性の高い溶媒に優れた分散安定性を示し、
機能性化合物による表面改質により疎水性や撥水性の付与も可能となった。
[題
目]誘電ポロメータ型赤外線センサに用いるセンサ材料の開発(II)
[期
間]H16.4.26~H17.3.31
[担当者]電子・光材料:村上修一、松元光輝、佐藤和郎、宇野真由美
[成果の概要]Pb(Sc,Ta)O3-PbTiO3固溶体薄膜、Ba(Ti,Zr)O3(BTZ)強誘電体薄膜、(Ba,Sr)TiO3(BST)
強誘電体薄膜について検討した。Pb(Sc,Ta)O3-PbTiO3固溶体薄膜に関しては化学溶液堆積法により製
膜条件の最適化を試みたが、良好な結晶性を得ることはできなかった。同時に、非鉛強誘電体として魅
力的なBTZ薄膜について、レーザアブレーション(PLD)法とスパッタリング法により製膜を試みた。
それぞれの製膜方法で、製膜条件、熱処理条件を工夫し、誘電率温度係数(TCD)の最高値として
0.7 %/K(at 25 ℃)を得ることができた。その結果、TCDと薄膜の内部応力の相関関係を明らかにし、今
後TCDを高くするための指針が得られた。
[題
目]中小企業情報化支援ウェブデータベース構築及びポータルサイト立ち上げ
[期
間]H16.4.26~H17.3.31
[担当者]制御情報
:新田
産業開発研究所:松下
仁、竹田裕紀
隆、越村惣次郎
[成果の概要]LINUX・PostgreSQLなどに代表されるサーバ技術・PHPに代表されるCGIプログラミ
ング技術・判定のための人工知能技術の習得により、目指すべきポータルサイトがほぼ完成した。開発
したポータルサイトは、①認証処理によるプライバシーの保護、企業が目指す経営目的の達成率計算、
②人工知能による客観的な達成率判定、③現状達成率を向上するための具体的な情報化指針の提示、④
情報化指針を実現するための技術的補助資料の具備、⑤回答再現性の高い質問方式、⑥回答再現性の高
さゆえにできる自立情報化、⑦中小企業の情報化を支援する公的な支援施策一覧を装備しており、中小
企業の情報化を継続的、半自動的に支援できる仕組みがほぼ完成した。
[題
目]表面保護膜としての透光性硬質炭素系薄膜の開発
[期
間]H16.4.26~H17.3.31
[担当者]電子・光材料:松永
崇
[成果の概要]DLC薄膜作製時にC2H2ガスとC4F8ガスの流量比を変化させ、可視光透過率の向上を図
った。従来のDLC薄膜は、波長750nm以下の光の透過率は非常に低い。C2H2ガスとC4F8ガスの流量比1:
1の場合、長波長~400nmにおいて透過率が約80%以上を示し、可視光の透過率が大幅に向上した。保
護膜としての性能は、耐摩耗性のC2H2ガス、C4F8ガス流量比、基板biasそれぞれに対する依存性を評価
することで検討した。各試料に往復摺動試験を行い、摩耗断面積を比較したところ、C4F8ガス流量の増
加、基板biasの減少に伴って摩耗量が増加し、耐摩耗性が低下することが分かった。
[題
目]メモリー機能を有する有機トランジスタの作製に関する調査研究
[期
間]H16.4.26~H17.3.31
[担当者]化学材料
:櫻井芳昭
電子・光材料:佐藤和郎、村上修一
[成果の概要]シリコントランジスタに比べて、低電流、低動作速度でも有機トランジスタの最大の特
徴である軽量、柔軟性、低コストプロセスを最大限に生かすことのできる有機メモリーの作製を行った。
有機半導体層としてペンタセン、ポリチオフェンを用いて有機トランジスタを作製したところ、しきい
値電圧は目標値よりも数V高いながらも、動作確認ができた。また、フッ素系強誘電体膜を用いてトラ
ンジスタを作製したところ、ゲート電圧に応じてソースドレイン電流(Ids)の変調も確認することができ
た。
[題
目]環境負荷を低減した高強度アルミナ溶射皮膜の開発
[期
間]H16.4.26~H17.3.31
[担当者]金属表面処理:足立振一郎
[成果の概要]下地溶射皮膜として環境負荷の低いチタンとアルミの混合粉末を溶射材料として使用す
ることを目的に、混合比率、プラズマ出力などの条件と密着力の関係について調べた。溶射中のアルミ
ナ粒子の温度と速度を計測したところ、プラズマ出力が高いほど温度と速度が高くなることがわかった。
プラズマジェットの中心部と外周部を通過する粒子では温度と速度が異なるために、プラズマの中心部
に溶射材料が到達するように溶射材料粉末の搬送ガスの流量をコントロールすればアルミナ溶射皮膜
の強度を高めることができた。その結果、チタン化合物とアルミからなる下地溶射皮膜を予熱し、アル
ミナを溶射すれば約60MPaの密着力が得られ、塩水噴霧試験による防食性能は、従来の皮膜に比べて良
好な結果が得られた。
[題
目]食の安全を確保する大阪版トレーサビリティ支援システム
[期
間]H16.4.26~H17.3.31
[担当者]制御情報
仁、石島
悌
食とみどりの総合技術センター:内山知二、内藤重之、田中
寛
産業開発研究所
:竹田裕紀、新田
:越村惣次郎、松下
隆
大阪府立大学
:竹安数博
[成果の概要]システムのモックアップを作成し携帯電話からの実績情報が収集可能な状態とし、生産
者の意見を参考にし生産現場に即した入力手段に改良を重ねた。これと平行して郵送方式や府政モニタ
ー制度などのインターネットの活用、食品に関するフォーラムなどでの集合自記式アンケートを通じて
生産者、消費者からの意見を収集し、本システムに求められる情報を明確にした。その結果、本システ
ムの利用に関して大きな期待が持てることがわかった。なお、本システムは府民の食に対する不安・不
信を解消するために開発したものであり、次年度からはJAと実証試験を行う。
[題
目]携帯機器用小型燃料電池の開発
[期
間]H16.4.26~H18.3.31
[担当者]化学材料
:野坂俊紀、浅尾勝哉、舘
務、西村
秀樹
金属表面処理
:森河
崇、横井昌幸
電子・光材料
:岡本昭夫、村上修一、松本茂生
環境・エネルギー・バイオ:中島陽一
:岩倉千秋、井上博史
大阪府立大学
[成果の概要]固体高分子型燃料電池(PEFC)の電極触媒に用いられる白金(Pt)は希少で高価であり、
燃料電池コストの削減のためには Pt の使用量の低減、触媒活性の向上、代替触媒の開発などが必要であ
る。今年度は燃料電池に関する調査、資料収集を実施し、5 つの個別テーマ(①シリコンの微細加工に
よる多孔質支持層の開発、②微粒子電極触媒材料の開発、③薄膜電極触媒材料の開発、④めっき技術に
よる新規電極触媒の開発、⑤燃料電池の評価・測定技術の確立)ごとに検討するとともに、基盤整備の
ための燃料電池評価装置の導入および触媒電極評価装置の整備を行った。
[題
目]燃料電池システム部品の開発
[期
間]H16.4.26~H18.3.31
[担当者]加工成形
:南
久、吉川忠作、奥村俊彦、藤原久一、中塚藍子、菊池武士、増井清徳
金属表面処理:塚原秀和
[成果の概要]電池セパレ-タの小型・軽量化に必要とされる、セパレ-タ用金型の微細溝の高精度加
工について検討した。その結果、亜鉛合金を放電加工用の電極材として用いた微細加工法を提案し、ス
テンレス鋼や超硬合金に対する微細穴や溝加工への適用効果を示した。また、放電加工機上で切削・研
削加工が行える放電切削(研削)複合加工システムを開発し、マイクロ流路の仕上げ加工に適用可能であ
ることを見出した。また、プラスチック射出成形シミュレ-ションを用いて、加工条件と成形加工性に
ついて調べ、射出成形加工が適用可能な条件範囲について解析した結果、セパレ-タの成形加工におけ
るゲ-ト位置、成形加工条件について、その有効性を示した。
《大阪府中核的研究事業》
府内産業の中核的技術課題を解決するため、大学の支援を得て、企業とともに技術の実用化、製品化・
商品化を目指して行う共同実用化研究。
[題
目]球状バナジウム炭化物含有マルチキャラクター型キャストマテリアルの高機能化およびその
応用に関する研究
[期
間]H16.4.1~H18.3.31
[担当者]金属材料
:橘堂
忠、武村
守、松室光昭、出水
敬
金属表面処理:上田順弘、浦谷文博
加工成形
:木下俊行
[成果の概要]低熱膨張率と強度・耐摩耗性を有する材料開発を目標として、従来の低熱膨張材である
鉄-ニッケル組成に、炭素、バナジウムを多量添加し、バナジウム炭化物の球状化処理を行った。その結
果、バナジウム炭化物は十分に球状化しており、熱膨張率も~5×10-6/Kを得ることができた。さらに
コバルトを添加して、更なる低熱膨張率を目指したところ、~3×10-6/Kの熱膨張率値を達成でき、ほ
ぼ従来市販の低熱膨張材と同等の性能を得ることができた。また、球状バナジウム炭化物の存在により、
硬さが鋳放しで約HRC20-23が得られるため、摺動摩耗による耐摩耗性の評価において、従来の低膨張
材として知られているインバーよりも2桁以上良好な耐摩耗性を示した。
[題
目]高濃度CO(一酸化炭素)ガスによる高速浸炭熱処理法の開発に関する研究
[期
間]H16.4.1~H17.3.31
[担当者]金属材料:水越朋之、星野英光、横山雄二郎、平田智丈
次長
:石神逸男
[成果の概要]高濃度COキャリアガスによるガス浸炭処理を実炉で実施し、処理進行中の処理雰囲気
計測値をもとに、被浸炭品表面での炭素流入速度と内部での炭素拡散状態を把握し、炭素濃度分布を導
く数値計算モデルの計算精度について検証を行った。その結果、現状では通常濃度COキャリアガスを
用いた浸炭処理の場合に比べ若干精度は劣るものの、高濃度COキャリアガス中での浸炭処理に対して
も有効であることが確認された。また炭素濃度分布数値計算ソフトを利用した計算結果から予測された
処理条件と処理後の濃度分布状態との規則性に関して、数学的に検討し拡散方程式から解析的に導ける
ことを示した。
[題
目]各種金属製品への高潤滑性硬質膜の適用に関する研究
[期
間]H16.4.1~H17.3.31
[担当者]金属表面処理:三浦健一
金属材料
:出水
敬
加工成形
:白川信彦
[成果の概要]業務用ミシン部品に通常CrN、孔有りCrN、通常DLC、孔有りDLC処理を行い、セミド
ライ条件下で性能評価を行った結果、微細孔が焼付き限界の延長に有効であることがわかった。通常
CrN、孔有りCrN、通常DLC、孔有りDLC処理した模擬金型を用いた円筒深絞り試験での潤滑油の性能
評価を行った結果、添加剤効果の少ないDLC膜では微細孔の有効性が顕著に現れることがわかった。す
なわち、添加剤の低減、セミドライ等のより過酷な加工条件下において、微細孔がより有効に作用する
可能性が示唆された。次に、市販バリカン刃への適用による性能評価を行った。現行市販品であるTiN
被覆材、通常CrN被覆材および微細孔CrN被覆材のセミドライ環境下での稼働実験を行った結果、実機
の都合で微細孔CrN被覆材の焼付き限界は評価することができなかったが、微細孔TiNの適用が焼付き
限界の延長に有効である可能性が示唆された。
[題
目]プラズマ成膜法を利用した炭素系複合薄膜による表面高機能化技術の開発
[期
間]H16.4.1~H18.3.31
[担当者]電子・光材料:岡本昭夫、松永
繊維応用
:田原
崇、吉竹正明
充
金属表面処理:山内尚彦、上田順弘
化学材料
:櫻井芳昭
[成果の概要]プラズマアシストの効果により比較的、密着性と膜強度の良好なフッ素樹脂薄膜が得ら
れ、他の無機材料とのナノ複合化により、撥水性と他の性質(硬質、導電性等)とを複合化させた機能
の発現が確認できた。実用上も現状撥水処理と同等以上の性能(撥水性、耐ワイプ劣化)が得られた。
また、高密度プラズマCVDによる高分子フィルムやプラスチック基板上へのDLC薄膜作製により、酸素
や水蒸気のバリア機能を付与できることがわかった。フッ素樹脂フィルムの接着性改善として、プロパ
ルギルアルコールを用いたプラズマ重合によって、接着性の良好な膜が作製できた。塗装面のDLCによ
る表面改質としては、ウレタン樹脂上に様々な条件のDLC膜を作製し、マーチンデール摩耗試験を行っ
た結果、複合DLC膜によって良好な耐摩耗性が得られることがわかった。
[題
名]有機機能性材料のナノ・ミクロ構造制御および評価技術の確立とその実用化に関する研究
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]化学材料:木本正樹、櫻井芳昭、日置亜也子、井上陽太郎
皮革応用:汐崎久芳
[成果の概要]UV-LIGAによる微細加工を利用したマイクロマシンの作製として、均一性に優れた電極
の作製を試みた。その結果、ITO基板へのめっきは触媒の選択により可能であり、レジストあるいはITO
への選択的なめっきは、レジストの変更により可能性であることが示唆された。撥水性材料として、
アクリルシリコーン/アルコール溶液中にテトラエトキシシラン、触媒などを加えて、シリカ微粒子分散
液を調製し、合成温度、触媒添加量などを最適化することにより、透明性と撥水性の両立を図ることが
できた。高粘度水溶液のNMRによる解析として、外部標準液(リン酸重水素溶液)を作製し、試料を
希釈せずまたは各種重水素化溶媒により希釈して測定を行った。重メタノールで希釈し測定を行うと比
較的S/N比の小さなスペクトルが短時間で得られ、ピークの強度比から、リン脂質の量の推定が可能に
なった。
(2)指定研究
府内企業の技術の高度化、新技術・新製品の開発を誘発する研究及び産業において有用かつ重要と思
われる応用技術研究。
[題
目]電波方式認識(RFID)による位置特定手法の研究
[期
間]H16.4.1~H17.3.31
[担当者]制御情報:朴
忠植、中谷幸太郎、石島
悌
[成果の概要]RFID(Radio Frequency-Identification:電波方式認識)を用いた高精度位置検出方法
の検討として、研究開始時に提案した三角形の各頂点に配置したリーダーアンテナからの位置特定範囲
について検討した結果、精度が良くないという結論に達した。次に、複数台のリーダーアンテナからの
出力電波の強度を制御する位置特定方法を考案・検討し、実験により位置特定精度が向上する可能性を
見出した。さらに、本手法をベースとした、移動する人、物の位置特定が可能なアルゴリズムの検討を
行った。また、タグの傾きによる位置特定誤差の補正方法を考案し、実験により補正可能であることが
分かった。
[題
目]高次構造制御技術による高機能セラミックス材料の開発
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]化学材料:垣辻
篤、稲村
偉、久米秀樹、西川義人、呉
長桓
[成果の概要]アルミナ系セラミックスの微細構造制御として、液相法を用いたナノ粒子の合成方法を
検討した結果、液相法だけでなく、気相法による組織制御についても原料粉末の合成に目途をつけるこ
とができた。次に、悪臭、有毒ガス除去用ゼオライトの開発として、低コストで作製できる天然ゼオラ
イトを含むリン酸系バインダーを用いてバルク体を作製し、吸着特性の評価を行った。また、
BIP(Bingham liquid/solid Isostatic Pressing:等方加圧成形) 法の実用化のために、成形体の成形精
度向上を目指して、各種検討を行った。その結果、圧力媒体中にセラミックス微粉末を添加する方法、
ならびにアルミナ造粒粉末の粒径を制御する方法、さらには圧力媒体中に残留する空気を除去すること
が圧力媒体の含浸の抑止に効果があることがわかり、寸法精度1.8/1000が得られた。
[題
目]高温用排熱回収器(熱交換器)の開発
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]環境・エネルギー・バイオ:井本泰造、東
忠宏、表原靖男
技術支援センター:宮内修平
技術普及課
:入江
優
[成果の概要]高温発生燃焼炉および廃熱回収器の設計計算を行い、セラミックボードで燃焼試験炉を
試作し、ほぼ設計計算どおりの性能(1400℃)が出ることを確認した。廃熱回収器は伝熱管にアルミナセ
ラミックを11本利用し伝熱面積0.8m2で試作し、伝熱管内、シェル側、伝熱管内+シェル側に挿入し、試
験炉出口温度1300℃で試験を行った。その結果、伝熱促進管が多くなるほど総括伝熱係数、熱効率は改
善(約5%)される結果を得た。また、炉出口温度と廃熱回収器出口温度は正の関係があり、1500℃で950℃
の高温の廃熱回収ができた。この結果を焼成炉(炉内温度1700℃)に適用した場合、廃熱回収(予熱空気温
度1000℃)することで65%の省エネルギー効果があり、二酸化炭素排出削減が図れることがわかった。
[題
目]建材のVOC含有量が室内放散に及ぼす影響
[期
間]H14.4.01~H17.3.31
[担当者]環境・エネルギー・バイオ:小河 宏、中島陽一、喜多幸司
信頼性・生活科学:木村裕和
繊維応用
:浅沢英夫、豊田佳与
[成果の概要]従来、繊維製品からの遊離ホルムアルデヒド量測定は、温水抽出・比色分析(アセチル
アセトン法)により行われてきた。しかし、室内空気汚染で問題となるホルムアルデヒド遊離量は非常
に低いため、アセチルアセトン法に代わる高感度・高選択的測定方法について検討を行った。その結果、
ヘッドスペース型GC/MSを用いたPFBOA法が感度、選択性ともに良好であった。次に、放散速度と遊
離量との関係について検討した結果、PET素材のカーテンでは、放散速度が5μg/(m2・hr)を越える製品
はなく、放散速度と遊離量との間には明確な関係は見られなかった。また、綿素材カーテンにおいても
放散速度が20μg/(m2・hr)を越える領域では良好な直線関係が見られたが、それ以下の領域で明確な関
係は得られなかった。
(3)先行研究
企業で実用に供される技術を開発研究で、新しい技術力を確保しながら、将来的には指定研究、中核
的研究等の大型研究事業に発展させることを意図した研究。
[題
目]回折型ビーム整形素子を用いたレーザ表面処理技術に関する研究
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]加工成形:萩野秀樹
制御情報:朴
忠植
[成果の概要]前年度作製した回折型ビーム整形素子を用いて高出力炭酸ガスレーザの強度分布の整形を行
い、従来のレンズ光学系でのガウス分布のレーザ光を照射した場合との比較を行った。その結果、レンズ光学
系を用いた場合は、ビームの走査速度が上がるにつれて溶融幅と深さが減少したが、整形したビームは、速度
の上昇につれて深さは線形に減少したが、溶融幅は、ある速度までは一定であった。次に、高品質な素子の作
製方法として、複数の手法を検討したが、量産性、コスト、製作時間の点で、最も優れていると思われる微細
金型を用いたプレスによる方法を選択した。シリコン、石英を型として銅に転写する予備実験を行った結果、
シリコンの型で加重30トンの場合、型が破壊されずに、形状を転写することができた。
[題
目]超精密切削加工技術の適用材料拡大に関する研究
[期
間]H16.4.1~H.18.3.31
[担当者]加工成形:本田索郎、山口勝己
[成果の概要]大阪大学サイバーメディアセンターにある第一原理分子動力学プログラムをオンライン
で当研究所から使用し、計算結果を可視化するためのグラフィックソフト「MicroAVS」を用い、シミュ
レーションを行った。ダイヤモンドと鉄の相互作用をシミュレートするために、C3H6クラスターと鉄表
面(bcc構造、(100)面、7原子層)の原子モデルを作成し、それぞれの電子状態計算を行った。C3H6クラ
スターについては妥当な計算結果が得られたが、鉄表面については電子状態は計算できたが、凝集エネ
ルギーの値が12.152eVと、文献値(4.28eV)と大きな差があった。これは、計算が不完全でまだ鉄表面の
最安定構造が得られていないためと考えられる。
[題
目]溶湯攪拌法による複合化技術の応用に関する研究
[期
間]H15.4.1~H18.3.31
[成果の概要]金属材料:松室光昭、橘堂
忠
[成果の概要] アルミニウム溶湯に金属粉末を添加・撹拌することにより、粒状の金属間化合物を材料
中に分散できる。本手法を実用合金に適用した場合の材料評価を目的として、AC8A 合金中に種々の割
合で Al3Ni を分散させた材料のビッカース硬さ測定、摩耗試験、引張試験、および熱膨張率測定を実施
した。ビッカース硬さ、摩耗試験については Al3Ni 量の増加とともに良好な結果が得られた。引張試験
については、鋳造したまま、および加圧した試料については室温、20mass%Ni 添加材の鋳造したまま
の試料については高温での引張試験も実施し、引張特性を明らかにした。熱膨張率については AC8A 金
型鋳造材よりも低い値を示した。
[題
目]耐熱性表面材料に関する研究
[期
間]H16.4.1~H18.3.31
[担当者]金属表面処理:森河
金属材料
:出水
務、西村
崇、中出卓男、左藤眞市、塚原秀和
敬
[成果の概要]連続鋳造用鋳型では、溶鋼に接触する鋳型表面での亜鉛アタック(スクラップ等の再生
材からの亜鉛混入)が問題化となっている。本研究では、亜鉛の侵食現象に注目し,耐亜鉛侵食性を有
するめっき皮膜の探索を行った。高温下での各種材料・めっき皮膜の耐亜鉛侵食性について調べ、W系
合金めっき皮膜が優れていることを見出した。その侵食性は、合金構成(Ni系>Co系>Fe系)ならびに
皮膜組成によって異なり,これまでに検討していたFe-W合金が亜鉛侵食に対して最も優れていること
を見出した。
[題
目]潤滑性に優れたPVD皮膜の作製技術に関する研究
[期
間]H14.6.1~H17.3.31
[担当者]金属表面処理:三浦健一、榮川元雄
[成果の概要]CrN皮膜について相手材のアルミナボールに加える荷重を0.98Nに減らして皮膜の往復
しゅう動試験を行った結果、試験中に摩擦係数が0.5~0.7から0.25~0.3程度に低下する現象が見られた。
摩擦係数の低下は基板バイアス電圧が高いほど早期に起きていた。摩耗痕の観察から、皮膜表面のドロ
ップレットが摩耗により除去されることが摩擦係数の低下と関連しており、しゅう動試験に供する前に
皮膜表面のドロップレットを研磨除去することにより、より早期に摩擦係数が低下するようになった。
皮膜の表面観察の結果、バイアス電圧の増加に伴って皮膜表面の突起の数と大きさは減少しており、こ
のことが摩擦係数低下時期が変化した主な要因であったと考えられる。
[題
目]金属錯体反応を利用した放電加工法
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]金属表面処理
加工成形
:塚原 秀和
:南
久、増井清徳
環境・エネルギー・バイオ:中島陽一
機械金蔵部
:曽根
匠
[成果の概要]錯化剤を添加した放電加工油において、電極の正極、負極における放電加工中の加工屑
の変化について観察を行いその挙動を考察した。また、連続使用時において、加工油中に増加する金属
錯体を水層に抽出できるかどうかの試験を行った結果、条件を調整することによって、ほぼ抽出するこ
とが可能であることを検証し、ろ過後の加工油において、錯化剤の効果が持続されることを確認した。
また、従来の鉄鋼材料以外への応用を考慮して、金型材として用いられているアルミ合金、超硬材料へ
の反応性を観察し、鉄鋼材料と同様な効果が得られる事を確認した。
[題
目]燃焼合成法によるNi-Al系金属間化合物コーティング膜の作製とプロセス制御
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]金属表面処理:岡本
明、上田順弘、山内尚彦、塚原秀和、浦谷文博
金属材料
:出水
敬
機械金属部
:曽根
匠
[成果の概要]Ni-75at%Alを基本組成としてSi添加を行うことを試み、熱分析を行った結果、燃焼合成
に伴う発熱が認められ、総じて燃焼合成反応開始温度及び燃焼温度が低下していることがわかった。一
方、反応熱はSi添加量の増加にしたがって顕著に増大した。Si添加によりAl-Si合金の融点が低下し、そ
の融液の流動性が増すことによって粉末同士の接触面積が増大し、反応がより促進されることが明らか
となった。コーティング層の空隙率はSi添加量の増大につれて減少していた。摩耗試験を行った結果、
基板に比べて摩耗量は著しく小さく、コーティングによって鋳鉄に耐摩耗性を付与できることが明らか
となった。
[題
目]褥瘡予防汎用寝具類の開発に関する研究
[期
間]H16.4.1~H18.3.31
[担当者]信頼性・生活科学:木村裕和、山本貴則、片桐真子、井上裕美子
[成果の概要]代表的な褥瘡予防寝具類7種類を用いて、減圧効果と体圧分散性ならびに寝衣内の温湿
度変化を中心に実験的検討を行った。実験には加圧レベルを段階的に変化させた静荷重と実際に被験者
を用いる方法を採用した。静荷重による実験から、褥瘡予防寝具類の性能評価にはボール状の重りが活
用できる可能性が見いだせた。一方、静止型のウレタンマットは比較的安定した減圧効果と体圧分散性
が確認されたが、さらなる検討が必要である。シープスキンは単体では減圧効果は低いが、静止型マッ
トと併用することにより優れた性能が発現した。また、寝衣内湿度の挙動も良好であり、シープスキン
と静止型マット類の併用が有効な方法であることがわかった。
[題
目]圧力センサ用薄膜材料の開発
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]電子・光材料:日下忠興、筧
化学材料
芳治、岡本昭夫、松永
崇、吉竹正明
:野坂俊紀
[成果の概要]Cr-Si-C 薄膜の圧力センサ用薄膜歪抵抗体としての可能性について、膜組成と電気的特
性、機械的特性等の関係を調べ、特性の良い薄膜作製条件を検討した。また、薄膜の歪み抵抗評価法に
ついて、薄膜の GF を簡易に測定できる装置の試作を行い、作製した膜の評価を行った。その結果、Cr
と SiC の分割タ-ゲットを用いて作製した薄膜は、基板位置による組成の大きな変化はなく Cr の結晶
構造を示す薄膜が大きなゲ-ジフアクタを持つことがわかった。また、TCR(抵抗温度係数)は、いず
れも小さい値となり温度依存性の小さい薄膜が形成できることがわかった。さらに、薄膜のゲ-ジファ
クタを測定する方法を構築することが出来、作製した薄膜の評価に適用することができた。
[題
目]光学素子作製のための微細加工および薄膜形成技術に関する研究
[期
間]H16.4.1~H18.3.31
[担当者]電子・光材料:森脇耕介、佐藤和郎、福田宏輝、楠
文経
[成果の概要]ZTO 薄膜に関しては、RF パワーを条件とする成膜を行い、種々の物性値との関係を得
た。光伝播シミュレーション技法に関しては、回折限界を超えた光導波の一手法である低次元光波伝送
路について、2 次元光波伝送路である負誘電体ギャップ導波路を伝搬する光波の FDTD 法によるシミュ
レーションを行った。電子ビーム描画条件の最適化に関しては、ニューラルネットワークを用いること
で、電子線量とレジストの成形結果の因果関係の解析を不要とした簡易手法を実証した。
[題
目]ナノ複合化による環境浄化材料システムの構築
[期
間]H16.4.1~H18.3.31
[担当者]化学材料
:日置亜也子、木本正樹
環境・エネルギー・バイオ:喜多幸司
[成果の概要]ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)/メタノール溶液中で HPC 複合化 TiO2 微粒
子の調製を行った。熱処理前はアモルファスで HPC を含むが、熱処理後は HPC は消失しアナターゼ
型 TiO2 微粒子となることが分かった。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)溶液中において HPC
複合化シリカ微粒子の調製を行った。熱処理を行うと、多孔性のシリカ微粒子が得られた。また高分子
アゾ重合開始剤と疎水性モノマーから 200nm 程度の粒度分布が狭く、コア部分が疎水性モノマー由来
のポリマー、シェル層が重合開始剤由来の PEG からなるコア・シェル型微粒子を合成し、この微粒子
を核として TEOS を添加することにより外殻にシリカ層を有する複合微粒子を合成した。
[題
目]微細加工用ケイ素系レジスト材料の創製に関する研究
[期
間]H16.4.1~H17.3.31
[担当者]化学材料:井上陽太郎
[成果の概要]環境に対する負荷の小さい紫外から真空紫外領域で高解像性を示す微細加工用のケイ素
系レジスト材料の開発を最終目標としている。まず第一に、リソグラフィプロセスにおいては加熱を必
要とする工程があり、良好なパターン形状を保つためにはレジスト材料にガラス転移点(Tg)がある程度
高い性質を有することが必須である。しかしながら、ポリシロキサン系材料は Tg が低いものが多い。
そこで、直鎖状ポリシロキサン側鎖に置換基を導入することにより Tg が高い主鎖にケイ素原子を含む
レジスト材料の合成を試みた。
[題
目]腐敗菌が分泌する酵素を応用したインテリジェントな殺菌システムの開発
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]環境・エネルギー・バイオ:増井昭彦、藤原信明、井川
聡
[成果の概要]薬剤封入担体(W/O/W型エマルション)の作製は、安定化剤、攪拌強度、乳化剤の種類
及び添加量の検討を行うことにより、安定に薬剤を封入できる担体の作製条件を調べた。腐敗菌が分泌
するリパーゼの精製は、イオン交換樹脂(DEAE-Sephadex A-50、DEAE-セルロース)とゲル濾過樹
脂(Toyopearl HW-55F)を組み合わせることにより、san-aiのリパーゼの精製ができた。得られた酵
素の分子量は、SDS-PAGEより54KDaであった。また、リパーゼの作用による担体からの薬剤の放出
については、W/O/W型エマルションは、san-aiのリパーゼの作用により分解と内水相の薬剤の放出が促
進された。
[題
目]大気中有害物質の分析及び無害化に関する研究
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]環境・エネルギー・バイオ:林 寛一、中島陽一、岩崎和弥、喜多幸司、呼子嘉博、太田清久、山崎
清
化学材料
:日置亜也子
[成果の概要]住環境における汚染物質(VOC、 アレルゲン等を含む)に注目し、大気中の有機物成分を
低減するため、フェントン反応を利用しこれら有害物質を酸化分解する方法を検討した。その結果、一
般に分解困難であると思われるベンゼンの分解も可能であることが明らかになった。また、分解生成物
の解析のために、イオンクロマトグラフィーを用いて解析したところ、中間生成物としてギ酸や酢酸が
生成し、さらに分解が進行している可能性に関する知見が得られた。以上の結果から、本手法は気相中
の有機物低減に有効であることが示唆される結果が得られた。
[題
目]一体型複合遮水シートによる海面処分場斜面遮水工の施工実験
[期
間]H16.4.1~H17.3.31
[担当者]繊維応用:赤井智幸、松本
哲
[成果の概要]台船上での接合方法の検討として、接合実験を5回実施(数種の方法で幅0.5m×長さ5m
の模擬複合シート2枚を接合)し、台船上の養生方法決定のための要素実験を行い接合方法を確立した。
次に、斜面遮水工に係わる耐久性に関する室内試験と解析として、砕石を用いた載荷実験(上下の遮水
シート:PVC、LLDPEの2ケース)を行い、有限要素法による非線形変形解析(中間保護層:10mm、
20mmの2ケース)により海面処分場斜面遮水工適用時の複合シートの応力緩和効果、保護層としての
健全性を確認した。
[題
目]無機質ハイブリッド化天然繊維の開発
[期
間]H16.4.1~H18.3.31
[担当者]繊維応用
:菅井実夫、豊田佳与、根津
修、増田敏男
環境・エネルギー・バイオ:高塚 正
[成果の概要]銀イオン交換ゼオライトの耐熱性試験として、銀イオン交換ゼオライト試料粉をあらか
じめ40℃で30分、80、130℃で10分乾熱処理した後、抗菌あるいは殺菌性の残留性を確認した。次に、
羊毛から酸化抽出したケラチンタンパクを用い、1g/lならびに5g/l濃度の銀イオン交換ゼオライトの分散
溶液で処理した加工綿布を、50℃の水で30分ずつの洗浄を2回繰り返し、加工綿布の抗菌性・殺菌性に
対する試験を行った結果、5g/l濃度の銀イオン交換ゼオライトの分散溶液での加工綿布で有効な残存性
を確認した。1g/l濃度の分散液で処理したものでは有効性にばらつきが認められたが、これは分散性の
良否が起因していると考えられる。
[題
目]植物性繊維質の資源化に関する研究
[期
間]H16.4.1~H17.3.31
[担当者]繊維応用:豊田佳与、赤井智幸、宮崎克彦、根津
修
[成果の概要]植物性繊維質のNOx吸着材としての利用の可否を検討するため、雑草、ヤシ繊維、綿繊
維屑等のNO2除去率を測定した。雑草、綿繊維のNO2除去率は30~38%程度であったが、ヤシ繊維は最
大で65%のNO2除去率を示し、吸着材としての利用が見込まれた。また、植物性繊維質の利用可能分野
として、NO2除去効果を有する生分解性軽量ブロックの作製を試みることにし、接着剤には製紙廃液由
来のリグニン接着剤を使用することにした。ヤシ繊維自体の耐熱性が低く、高温での熱処理ができない
ためにリグニン接着剤を十分に硬化させることができなかったが、83.6%のNO2除去効果を示す生分解
性軽量ブロックの作製を行うことができた。
(4)支援研究
所の技術力を向上・維持していくための研究で、指導相談・依頼試験・受託研究等の支援業務におい
て新規サービスや質的向上に資する研究。
[題
目]ラピッドプロトタイピングによる鉄-炭素系成形品の造形性の調査
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]加工成形:木下俊行、宮田良雄、中本貴之
[成果の概要]ラピッドプロトタイピング装置を用いてSKH40粉末の造形を試みた結果、造形条件およ
び粉末の粒径にかかわらず造形品の表面粗さは非常に大きくなり、造形可能な最大高さは、粒径200μ
mアンダーの粉末材料で約6mmであった。造形品の表面の粗さは、レーザ照射により溶融した粉末材料
が表面張力によって凝集し、既存の造形部分へ十分接合されなかったためであり、レーザの熱量不足が
主な原因であると考えられた。このため有限要素法を用いた非定常熱伝導解析(3次元および2次元)
により、融解および蒸発潜熱を考慮して解析を行った結果、レーザパワーおよび照射時間を増加させて
も溶融深さはあまり増加しないことがわかった。
[題
目]複雑形状を有する機械部品のX線応力測定に関する研究
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]金属材料:小栗泰造
加工成形:山口勝己
[成果の概要]本手法の適用可能範囲を明確にすべく、許容される形状寸法誤差ならびに位置決め精度、
推奨するX線ビームサイズならびに測定ポイント数、および曲率半径についての適用限界について理論
的検討を行い、それぞれについての基準値およびその算定式を求めた。次に、曲面部に表面応力分布が
存在する場合の対処法として、非対称な部分曲面形状にも適用可能な、最小二乗法に基づく応力分布推
定法を考案した。この方法は、非対称性に対応するために基底関数にべき級数を用いたこと、および、
位置変化のバリエーションを多数確保できないために十分な推定精度が得られない場合であっても、位
置変化に加えて、従来法でいうψ角を変化させた際のデータを加えることにより推定精度を向上させる
ことを特徴とするものである。
[題
目]レーザビーム形状制御による加工品質向上に関する研究
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]制御情報:永田伍雄
[成果の概要]微細加工に使用されている直線偏光パルスYAGレーザ光を円偏光に変換して加工に用い
ると、切断特性の異方性がなくなり、アスペクト比の高い切断加工が可能になった。また、レーザビー
ム移動方向に直線偏光方向をコントロールすれば円偏光加工に比べて加工除去幅の少ない切断が可能
である。結像光学系を用いた加工は、一般にパルス励起によるレーザ光を用いたプラスチックモールド
ICパッケージへのマーキングに使用され、微細加工分野ではフォトマスクや薄膜パターンの修正に使用
されている手法を金属表面への微細ドット加工に応用して、金属表面に数10μm程度の微細な穴を加工
することができた。本方式は、ドットサイズがレーザビームサイズ範囲内なら選択可能で、穿孔部周辺
の熱影響の低減ができ、結像光学系を用いれば、穴あけでなく熱影響を少なくした微細切断にも応用可
能なことがわかった。
[題
目]キャッシュフロー型工程管理システムの開発手法
[期
間]H16.4.1~H17.3.31
[担当者]制御情報:吉野正紀
[成果の概要]ガラス金型製造企業をモデルに金型構造、工程などについてヒヤリングし標準化する作
業を実施した。ここでは工程を基本単位とすることにし、工程に付随して発生する費用をリストアップ
し、間接経費に関してもできるだけ工程に直接関連付けられるようにした。得られた知見から、情報を
リレーショナルデータベースのテーブルで表現した。次に工程管理システムを機能から分類し、目標工
数生成システムと実績工数収集・積算システムに大分類した。発生する実績データに関してはデータベ
ースシステムで管理し、データの加工を表計算ソフトで管理する手法を検討した。これらにより設計し
たシステム概念を実証するため実際に近いデータを用いて、要求機能を提供できるか検討した。その結
果、①標準的な新規金型のコスト発生を把握することができた。②工程をプロセスとみなして、キーに
する手法は有効である。③作業実績データ収集の効率化が重要である。④表計算ソフトの併用は効果的
である。
[題
目]製品衝撃強さ評価法の緩衝設計への応用に関する研究
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]信頼性・生活科学:中嶋隆勝、寺岸義春、高田利夫、津田和城
[成果の概要]複数の製品を集合包装した貨物が落下衝撃を受けた際に生じる加速度について、数値解
析およびモデル実験を行ったところ、二次以降に一次を越える大きな加速度が生じることがわかった。
さらに、数値解析での二次以降の衝撃応答を精度よく予測するためには、緩衝材の構成式(速度効果等
を導入した応力ひずみ関係)を構築する必要性が明らかとなった。また、二次以降の衝撃の作用時間は
小さく、速度変化(衝撃パルスの面積に相当する)が小さいことから、製品のDBC(損傷境界曲線)に
十分考慮した易損性評価の必要性を確認することができた。
[題
目]繊維製品の衛生的特性と生体反応計測
[期
間]H16.4.1~H18.3.31
[担当者]信頼性・生活科学:山本貴則、片桐真子、井上裕美子
繊維応用
:宮崎克彦
[成果の概要]衛生的特性としてタオルの吸水性について、織物構造との関係から検討を行った。タオ
ル表面のパイルによる影響を比較検討するため、パイル糸のみを引きそろえることにより、パイル形状
をなくしたものを地織物として用いた。吸水量の時間変化により算出した最大吸水速度の結果から、パ
イル倍率の異なるタオルの初期吸水性は、大きなパイル倍率では表面のパイル糸に、小さなパイル倍率
ではパイル糸と地織物の両方に影響されることがわかった。また、飽和吸水量の結果から、パイル倍率
が大きいタオル織物では、水分はパイル糸や地織物の繊維内部とパイル糸の間隙に吸収、保持される。
一方、パイル倍率が小さいタオル織物では、繊維内部への吸水とともに地組織とパイル糸の間隙に水分
が保持されることがわかった。
[題
目]輸送用包装貨物に含まれるガタが振動特性に及ぼす影響の解析
[期
間]H14.11.1~H17.3.31
[担当者]信頼性・生活科学:津田和城、中嶋隆勝、寺岸義春、高田利夫
[成果の概要]これまでに、がたを有する被包装物の振動に対する数値解析を行い、製品に損傷を引き
起こしかねない二つの特異な振動現象の存在を明らかにした。また実際にこれらの振動現象が起きた場
合、現在の振動試験手法では正確に製品の振動耐久性を評価できないことを指摘した。しかし、数値解
析結果は解析手法や時間ステップなどに依存する可能性があるため、結果の妥当性を検討しなければな
らない。そこで、理論解析および振動実験を行い、数値解析と同様にこれらの振動現象が存在すること
を確認した。さらに、これらの振動現象が起きた場合でも正確に製品の振動耐久性を評価できる新たな
振動試験手法を考案した。
[題
目]振動試験における音響解析による共振現象把握手法の開発
[期
間]H16.11.1~H17.3.31
[担当者]信頼性・生活科学:君田隆男、中嶋隆勝、津田靖子
[成果の概要]共振現象の把握手法として音響解析による手法を提案し、各種の実験解析を行った。サ
ンプル試料および実際の製品について振動試験を行い、その際の音圧および振動加速度を計測し、波形
解析処理を行った。その結果、音圧フィルター処理に包絡線処理や二乗処理を組み合わせることで、背
景音の影響を除去できることがわかった。また、音圧波形のたたき合い周期、あるいはヒルベルト変換
や二乗処理後の波形を周波数分析することで、共振振動数を算出することができた。以上のことから、
SN比の悪い環境(背景音の大きい環境)においても、音のデータから共振現象を捉えることができ、
音による共振現象把握の可能性を見出すことができた。
[題
目]タオルの「やわらかさ」評価
[期
間]H15.4.1~H17.3.31
[担当者]繊維応用:馬渕伸明、宮崎克彦
[成果の概要]タオルの「やわらかさ」に関係する圧縮特性、表面特性、せん断特性、およびタオルの
構成要素について検討した。表面特性では、摩擦子を作成し、平面摩擦法による測定で得られた摩擦係
数(摩擦抵抗係数)miu、およびその変動(摩擦抵抗の標準偏差)mmd を検討した。圧縮特性で得ら
れるファクターは、初期厚さ T0、最大荷重時厚さ Tm、戻りの厚さ T1、圧縮の線型性 LC、仕事量 WC、
レジリエンス RC、圧縮率 Cr、圧縮弾性率 Ce であり、これらの相関関係を検討した結果、
(厚さ、WC)、
LC、Cr、Ce、RC それぞれのファクターは独立しており、各試料の測定結果を個々に検討してみると
WC は厚さとの相関が高く、パイル倍率や密度と関係あり、また Cr も加工の違いや、原料の糸違いに
よる差が見られることがわかった。やわらかさを示す指標と考えられる摩擦抵抗係数 miu、圧縮仕事量
WC、および弾性率 Cr の測定法を確定した。
[題
目]消費財としてのタオル製品評価
[期
間]H16.4.1~H18.3.31
[担当者]繊維応用
:宮崎克彦、馬渕伸明、豊田佳与、宮崎逸代
泉佐野技術センター:坂井芳男、赤坂長吉
[成果の概要]市販タオル製品120点を実験試料として、寸法安定性及びパイル保持性に関するデ-タ
ベ-スを得た。寸法安定性の要因分析においては、織物設計要因及び機能性要因を特定するまでには至
らなかった。製品からは未知であるが、製造過程において負荷されるテンションの影響が大きいものと
推測される。パイル保持性については、JIS準拠で試験を行い、評価は、引抜き変位量50mmまでの最
大引抜き抵抗力で要因分析を行った。その結果、最大吸水速度値が大きいものは、最大引抜き抵抗力が
大きいことがわかった。また、同一のタオル原反から、後晒し加工工程において、精練条件を変化させ、
吸水性に差を持たせた2種類のタオル織物を実験試料とし、パイル保持性の比較を行った。
[題
目]皮革産業におけるエコテクノロジに関する研究
[期
間]H14.4.1~H17.3.31
[担当者]皮革応用:奥村
章、稲次俊敬
[成果の概要]クロム革の最大の特徴である耐熱性を主眼に置き、鉄なめし剤とポリフェノール系なめ
し剤(フェノール系合成タンニン、植物タンニン)による非クロム複合なめし技術開発、及びその複合
なめし革の特性を検討した。その結果、鉄/ポリフェノール系化合物複合なめしにより、革の耐熱性は
大きく向上し、風合いも改善され、革は着色(茶色~紺色~濃灰色)するが、同系色の染色・仕上げ処
理により、環境への負荷が低い非クロム革となりうることが明らかになった。