12派遣法改正

改正労働者派遣法の紹介
参考
第1
ジ ュ リス ト 2012(平成 24)年 10 月 号
労 働者 派遣 法 改正 特集
2012(平成 24)年 3 月改正労働者派遣法の概要
1
名 称変 更
(1 ) 名称 に「派 遣労 働者 の 保護」、目 的に「 派遣 労働 者の 保 護・雇 用の 安定」を明 記
(2 ) 今回 の改 正 法が 意図 し た派 遣労 働 者の 保護 と は?
① みな し雇 用 制度 によ る 派遣 先責 任 の強 化?
② 均等 待遇 ?
③ 正社 員へ の 転換 ?
④ 派遣 労働 者 とし ての 長 期安 定就 労 ?
2
事 業規 制の 強化
(1 ) 日雇 派遣 の 原則 禁止 ・ ・2012.10.1 以降 に締 結 され る労 働 者派 遣契 約 から
① 例外 を 設け た趣 旨
・17.5 業 務に つい て は、 専門 的 な知 識、 技 術ま たは 経 験を 必要 と する 業務で
ある ため 、 労使 交渉 に おけ る労 働 者の 交渉 力 が高 い。 適 正な 雇用 管 理に 支障
を及 ぼす お それ がな い 。
・日 雇派 遣 の弊 害が な いか 、あ っ ても それ を 上回 る必 要 性が ある 者 がい る。
② 疑問
・17.5 業 務を 例外 と する 理由 は フィ クシ ョ ン
・雇 用主 が 日々 変わ れ ば、 労働 者 の生 活は よ り不 安定 な もの とな る ので は
・厚 労省 は 日雇 派遣 を 禁止 する か わり に、 日 々紹 介( 1 日単 位で 人 材を 求人企
業に 紹介 し 紹介 手数 料 をも らう と いう 有料 職 業紹 介事 業 )へ の移 行 推進 。
1 日単 位の 紹介 事業 が 本当 に原 則 どお り運 用 され るの か 。
求人 企業 の 面接 ・採 用 はメ ール や 電話 での 形 式的 な採 用 。
危険 有害 業 務等 への 紹 介、 派遣 禁 止業 務へ の 紹介 の可 能 性
・日 々紹 介 と言 いな が ら、 毎日 紹 介が 行わ れ ず継 続雇 用 、社 会保 険 未加 入
・日 々紹 介 の実 質は 労 働者 供給 で はな いか 。 日々 紹介 に は無 理が あ る
③ 日々 紹 介に つい て 予想 され る 事態
・求 人企 業 の労 務管 理 代行 サー ビ スシ ステ ム を日 々紹 介 とパ ッケ ー ジで 売り出
し、 労務 管 理は 一切 合 切請 け負 う と提 案す る 業者 急増
・偽 装紹 介 (形 式は 職 業紹 介紹 介 、実 態は 労 働者 供給 事 業) 横行
(2 ) グル ープ 企 業内 派遣 の 8 割規 制・・・2012.10.1 以 降に 開 始す る事 業 年度 から 適 用
事業 年度 終 了後 3 ヵ 月 以内 に報 告 義務
① 趣旨
・労 働者 派 遣制 度は 、労働 力需 給 調整 の仕 組 みと して 位 置づ けら れ てい るので、
企業 グル ー プ内 のみ で 雇用 調整 の 一環 とし て 労働 者派 遣 事業 を行 う こと は、
趣旨 に反 す る
・関 連派 遣 会社 とは
派遣 元の 経 営を 実質 的 に支 配す る こと が可 能 とな る関 係 にあ るも の
連結 決算( 原則 は 50%を超 えて 持 株支 配さ れ てい る場 合 は子 会社 の 対象 )を
導入 して い る場 合、 派 遣元 の親 会 社 派遣 元 の親 会社 の 子会 社 親 子は 連結
決算 の範 囲 から 判断
連結子 会 社で はな い 場合 、親 子 関係 は外 形 基準(議 決 権の 過半 数 所有 、出 資
金の 過半 数 出資 等) か ら判 断
② 疑問
・な ぜ 8 割 規制 なの か 。
・8 割の 判 定基 準を 総 労働 時間 で カウ ント す る形 式を と って いる が 、総 労働時
間を チェ ッ クす る方 法 が労 働者 や 労働 組合 に はな い。 行 政指 導頼 み とな る。
③ 予想 され る 事態
連結 企業 の 中か ら派 遣 会社 を外 し 企業 譲渡 す るな どし て 派遣 会社 の 集約 化
派遣 会社 の 寡占 化、 中 小零 細の 派 遣業 者淘 汰
(3 ) 離職後 1 年 以内 の労 働 者派 遣の 禁 止( 改正法 40 条の 6 第 1 項) ・ ・2012.10.1 以
降締 結さ れ る労 働者 派 遣契 約か ら
① 本来直接雇用すべき労働者を派遣することで、労働条件の切下げ、常用代替
の典 型例 に あた ると し て規 制
派遣 先は、派遣 元か ら 氏名 等を 通 知(改 正法 35 条 1 項)され た派 遣 労働 者が、
離職した者で、離職の日から1年以内であれば速やかに派遣元に通知すべき
(改 正法 40 条 の 6 第 2 項)
違反 した 派 遣先 に対 し ては 、指 導 ・助 言( 法 48 条 1 項) 、勧 告 (改 正法 49
条の 2 第 1 項) 、公 表 (同 条 2 項 )
② 常用 代替 防 止な ら、 当 該労 働者 以 外の 労働 者 の派 遣受 入 も規 制す べ きで は?
3
派 遣労 働者 の無 期 雇用 化や 待 遇の 改善
(1 ) 無期 雇用 へ の転 換推 進 措置
転換 の実 現 可能 性は ?
(2 ) 均衡 待遇 の 確保 (改 正 法 30 条の 2)
派遣 元事 業 主は 、そ の 雇用 する 派 遣労 働者 の 従事 する 業 務と 同種 の 業務 に従事す
る派 遣先 に 雇用 され る 労働 者の 賃 金水 準と の 均衡 を考 慮 しつ つ、当 該派 遣労働者
の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準又は当該派遣
労働 者の 職 務の 内容 、職務 の成 果 、意 欲、能 力も しく は 経験 等を 勘 案し 、当該派
遣労 働者 の 賃金 を決 定 する よう に 配慮 しな け れば なら な い。
① 疑問
派遣 労働 者 と同 種の 業 務に 従事 す る派 遣先 の 労働 者が 存 在す るの か 。
一般業務について特定できるとして比較の対象となる賃金は何か、何を時給
換算 する の か
職務 の成 果 、意 欲、 能 力も しく は 経験 とい う 客観 性に 欠 ける 事項 は 適切 か。
賃金水準の均衡だから、一定の範囲の格差を容認することが前提だが、どの
範囲 の格 差 を超 えた ら 均衡 を欠 く こと にな る のか 不明 確
均衡 考慮 は 、配 慮義 務 にと どま り 、勘 案事 項 も多 いの で 、実 効性 に は疑 問
派遣 先に 、賃金 水準 等 の情 報等 提 供な どに 協 力す る努 力 義務(改 正 法 40 条の
3)が 定め られ たが 、 派遣 元は 現 実的 には 請 求し ない の では ない か 。
② 労契 法 20 条( 期間 の 定め があ る こと によ る 不合 理な 労 働条 件の 禁 止)
有期 労働 契 約を 締結 し てい る労 働 者の 労働 契 約の 内容 で ある 労働 条 件が 、期
間の 定め が ある こと に より 同一 の 使用 者と 期 間の 定め の ない 労働 契 約を 締結
して いる 労 働者 の労 働 契約 の内 容 であ る労 働 条件 と相 違 する 場合 に おい ては、
当該 労働 条 件の 相違 は 、労 働者 の 業務 の内 容 及び 当該 業 務に 伴う 責 任の 程度
(以 下こ の 条に おい て 「職 務の 内 容」 とい う 。) 、当 該 職務 の内 容 及び 配置
の変 更の 範 囲そ の他 の 事情 を考 慮 して 、不 合 理と 認め ら れる もの で あっ ては
なら ない 。
③ EU指 令5 条
④ オラ ンダ
26 週間 同 じ派 遣先 企 業で 働く と 、派 遣先 の 正社 員と 同 じ給 料に な る。
(3 ) マー ジン 率 等の 情報 提 供・・2012.10.1 後に 終 了す る事 業 年度 終了 後 速や かに 公表
義務
事業 所ご と の平 均の マ ージ ン率 に 意味 があ る のか ?
(4 ) 待遇 に関 す る事 項等 の 説明
(5 ) 派遣 料金 額 の明 示
事業 所の 平 均額 でも 可 とさ れる こ とに 意味 が ある のか
(6 ) 派遣 契約 の 中途 解除 時 への 対応 ( 改正 法 26 条 1 項 8 号 、29 条の 2)
① 派遣先都合による派遣契約の中途解除の理由によっては(セクハラ・パワハ
ラ被 害申 立 てへ の報 復 、隠 蔽等 ) 、中 途解 除 は無 効と い うべ きで は ない のか
② 新た な就 業 機会 の確 保 や休 業手 当 の支 給の 義 務づ けだ け で足 りる の か。
派遣 元に 対 し、100% の賃 金支 払 を命 じた 判 決も ある 。
③ 新たな就業機会の確保措置を図る旨の労働者派遣契約上の条項につき、派遣
先が個別の派遣労働者に直接法的義務を負担する趣旨ではない、不履行につ
き不 法行 為 責任 なし と した 判例 と 、信 義則 違 反に よる 不 法行 為責 任 認容 判例
4 違 法派 遣に 対す る 迅速 ・的 確 な対 処 2015(平成 27)年 10 月 1 日施 行
(1) 労働契約申込みみなし制度 (信州大学準教授 富永晃一)
① 申 込 み 内 容 の 労 働 契 約 期 間 は 、元 の 派 遣 労 働 契 約 の 残 余 期 間 か 、元 の 派 遣 労 働
契約の契約期間全体と同一期間か?
部 会 141 回 ( 2009 年 12 月 18 日 ) 議 事 録 鈴 木 発 言 、 141 回 ( 2009 年 12 月 22
日)議事録鎌田発言によれば、後者か?
② 派遣元との派遣労働契約の期間の定めが形骸化し実質的に無期契約であった
と言えるときは、申込みの内容は無期労働契約であるとの主張が可能か?
派 遣 元 と の 派 遣 労 働 契 約 に 継 続 特 約 が つ い て い た 場 合 は 、申 込 み の 内 容 は 、特
約つきとの主張が可能か?
国 会 答 弁 ( 174 回 衆 議 院 厚 生 労 働 委 員 会 2010 年 5 月 28 日 長 妻 、 179 回 同 委 員
会 同 年 10 月 22 日 小 宮 山 )
みなしに係る申込み内容の労働条件は形式ではなく実質的な事情を考慮
③ 派 遣 元 と の 派 遣 労 働 契 約 が 反 復 更 新 さ れ て い た 場 合 、そ の 事 実 は 申 込 み の 内 容
に反映されるか?
立 法 過 程 で は 、反 復 更 新 は 契 約 内 容 で は な く 契 約 実 態 な の で 、申 込 み 内 容 に は
反 映 さ れ な い と い う 議 論 ( 部 会 141 回 議 事 録 鈴 木 ) 。
④ 直接雇用後にくる契約終了時の解雇あるいは雇止めを無効とできるのか?
裁 判 所 は 、違 法 派 遣( 偽 装 請 負 含 む )後 に 派 遣 先 が 直 接 雇 用( 更 新 回 数 、最 長
期 間 の 定 め あ り )し た 後 の 雇 止 め に つ い て 、直 接 雇 用 化 前 の 派 遣 労 働 契 約 の 反
復更新の事実を考慮してこなかった。
⑤ 派 遣 労 働 者 が 承 諾 の 意 思 表 示 を せ ず 、ま た は 不 承 諾 の 意 思 表 示 を し 、退 職・他
社 へ の 再 就 職 や 失 業 等 給 付 の 受 給 等 を し た 後 、申 込 み が 撤 回 不 能 の 間 に な し た
承諾は有効か?承諾権の放棄?承諾は信義則違反?
⑥ 手続は?
行政勧告等の前置不要。地位確認等請求訴訟を起こしうる。
派遣先の善意無過失の立証責任は派遣先が負う。
⑦ 予想される事態
有期 労働 と いう 直接 雇 用化 ?
3 年後 を見 据え ての 派 遣切 り? ・ ・・cf.近 畿 コカ コー ラ ボト リン グ 事件
違法 派遣 の 場合 に直 接 雇用 され た とし ても 、 その 後解 雇 ある いは 雇 止め ?
(2) 派遣先の労働契約申込み義務
① 40 条 の 4
抵 触 日 を 超 え 、派 遣 終 了 通 知 を 受 け た 後 も 同 一 の 派 遣 労 働 者 を 使 用 す る 場 合 の
直接雇用申込義務
違反に対する勧告・公表への指導・助言の前置の撤廃
② 40 条 の 5
受 入 期 間 制 限 の な い 業 務 に 、同 一 の 派 遣 労 働 者 を 3 年 を 超 え て 継 続 し て 受 け 入
れ、以後同一の業務に労働者を雇い入れる場合の直接雇用申込義務
派遣労働者が期間の定めのない労働者である(常時雇用される労働者ではな
い ) 旨 の 通 知 ( 改 正 法 35 条 1 項 2 号 ) を 受 け て い る 場 合 は 適 用 除 外
40 条 の 5 に 基 づ く 直 接 雇 用 申 込 義 務 違 反 が あ っ て も 、 労 働 契 約 申 込 み み な し
制度の適用対象外
違反に対する勧告・公表への指導・助言の前置の撤廃
(3) 欠格事由の整備
許可に関する欠格事由追加
(4) 勧告・公表等
① 労働契約申込みみなし制度の適用される適用除外業務等等への該当性につい
て 、 助 言 ( 改 正 法 40 条 の 8 第 1 項 )
② 派 遣 労 働 者 が 申 込 み を 承 諾 し た が 派 遣 先 が 就 労 さ せ な い 場 合 、助 言・指 導・勧
告・公表(同条第 2 項)
③ 適 用 除 外 業 務 へ の 派 遣 受 入( 法 4 条 3 項 違 反 )、無 許 可・無 届 事 業 主 か ら の 派
遣 受 入( 法 24 条 の 2 違 反 )、派 遣 受 入 制 限 期 間 を 超 え る 派 遣 受 入( 法 40 条 の
2 第 1 項 違 反 ) 、 労 働 契 約 申 込 み 義 務 違 反 ( 法 40 条 の 4・ 40 条 の 5 違 反 ) 、
離 職 労 働 者 の 派 遣 受 入( 改 正 法 40 条 の 6 第 1 項 違 反 )各 違 反 等 の 勧 告 に 指 導 ・
助 言 不 要( 改 正 法 49 条 の 2 第 1 項 )。勧 告 に 従 わ な い 場 合 公 表( 同 条 第 2 項 )
5 今 後の 課題
(1 ) 厚労 省の 検 討課 題
「今 後 の労 働者 派 遣制 度の 在 り方 に関 す る研 究会 」 によ る専 門 的な 検討
①登 録型 派 遣の あり 方 につ いて
②製 造業 派 遣の あり 方 につ いて
③特 定労 働 者派 遣事 業 のあ り方 に つい て
④ 政令 26 業 務と その 他 で派 遣期 間 の取 扱が 違 う現 行制 度 につ いて
⑤ 派遣 先の 責 任の あり 方 につ いて
⑥ 派遣 労働 者 の処 遇に つ いて (均 衡 待遇 、労 働 ・社 会保 険 の適 用促 進 )
⑦ 派遣 労働 者 のキ ャリ ア アッ プ措 置 につ いて
(2 )労 働 組合 の検 討 課題
派遣 労働 と いう 働き 方 をど うす る のか
派遣 労働 法 によ る規 制 を求 める の か
規制 を求 め る場 合、 派 遣労 働を 狭 める 方向 で の規 制を 求 める のか
狭め るこ と は断 念し て 保護 を求 め るの か
第2
参考
1 判例 紹 介
(1 ) 派遣 先と の 地位 確認 ( 黙示 の労 働 契約 の成 否 )
① 平成 18 年 5 月 18 日 高 松高 判 伊 予銀 行( い よぎ んス タ ッフ サー ビ ス)事件 特
定労働者派遣事業者による無許可の一般労働者派遣事業であり、違法派遣であ
った が、 派 遣先 との 地 位確 認否 定
② 平成 18 年 6 月 29 日 東 京高 判 マ イス タッ フ (一 橋出 版 )事 件 同 上
③ 平成 18 年 11 月 2 日最 判 マイ ス タッ フ( 一 橋出 版) 事 件 原審 追 認
④ 平成 20 年 4 月 25 日大 阪高 判 松 下 PDP 事件 当 初偽 装 請負 かつ 派 遣が 禁止 さ
れて いた 製 造業 務へ の 派遣、労働 者派 遣法、職安 法 44 条、労 基法 6 条違 反、公
序に 反し 民 法 90 条に より 無効 。 派遣 先と の 労務 供給 形 態の 具体 的 実態 によ り、
事実上の使用従属関係、労務提供関係、賃金支払関係あり、両者間に客観的に
推認される黙示の意思の合致あり、黙示の労働契約成立。リペア作業への配置
転換 は報 復 等の 不当 な 動機・目 的 によ るも の で無 効。1 回の 更新 も なく 雇止めす
るのは解雇権の濫用ないし雇止めの濫用にあたり無効。不当な配置転換及び雇
止め の意 思 表示 は不 法 行為 を構 成 し、 各 45 万円 、計 90 万円 の慰 謝料 が相 当 。
⑤ 平成 21 年 3 月 27 日 最 判伊 予銀 行 (い よぎ ん スタ ッフ サ ービ ス) 事 件原 審追 認
⑥ 平成 21 年 12 月 18 日 最 判 松下 PDP 事件 前半 の地 位 確認 は、逆 転敗 訴 違法
派遣は、当事者の契約の無効も派遣先との黙示の労働契約の成立も導かない。
後半 の損 害 賠償 請求 は 維持
⑦ 平成 22 年 6 月 3 日札 幌地 判ウ ッ プス ほか 事 件 労働 者 は出 向と い う形 式で働い
てきたが、従事した業務は、出向先の新たな事業においてのみ必要とされ、新
たに 雇用 さ れた 。業 務 は、出向 元 が従 前行 っ てき た業 務 とは 何の 関 わり もなく、
新規採用を出向元が行う必然性はなかった。労働契約関係の成立、労働条件等
の実質的な決定、労務管理等にあたって、出向元の関与は極めて希薄、専ら出
向先が行っていた。出向関係はあくまで形式的なもの。出向元は、使用者であ
る出向先の代行機関にすぎなかった。実質的な使用従属関係は出向先との間で
存在 して い たの で、 労 働者 と出 向 先と の間 に 黙示 の労 働 契約 成立 。
⑧ 平成 23 年 1 月 27 日 札 幌高 判ウ ッ プス ほか 事 件 原審 維 持
⑨ 同年 9 月 29 日最 判ウ ップ スほ か 事件 原 審 維持
⑩ 平成 24 年 2 月 10 日 名古 屋高 判 パナ ソニ ッ クエ コシ ス テム ズ事 件 違 法派遣を
繰り 返し た あげ く派 遣 先が 労働 者 派遣 契約 終 了。信義 則 違反 、損 害 賠償 命じた。
⑪ 平成 25 年 3 月 13 日 山口 地判 マツ ダ事 件 派 遣先 の サポ ート 社 員制 度の運用
実態 は労 働 者派 遣法 違 反。ラ ンク 制度 やパ フ ォー マン ス 評価 制度 の 導入 と併 せ、
常用雇用の代替防止という労働者派遣法の根幹を否定する施策を実施。形式的
には労働者派遣の体裁を整えているが、実質は労働者派遣と評価することはで
きない。その他、労働者派遣法違反の態様が悪質であることから、派遣労働契
約を 無効 で ある と解 す べき 特段 の 事情 があ る 。派遣 労働 者と 派遣 元 との 契約 は、
違法な労働者供給事業に該当し、無効である。派遣元は、派遣労働者を直接指
揮、命令監督して各職場において作業せしめ、その就業条件の決定、賃金の決
定等を実質的に行い、派遣労働者がこれに対応して労務提供をしていたので、
両者 の間 に は黙 示の 労 働契 約の 成 立が 認め ら れる 。
(2 ) 派遣 元の 解 雇・ 雇止 め
① 平成 18 年 5 月 18 日 高 松高 判 伊 予銀 行( い よぎ んス タ ッフ サー ビ ス)事件 派
遣先の労働者派遣契約終了による派遣元の派遣労働契約の更新拒絶を有効とし
て派 遣元 と の地 位確 認 否定 理 由 は、雇用 継 続に 対す る 期待 は「 常 用代 替防止」
とい う労 働 者派 遣法 の 趣旨 に照 ら し合 理性 が ない 。13 年 間 27 回更 新し たに もか
かわ らず 。 労働 者派 遣 契約 の期 間 満了 は、 雇 止め の合 理 的理 由と な る。
② 平成 21 年 3 月 27 日 最 判伊 予銀 行 (い よぎ ん スタ ッフ サ ービ ス) 事 件原 審追 認
③ 平成 23 年 1 月 25 日 横浜 地判 テク ノプ ロ ・エ ンジ ニ アリ ング 事 件 派遣元が
期間 の定 め のな い派 遣 労働 者に し た解 雇が 整 理解 雇の 4 要素を 満 たし ていない
ので 無効 。派遣 元は 過 去数 年間 黒 字、解雇 直 前求 人を 行 い退 職者 に 声を かけた。
親会 社へ の 20 億 円今 日 の貸 付・利 息の 債権 放 棄。人 員削 減の 必要 性 なし。待機
状態にある派遣労働者について、自己都合退職しないというあけで、就業状況
を考 慮せ ず 選定 した も ので 、合 理 性認 め難 い 。
④ 平成 23 年 1 月 26 日 大阪 地判 積水 ハウ ス 事件 地 位 確認 否定 、 但し 、雇用継
続の 期待 を 招く 言動 に 基づ く不 法 行為 責任 認 める 。
⑤ 平成 24 年 4 月 26 日 さい たま 地 判 日本 ユ ニ・ デバ イ ス事 件 更 新手 続き未了
のまま就労させたことによって、期間の定めのある派遣労働契約が期間の定め
のない労働契約に転化。その後の解雇は整理解雇の要件を満たさず無効。該当
部門での勤務日数・時間の調整により、雇用継続の可能性があった。解雇回避
努力 を尽 く した とは 言 えな い。
(3 ) 労働 者派 遣 契約 の中 途 解約 の効 果
① 平成 21 年 4 月 28 日 宇都 宮地 裁 栃木 支部 決 定 プレ ミ アラ イン 仮 処分 事件 派
遣先の労働者派遣契約解除を理由に期間途中で解雇された派遣労働者が賃金仮
払い仮処分申立て 期間の定めのある労働契約はやむを得ない事由がある場合
に限り解雇有効。登録型派遣で労働者派遣契約の終了が理由でも同様。契約期
間内解雇の有効性の要件は期間の定めのない労働契約の解雇よりも厳格。整理
解雇 の要 件 を満 たさ ず やむ を得 な い事 由な く 解雇 無効。残期 間全 額 の賃 金認 容。
② 平成 21 年 7 月 23 日 福 井地 裁決 定 ワ ーク プ ライ ズ仮 処 分事 件 1 年間 の派 遣労
働契約を締結して派遣されていた派遣労働者が、派遣先の労働者派遣契約解除
を理由に期間途中で解雇されたために賃金仮払い仮処分申立て 派遣元はリス
クを 踏ま え て 1 年間 の派 遣労 働 契約 を締 結 した ので あ るか ら、 そ の契 約期間内
については、派遣先を確保する義務がある。就業の機会を提供できなかったこ
とに つい て は派 遣元 の 責任 。賃 金 全額 の支 払 義務 があ る 。
③ 平成 23 年 11 月 2 日 名古 屋地 判 三 菱電 機 ほか 派遣 労 働者 解雇 事 件 派遣先の
労働者派遣契約の中途解約は著しく信義にもとり、ただでさえ不安定な地位に
ある派遣労働者の勤労生活を著しく脅かす。派遣先には信義則違反の不法行為
が成 立し 、 慰謝 料の 支 払義 務が あ る。 派遣 先 1 社は 派遣 元と 連帯 責 任を 負う 。
④ 平成 24 年 4 月 16 日 東京 地判 いす ゞ自 動 車事 件 派 遣先 指針 第 2 の 6 が規 定
する派遣労働者の新たな就業機会の確保措置は、派遣先が個別の派遣労働者に
直接法的義務を負担する趣旨ではない。派遣先はこの措置をとらなかったこと
につ いて 不 法行 為責 任 を負 わな い 。
(4 ) 紹介 偽装
① 2012(平成 24)年 3 月 28 日宇 都宮 地裁 大田 原 支部 判決 日々 紹介 は 期間 の定 め の
ない 労働 契 約だ った と して 、9 年 間の 求人 手 数料 の返 還 を命 じる 判 決
② 栃木 労働 局 職 安法 違 反で 是正 指 導 賃金 間 接払 い、 労 働者 供給 事 業の 疑い
3
EU 労働 者派 遣指 令 2009(平 成 21)年 2 月 濵口 桂 一郎「EU 労働 者派 遣 指令 と日 本の
労働 者派 遣 法」
2008(平 成 20) 年 11 月 EU 労 働者 派遣 指 令成 立
指令 4 条 正当 性の な い派 遣事 業 の禁 止・ 制 限の 撤廃
・派 遣労 働 の利 用へ の 禁止 また は 制限 は、 派 遣労 働者 の 保護 、安 全 衛生 の要件
また は労 働 市場 の適 切 な機 能と 濫 用の 防止 に 関す る公 益 の根 拠に よ って 正当
化さ れな け れば なら な い。
・加 盟国 は 派遣 労働 の 利用 の禁 止 また は制 限 が上 記根 拠 によ り正 当 化さ れるか
どう か見 直 さな けれ ば なら ない 。
・制 限ま た は禁 止が 労 働協 約に よ る場 合に は 、当 該見 直 しは 労使 団 体が 行う。
指令 5 条 均等 待遇 原 則
・派 遣期 間 中の 派遣 労 働者 の基 本 的雇 用労 働 条件 は同 一 職務 に派 遣 先に よって
雇用 され て いれ ば適 用 され たも の を下 回ら な い。
・派 遣労 働 者が 派遣 元 と常 用雇 用 契約 を有 し 、派 遣の 合 間の 期間 も 賃金 の支払
いを 受け る 場合 には 、 例外 を認 め る。
・一 般的 に 労働 協約 に よっ て均 等 待遇 原則 の 例外 を設 け るこ とを 認 める 。ただ
し、均等 待 遇が 適用 さ れる のに 必 要な 最低 派 遣期 間を 含 まな けれ ば なら ない。
・加 盟国 は 本条 の適 用 にお ける 濫 用、 特に 本 指令 の規 定 を回 避す る ため に考案
され た反 復 継続 的派 遣 を防 止す る 観点 で適 切 な措 置を 執 る。
指令 6 条 雇用 、集 団 施設 や職 業 訓練 への ア クセ ス
・派 遣先 の 常用 雇用 に 空席 があ れ ば派 遣先 の 労働 者と 同 様の 通知 義 務。
・正 当理 由 がな い限 り 、派 遣先 の 労働 者と 同 一の 条件 で 食堂 、保 育 設備 、交通
サー ビス の 提供 を受 け る権 利に つ いて の差 別 禁止
指 令 7 条 派 遣労 働 者の 代表
一定 規模 以 上の 事業 所 に義 務づ け られ てい る 労働 者代 表 制の 母数 に 、派 遣先
でカ ウン ト する とき は 派遣 元で カ ウン トす る 必要 はな い 。
指 令 8 条 労 働者 代 表の 情報
派遣 先が 派 遣労 働を 利 用す ると き は、 派遣 先 の労 働者 代 表へ の通 知 義務 。