資源獲得競争と資本主義の関連性についての考察

資源獲得競争と資本主義の関連性についての考察
-グローバリゼーションの改善点-
福田邦夫ゼミナール 19 期
大沼昌平
【目次】
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.資源獲得競争の現状とその原理
(1) 資源獲得競争の現状
(2) 資本主義に内在される競争原理
Ⅲ.グローバル資本主義の引き起こす問題点
(1) サブプライム・ローンと金融危機
(2) 格差拡大と戦争ビジネスの関連性について
Ⅳ.資源獲得競争、およびグローバル資本主義への対策
(1) 新エネルギー
(2) 市場経済の改善点
Ⅴ.おわりに
Ⅰ.はじめに
2008 年 5 月 28 日、横浜市内で第四回アフリカ開発会議(TICAD)が開催された。当時
の福田康夫首相はその開会式での演説の場で、
「アフリカ投資倍増支援基金」の新設、民間
投資の倍増、アフリカ現地でのインフラ整備のための円借款の五年間で最大 40 億ドルの提
供等を表明した。
2008 年 5 月 18 日付の日本経済新聞には、以下のようにある。
「天然資源が豊富なアフリカは日本の民間企業が事業を手掛ける潜在性が高く、政府が
政府開発援助(ODA)などで進出を支援する。経済成長の阻害要因となる感染症への対策
として新たに約六億ドルの資金拠出も表明し、総合的なアフリカ支援策として打ち出す考
えだ。(中略)アフリカに流れる民間企業のお金の量を増やすことで、経済成長を加速し、
アフリカの自立を後押しするのがねらいだ1」。
日本企業のアフリカへの投資額は 2002 年からの五年間で年平均 17 億 2300 万ドルに上
り、これを倍増の 34 億四 1600 万ドルにするのが目標だという。インフラ整備などを後押
しするために、日本のアフリカ向け ODA を大幅に増額することも目標としている、と述べ
ている。さらにこの動きの背景について、2008 年 5 月 15 日付の同新聞では、
「日本がアフ
1
日本経済新聞、2008 年 5 月 18 日付。
21
リカへの関与を強めるのは将来の経済成長が見込め、多くの資源を抱えるアフリカに国際
社会が注目しているためだ。中国は経済援助の四割以上をアフリカに充てているとされ、
急速に影響力を強めている。二〇〇〇年からは三年に一回、各国首脳を集めた国際会議も
開いている2」と述べられている。
欧州連合(EU)やインドなども同様で、日本政府はアフリカ支援について中国との連携
を強める方向も模索しているという。さらに日本政府には、国連安全保障理事会の常任理
事国入り実現に際しての、アフリカ票の獲得も視野に入れているとされる。こういった国
際社会の動きや国際政治の観点からも、日本にとってアフリカとの連携強化は重要な案件
となっているといえる。同会議には、アフリカ約四十カ国の首脳級が参加した。
同様の動きは、中国にも見られる。日本でアフリカ開発会議が開かれる 2 年前には、中
国でも中国・アフリカ首脳会議が開かれている。同サミットで中国側は、中国とアフリカ
の新たな戦略的関係の発展に向けての支援策を表明した。中国企業の対アフリカ投資を支
援するための 50 億ドルにも及ぶ「中国アフリカ基金」の設立や対アフリカ借款の拡大など
を提案した。同会議にはアフリカ 48 カ国の国家元首らが参加し、中国とアフリカの経済面
での関係強化を世界にアピールする形となった。
こうした各国のアフリカにおける資源獲得を見据えた動きが激化しているという報道が
最近多く、興味を持ったため、この論文で研究してみようと思った。
Ⅱ.資源獲得競争の
資源獲得競争の現状とその
現状とその原理
とその原理
(1)資源獲得競争の現状
それにしてもなぜ、日本などの先進国や中国など経済発展著しい国々の注目がアフリカ
に集まるのだろう。それを考察する手がかりとして、
『エコノミスト』2008 年 5 月 13 日号
に、「資源の宝庫サブサハラ」という特集が組まれている。
サブサハラとは、砂漠地帯を含むサハラ以南のアフリカの国々のことを指す。この地域
はもともと貧しく、古くから欧州経済との結びつきが深い北アフリカ諸国(具体的にはエ
ジプト、リビア、アルジェリア、モロッコ、チュニジア等の国々を指す)の 1 人当たりの
名目 GDP が 2000~9000 ドルだが、サブサハラ地域の国々のそれは 1000 ドル以下となっ
ている。現在、このサブサハラ地域が注目を集めており、近年の同地域の経済成長率は 6%
を超えていて(2007 年は 6.8%)、この数値は 1970 年代以来、30 年ぶりの高水準にある。
サブサハラ地域は、冷戦下においては東西代理戦争の場と化し、その後も資源権益をめ
ぐる紛争や内戦が相次いできたという歴史をもつ。兵力を安価で調達できたということも
紛争、内戦を後押ししたとも言われている。もともとこの地域は人口増加率が高く、アフ
リカの人口増加は雇用増加を伴わなかったため、1 人当たり所得の増加を抑制し、生活水
準の上昇も見られなかった。現在でもサブサハラ地域に住む人々の生活水準は決して芳し
2
日本経済新聞、2008 年 5 月 15 日付。
22
いとは言えず、約 7 億人といわれるその人口の半分ほどの住人は、1 日 1 ドル以下で生活
している。この人口増加率の高さが、冷戦下における代理戦争のための兵力の安価な調達
を可能にし、内戦の活発化を招いたと見られる。
これらの背景に加えて、80 年代以降、重要な輸出品目である資源価格の低迷が続いたこ
とが、直接的な経済の低迷要因となってきた。
産業面においても、もともとアフリカにおける農業の土地及び労働生産性は低く、第 2・
3 次産業に従事する余剰労働力が創出されなかったことも大きい。生産性を重視した先進
国の労働集約型の大規模な農業と比べると、技術力等の面で劣るアフリカ地域全体の農業
は、その生産力の面でも先進国より劣ってしまう。
「モノカルチャー経済」という言葉が端
的に示すように、例えばガーナのカカオ豆など、嗜好品等に限定して自国の経済を支える
ような 1 次産品の輸出のみに特化するといった傾向が、アフリカ諸国に限らず、途上国の
多くで見受けられてきた。嗜好品の輸出価格(すなわち、先進国に売れる価格)はもとも
と安定せず、その時どきの先進国の景気に左右されるという傾向を示しやすい特徴をもっ
ている。こういった「モノカルチャー経済」の国々では、1 次産品に特化した輸出という
ものは、必ずしも自国の経済の発展に寄与しないという事例が多く見られるのだ。当然そ
れらの国々では、農業自体も発展しづらくなる。農業が低い生産性を維持したままでは、
当然、第 2・3 次産業の発展も見られない。依然労働力の半分ほどが、この生産性が低いと
いわれる農業に従事しているという事実を見ても、このサブサハラ地域の経済的自立性の
確立の困難さを見て取ることは容易だろう。
かつてアジア等の新興国で見られた援助主体の開発経済型モデルも、アフリカでは軌道
に乗らなかった。アフリカの国々は低成長にもかかわらず、多額の援助資金が貸し付けら
れ、累積債務が経済の発展の重荷となることもあった。アフリカの国々は貧しいがゆえに、
自由貿易協定(FTA)を締結して、関税を引き下げる経済的な余裕もなかった。輸出に回
すような生産余力がなく、税収を求めて政府の経済介入が強まる(増税など、市場におけ
る通貨供給量を減らすような政策)など、貧困の悪循環も起こった。他国からの経済援助
も、国内の財政政策も、自国の経済を苦しめる結果となったことがわかる。
過去 30 年間をみると、アジアの GDP 対世界シェアが 80 年の 7.1%から 07 年に 20.1%
へと急拡大したのに対し、サブサハラは 2.5%から 2.3%へシェアを低下させていると、同
記事は指摘している。冷戦下における政治的状況や人口増加、農業を中心とした産業面の
不振、さらには経済援助による累積債務の発生など、サブサハラを中心としたアフリカ諸
国の経済的な貧しさは、以上のようなさまざまな要因が合わさったことによるものだとい
うことがわかった。
例えば、1980 年代以降に問題となった「南南問題」というキーワードも、以上のような
観点から説明できる。1980 年代以降になると、途上国間でも、石油などの資源を有する国々
とそれ以外の国々では経済的な格差が見られるようになっていった。資源などを有する国
や NIEs など高い工業力を誇るようになった国々は、途上国の中でも比較的経済が発展し
23
ていったが、それ以外の、特にアフリカを中心とする多くの国々は貧しいままとなってし
まった。サブサハラはそれらの国々の代表格のような地域であり、近年に至るまで経済的
貧しさが顕在化していた地域だった。
このサブサハラには、資源が豊富に眠っているのだ。同記事は、以下のように述べる。
「資源の状況をみると、燃料資源について確認埋蔵量が世界上位 10 カ国に入るのは、ナ
イジェリア(原油・天然ガス)
、南ア(石炭)の 2 カ国。希少金属(レアメタル)では南ア
の確認埋蔵量が突出し、コンゴ民主共和国のダイヤモンド、ギニアのボーキサイトも確認
埋蔵量世界第 1 位だ3」。
こういった資源国の中でも、ナイジェリア、南アフリカなどが中心となって、資源価格
高騰とそれに伴う外国資本の流入により成長を牽引しているという。
ではその資源が豊富なサブサハラにおいて、なぜ中国と日本の活動がとくに過熱してい
るのだろう。その原因について、同記事ではこのように分析されている。
「中国企業のサブ
サハラ進出に関する報道が盛んだが、サブサハラ諸国は自国に圧倒的影響力を持つ欧米諸
国に対する牽制として中国を利用している面もあり、全面的に中国を評価しているわけで
はない。中国はその過剰な生産要素(労働力・資金)のはけ口としてサブサハラを捉えて
いる側面もあり、そのため中国企業がサブサハラに進出してもその経済波及効果は限定的
であるとされる。その点からも、サブサハラに進出する日本企業は、雇用創出や技術移転
で中国企業に対する優位性をアピールできよう4」。
といっても中国企業にとってやはりサブサハラ地域を中心とするアフリカ諸国は、その
多数の人口からなる巨大なマーケットを抱える魅力的な市場であることは間違いないであ
ろう。携帯電話などの情報・通信サービスを提供する中国のある企業は、アフリカ地域を
魅力的なマーケットと捉え、アフリカ諸国に積極的に進出しているという。その際に、通
信網などのインフラの整備、それに要する人員の本国からの移動など、多額のコストを要
する事業では確かにある。ヨーロッパなど欧米諸国の情報・通信業の企業は、そこを懸念
してアフリカから撤退するというケースも見られる。確かに、市街地と村をつなぐ道路ひ
とつとっても舗装されたものは少なく、アフリカ現地におけるインフラ整備には、コスト
面ひとつとってもかなりの苦労を要しそうだ。その点を中国企業は、前述した大量の労働
力・資金でもってカバーしているのだろう。これは、中国企業ならではの特色ではないだ
ろうか。
一方、日本企業はどうであろうか。同記事ではこう述べている。
「日本企業とアフリカとの接点はなんといっても資源だ。特にサブサハラの場合、日本
への輸出のほとんどは鉱物・エネルギー資源。日本の製造業の競争力を支える希少金属(レ
アメタル)、希土類(レアアース)も、埋蔵量の多くがサブサハラに偏在している。資源高
騰のなか、欧米だけでなく、中国、ブラジル、インド、マレーシアなど新興諸国も資源獲
3
4
『エコノミスト 2008 年 5 月 13 日号』毎日新聞社、74 ページ。
同上誌、76 ページ。
24
得に乗り出しており、日本もサブサハラでの資源獲得は喫緊の課題となっている。
日本からの資源ビジネスの代表例としては、三菱商事が 25%を出資するモザンビークの
アルミニウム精錬プロジェクト、モザール(Mozal)がある。モザンビークの内戦終了後、
復興の目玉として計画されたプロジェクトで、00 年に開始。現在、間接雇用含め従業員は
約 1 万人に達し、モザンビークの輸出額の 6 割を担う。エネルギー資源としては、原油の
権益取得(アンゴラでの三菱商事、ナミビアでの伊藤忠商事、三井物産)や天然ガス事業
への参画(ナミビアでの伊藤忠、赤道ギニアでの三井物産、ナイジェリアでの双日、住友
商事)などがある。
ただし全体としてみれば、サブサハラの資源は、南アや欧米・豪州の資源メジャーがほ
とんどを握り、日本企業が大型案件に過半数の出資をしているのは例外だ。
サブサハラは、資源だけではなく『巨大市場』としても注目を集める。人口 1 億人超の
ナイジェリアをはじめ、エチオピア、コンゴ民主共和国が 5000 万人超と、サブサハラ地域
全体の人口は 8 億人近くにのぼる。
(中略)ほとんどが貧しい国だが、日用品・食品市場と
しては人口が多いことがビジネスチャンスとなる。米コカ・コーラや伊デル・モンテが進
出済みで、日本企業にも投資対象としてみる気運がある5」。
そのことを裏付けるように、日本とサブ・サハラの国々との貿易額が 2003 年頃から大幅
に伸びていること、特に南アフリカは 05 年から日本が最大の輸出先国となったことが指摘
されている。
このようなことが、中国と日本のアフリカ・サブサハラに対する関心が高まっているこ
との背景として挙げられる。
(2)資本主義に内在される競争原理
なぜこんなにも、日本や中国といった海外の国から豊富な資源を有するアフリカ諸国へ
と、資源獲得のための投資が活発に流入するのだろう。これらの動きは、他の国よりもい
ち早く資源を獲得し、自国を国際競争の中で優位に立たせようとする思惑が強く感じられ
る。そこで展開しているのは、あくまでも“競争”なのだ。このような“競争”が前面に出てき
てしまっているのが、現代の経済の状況であり、“競争原理”なのだろう。こういった事態が
世界規模で展開してしまっているのは、なぜなのか。これを解くキーワードはやはり、“グ
ローバリゼーション”であろう。グローバリゼーションとは、各国間での経済取引を自由で
活発なものとするために、自由貿易における関税率などを引き下げ、その結果として各国
間の自由取引が活性化することだ。取引の際しての障壁として機能する関税などの規制を
引き下げ、撤廃することで、各国間をヒト・モノ・サービス・カネなどが自由に行き来し、
国境を意識することのない“ボーダレス”な経済圏を築く動きのことである。
このようなグローバリゼーション、あるいはグローバル資本主義については『資本主義
奥雄太郎「日本企業に芽生える『アフリカビジネス』の気運」
、
『エコノミスト
毎日新聞社、80 ページ。
5
25
2008 年 5 月 13 日号』
はなぜ自壊したのか』
(中谷巌、集英社インターナショナル、2008 年)に詳しい。中谷は、
国境を超えて自由にヒト・モノ・カネ等の経済資源が移動できるような世界がベストだと
いうグローバル資本主義の正当性は、再検証されるべきだという。
経済のグローバリゼーションが経済思想として語られるようになったのは、1991 年のソ
連崩壊がきっかけになったと中谷はする。
「第二次大戦終結後、およそ半世紀近くにわたって地球を二分していた東西冷戦体制が
ソ連崩壊とともに終結し、ロシアや東欧圏と西側諸国との間に立ちふさがっていた市場の
壁(そういえば『鉄のカーテン』という言葉があった)が消え去り、東側にも資本主義原
理が導入されるようになったことで、世界経済は急速に一体化していった。この動きを受
けて、中国やベトナムといった社会主義国家でも、経済の『改革・解放』が行なわれるよ
うになった。
この結果、ついに人類は『グローバル・マーケット』の時代に突入することになったの
だが、こうした動きに拍車をかけたのは、コンピュータとインターネットによる IT 技術の
本格的普及だった。世界中をカバーする情報網を簡単に、そして安価に構築することが可
能になったことで、これまで投資をためらっていたような遠い地域や辺鄙な場所であって
も、西側諸国の企業が進出できるようになったというわけである6」。
この動きを受けて、例えば日本の製造業の企業などは、日本よりも労働力価格が相対的
に安いような、中国やベトナムなどの低賃金の労働力市場に自由にアクセスするようにな
った。日本をはじめとする先進国の企業はこぞってこれらの国々に生産拠点としての自社
の工場を移すようになった。このことで、製造業のコストが引き下げられ、先進国の製造
業企業の利潤が上がったのは、グローバリゼーションの恩恵のひとつだろう。また、中国
においても経済の開放政策が推し進められ、自国に海外の企業体を積極的に誘致し、経済
の発展が促進された。安価な賃金で「先進国の工場」となり、先進国からの投資が怒涛の
ように押し寄せたことで、経済が急速に拡大した。
しかし、グローバル資本主義にはいい面ばかりがあるわけではないとするのが、中谷の
主張である。中谷は、グローバル資本主義には「負の側面」が本来的な機能として内在さ
れているとするのだ。
「この十数年に及ぶ夢のような経済発展を牽引したのは、アメリカ金融資本だった。も
っと詳しく言えば、アメリカ東海岸ウォールストリートの金融業界とアメリカ西海岸シリ
コンバレーの情報通信産業だった。
金融も情報もグローバル化にはうってつけの産業である。これら産業は製造業や農業の
ように、特定の土地に縛られることなく、ビジネスチャンスを探り当てては国境をいとも
たやすく超えて活動できる『身軽な産業』である。
同時に、地道に努力してコツコツとよいものを作るといった『動きの遅い』製造業と異
なり、頭脳明晰なエリートがイノベーションによってこれまでになかったようなユニーク
6
中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか』集英社インターナショナル、2008 年、72 ページ。
26
な商品を開発し、それによって世界のマーケットを一挙に手にすることができる『収穫逓
増型産業』である7」。
「しかし、一九九〇年頃になって、アメリカ産業の中心はデトロイトなど中西部から東
海岸の金融業と西海岸の情報通信産業にシフトしていく。アメリカの戦略としては、東西
冷戦が終わり、東側諸国がグローバル経済に参画してくる中で、金融業と情報通信産業に
活路を見出したのであった。一九九〇年代に入って飛躍的に発展を始めたグローバル資本
主義がアメリカを中心に進んだのは、グローバル化に適した金融と情報通信で競争優位を
確立することに成功したからである8」。
ここでいう「ユニークな商品」とは、アメリカにおける金融工学の発展により生み出さ
れたさまざまな金融商品のことである。その代表例が、サブプライム・ローンだ。これは
信用力の低い、往々にして返済能力が低いような借り手(低所得者層)を対象とする住宅
ローンである。この信用力の低いローンをアメリカの証券会社が証券化し商品として売っ
たのだ。当時のアメリカの住宅ローンのブームに乗って取引が拡大し、金融経済は膨張し
ていった。巨大な投資にあおられて、市場はさらに膨れ上がっていく。まさに、バブル経
済である。このバブルが崩壊し、世界的な金融危機、不況へとつながった。アメリカの投
資家は巨額の損失をこうむり、投資会社に融資していた投資銀行や商業銀行には大きな不
良債権が発生し、街の低所得層の人々の多くは過剰の負債を抱えるに至った。
「アメリカは製造業中心の経済から、金融と IT に立脚した『金融立国』への脱皮を目指
したわけだが、それがついに挫折したのである。バブルに浮かれ、借金を重ねて身の丈以
上の消費に走った国民も今やその被害者となった。アメリカ主導の金融資本主義――グロー
。
バル資本主義――は、ついに『破綻』したのである9」
バブルと連動して金融経済が膨らみ、そうして膨張したマネーが、生産設備や資源獲得
に対する投資として“グローバル・マーケット”にあふれていく。そこで行なわれているのは、
以下に安い賃金の労働力を確保するか、いかに多くの資源を獲得するかという競争だ。こ
れだけ先進国の思惑が世界的に浸透している理由のひとつには、経済のグローバリゼーシ
ョンの影響が不可分にあると考えられる。先進国の生産力や技術力とグローバル資本主義
が結びつき、物的資源や生産要素の獲得競争が世界に蔓延しているのだ。
グローバリゼーションのもうひとつの深刻な負の側面は、
「地球環境の破壊」であると中
谷は主張する。
「資本主義がローカルな場所に閉じ込められていた場合には、企業活動によって環境汚
染が激しくなれば、周辺住民=消費者の反発を招く事態が起きて、企業の評判が悪くなる
など、かえって収益を減らすことにもなる。
したがって、企業にとって公害防止や環境保護のためにコストを支払うことはむしろ自
7
8
9
前掲書、中谷巌、79 ページ。
同上書、87 ページ。
同上書、88 ページ。
27
らの利益を守る、合理的な選択にもなったわけである。また、ローカルな環境汚染であれ
ば、それなりの規制もかけやすいし、規制の効果も検証しやすいだろう。
ところが、グローバル資本主義では、そうした『自制』を行なう必要がなくなった。ど
れだけ環境を汚染し、資源を無駄遣いしようとも、それが直接に企業の経営にマイナスに
働くとは限らないからである。
中国で著しい環境破壊が行なわれていることは近年、広く知られるようになった。そう
した環境の破壊や汚染をしているのは中国の地元企業であるかもしれないが、しかし、そ
うした環境問題は欧米や日本からの投資が中国に対して行なわれているからに他ならない
し、また同時に、そうやって環境を汚染しながら作られた商品を買っている先進国の消費
者がいるからこそ、中国など新興国への投資は止まらないわけである10」。
「地球環境破壊は、適切な環境コストがどの経済主体によっても負担されていないため
に起こる現象である。地球環境破壊を止めるためには、環境破壊を地球の自浄能力の範囲
内にとどめなければならない11」。
「すでにヨーロッパなど、環境問題に熱心な国々ではこういった環境規制が強化されつ
つあるが、グローバル資本から見ると、そのような規制が行なわれると収益に影響するか
ら、同等の環境で、より環境規制の緩やかな地域があれば、そちらに資本を投下しようと
するだろう。だから、今のような枠組みだと、どこかの国が環境規制を強化しても、地球
全体では見るべき成果は期待できないということになる12」。
こういった背景があることで、アフリカをはじめとする資源保有国への投資が競争のよ
うに活発に行なわれ、さらに現地では環境コストが配慮されることのない環境破壊へとつ
ながるような、資源獲得競争が行なわれてしまうのだ。グローバル資本主義の恩恵を受け
ている日本や、資本主義的な解放経済政策を推進している中国などの経済国が、アフリカ
の資源に積極的に働きかけるのは、このためである。
Ⅲ.グローバル資本主義
グローバル資本主義の
資本主義の引き起こす問題点
こす問題点
前章では、現在アフリカ等の資源保有国で起きている先進国の資源獲得競争が、現行の
経済体制であるグローバル資本主義下に特有の現象であることを検証した。資本主義には
元来、経済活動の主体としての企業が、環境コスト等、自らの経済的負担をカットしよう
とする傾向がある。企業がグローバルな経済活動、ヒト・モノ・サービス・カネ等の経済
資源をグローバルに移動させることを通じて、そのコスト負担を海外の活動拠点の地に負
わせてしまおうとする。資源開発等による環境破壊、工場の建設やインフラの整備等によ
る公害問題の発生など、“負のコスト”が企業の活動拠点としての海外の地で発生してしまう
10
11
12
前掲書、中谷厳、109~110 ページ。
同上書、110 ページ。
同上書、110 ページ。
28
のだ。ヒト・モノ・カネのみならず、企業が本来負うべきコストも、グローバリゼーショ
ンの潮流に乗ってボーダレスに移動してしまっている印象がある。
この卒論を書くにあたり、ひいてはゼミに入室してこの 3 年間の勉強を通して強く印象
に残っているのは、こういった現行経済体制としての資本主義が、先進国及び低開発国を
問わず世界各地で引き起こしている経済的問題の数々だ。金融危機、環境破壊、経済的格
差の拡大……。これらは現在のニュースを騒がしている、タイムリーな社会問題である。
現代人は多かれ少なかれ、これらの問題に直面しているのだ。本章では、こういった資本
主義が引き起こす問題点を検証していきたい。
(1)サブプライム・ローンと金融危機
1 章でも述べた金融危機は、アメリカの投資銀行や証券会社が、金融商品の開発・販売
を通して発生させた金融市場の異常な膨張にその原因がある。
「このような甘い誘惑の言葉に多くの人がサブプライム・ローンに手を出し、住宅を購
入したわけだが、これによってたしかにアメリカの住宅需要は増え、現実に住宅価格を引
き上げることになった。また、低所得層の持ち家保有が進んで、建築のみならず自動車や
家具などの需要まで増えたので、アメリカの景気持続に貢献した13」。
「かくしてローンの借り手たちは『夏の夜の夢』に酔ったのだが、住宅ローンを貸し出
す側(モーゲージ・カンパニー)はきわめて現実的であった。彼らは貸し出したローン債
権を手元に置かないで、即刻、銀行や証券会社にそれを売却し、現金化した。リスクの高
い住宅ローンの貸出しをしてもすぐにそれを他の金融機関に売却すれば、彼らには滞納リ
スクや貸し倒れリスクは発生しない。その結果、モーゲージ・カンパニーの貸出しは甘い
リスク判断によるものとなった。
さらに、サブプライム・ローン債権を住宅ローン会社から買い取った金融機関はそれを
『証券化』した。
『証券化』とは債権の塊を分割し、小口の金融商品(証券)に変えてマー
ケットで売り出すやり方のことである14」。
アメリカの商業銀行や投資銀行はサブプライム・ローン債権のリスクを「見えにくく」
するために、その小口の金融商品をほかの証券化商品と意図的にミックスしてしまうので
ある。こうして「まったく新しい」金融商品を市場で捌くのだ。これを CDO(Collateralized
Debt Obligation 債務担保証券)と呼ぶ。見た目は「まったく新しい」
「魅力的な」金融商
品であったが、実際はサブプライム・ローンのリスクを見えにくくしただけの、本来のリ
スクが含有されたままの商品に過ぎなかった。この「まったく新しい」金融商品に、市場
の投資家達は熱狂した。
「CDO を購入した投資家はこれを担保に金融市場から安い金利でさらなる資金を調達し、
それをさらに資産運用に使う(レバレッジ投資)という形で、金融市場における取引高は
13
14
前掲書、中谷厳、81 ページ。
同上書、82 ページ。
29
どんどん膨れ上がっていったのである15」。
この金融市場の膨張が、バブルへとつながった。
そして、今回のサブプライム・ローンによりアメリカ国内で発生した金融危機は、ドル
の基軸通貨としての役割とあいまって、世界の金融市場に波及した。金融危機の“負の連鎖”
が、世界中に広まったのだ。
では、基軸通貨とは、果たしてどういう役割をもっているのか。
「基軸通貨とは、世界中の取引で使われる通貨であり、ドルはアメリカと何の関係もな
い第三国同士の取引にも使用される。しかし、なぜ基軸通貨であるドルがその発行国であ
るアメリカと何の関係もない第三国同士の取引にも使われるのであろうか。それは、第三
国の取引当事者の間に、何かを売ったときにドルで代金を受け取っても、そのドルでまた
別のものを同じように買えるという確信があるからに他ならない。世界中の人々が、ドル
が安定した価値を維持し、通貨として使用できるということを信じている限り、ドルは基
軸通貨としての役割を果たすことができる16」。
この基軸通貨としてのドルを発行しているのは、もちろんアメリカの中央銀行、FRB(連
邦準備制度)である。なぜ FRB は、基軸通貨としてのドルを保有しているのか。自国の貨
幣を基軸通貨とすることには、あるメリットがある。それを解くキーワードは、
「シニョレ
ッジ」にある。
「シニョレッジ」とは、貨幣の発行によって得られる利益のことである。貨幣の発行者
が 100 ドル紙幣を刷るのに印刷費用が 1 ドルかかったとしよう。そうすると、世界中の人々
が、この 1 ドルの費用で刷られた紙幣を百ドルの価値があると思い込んでくれるので、ま
た実際に 100 ドルの価値を持つものとして使ってくれるので、貨幣の発行者としてのアメ
リカは、その差額の 99 ドル分を儲けることができるのだ。この差額分が、貨幣の発行者に
とってはまるまる儲けとなるのである。この儲けのことを、
「シニョレッジ」という。基軸
通貨国としてドルを発行する権利を有するアメリカは、世界の中で唯一、その巨大なシニ
ョレッジを稼ぐ特権を持っていることになる。世界の人々が、ドルの価値を安定的なもの
であると認める限りは、その市場、グローバル・マーケットで基軸通貨としてのドルを使
い続ける。アメリカはそれだけで、巨大なシニョレッジを稼ぐことができるのだ。また、
自国の通貨を基軸通貨にできれば、グローバルな市場で展開される取引もやりやすくなる
面が大きいだろう。以上のような理由で、アメリカは、自国の貨幣であるドルを基軸通貨
として用いているのだと考察できる。
では、アメリカにとって、ドルを基軸通貨とすることにデメリット、あるいはリスクは
ないのだろうか。中谷はこう指摘する。
「しかし、アメリカがシニョレッジの誘惑に負けて、ドルを過剰供給する政策を採りつ
づけるとどうなるか。その場合は、ドルが世界的に溢れ出すので『過剰になったドルの価
15
16
前掲書、中谷厳、83 ページ。
同上書、356~357 ページ。
30
値はやがて低下するのではないか』という見通しを持つ人が現れるようになるだろう。そ
して、そうした人たちは、ドルを手放したほうが安全だと考えはじめるかもしれない17」。
「こうなるとドルの暴落が始まる。人々はドルを信用しなくなるので、ドルは基軸通貨
としての役割を果たせなくなる。こうなると、世界経済は基軸通貨を失うことになり、国
際取引はスムースに行なわれなくなり、世界は巨大な損失を蒙ることになる。
もし FRB やホワイトハウスがつねに賢明で、適切な通貨政策を採っているのであれば、
こうした危機は回避されるだろう。しかし、FRB もホワイトハウスもアメリカの国益が最
優先であり、そしてシニョレッジを稼ぐ誘惑につねに勝てるとは限らない18」
。
世界中の金融市場が基軸通貨であるドルの下に一つの経済的なまとまりを形成している
のである。そのため、ドルを持つアメリカの経済状況が弱体化したら、その影響も“ドル”
という基軸通貨の下で世界に波及するのだ。こういった株価のバブル的暴落も、基軸通貨
価値の下落も、すべての経済的影響が世界各国の相互間、特にアメリカを中心にして“自由
に移動”してしまうのだ。これが、現行の経済体制としてのグローバリゼーションの負の側
面の一つである。
(2)格差拡大と戦争ビジネスの関連性について
グローバル資本主義のもとでは、社会における経済的格差も拡大する。
前章で述べたように、グローバリゼーションのもとで企業はより安い労働力を求めて、
例えば日本の企業なら中国やベトナムなどに生産拠点を移設する。このことで、国内経済
にはどのような影響が出るのだろうか。まず、海外の低賃金労働力に置き換えられた分だ
け、国内における労働力の需要、すなわち雇用が失われてしまうのだ。雇用が失われると、
その分だけ消費者の消費意欲がそがれ、国内の景気が減退してしまう。日本では近年、
「派
遣労働者」の雇用環境の悪化が問題とされている。安い賃金やいつでも解雇できる雇用環
境に従事する人の数がここ数年は増加傾向にあるという。ここにも国内経済減退の一因が
見てとれる19。
国内の派遣労働者の増加の問題や、彼らと富裕者層の格差の現状の分析、労働者保険等
の社会保障、いわゆる“セーフティネット”から派遣労働者たちが洩れている現状の解説等は、
『反貧困』
(湯浅誠、岩波書店、2008 年)に詳しい。
より社会の貧困及び経済的格差が広範に見られる事例として挙げられるのが、実はアメ
リカである。サブプライム・ローン問題に端を発する金融恐慌が起きたとはいえ、それで
もグローバル経済の恩恵をどの国よりも強く受け、グローバリゼーションをどの国よりも
強力に世界全体に推し進めてきたのは間違いなくアメリカであろう。そのアメリカの社会
全体で格差が拡大し、貧困が広く見られるとは、とても意外な気がする。そのことは、
『ル
17
18
19
前掲書、中谷厳、358 ページ。
同上書、359 ページ。
湯浅誠『反貧困』岩波書店、2008 年参照。
31
ポ
貧困大国アメリカ』
(堤未果、岩波書店、2008 年)に詳しい。
アメリカでも日本と同じような状況が見られ、貧困層・低所得者層が拡大しているのだ。
さらにアメリカでグローバリゼーションの恩恵を最も受けたのは先にも述べたように、一
部の証券会社・投資銀行などの金融業界である。他の企業ではやはり日本のものと同じよ
うなコスト削減策、具体的には人員削減などが行なわれているという。さらにアメリカは、
イラク戦争など、戦争が長引くことにより戦費がかさみ、その分だけ政府の予算から医療
費などの社会保障費が削減されてしまっているのだ。医療費などの社会保障費が削減され
ると、アメリカ国民全体が相対的に高まることになる医療代金に苦しむことになり、アメ
リカ国民が経済的に圧迫されてしまう、という構図になる。このことは、マイケル・ムー
ア監督の映画『シッコ20』
(2007 年公開)にも詳しい。その映画では、病気や怪我、不幸な
事故に苦しみながらも高すぎる医療代金に阻まれ、アメリカ国内では満足に治療も受ける
ことができない人々の悲痛な姿が映し出されている。彼らはまた、民間保険会社の保険に
も加入しており、本来ならそれらの保険会社から相応の保険料が支払われてもおかしくな
いのだが、保険会社は彼らに保険を支払うのを拒むという。怪我や病気の状態を細かく調
べ、病院の通院歴などにも言及し、いろいろと難癖をつけて支払いを拒むのだ。彼らは結
局アメリカを飛び出して隣国のキューバに赴き、そこでアメリカ国内と同等の水準の治療
を国内水準よりもはるかに安い値段で受けることができた。
このように映画や文献をあたると、日本のみならず、海外の地でも金融危機の余波によ
る不況がはびこり、深刻な影響を与えているといえるだろう。アメリカで起こった金融危
機による不況もまた、グローバリゼーションの潮流に乗って世界的に波及した。このこと
も、グローバリゼーションの「負の側面」が存在することの一例として挙げることが可能
だと思われる。
アメリカ国民が経済的に圧迫されるなかで、どのような状況がアメリカ国内で発生して
いるのか。金融危機のさらなる悪影響を挙げることはできないのか。
『ルポ 貧困大国アメ
リカ』では、その印象的な事例として「戦争ビジネス」を挙げている。
アメリカ国内の低所得者層、なかには学生等も含まれるが、彼らに対して、イラクなど
戦争が起こっている地域での仕事を紹介するビジネスが存在しているというのだ。現地で
はアメリカ軍に従事し、物資の運搬などの雑務をこなすのが主な仕事となっているようで
ある。
イラクなどの戦地に、仕事を紹介するという名目で、
民間人を“派遣”してしまうのだ。
海外に仕事を求めてヒトが移動するというのは経済のグローバル化が起こっている現代に
特徴的な事例かもしれないし、そのこと自体は悪いこととは言いがたいのだが、今回の事
例を見る限りでは、結果として民間人が戦争に加担する形をとってしまっている。経済的
に貧しく、よりよい雇用を求めながらも、なかなか満足の行く給与を与えてくれる仕事に
めぐり合えない低所得者層もいる。そういった人々に目をつけて、仕事を与えることと引
き換えに、戦争に加担するような仕事を与えてしまう。このような「戦争ビジネス」が発
20
アメリカの医療制度の問題点を扱ったドキュメンタリー映画。
32
生してしまう構図が、存在しているという時点でかなり驚いてしまった。
現地の赴いた人々の中には、戦場で受けるストレスからノイローゼにかかってしまい、
帰国後もその症状に悩まされている人が多くいるという。そうでなくても、所得の少ない
人々が生活に困っていることにつけ込み、戦争に加担させるようなビジネスを推進するこ
とは、個人的には好ましいとは思わない。戦争によって得られる利益は確かに莫大かもし
れないが、相手の国はもちろんのことさらには自国の国民においてさえも、悪影響が及ぼ
されてしまっている。多くの人が傷つき、悩み、苦しんでいるのも、紛れもない事実なの
である。戦争によって、社会には莫大なコストかかっているということを、忘れるべきで
はあるまい21。
以上に述べたように、現行の経済体制としてのグローバル資本主義には、金融危機を引
き起こしやすい特質、格差の拡大、戦争ビジネスとの親和性といった「負の側面」が存在
し、その影響がボーダレスな経済圏として一つにまとまっている世界の国々全体に広まっ
てしまうのだ。こういった状況に対しては、ひとつひとつの事態やその原因に即して、対
処法が考慮されるべきだろう。
Ⅳ.資源獲得競争、
資源獲得競争、およびグローバル資本主義
およびグローバル資本主義への
資本主義への対策
への対策
ここまでの論考をまとめてみる。
本論ではまず、アフリカ等の資源保有国における先進国の資源獲得競争を手がかりに、
その競争の原理が資本主義に内在されるものであることを分析してきた。アフリカにおい
て資源の獲得競争を強く志向しているのは、具体的には日本や中国といった国々であり、
これらの国々は資本主義的な経済体制を体現している国でもある。日本はアメリカの強い
影響の下にグローバル経済の渦中に身を投じているし、中国は社会主義国家としての性格
が強いイメージがあるが、その経済体制においては、他国からの投資を自国へと積極的に
受け入れる、いわゆる開放経済政策を採っている。そういった資本主義的な側面の強い経
済体制を有している国々が、アフリカの地において、経済取引の一環として、アフリカの
保有する資源の採掘権を確保しようと画策している。それを資源の獲得競争と呼び、そう
いった競争原理は、じつは資本主義に内在されたものではないかとするのが本論の主張だ。
それを解くキーワードが“グローバリゼーション”で、関税などの貿易障壁を撤廃したり、ア
メリカが自国の通貨であるドルを基軸通貨として採用し、その基軸通貨としての役割を世
界に広めたりして世界経済を一体化しようとする動きのことだ。グローバル経済の下では、
ヒトやモノやカネやサービスが全世界を自由に、ボーダレスに移動する。それはこれまで
の経済体制にはなかった多くの恩恵を先進国、低開発国問わず、多くの国々にもたらした。
それは紛れもない事実だ。しかし一方では、このグローバル経済には「負の側面」がある
という示唆や指摘が相次いでなされているというのも、現在の状況の一つとして挙げてお
21
堤未果『ルポ
貧困大国アメリカ』岩波書店、2008 年参照。
33
いてもいいだろう。むしろこの「負の側面」こそが、グローバリゼーションの潮流に乗っ
て世界経済全体に深刻な悪影響を及ぼしてはいないだろうか。
その具体例として、アメリカで起きたサブプライム・ローン問題による金融危機や、そ
の強い影響下に発生した不況および経済的格差の問題、不況から来る戦争ビジネス、ある
いは資源開発の広範化に伴う地球環境の破壊などが、挙げられる。これらの問題はいずれ
も、現在世界的規模で取りざたされているものばかりである。なぜこういった問題群がほ
ぼ同時期に、世界全体へと波及してしまったのか。その背景には果たして、どういったも
のがあるのか。その一つの考察として、経済のグローバリゼーションの問題が挙げられる
だろう。アメリカが中心となって世界経済全体の一体化を進めることによって、ボーダレ
スな経済取引が効率的に行なわれるようになった。ヒト・モノ・カネ・サービス等が国境
を超えて自由に移動できるようになった反面、グローバル経済の「負の側面」も、国境を
超えて自由に移動できるようになったのだ。
では、これらの問題を解決するためには、どのような対策が考えられるのだろうか。個々
の問題の対応策をそれぞれ考えるのも大事だが、一番重要なのは、これらの「負の側面」
がグローバリゼーションという枠組みの上に、世界経済全体に波及してしまいかねないと
いう性格を色濃く持っていることだ。世界のある地域で何か経済的な問題が起きたとした
ら、例えば最近のドバイ・ショック等に代表される株式市場の暴落のニュースが、グロー
バリゼーションの潮流に乗って世界の金融市場に同時に伝わり、金融不安などのリアクシ
ョンを世界的な規模で引き起こしてしまうのだ。これが、金融市場とはあまり関係のない
ところで暮らしている市民、一労働者であり一消費者でもある市民の暮らしへと、かなり
強い影響を及ぼしてしまうのである。
こういった構図の中で求められるのは、個々の局面ばかりでなく、全世界に波及しうる
ような対策である。それぞれの経済的問題にのみ着目するのではなく、まず一つの問題に
対する対策を考えて、次にその対策がどのように世界経済全体に波及しうるのか、を綿密
に考察すべきだろう。「負の側面」ばかりでなく、「負の側面に対する対策」さえも、グロ
ーバリゼーションの潮流に乗せて世界に届きうるものとして考え出されるべきではなかろ
うか。
本章では、こういった対策の具体的なものを、個々の経済的問題に照らし合わせつつ、
背後にあるグローバル経済の存在を考慮に入れながら考えていきたいと思う。
(1)新エネルギー
まずは本論でも一番に取り上げた、先進国の資源獲得競争に対する対策から考えてみた
い。この先進国による資源獲得競争は、アフリカ等の資源保有国において深刻な環境破壊
を招きかねない。資源の開発そのものもそうであるが、それの前準備として必要とされる、
道路や電気等の現地でのインフラ整備も、地球環境にとってあまり好ましいものではある
まい。インフラ整備の名目でダムを建設することとなり、現地の村に住んでいた住人が立
34
退きを要求されるようなケースも存在する22。
この問題に対する対策としては、まず資源を含めた地球環境への配慮が求められる。
今、世界では環境に対する意識が高まっている。その動きに呼応するかのように、あら
ゆる方面から、石油や石炭などの既存の化石燃料の変わりに、太陽光などをはじめとする
「新エネルギー」に対する注目が集まっている。このことは何を意味するのか。エネルギ
ーの転換に伴って、既存の産業構造の転換がうたわれているのだ。
既存の化石燃料は、これまで“資源”として採掘されてきた。中東やアフリカのナイジェリ
ア等、原油資源を保有する国ではその原油資源の争奪戦が、非資源保有国としての先進国
を中心に行なわれてきた。しかし、太陽光発電をはじめとする新エネルギーが台頭し、世
界中でその需要が高まったら、その分旧来の需要の中心であった原油をはじめとする化石
燃料への注目も薄まるだろう。そのことによって、化石燃料の資源獲得競争の勢いが弱ま
ることが十分に予測可能だろう。新エネルギーが台頭することは、そのまま世界のいたる
ところでの資源獲得競争が、相対的に減少することにつながる。グローバル資本主義経済
に内包されている環境破壊の一例としての資源獲得競争を減少させることは、資本主義の
一つの「負の側面」を改善させることとなるのだ。この動きをグローバル資本主義の動き
に乗せることができれば、この改善の動きを世界全体に浸透させることも可能となるとい
える。世界経済に格差などの深刻な問題を波及させるグローバル資本主義の修正案の一つ
として、新エネルギーを台頭させることは十分に挙げられるといえるだろう。
『日経ビジネス』2009 年 10 月 5 日号は、
「新エネルギーの世紀」という特集を組んで、
太陽光発電を中心とする新エネルギーの台頭の可能性を示唆している。
同誌は 2009 年 9 月 22 日に米ニューヨークで開かれた「国連気候変動首脳会合(気候変
動サミット)」の様子を紹介し、鳩山由起夫首相の温暖化ガス排出量 25%削減の宣言や、
発展途上国及び新興国に対して日本の省エネ技術や資金を提供する「鳩山イニシアチブ」
構想や、さらにそこから日本の産業構造の転換についての考察を提供している。産業構造
の転換とは、温暖化ガスの排出量の多い重厚長大型の従来の産業から、新エネルギーを起
点とする新産業創造を進めようとする民主党的政策に変わることを意味する。鳩山政権で
は、太陽光発電や風力発電といった新エネが、総発電量に占める割合を 2020 年までに 10%
程度までに引き上げる、と同特集は述べている。同時に、太陽光発電や次世代自動車の技
術などで他国と共同開発の枠組みがつくられることも期待され、そういった海外からの熱
い視線は新エネルギーをめぐる新しい巨大マーケットの誕生が予想されるとしている。
日本においてはここ最近、政府の主導する環境政策と市場の広がりにおいて強い関連が
ある。今年の 1 月には国内で 3 年ぶりに太陽光発電向けの補助金が復活した。さらに、翌
2 月には電力会社による固定価格買い取り制度が国内で開始されることが決まった。最近
では、一般家庭向けの太陽光発電システムが販売され始めるなどの動きが見られるように
なるなど、新エネルギー関連の新しいビジネスモデルの模索がすでに始まっていると見ら
22
鷲見一夫『ODA
援助の現実』岩波書店、1989 年参照。
35
れる。政府の環境政策の進み具合に比例して、電力会社やエネルギー産業の企業などにお
いて新しい環境ビジネスが起こり、その動きが市場全体に広がりをみせていっている。こ
ういった動きは今後、政府が環境政策をいかに進めていくかによって、進展も停滞もする
だろう。鳩山政権の環境政策の動きに期待したい。
市場の具体的な反応としては、昨夏以降、三菱電機が太陽電池の生産能力を 4 倍にする
ために第 2 工場の建設を発表し、シャープはイタリア最大の電力会社であるエネルと組ん
で、太陽電池を使った電力事業に参入を決めた、と同記事はしている。さらにこういった
動きを受けて、太陽発電を中心とする新エネルギー市場は伸びると予想される。実際、今
年 4~6 月期の太陽電池の国内出荷は前年同期比で 2 倍弱となり、過去最高を更新した。か
つて、90 年比で 8%の削減をうたった麻生政権下でも、これだけの市場拡大を達成するこ
とに成功したのだ。国内の世論自体も、地球温暖化に関連するニュース等の影響を受けて、
地球環境を守るために省エネ志向、新エネルギー志向へと意識を変えつつあるのだろう。
ここ最近、コンビニエンスストアやスーパー等のお店で買いもの時にもらえるビニールの
レジ袋をやめて、リサイクルで作られたエコバッグ等を使うといった、環境志向のライフ
スタイルを提案する消費者たちが増えてきた。実際、スーパーの店頭でも、エコバッグを
利用して買い物をしたお客にポイントを還元するといったサービスをする店も増えている。
こういった消費者の意識の変化が、政府の新しい環境政策を後押しし、新エネルギーの市
場の拡大の原動力となっていると考えられる。
前麻生政権よりも大規模な新エネ支援策を打ってくる鳩山政権下では、さらに市場の急
拡大が見込まれるだろうとする予想も多い。旧来の、石油や石炭といった化石燃料中心の
エネルギー政策における課題である、資源獲得競争の激化や資源の採掘に伴う地球環境の
破壊といった問題に対しても、新エネルギー政策はそれらの対処法として、一定の成果を
あげるだろう。とくに、現時点でかなりの成果を挙げている日本の存在は、世界全体にと
ってもかなり大きいのではないだろうか。現在、温暖化問題など、地球環境の悪化を危惧
する声は、世界中で起こっている。温暖化による海面水位の上昇により、国土全体が海面
下に沈んでしまうと見られるツバルなどは、その象徴とも言われている。そういった状況
下において、日本は、政府の推し進める環境政策や国内の新エネルギー産業の技術的な発
展を世界に推し進めるべきではないだろうか。新しい産業分野なら、世界のいたるところ
にそのビジネスチャンスが広がっているといえる。新エネルギー産業は、従来の地球環境
問題に対する対処法としての側面も持っており、その効果を世界全体に推し進めることは
とても有意義なことではないだろうか。日本が主軸となって、世界に新エネルギー政策を
普及させ、地球環境対策、ひいては資源の獲得競争に対する対策を進めていくことを提案
したい。
(2)市場経済の改善点
以上に述べたような、
「グローバリゼーションの影響が世界中に波及する」という事態に
36
対する危機意識を提起する姿勢は、中谷も前掲書で示唆している。
「グローバル資本主義の問題の根幹とは、今やモノもカネも国境を超えて自由に羽ばた
いているのに、それを制御する主体が国家単位に分散しているということにあるのだ。
所得格差が拡大しても、それが国内問題であるかぎりは有権者の意向を受けた政治家が
しかるべく手を打とうとするだろう。地方経済が疲弊したということであれば、地方選出
の議員が公共事業の拡充に乗り出すだろう。福祉政策が不十分だということであれば、リ
ベラル政党が得票を増し、それなりの手が打たれるはずである。
しかし、グローバル資本の力はそうした国内政治にまで影響を与え、そのような動きを
帳消しにしてしまう。
(中略)現代社会では巨大なグローバル資本がさまざまなロビー活動などを通じて、労
働者や市民の力を弱体化させ、格差是正の政策を骨抜きにしている。グローバル資本主義
にとっては、格差を是正しようとする政治とは、利潤を低下させる『悪い政治』に他なら
ない。かりにリベラルな政治が行なわれるのであれば、その国から資本を引き上げるだけ
のことであり、そうなれば、さらにその国の経済状況は悪化することになるから、格差是
正の政策は骨抜きにされてしまう23」。
このような前提のもとに立って、中谷は、モノやカネが国境を超えて自由に動くという
グローバル資本主義の特長が、環境破壊や格差拡大などの問題を引き起こすとしているの
である。同書では、環境問題に関しても、同様の前提のもとに立って分析されている。ド
イツや北欧諸国など、ヨーロッパの一部の国が厳しい環境規制を敷いても、グローバル資
本は環境規制の緩い新興国に投資を集中するから、地球全体としては環境規制が尻抜けに
なってしまうとする。所得格差も環境問題も、グローバル資本主義の下では、問題の本質
は同根なのだ。
このような種々の問題を引き起こすグローバル資本主義が地球上に跋扈している姿を、
中谷はこう総論する。
「摩擦や規制のない『自由』な市場を追求すればするほど、短期的にはグローバル経済
が活性化するように見えるけれども、実はそれはますます資本主義を不安定化し、その副
作用を取り返しのつかない程度まで増幅する。際限ない規制緩和と国際的な制度的ハーモ
ナイゼーションによって、摩擦の存在しないスムースな世界市場ができるとすれば、その
ときこそグローバル資本主義が自壊するときなのである。
(中略)自由を満喫したグローバル資本が世界経済を不安定化させ、所得格差拡大で不
幸な人々を大量に生産し、また、地球環境をもはや修復不可能に近いところまで汚染して
しまったという意味で、資本主義の自壊作用はすでに始まっているというべきなのである
24」
。
たしかに現在の地球上には、今述べたような事態が現実として起こっているように思え
23
24
前掲書、中谷厳、360~361 ページ。
同上書、364 ページ。
37
る。投資の過剰による金融危機の発生、労働力の低賃金化に伴う格差の拡大、資源開発競
争の過熱による環境破壊の進展……。格差の拡大や資源開発問題は、世界各地で戦争や内
戦が勃発する原因ともなっている。たとえばアフリカのマダガスカルで、韓国の資源大手
の企業が、資源が内包される同国の土地の 99%を無償で借り受けるという報道がなされた。
マダガスカル政府はすぐさま同報道を否定したが、これに国内世論が反発。クーデーター
により現政府が転覆し、新政府が樹立される事態にまで発展した。
金融危機も、格差の拡大も、環境破壊も、あげくに戦争までもが、その問題の本質をグ
ローバル資本主義に求められるのである。これらの問題に対するグローバル資本主義の親
和性を指摘する声は、現在、とても多い。こういった声が、有識者・市民問わず、現在、
世界各地で起こっているのだ。
では、具体的にどうやってグローバル資本主義を是正していけばよいのだろう。まず挙
げられるのは、
「お金の流れを過剰なものにしない」ということだろう。過剰なお金の流れ
が金融過熱を生み出し、活発な投資合戦を推し進め、資源をめぐる環境破壊や戦争の遠因
となっていったのだ。この過剰なお金の流れを是正するために必要なのは、やはり国際基
軸通貨としてのドルに対する管理力の強化だろう。アメリカで発生した金融危機は、そも
そも FRB がアメリカの金融市場に資金を流しすぎた(通貨供給量を増やしすぎた)のが原
因の一つであるといわれている。そういった背景の下に金融過熱が起こったとされている
のだ。このような金融過熱を発生させないためには、FRB がドルの還流システムを熟知し
て、ドルの供給量を決定していく必要があるだろう。ドルは国際基軸通貨であり、つねに
アメリカと世界全体との間にその還流システムを発生させている。FRB は、アメリカ国内
の景気のみを判断してドルの供給量を決定するのではなく、世界の市場のあらゆるところ
で金融過熱が発生しないようにドルの供給量を決定させていかなくてはならない。アメリ
カ国内の景気が悪いからといってドルを市場に大量に流しても、そのせいで金融過熱が発
生し、その影響が世界中に出てしまったのでは困る。FRB はこれまで以上に慎重に、世界
の市場全体の動向を気にして、ドルの供給量を決めなくてはならない。今回のような金融
危機が二度と発生しないためにも。
さらに、環境破壊を招くような資源の獲得競争の過熱にも目を見張らなければならない。
こういった過剰な資源の獲得競争は、資源を多く抱える途上国を中心に起こってきた。な
ぜここまで資源の獲得競争が過熱したのかといえば、先進国のビジネスの歩調と、途上国
の環境規制の枠組みがどうしても合わなかったからだろう。先進国が途上国側の環境規制
の枠組みを半ば無視して、強引に資源開発を推し進めていった点を見逃してはならない。
こういった強引な資源の開発により、途上国を中心に環境が破壊されてきたのだ。
今後、先進国側に求められることは、旧来の化石燃料に変わる新エネルギー産業による
体制の確立と、途上国側の環境規制における枠組みの充分な理解だろう。とくに後者は、
これまであまり重要視されてこなかった側面が強い。温室効果ガスの削減量に関する国際
的な枠組みを決める会議も幾度か開催されてきたが、やはり先進国側や新興国側、そして
38
途上国側と三者三様の意見がぶつかるだけで、決定的な解決案はまだ生まれていないとい
うのが現状だ。先進国側の歩み寄り、新興国側の歩み寄り、そして途上国側の歩み寄りと
いった、三者の、問題解決へ向けた具体的な譲歩案が提示されることが待たれる。特に先
進国側については、日本が先陣を切って新エネルギー政策を打ち出していくことで、その
先進国間のコンセンサスを形成するリーダーシップをとっていくことが可能な状況下にあ
るといえるのではないか。日本は、その技術力を伴った具体的な行動を先進諸国に見せ付
けることで、問題解決に向けた動きを世界に波及させていく立場を取るべきだろう。
いずれにせよ、問題解決には世界的な規範の形成や行動の相互的な承認が欠かせない。
Ⅴ.おわりに
今回、資源開発問題やその背景にある資本主義の原理、そしてそれらの問題が現在世界
でどのように波及しているのか、といったことを調べて、改めて思ったのは「問題の規模
が大きい」ということだ。
アメリカの金融危機が日本の経済に深刻な影響を与えることも、途上国で資源開発によ
る環境破壊が起きることも、その環境破壊が地球全体に及んでしまうことも……。日本の
貧困問題やスーパーのレジ袋、さらには戦争まで、本論の中ではさまざまなことに考察が
及んだが、それらの問題の同根には、“グローバル資本主義”という存在がある。本論のみな
らず、これまでゼミで勉強したことで一番脳裏によぎるのは、やはりこの“グローバル資本
主義”という存在だ。世界の株式市場での投資過熱、金融過熱、投資活動、途上国での資源
開発による環境破壊、戦争……。世界で起きるさまざまな問題はもはや、特定の国の中で
のみ起こる問題ではないのだ。いまやさまざまな悪影響が、国境を超えて、言葉や文化の
壁すらもおかまいなしに、あらゆる地域に飛び火してしまう。ひょっとして、自分が大学
時代に学んだことは、それら多くの問題の一部分に過ぎないかもしれない。世界にはまだ
まだ多くの問題が山積していて、いつそれが自らのもとに飛び火してくるかわからないの
かもしれない。そんな気になってしまうほどに、この“グローバル資本主義”という問題は大
きく、根が深いものなのかもしれない。
今後もこの問題について、考えを絶やさないようにしたい。
39
【参考文献一覧】
参考文献一覧】
奥雄太郎「日本企業に芽生える『アフリカビジネス』の気運」『エコノミスト
月 13 日号』毎日新聞社、2008 年。
鷲見一夫『ODA 援助の現実』岩波書店、1989 年。
堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』岩波書店、2008 年。
中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか』集英社インターナショナル、2008 年。
日本経済新聞、2008 年 5 月 15 日、5 月 18 日付。
湯浅誠『反貧困』岩波書店、2008 年。
40
2008 年 5