臨時国会に「派遣法再改正法案」が提出されました

<2014.10 月号> 株式会社フォーラムジャパン
東京都千代田区神田小川町 3-20 第 2 龍名館ビル 6F
臨時国会に「派遣法再改正法案」が提出されました
厚生労働省は、9 月 29 日に招集された臨時国会に「派遣法再改正法案」を再提出しました。先の通常国会では、法案の不備に
より審議入りできず廃案となりましたが、不備のある条文を修正し、同じ内容で再提出したものです。
法律の施行時期は、2015 年 4 月 1 日と変更されておらず、今国会で成立すれば、施行までは、当初より準備期間が大幅に短く
なります。この再改正により、特定労働者派遣事業が廃止されたり、派遣期間のあり方が変更されたりすると、派遣先の皆様も
大きな影響を受けることになります。国会の状況が気になりますが、今のうちから対応を考えていきたいところです。
「労働契約申込みみなし制度」の施行まで1年となりました!
2012 年(平成 24 年)10 月 1 日に派遣法改正法(現行法)が施行され、違法派遣に対する迅速・的確な対処を目的として
「労働契約申込みみなし制度」が導入されました。このような制度は、今まで日本にはなく、他の条文と同時期に施行する
と混乱をきたすことが予想されたため、3 年間、施行が猶予されていました。それが、あと 1 年で猶予期間が明け、2015 年
(平成 27 年)10 月 1 日から施行されることになります。
そこで、今回は、「労働契約申込みみなし制度」について復習しておきたいと思います。
Ⅰ
「労働契約申込みみなし制度」とは?
派遣先が一定の違法派遣を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して、当該
派遣労働者の派遣元事業主における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなします。
本来、労働契約は、申込の意思表示と承諾の意思表示が合致して成立するので(労働契約法第 6 条)、一方の意思表示が
存在し表明されることが前提となります。しかし、この原則に対する例外として、派遣先が重大な違法派遣をしている場合、
違法状態が発生した時点において、派遣先から派遣労働者に対して、労働契約の申込みをしたものとみなす制度を創設し、
派遣労働者の実質的な保護をはかることとしたのです。
派遣先
労働契約申込みみなし制度(イメージ)
派遣元
派遣労働者を違法派遣
違法派遣が行われた時点で、派遣先が当該
労働者に労働契約を申し込んだものとみなす
(違法派遣であることを派遣先が知らず、
かつ、そのことに過失がない場合を除く)
意思主義に対しての重大な例外措置です。
派遣労働者が希望する場合、
申込みを承諾
労働契約についての申込の意思表示が存在
(承諾するかどうかは、派遣
制するもので、推定のように反証をあげれば
しないにもかかわらず意思表示の存在を擬
労働者の希望による)
覆すことができるものではありません。
派遣労働者
ただし、この規定は国や地方公共団体及び各特定独立行政法人には適用されません。派遣先が公的な機関の場合には
「採用その他の適切な措置を講じなければならない」ことになっています(派遣法第 40 条の 7)
。
Ⅱ
労働契約申込みみなし制度の対象となる「違法派遣」とは?
労働者派遣法に違反する事由は数多く存在しますが、労働契約申込みみなし制度の対象となるのは、以下の重大な
違法に限定されています。
①適用除外業務(禁止業務)に派遣労働者を従事させる場合(派遣法第 4 条第 3 項違反)
②無許可・無届の派遣元事業主から労働者派遣を受け入れた場合(派遣法第 24 条の 2 違反)
③派遣受入期間制限に違反して派遣を受け入れていた場合(派遣法第 40 条の 2 第 1 項違反)
④いわゆる偽装請負等の場合(請負等の名目で、派遣契約を締結せずに労働者派遣を受け入れた場合)
※臨時国会に提出された派遣法再改正法案が成立し施行されると、派遣先が、同一の組織単位において 3 年の上限を超えて
継続して同一の派遣労働者を受け入れた場合は、労働契約申込みみなし制度の適用の対象となります。
Ⅲ
労働契約申込みみなし制度の要件・内容
派遣先が上記のいずれかの違法派遣をしている場合、以下の条件で、労働契約の意思表示をしたものとみなされます。
①
要件としては、派遣先が違法な行為について故意又は過失があることが前提です。もし派遣先が上記の場合に該当
することについて、知らないで、かつ知らないことに過失がなければ、労働契約申込みみなし制度は適用されませ
ん(派遣法第 40 条の 6 第 1 項但書)。
②
みなし申込みの内容としては、違法行為の時点において当該派遣労働者と派遣元事業主が締結している労働条件と
同一の条件ということになります(派遣法第 40 条の 6 第 1 項本文)。例えば、3 ヶ月の労働契約を結んで派遣され
ていれば、派遣先との間も 3 ヶ月の労働契約ということになります。賃金や業務内容、始業・終業時刻等について
も同様です。
③
みなし期間としては、違法派遣が継続している
間は当然ですが、違法派遣が終了した場合にも
終了後 1 年経過するまでは申込を撤回することが
できません(派遣法第 40 条の 6 第 2 項)。
その期間内に、派遣先が派遣労働者から承諾又は
不承諾の意思表示を受けなければ、みなし申込は
失効します(派遣法第 40 条の 6 第 3 項)。
※申込をしたとみなされる派遣先から求めがあれば、
派遣元はみなし時点の労働条件を派遣先に通知し
なければなりません(派遣法第 40 条の 6 第 4 項)。
Ⅳ
労働契約申込みみなし制度の効力
違法派遣を撲滅し、派遣労働者の保護を図るため、みなし申込みに対して派遣労働者が承諾した場合、以下の効力
が生じます。
①
民事的効力
・みなし申込みに対して承諾していれば、派遣先と派遣労働者との間には労働契約が成立しますから、賃金未払い
の請求や地位確認の訴え等ができます。
②
行政的効力
・厚生労働大臣は、派遣先や派遣労働者からの求めに応じて、違反行為に該当するか否かについて助言をすること
ができます(派遣法第 40 条の 8 第 1 項)。
・厚生労働大臣は、みなし申込みを受諾した派遣労働者を就労させない派遣先に対して派遣労働者の就労に関して
必要な助言・指導・勧告をすることができます(派遣法第 40 条の 8 第 2 項)。
・厚生労働大臣は、就労させるべき旨の勧告をした派遣先が従わなかった場合には、その旨を公表することができ
ます(派遣法第 40 条の 8 第 3 項)
。