評 価 報 告 書 - KKR 国家公務員共済組合連合会

評 価 報 告 書
( 平成23年度 )
平成24年11月
国家公務員共済組合連合会評価委員会
評価シート(資産運用)
連合会では、将来の年金給付の財源となる年金の積立金等を安全かつ効率的に運用するこ
とが求められている。評価委員会では、このような観点から、平成23年度の年金資産運用業務
の実績について、中立公正な立場で客観的に評価した。
項目別評価
1.デュープロセス
国家公務員共済年金の資産運用は、法令の定めにより、「積立金等の運用の基本方針」
(以下「基本方針」という。)を策定し、『安全かつ効率的』に行うこととされているところである。
平成22年4月に見直しを行った基本方針において定められている基本ポートフォリオの内容
については、平成24年3月及び6月の資産運用委員会において、「これまでのALM(資産負
債管理)アプローチを踏襲したLDI(年金負債対応型投資)の考え方を導入したことから、引き
続き、ミドルリスク・ミドルリターンの特性を堅持した『安全かつ効率的』なものとなっている」と
の評価を受けている。さらに、市況の変動が激しい中、運用状況が比較的安定裡に推移して
いる状況からすれば、妥当なものと認められる。また、実際の資産運用については、法令や基
本方針を遵守した適切なものとなっており、評価できる。
基本方針においては、市況の動向如何にかかわらず、基本ポートフォリオに基づく資産配分
を維持することとしている。平成23年度においても、基本ポートフォリオに基づき分散投資を行
った結果、資産構成割合(時価ベース)は、いずれも基本ポートフォリオの許容範囲に収まって
おり、適切に維持されている。
また、基本方針においては、資産(負債対応ポートフォリオ)のデュレーションを、年金給付
債務である負債のデュレーション(約15年)に近づけるべく、市場金利の上昇に伴い、債券の
保有期間を長期化することとしているが、この方針は、年金制度全体の金利変動リスクを回避
する観点から適切な方針であると認められる。
平成23年度末の資産のデュレーションは、平成22年度より短縮しているが、これは超低金
利水準が継続する中、足元の年金収支の状況を踏まえ、超長期投資を見送ったためである
が、債券・預託金のインカム利回りは負債に見合う超長期債券の市場平均に近いものとなって
おり、債券ポートフォリオは良質な状況を維持できているものと評価できる。
更に、基本方針においては、金利変動リスクを回避する等の観点から、非流動性資産の残
高圧縮を図ることとしているが、平成23年度末の非流動性資産残高は、組合貸付金の証券
化を実施したこと等により、4,399億円と、平成13年度末残高の4分の1程度まで縮小して
いることは評価できる。
なお、組合貸付金を証券化するにあたっては、市場の状況、証券化のトータルコスト等を充
分に見極めつつ、金額や時期を工夫する等、効率的に進めることが期待される。
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2.年金資産の安全かつ効率的な運用
安全かつ効率的な運用を行うとの方針の下、平成23年度の目標利回りは、消費者物価の
変動を控除した実質運用利回りで0.50%としている。平成23年度実績の実質運用利回り
は、2.36%と目標利回りを上回る結果となった。また、中長期的な観点から、5年及び10年
の移動平均で見た場合、5年では、平成20年度のリーマンショックの影響による運用利回りの
落ち込みにより、目標1.30%に対し、実績0.99%と目標を下回ったが、10年では、目標
1.62%に対し、実績2.27%(CPI実績のマイナス値を考慮しない場合、5年0.83%、10年
2.07%)という結果となり、長期で見た場合に、安定的な運用利回りを確保していると評価で
きる。
3.運用体制の整備
資産運用業務については、平成13年の資産運用専担部署(資金運用部)設置に合せ、理
事長の諮問機関として、学識経験者4名で構成される資産運用委員会を設置し、基本方針の
策定や運用上の重要事項について意見や助言を受ける仕組みを構築している。
資産運用委員会は、平成24年度の運用計画及び平成23年度の運用状況について審議を
行っており、いずれも適正であると評価している。
従来から、運用業務を執行するにあたっては、同委員会の提言や意見を着実に実行に移し
ており、連合会の資産運用にかかるガバナンス体制は、有効かつ適切に機能していると評価
できる。
全体評価
資産運用業務は、法令の定めにより策定した基本方針に沿って行われており、また、外部有
識者で構成される資産運用委員会を適宜開催して意見・助言を聞くなど、デュープロセスは適
切に行われている。
基本方針においては、資産のデュレーションを年金給付債務のデュレーション(約15年)に
近づけるべく、市場金利の上昇に伴い、債券の保有期間を長期化する方針としている。平成
23年度末のデュレーションは昨年度より短縮しているが、債券・預託金のインカム利回りは負
債に見合う超長期債券の市場平均に近いものとなっていることから、債券ポートフォリオは良
質な状況を維持できているものと評価できる。
今後とも、金利上昇局面においては、資金計画を踏まえつつ、超長期投資について適切な
対応に努められたい。
平成23年度の実質運用利回りについては、単年度では目標利回りを上回っている。5年移
動平均値で見た場合ではリーマンショックの影響による運用利回りの落ち込みにより、目標利
回りを下回っているが、10年移動平均値では目標利回りを上回っており、長期的には安定的
な運用利回りを確保できていると評価できる。
資産運用の成果は、社会・経済情勢の変化に左右されるが、積立金は、将来における年金
給付の財源となることを考慮すれば、引き続き、長期的な視野に立って、安全かつ効率的な運
用を行うとの方針を堅持することが適当と考えられる。
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評価シート(医療事業)
連合会の医療事業(直営病院・旧令共済病院)については、年金積立金からの借入金を将来
にわたって着実に返済するために、黒字経営を確保し健全経営の基盤を確立しなければならな
い。評価委員会では、このような観点から、平成23年度の運営実績について、事業計画との対
比を行いながら、中立公正な立場で客観的に評価した。
項目別評価
1.財務内容
医療事業においては、医療制度改革をはじめ経営環境が大きく変化する中で、平成20年度
を初年度とする5か年の「経営基盤強化のための中期計画」が策定されている。
その4年目にあたる平成23年度決算は、直営病院では当期損益が58億円の黒字、また、
旧令共済病院においても、当期損益が20億円の黒字となり、直営病院、旧令共済病院ともに
事業計画を上回る結果となった。
【直営病院】
平成23年度の経常収益は1,688億円と、看護基準の上位取得、施設基準の取得、DPC
(疾病別包括支払制度)の効率的運用等により診療単価は増加したものの、医師の交替・退職
及び東日本大震災による稼働病床数の減少(宮城野分院)等による患者数の減少から、患者
収入が減少し、計画を21億円下回った。一方、経常費用は1,625億円と、委託費・賃借料・
修繕費の見直し等により抑制し、計画を20億円下回った。
この結果、経常損益は64億円の黒字と、計画を2億円下回ったが、特別損益を加えた当期
損益は58億円の黒字と、計画を4億円上回った。
医業収支比率(医業収入/医業費用)は、震災の影響等により患者数が減少したことから
患者収入が減収し、計画未達成となった。
長期借入金残高(平成23年度末)は409億円と、昨年度末から38億円減少しており、着実
に返済が実施され、計画を達成した。
以上のとおり、直営病院の財務内容は、医業収支比率において計画未達成となったが、震
災の影響を受けつつも、当期損益は計画を上回る結果となり、厳しい医療環境の下にありなが
ら、健全経営に努めていると評価できる。
【旧令共済病院】
平成23年度の経常収益は930億円と、看護基準の上位取得、施設基準の取得、DPCの
効率的運用等により診療単価は増加したものの、西日本に所在する病院の医師不足の影響
等に伴う患者数の減少から、患者収入が減少し、計画を9億円下回った。一方、経常費用は
908億円と、人件費や材料費等を抑制し、計画を19億円下回った。
この結果、経常損益は22億円の黒字と、計画を11億円上回った。また、特別損益を加えた
当期損益も20億円の黒字と、計画を8億円上回った。
医業収支比率は、患者収入が患者数の減少により減収となったものの、人件費、材料費等
の経費の減少が収入の減少を上回ったことから、計画を達成した。
長期借入金残高(平成23年度末)は101億円と、昨年度末から12億円減少しており、着実
に返済が実施され、計画を達成した。
以上のとおり、旧令共済病院の財務内容は、計画を上回る結果となり、厳しい医療環境の
下にありながら、健全経営に努めていると評価できる。
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2.経営改善策の内容-中期計画に定める重点施策実施状況-
連合会病院では、本部と病院が問題意識を共有し、一体となって諸課題に取り組んでいる。
急性期医療を主体とした地域医療の推進については、地域における自院の役割を明確に
し、院内の人的体制に即した診療機能の充実・再編を図るとともに、「4疾病5事業」等の地域
医療計画に積極的に参画しているが、引き続き地域連携への積極的な取組みを期待したい。
また、地域連携体制をより強化するため、地域連携室の人員体制を更に強化するとともに、IT
利用による医療情報の共有化により近隣診療所間の連携を推進するため、地域連携システ
ム、医用画像配信システムを導入し、環境整備を図っているが、引き続き積極的な取組みに期
待したい。
優秀な人材の確保と育成については、職員の能力や実績を適切に評価するため、病院管理
者評価制度を5月に、病院職員勤務評価制度を10月に本格実施しているが、円滑な運用に
期待したい。さらに、勤務評価結果を給与に反映するため、病院管理者新給与制度案、病院
職員新給与制度案をとりまとめ、11月に関係者に提示しているが、今後、その実施に努めら
れたい。なお、看護師確保対策については、連合会全体として看護師合同就職説明会に参加
し、広く募集を行うとともに、KKR病院の認知度向上のために作成したKKRパンフレットを4月
より使用開始している。また、病院管理者等に対して、病院経営に必要な知識や情報を習得す
るための各種研修会を開催しており、引き続き積極的な取組みを期待したい。
コスト削減の徹底については、従来の診療科別原価計算の問題点を整理し、部門管理のツ
ールとして有効に活用していくための課題と対応策(配賦方法の見直し等)の検討を行い、診
療科ごとの目標管理を推進していることは評価できる。
連合会病院のスケールメリットを活かし、医薬品については全国規模での共同価格交渉を2
年毎に実施しており、さらに、後発医薬品についても、薬剤部長による使用促進 WG の検討結
果に基づき、注射薬(抗生剤、抗がん剤、造影剤)の対象品目を決定し、共同価格交渉を実施
しているが、引き続き、その効果的な取組みを期待したい。また、医療材料については、医療
材料共同購入検討委員会を設置し、現状の調達方法の課題について評価・検討を行った結
果、12月より全病院同一の調達代行業者を活用した共同調達を実施することとし、可能な病
院から順次導入を開始しているが、着実な実施を期待したい。
重点的経営指導の推進については、「経営指導要領」に基づき、定期的に経営状況のモニ
タリングを実施し、また、「重点経営改善対象病院」及び「経営改善対象病院」を指定し、本部・
病院が一体となり経営改善に取り組んでいることは評価できるが、今後とも、実効ある取組み
を期待したい。
3.医療安全にかかる内部管理の充実
各病院の医療事故調査委員会の現状(事故調査委員会規定、外部委員の参加、患者への
開示規定等)を調査し、医療安全対策推進委員会で検討を行うとともに、インフォームドコンセ
ントの規程・項目等について、全病院共通の必須項目等のチェックリストを作成した。また、医
療安全掲示板を活用した医療事故情報の掲載を行ったことに加え、本部において、医療安全
情報を収集・共有し、統計及び分析等が行えるシステムを構築した。
医療安全ネットワークの更なる推進を図るため、医師、薬剤師が参加したリスクマネージャー
会議や全国6ブロックにおけるリスクマネージャー地域ブロック会議及びブロックリーダー会議
を年2回定期開催した。
これら連合会の取組みは、医療安全管理体制の強化を図ったものとして評価できる。
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全体評価
連合会の医療事業においては、医療制度改革をはじめ経営環境が大きく変化する中で、平
成20年度を初年度とする5か年の「経営基盤強化のための中期計画」が策定されているとこ
ろであるが、平成23年度決算は、直営病院、旧令共済病院ともに事業計画を上回る黒字を計
上し、また中期計画に定めた重点施策にも着実に取り組んでいることは評価できる。
今後の対応については、更なる経営基盤の強化とともに、赤字病院を無くするため、個々の
病院において柱となる複数の診療機能の確立に向けて、病院が取り組むべき重点施策の進
捗状況の評価・見直しを実施し、引き続き中期計画の見直し(ローリング)を行うとしている。
経営基盤強化の具体的な取組みとして、診療科別原価計算をベースとした目標管理を推進
していくことが重要である。収入面においては、施設基準の見直し等による診療報酬の加算等
の取得や、病病・病診連携の推進、地域医療計画(4疾病5事業等)への積極的な参画、医師
確保による収入増加策に積極的に取り組む必要がある。一方、費用面においては、後発医薬
品や医療材料の共同価格交渉の推進を図るとともに、契約内容の見直し等により、委託費、
賃借料等の削減を行うことが必要であり、引き続き費用削減に努められたい。
なお、赤字病院については、「経営指導要領」に基づく「重点経営改善対象病院」及び「経営
改善対象病院」等に対して、経営改善計画を策定の上、本部と病院が一体となって経営改善
に取り組むこととしており、さらに、外部コンサルタントにより現地調査等を実施し、経営指導を
行うこととしているが、これらの対応策の確実な実行を期待したい。
医療安全については、今後も医療安全管理体制の充実を図り、情報の共有化等を推進し、
医療事故の発生予防及び再発防止に努めていくことを期待したい。
最後に、平成24年度に策定することとしている平成25年度以降の事業運営に向けた次期
中期計画においては、今後の高齢化社会を見据え、地域の中核病院としての位置づけを明確
にし、地域医療において期待される役割を果たす取組みを期待したい。
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評価シート(宿泊事業)
連合会の宿泊事業は、年金積立金からの借入金を将来にわたって着実に返済するために、
経常損益の黒字を確保できる経営の健全性を確立しなければならない。評価委員会では、この
ような観点から、平成23年度の宿泊事業の運営実績について、事業計画との対比を行いながら、
中立公正な立場で客観的に評価した。
項目別評価
1.財務の概況
平成23年度の営業収益は182億円と、第1四半期を中心に東日本大震災の影響があった
ほか、昨年度より受注不振となっていた婚礼販売の回復が遅れたため、すべての部門で計画
未達成となり、事業計画を17億円下回った。一方、営業費用は、業績給における固定財源分
の削減措置など人件費の圧縮に努めたほか原材料費や修繕費等の減少もあり、174億円と
計画を9億円下回った。この結果、営業利益は8億円の黒字を計上できたものの計画を8億円
下回った。
個別施設をみると、震災の影響や長期勤続者の退職に伴う退職給与引当金繰入の増加等
により、6施設で営業赤字となった。
長期借入金残高については、事業計画では約定返済33億円に加え、臨時返済2億円を計
画したものの、震災の影響等による資金事情を踏まえ、約定返済のみにとどめた結果、長期
借入金残高(平成23年度末)は292億円となった。
2.営業の実績と経営改善に向けた取組み
サービス改善に向けた全般的な取組みとして、職員のサービスレベル及び顧客満足度の向
上を図るための各種研修の実施、さらに、KKRグループとしてのメリットを活かし、(総)支配人
会議や婚礼担当者会議において積極的に成功事例や失敗事例の紹介を行ったほか、サービ
スや料理に対するお客様評価が高い施設へ他施設の職員を派遣する実地研修、1人の支配
人が同一圏内の複数施設を運営する一体化構想を実施している。今後もサービスの改善に取
り組み、顧客満足度を高めることでリピーターの確保に努められたい。
宿泊販売については、先々の予約状況及び近隣施設の価格動向を勘案しつつ、弾力的か
つタイムリーにインターネット販売価格を変動させる等の施策に積極的に取り組んだ結果、昨
年度に比して客室稼働率が0.8ポイント上昇し、さらに、東京共済会館が通常営業に復したこ
ともあって、売上は95百万円の増収となった。今後とも、一般利用者を含めた客室稼働率の
向上を期待したい。また、減少傾向が続く内部利用の回復策として、現役組合員及びOBに対
し、それぞれに向けた施策を講じているが、引き続き、効果的な取組みを期待したい。
宴会販売については、上半期は長引く景気の低迷や震災の影響による利用手控えもあり▲
3.7%の減収となったが、下半期は、震災による自粛ムードが薄れてきたこと、また、早めの
セールス活動への取組み等宴会販売の強化策の効果も現れ、5.8%の増収に転じ、通期で
は昨年度に比して1.6%の増収となったことは評価できる。引き続き早めのセールス活動へ
の取組みを行うとともに、多様なニーズに応えるためプランの充実を図ることなどにより、収益
の向上を図るとしており、効果的な取組みを期待したい。
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婚礼販売については、昨年度から受注不振となっていた婚礼販売の回復が遅れたことによ
り、組数、売上とも昨年度に比して大幅に減少しており、特に大阪共済会館及び熊本共済会館
の減少が顕著である。このため、大阪共済会館においては、ハードの陳腐化を改善するため
宴会場等の改装を実施したほか、総支配人をはじめとする幹部人事の刷新により、新体制で
の経営改善に取り組んでいるところであり、その効果を期待したい。更に、各婚礼実施施設に
おいても、婚礼情報誌誌面の訴求力、新規来館理由、婚礼紹介業者からの送客状況、フェア
効果、成約・非成約理由等を常に把握・分析することにより、新規来館客の増加と成約率の向
上を図るとしているが、実効ある取組みに努められたい。
また、会議・レストラン等その他の販売については、景気低迷や震災の影響等により第1四
半期まで減収が続いたものの、東京共済会館が通常営業に復したこと等から、昨年度に比し
て増収となっている。今後も、会議については、新たなプランを造成し、積極的な営業セールス
を展開するとしており、また、レストランについては、引き続き魅力的な商品メニューの開発を行
うとともに、季節ごとの賞味会やイベントを実施することなどにより増収に努めるとしており、効
果的な取組みを期待したい。
なお、宴会や婚礼においても、200万人超の組合員・OBを擁するという特性を活かす企画
や広報のあり方のほか、宴会場の更なる有効活用についても検討することが考えられる。
一方、経費の面では、上半期に震災の影響等で大幅減収となったことから、徹底した経費の
抑制を行い、経費の大宗を占める人件費においては、固定人件費を圧縮すべく退職者の不補
充、震災後における臨時休業の実施に取り組んだほか、特例措置として業績給の固定財源(1
か月)分の一部について削減を行っているが、今後とも、人件費のみならず、原材料費、営業
費などあらゆる経費について、引き続き、抑制に努められたい。
3.第二次中期的事業経営改善計画の実績
平成19年度を初年度とする5年間の「第二次中期的事業経営改善計画」は、平成23年度を
もって終了したところであるが、借入金残高については平成19年度当初の455億円から292
億円へと減少し、営業収益に対する比率は1.6倍と財務目標であった1.5倍をほぼ達成でき
たことは評価できる。
一方、事業全体の営業利益については、5年間で86億円を目標としていたが、食中毒事故
や東日本大震災といった特殊要因のほか、特に婚礼部門における趨勢的な業績の悪化に歯
止めがかけられず、▲31億円の未達成となった。また、投資については、5年間で50億円を
計画したものの、業績低迷による資金不足から28億円にとどまり、施設の老朽化・陳腐化を改
善するための投資を十分に行うことができなかった。
宿泊事業は、全体として依然厳しい状況にあることを踏まえ、平成24年度以降5年間の事
業運営の新たな指針となる「第三次中期経営改善計画」を策定しており、その着実な実行を期
待したい。
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全体評価
宿泊事業は、平成14年度を初年度とする5か年の「中期的事業経営改善計画」を策定し、
抜本的な経営改善への取組みを行い、平成19年度からは、更なる経営体質の改善・強化を
図るとともに、年金積立金からの借入金を着実に返済し、組合員等の福祉施設としてその期待
される役割を遂行するため、「第二次中期的事業経営改善計画」を策定し、積極的な経営改善
に取り組んできた。
平成23年度の営業収益は、第1四半期を中心に東日本大震災の影響があったほか、昨年
度から受注不振となっていた婚礼販売の回復が遅れ、すべての部門(宿泊、会議、宴会、婚
礼、レストラン)で計画未達成となっている。
こうした状況を踏まえ、今後とも、減少傾向にある営業収益の改善を図り、目標営業利益の
確保に向けて、あらゆる方策に取り組むことが求められる。
「第二次中期的事業経営改善計画」が平成23年度をもって終了したことから、平成24年度
以降5年間の新たな指針となる「第三次中期経営改善計画」を策定し、引き続き経営改善に取
り組んでいる。この計画では、借入金返済を着実に行いつつ、収益力の回復や必要な整理合
理化に努めることなどにより、経営体質、財務体質の一層の健全化を図り、存続するすべての
施設が投資をしながら、安定的に黒字経営ができる体質を目指すこととしている。費用の抑制
が重要であることは当然であるが、収益力や利用者の満足度を高める観点から、設備やサー
ビスについて一定の水準を維持することも必要であり、第三次中期計画にもあるように、選択
と集中の考え方で、整理合理化基準や投資基準を適切に運用することを期待したい。
最後に、この第三次中期計画に基づき、組織が一丸となり、引き続き、目標達成に向けて積
極的な経営改善に取り組むことを期待したい。
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