CUCANIA,INC. 癒 す「家」 Ue 邸 大型京町家の改修で枩邑 ( まつむら 伏見 ) という宿にしました。ハシリをロビー空間として使いました。土間空間が心地よい安らぎを与えてくれます。 2 Hn 邸 新築で家の中央を抜ける土間空間にしました。2次燃焼するネスターマーティン ( ベルギー製 ) の薪ストーブを設置しました。冬が楽しいサロンになります。 3 Hr 邸 表に余り個性を主張せず、外観にアルミサッシュを露出せず、駐車場が欲しいとなると、京町家の伝統を活かした平成の新町家となりました。 4 Hr 邸 奥へ行く廊下沿いに路地庭を設置しました。この僅かなスペースの庭が、生活に潤いを与えます。ヒノキの階段は、玄関空間を広くしてくれます。 5 土間の復活 町家の通り庭は3種類の異なるニワで構成されています。 「ミセニワ」 =店の間の前にある土間部分で、お客さんが用をたす部分です。「ゲンカ ンニワ」=玄関の前に庭で、ここに立つと中庭を見通すことができます。 お客さんへの気遣いを大切にします。「ハシリニワ」=台所の土間部分で、 食事づくりや汚れもの作業空間として使われます。 この土間の機能を現代の住宅に応用するとどうなるでしょう? この新しい土間で、魚を一匹さばくのも良いでしょう。餅付きをおこなう こともできます。雨の日に日曜大工もできます。自転車置き場にもなりま す。土間は、こんな汚れ作業が家の中でできます。使い方は、住み手によっ て様々にあるでしょう。この空間を、階段を設置して吹き抜けにすると、 豊かな室内空間になります。新しい吹き抜けのある土間は、シンボリック な空間として美しく、かつ利用できる新しい「土間空間」になります。 ミセニワ 6 ゲンカンニワ ハシリニワ 7 WT 邸。古石の石垣にロートアイアインの門扉。街並みへの配慮ともなるヤマボウシを植え、建物の外壁は漆喰仕上げとして、建物の質感を出しています。 8 京都市北区紫野の「京山々 ・ 木の家づくりの会」のモデルハウスの外観。山の木を外壁に使って、平成の新町家を提案しています。 9 FO 邸。旧民家を増築して広いリビングを確保。、無垢材・自然材 ( 珪藻土 ) でしっかり創りました。 10 京都市北区紫野の「京山々 ・ 木の家づくりの会」のモデルハウス。新しい土間に見立てた階段室兼玄関は広々とした空間を実現しています。 11 「京山々 ・ 木の家づくりの会」のモデルハウス のリビングダイニングです。廊下は1等の檜のフ ローリングです。リビングダイニングの床は、無 節の檜のフローリングです。壁は、珪藻土仕上げ です。天井は、杉の梁を表 ( あらわ ) しにしてい ます。廊下とリビングダイニングとは敷居の無い ハンガーレールで引戸を用い、部屋を仕切ること ができます。右手には、輻射熱暖房パネルヒータ が設置してあります。敷地の余地が少なく、奥に は僅かな檜のベランダを設けています。手前の北 から奥の南側への風の通り抜けは大変気持ち良 く、次世代省エネ基準に合わせた断熱性能と相 俟って、夏でも涼しい住環境を創りだしています。 12 13 山の木を使って、健康で温もりのある「家」を創ります。 住環境が健康に与える影響 山の木 01 た。 我 々 は、 コ ス ト 面、 技 術面、供給面のすべてに渡っ 「食」が健康に与える影響は多くの人の認知するところで てこの問題をクリアしまし すが、「住」が健康に与える影響はまだ認識できていません。 た。山との連携で流通コス 全ての人間環境の内で〈住居〉が 70% の影響があると言われ トを押さえ、職人の参加を ています。今、無垢材「木」の効果・効用が次第に明らかに 得て味のある仕上げを生み なってきました。 「ストレス緩和作用」、 「抵抗力増強作用」、 「断 出し、プレ加工を導入して 熱作用」、「調湿作用」、「音まろやか作用」、「光の緩衝作用」、 無駄な人件費をおさえまし 「快適安手触り作用」、 「火災被害最少作用」、 「衝撃 l 吸収作用」、 た。これによって今まで不 「空気浄化作用」などがあります。これら無垢材 =〈建築素材〉 可能とされた質の高い、個性豊かな「木」の住宅を実現します。 効果効用に加え、空間の持つ心理学的効果を活かして、オリ 地球環境への貢献 ジナルな住空間の提供を行います。 土の 70%を占める日本の森林資源は、人工林が年間 3%の 木のストレス緩和力の研究 勢いで成長しています。この内日本人が消費しているのは僅 京都大学医学部教授の齋藤ゆみ氏は、「木質空間およびビ ニール空間における疲労・ストレスの緩和効果」の研究を行 いました。( 木材学会誌第五五巻第二号掲載 ) 木の空間が果たして我々の身体に物性的に何かの作用を働 かせ、心身に変化をもたらすかどうかの実験でした。この実 か 1%しかありません。 即ち、有用な森林資源は、今使われ ないまま生産され放置されているのです。 都市に人口が集中する現代日本の土地利用構造から都市部 の居住者が森林資源の活用を図ることは、日本の都市と森林 の連関を再構築することです。 験で、生科学的・心理学的指標からの比較による考察を行なっ ①1軒の家を建てると山の木材を 20㎥程度消費します。 たのです。この実験結果では、 ②この森林資源の活用によって、山の木が再生産されます。 【 木 質 空 間 の 方 が、 ビ ニ ー ル 空間より活気を除く、不安、抑 ③木材を伐採して使用することで、新しい木が育ち活発 な炭酸同化作用を促します。 鬱、落ち込み、怒り・敵意、疲労、 ④この炭酸同化作用で、空気中の Co2 が固定化されるので 混乱などのストレス状態を示す す。 因子の値が有意に低下している】 ということが、実証されました。 これらの一連のサイクルが、地球環境に好循環に働きます。 山の木を使うことは地球温暖化を防止することなのです。 木のどの要素がどの様に作用 木質空間での実験風景 したかという因果関係は不明で すが、木の居室の方が、ビニー ル空間よりも少なくともストレ スを早く緩和させる効果がある と判断される結果でした。 㻌 ビニール空間での実験風景 生産地=「山」と消費地=「都市」を結ぶ 活用すべき地域資源=「山の木」 今まで、無垢材を住宅で使うことは難しいとされていまし 地域材で建てる家づくりは減少し続け、山の木で家を造る習慣は消えつ つあります。かつて京都の家は、全て北山から産出する材で建てられてい 循環する地域材 ました。山と都市は、地産地消という地域産業と地域消費が緊密に結びつ いた経済循環システムが構築されていたのです。京都に西を流れる保津川 は、北山で産出した木の搬出ルートであり、今の嵐山には大貯木場があり、 ここから千本通りに鉄道で運ばれ、京都市内で消費されていました。この システムが崩壊してから久しくなりました。我々は、「山の木は都市住民 が使うべき」との見解に立った「京山々 ・ 木の家づくりの会」の運動を行っ ています。 人口林 原木 新材 古材 自然材・無垢材で長持ちする「家」を創ります。 02 「自然石」や「古石」 無垢材 無垢の石は長く使えます。自然の石は使うほどに味が生ま てくれます。日本の石の使い方は、ヨーロッパに比べると活 れます。自然の石は様々な加工が可能です。町家再生では、 用度は低いですが、独自の風合いを生み出す手法を持ってい この石の再生利用が、その家に伝わる歴史を最もよく継承し ます。石の味を建物づくりに生かしています。 ロートアイアインの質感 鉄はもともと硬くて冷たい無機質な雰囲気を持っていま す。しかし手作りによるロートアイアンはハンマーで叩いた が可能です。今までは無垢材である木材の質感に対して、無 垢の鉄を調和や対比をして使っています。 り型で曲げたりすることで、暖かみのある鉄へ表現すること ガラス・土・紙の調和 アルミは、加工が簡単で、気軽に使える材です。アルミと ガラスと木の取り合わせは、新感覚の素材の取り合わせです。 「土壁」と「障子」は伝統的な和風のコンビネーションで 大地が生んだ無垢材を活かす kitu 現代の家は石油製品を用いた家づくりが主流です。設備製品、仕上げ材、 取付部品、照明器具等々の建築部材は石油を素材にしています。こうした中で、 土・竹・紙・鉄・銅・アルミ・ガラスと言った無垢材を「木」と調和させる ことによって、新しい感覚で、健康的で、エコロジカルな住まいが実現します。 元々住宅はその風土に根ざしたものを使っていました。現代では、それが高 価に付くとの理由から遠ざけられていました。 我々は、こうした素材をもう一度見直します。無垢材は何度でも加工して 使うことができます。【素材単価 / 使用時間】でコストを考え、出来るところ からこうした素材を活かす工夫をして、新しい価値を生み出します。 すが、現代的に自由に光を演出する装置として活用します。 光の透過する量が生活の時間帯の変化と共に変化する様は 美しいシルエットと生んでいます。 光が変化し、爽やかな風が抜ける「家」を創ります。 「伸びやかな空間」の広がり 透過性 自然の「風」 我々は、住宅を立体的な 緑豊かな「庭」を通った 空間として、如何に伸びや 「風」は葉ついた水分の気化 かに使うかを考えています。 熱によって温度が下がって 屋外と屋内は繋がりを持 03 います。この庭からの「風」 たなくてはいけません。自 は、心地よい居住環境を作 然の恵みを受け取る空間の り出します。暑い時の「風」 仕掛けが必要です。縦の高 は、心地良い生活環境を作 さ方向にも広がりが必要で り出します。出来るだけ自 す。視覚的な見えの変化も 然の変化を利用した居住環 重要です。そうした演出によって、広々とした豊かな空間を 境を作り出すことを大切に考えています。 生みだしています。 我々は出来るだけ「引き戸 ( スライディングドア )」を用い 豊かな「吹抜け」空間 ます。これは、引き戸が広がりをコントロールする仕切り機 能を持っているからです。 「吹抜け」を設けると施工 費は上がりますが、住宅の 「光」と「影」の空間装置 豊かさは向上します。予算 と快適さの狭間で、いつも 光は、夏と冬では全く異 ギリギリの設計を行ってい なる影響を住宅に与えます。 ます。玄関と階段室を一体 朝と夕方でも異なる環境を 化して縦動線を吹き抜けと 創り出します。昼と夜も又 して、且つ玄関の豊かさを 異なる雰囲気を醸し出しま 確保します。京町家の「ハ す。この時間的な変化を縦 シリニワ」からこの手法を 横に楽しむ空間創りを考え 生 み 出 し ま た。「 準 棟 纂 冪 ています。家に過ごす全て ( じ ゅ ん と う 」 さ ん ぺ き )」 の時間を生き生きと過ごす と呼ぶこの吹き抜けは、本 ことが出来るよう配慮しています。 来台所の煙抜きと明かりと りの機能を持っていました。 生活と「景」の一体化 家の内からの「景」は、住む楽し みにとって大きな役割を持っていま す。日本の伝統的な空間方式である 「生け取り」、 「借景」、 「地窓」、 「坪庭」 などは良く使われる手法です。狭い この空間は、大工さんの腕 を見せる場でもあったので すが、今日この空間が町家 の豊かさを表現するシンボ リックな空間として捉えられています。我々は、今日の敷地 条件の厳しい住宅においてホッとする空間として位置づけ、 大切にしています。 敷地を有効に活用したり、密度の高 い設計を行うことによってこうした 日本の建物は自然に同化する=透過性 (Transparency) 温帯モンスーンに属する日本の風土によって、日本人は自然を大切にし 自然を愛でる文化を構築してきました。このためにに、家づくりにおいて 楽しみを得る手法を数多く経験しています。「四季を楽しむ」 ことは、日本文化に脈々と継がれた手法です。この文化を現 代生活様式に合わせて生き生きとした「景」づくりを行いま す。造園家と連携し、新しい「庭」づくりも行っています。 も「自然をどう見せるか?」、「自然をどう取り込むか?」を常に意識して います。この美意識が、様々な空間手法を生み出しているのです。同時に、 自然環境を楽しむ文化が育っています。「光」 、「風」 、「雨」 、「雪」と言っ た自然の変化楽しむ空間装置は、建物に開口部を開け、障子、御簾、格子 と言った建具に様々なバリエーションを持っています。 この空間装置を現代に蘇らせ、新しい家づくりに取り入れて、透過性の 高い住宅を創りだします。 19 04 バランス良く、耐力壁を配置します。 伝統構法か在来構法か? 構造 町家・民家は伝統構法で建てられています。伝統構法は、 現段階では建築基準法に適合しません。クカニアの家は、建 築基準法に適合できる在来構法に基づいて、構造を考えます。 現段階においては法的な根拠に基づきますが、長年受け継が れ日本の木造文化を支えてきた伝統構法が、建築基準法に適 合する構法として認められることを期待しています。 バランスが重要な木造住宅 木造2階建ての場合、確認申請上は耐力壁がXY方向に適 切に配置してあり、定めた仕様の耐力壁が基準値以上あるこ とが求められています。この簡便計算法で多くの場合は、慣 習的に安全なことが確認されます。 耐震上に有効な耐力壁はその配置によって、数値的に満足 されていても、バランスが悪ければ、有効に働きません。木 造の耐力壁の配置の、悪い例はの耐力壁が少ない部分と多い 部分との間で、地震時に建物にねじれが生じてしまいます。 こうした、バランスの悪い建物の場合は、厳密な計算によっ て安全性を確かめる必要があります。 (※木造3階建ては構 式で、現段階では木造住宅の構造計算は、この方式が一般的 に取り扱われています。 造計算が必須です。 )詳細な構造計算を行い安全性の確認を 行う計算方法には、現在2通りの計算方法があります。それ 限界耐力計算 が「許容応力度計算」と「限界耐力計算」です。 限界耐力計算とは、許容応力度計算に対して詳細な計算を 許容応力度計算 行い、変形量を直接求める方法で、耐久性等既定以外の仕様 規定を満たす必要がありません。この計算方法は、木造住宅 弾性学という、素材をゴムのように延び縮みする範囲内 レベルでは、高度になりすぎて、よほど複雑な構造の場合以 で計算する方式です。許容応力度とは、この伸び縮みする範 外は、使いません。ただ、軸組木造建築の耐力評価について 囲でも素材の復元安全性の範囲で考えます。木材の繊維方向 は、木造構造学では研究対象としてかなりのレベルまで進化 の許容応力度は、決められた数値によらなければなりませ しています。このお陰で、伝統構法に木造耐力があることが、 ん。なお、圧縮、引張り、曲げ、せん断の各基準強度は、樹 次第に解明されつつあります。 種及び品質に応じて告示に定められています。( 平成 12 建告 1452) 木を鉄やコンクリートに類似させて解析を行う方 ■伝統構法と在来構法の違い 山の木を使った木造軸組構法の継承 sekitu 柱・梁で構成する日本の住宅の木造軸組構法は、在来構法と言う形で一般的に継承さ 『伝統構法』 は壁量に頼らず、構造架構そのも これに対して『在来構法』は、近代力学に根拠を の、すなわち 『木組み』そのもので家の構造を 持ち、筋交、それに伴う金物及び構造用合板に類す 持たせ、壁に耐力を求めていません。壁はパーテー るもので、耐震上有効な壁量を確保して家を建てる ションであり、木を力強くバランスを考えて組み 構法です。継ぎ手・仕口部分は金物で補強し「剛」 合わすことによって、耐力を生み出すことが 『伝 に柱・梁を構成します。基礎に緊結された土台の上 統構法』 の考え方です。 に柱を建てる方式です。木のねばりや継ぎ手の変形 れています。プレバスの住宅が多くなった昨今、このきっちんとした在来構法を定着 『伝統構法』 は木組の架構そのものであり、長 化する必要があります。これは、日本の山の木材を消費して地域の資源の活用になり、 年にわたり受け継がれて来た型があります。京都 Co2 削減に寄与し、日本の木造文化を支える大工職人の技術向上に繋がります。 の町家は、間口方向は梁を用い奥行方向は半間 現在、我が国で建築されている木造軸組み構法住 軸組が建物内外でその骨組を見せなくなる構法「大壁構法」が主流となっていますが、 ピッチの柱で構成させる独特のスタイルを持って 宅の 99%は在来構法であり、伝統構法は1%程度 軸組みの美しさを見せる「真壁構法」を出来るだけ取り入れ、美しい骨組を少しでも表 います。基礎は「一つ石」という石に直接柱を建 です。 現し木造軸踏の豊かさを表現していきます。 てる方式です。 対応力を評価しないこの構法が現在の建築基準法が 認める木造の構造になっています。 21 05 快適な家づくりに不可欠な断熱を重視します。 断熱 夏の涼しさの確保 冬の温かさの確保 屋根の断熱性能を上げる 断熱性と気密性を先ず重視 次世代省エネ基準が重要視され 暖房は、まず家の断熱性能の向上を図ることが第一課題です。ど 始めました。とりわけ屋根の断熱 んな良い暖房器具を用いても、床・壁・天井からの熱損失が大きけ 性 能 を 要 求 し て い ま す。 そ れ は、 れば、暖房エネルギーのロスに繋がり、快適性を損ないます。断熱 夏の太陽からの輻射による受熱が の中でも、外部建具とそのガラスからの熱損失は大きなウエイトを 家を熱くする要因だからです。 占めます。二重・三重サッシュによる開口部からの熱損失に気を配 夏のお寺の本堂が涼しいと感じ るのは、屋根からの輻射熱が遮断 ります。 吹付け断熱材ウレタンフォーム 次に重要なことは、家の気密性です。どんな暖房器具を用いても、 され、室内の温度上昇が極端に抑えられているからです。屋根の断 隙間から熱が逃げてしまっては、暖房のエネルギー損失が生まれて 熱性能を重視した断熱を行います。 しまいます。この時に無視してはならないことが、換気です。密閉 された空間は暖房効率は向上しますが、居住者の健康に取って好ま 湿度を下げる しくない事態を産む場合があります。一時間に室内の空気の半分が、 新鮮な空気に入れ替わるだけの換気を確保するようになってきてい 快適な涼しさを確保する手段として注目されているのが、湿度調 ます。また、内部の温めた熱を外に逃がさない熱交換器が付いた換 節です。除湿機能が付いている空調機も増えています。冷房よりラ 気扇が多くなってきており、これらを適切に用いて、換気による熱 ンニングコストはかかりますが、寒すぎない快適な涼しさは、湿度 損失を少なくすることを心がけています。 調節によって実現できます。これは湿度が低いと身体の蒸発潜熱 ( 気 化熱 ) により、体から熱が放熱し、涼しく感じられるためです。 温輻射による暖房 室内湿度の調節には、無垢材や珪藻土と言った調湿機能を持つ素 材を用いることも重要です。ただ、通風などで空気の出入りが多い 輻射熱暖房電気器具や輻射パネ と、その効果は大変小さくなります。無垢素材の調湿力を活かした ルヒーターなどは、体を直接温め 家づくりを行います。 心地よさを与えてくれます。多く 風を起こす の住宅では、輻射の面積を確保す ることが難しいことや、輻射熱を 重視しないこともあり、日本では 扇風機を使用する家庭が随分少なくなりました。「扇風機の風は、 あまり普及していないのが現状で 体に悪い。 」という神話があるようです。風によって、身体の放熱 す。これからは、この輻射熱を重 及び発汗が促進されます。暑いときは、発汗に伴う蒸発冷却作用が 視した暖房を推奨しています。 輻射パネル熱暖房のパソッティ 有効に利用されます。最近のゆらぎ機能を持った扇風機でも自然の 風が持つ変化を実現するのは困難ですが、扇風機は見直すべき夏の 上下温度差をなくす床暖房 電気製品と考えられます。風の通りを意識した環境計画を行い、低 エネルギーで心地よい住環境の創造しています。 床暖房は、頭寒足熱を実現する理想的な方法です。床から熱伝導 により直接足を温め、室内の温度分布を均一にします。 活用の留意点は、熱効率の面からは断熱性能の低い家で使うとや 冷輻射を活用する はり熱損失が大きくなり、不経済になる可能性があると言う点です。 特に、配管や床の断熱には注意を図り、効率良く利用できる環境を 氷のオブジェの近くに行くと涼しいのは、氷からの冷輻射により 整えた上で導入しています。 身体が冷やされるからです。身体より冷たい物による冷房効果は冷 輻射パネルの開発に繋がっています。柔らかな涼しさを確保する装 涼しさは「風」、温かさは「輻射」 置として、今後取り入れていきます。 sekitu お寺の本堂の涼しさは、大屋根の断熱効果と緑を通り抜けてくる「風」の効果です。 夏は太陽の屋根に注ぐ輻射熱を如何に遮熱と断熱をするかが大きなテーマです。又、夏 は自然の風を如何に室内に取り入れるかが、家づくりの技術的課題です。 冬は、家の機密性を高め、断熱性能の高い床・壁・天井に仕上げることが熱源を逃が さない重要な方法です。そして、温かさ・温もり感を得るためには、輻射熱を用いた暖 房が重要です。直接温度の暖房器具からの温かい熱が伝わる輻射熱を使うと、温かみを 強く感じます。 夏冬ともに、断熱材の重要性を再認識する必要があります。 23 【リビング】 【リビング】 【リビング】 【縁側】 【リビング】 「立ち生活」と「座り生活」の一体化を図ったリビング。座 座り形式のリビングで、掘り炬燵が中心。奥には対面キッチ 町家の改修で、増築した縁 側・トイレ・浴室を望む。簡 町家の改修。昔ながらの梁・柱をベンガラを塗り直し、板戸 座り形式のリビングで、掘り炬燵が中心。奥には対面キッチ の低い椅子は、座り生活との違和感が無く、活動的な行動は椅 ンで、手前左が玄関土間。床は檜に柿渋仕上げで。壁は珪藻土 単な庭を創りなおし、風と光 を手前にある座敷に入れてい の桟をデザインに使って、統一感を出しています。畳の間と土 ンで、手前左が玄関土間。床は檜に柿渋仕上げで。壁は珪藻土 子を使い、ゆっくりくつろぐ場合は、座ることが可能。床は檜 塗り、天井は節のある1等の杉板張り。玄関土間から直接リビ ます。障子やガラスの木建具 を用いて昔ながらの雰囲気を 間を一体化させて、奥にシステムキッチンをいれ、吹き抜けも 塗り、天井は節のある1等の杉板張り。玄関土間から直接リビ の節のある1等材を用いてラフに仕上げています。 ングにも上がれ、全体を広々と使っています。 再生しました。 活用しました。 ングにも上がれ、全体を広々と使っています。 木の 温もり Ⅰ 【リビング】 【個室】 【リビング】 【リビング】 面皮付北山杉の柱・梁を使ってたマンションのリフォーム。 ビデオシアター機能を持つリビング。イタリア家具と土壁の 座り形式のリビングで、掘り炬燵が中心。奥には対面キッチ マンションの改修。中央囲いの裏手にはキッチンがあり、リ 床はカリン、壁は土壁の中塗仕上げ、天井は漆喰仕上げ。 コントラストを実現。天井は竹、床はピンカド。本物素材の味 ンで、手前左が玄関土間。床は檜に柿渋仕上げで。壁は珪藻土 ビングダイニングとして機能。サッシュの内側に障子を入れ外 建具は、檜の木建具で、奥の変形二帖の間は、ちょっとした来 を活かしています。照明は照度コントロールが可能で、様々な 塗り、天井は節のある1等の杉板張り。玄関土間から直接リビ 界を遮断できるように配慮。床は、巾広のナラに柿渋仕上げ、 客対応も出来ます。 来客への、もてなし空間としても機能しています。 ングにも上がれ、全体を広々と使っています。 壁は桐の板、天井は漆喰仕上げに北山丸太を埋め込んでいます。 【木建具】 古典素材の「杉」と新素材「メラミン」をコンビネーション 【木建具】 最も一般的な建具のモチーフの縦格子を現代感覚で意匠しま 【木建具】 【木建具】 【木建具】 リビングの解放感と建具を綴じたときの柔らかい間接光を活 この建具は、昔の建具の古材を用いて新しくデザインしたも 目の細かい秋田杉を用いてあやめに縦張りし、上部にすりガ ラスを入れ、光を取り入れています。漆喰壁に建具の意匠が映 した現代木建具。 「引き戸」は、日本の優れた建具方法で、こ した。素材は米杉を用いてコストダウンを図っています。開け かす手法として、天井までのハイ建具を設置。この建具は、天 のを製作しました。無垢材は、経年変化してもその味わいがあ の引戸を現代感覚に合わせて、建具「枠」もすっきりと横だけ た時と閉めた時で、空間の広がりが異なります。こうした変化 井裏で吊り下げる構造。和紙の代りにワーロン紙を用いてメン ります。その素材感を活かす手法で、新しい家に時間経過を感 え落ち着いた空間を創りだします。引き戸を用いて狭い空間を としています。素材感を大切にしています。 を楽しむ手法は、伝統的手法です。 テナンスを楽にしています。 じさせることができます。 有効に使っています。 24 25 【中庭】 【玄関】 【玄関】 【玄関】 【玄関】 檜の縁甲板を用いたベランダ。周囲3方を建物に囲い、一部 家の顔となる玄関は、その家の生活観が表現されます。踏み 民家に良く見られる広い土 間玄関を狭めて、現代風の玄 伝統的な民家の厳粛な玄関です。玄関正面の建具は杉板戸で、 玄関を細長い土間として引き込み、奥深い空間を演出してい は強化ガラスの屋根を設置し、雨の日でも外気の中で生活でき 込み板は、ブビンガの一枚板を用い、玄関床はチークのフロー 関の設えとしました。正面の ピカソの・・・が住み手の美 古典的な意匠としました。下足箱の松の一枚板は、その木目を ます。外部の柔らか光を建具で取り込み、土間はタタキ仕上げ るよう配慮している。ベランダは部屋の一部として空間に広が リング。玄関正面の建具はスリガラスを入れ明かりを玄関に取 学を表しています。靴脱ぎ石 は、わざと自然石の切り石を 味わうことができます。靴脱ぎ石は、真の玄関らしく本磨きの です。手前の踏み込みは、北山杉をタイコに並べで独自の踏み りを持たせる手法です。 り込んでいます。 磨き、日常的に使う場おして の設えにしました。 御影石としています。 込みとしています。 木の 温もり Ⅱ 【階段】 【階段】 【キッチン】 【キッチン】 檜の無垢板の階段板に、ロートアイアンの手摺。吹き抜けの 檜の無垢板の階段板に、北山小丸太の手摺。階段のささら桁 栃の一枚板をキッチンのカウンターに取付けた温かみのある 一段高くしたカウンターには、小料理屋さん風にキッチンか 上部はゴロンボ ( 丸太 ) の梁を見せ、壁は漆喰仕上げ。玄関入っ に鉄の梁を用いて檜板を軽やかに演出。ストリップ階段は、部 台所。自然と家族が集まってくる雰囲気をもっています。対面 らの様々なサービスが出来ます。背後の全面収納は、大容量の たところを階段室として、吹き抜けを設けることで広々とした 屋を爽やかにします。北山の小丸太の手摺は昔から用いられて キッチンもこのテーブルで出来あがる距離感が様々な生活シー 収納が可能で、大家族には喜ばれます。キッチン前のリビング 空間を創りだしています。 いる手法で、もっと使うべきだと思います。 ンを生み出します。 は畳で、台所とはレベル差があり、目線が合う仕掛けです。 【キッチン】 【キッチン】 【浴室】 【トイレ】 【トイレ】 キッチンメーカーのキッチンに天板をケヤキをくり抜いてシ キッチンの前に杉の一枚板の食卓テーブを組み込みました。 岩盤浴に使われる麦飯石( ばくはんせき)を床・壁に貼 トイレは、毎日の利用が清潔で楽しい環境でなければなりま 間接照明を埋め込んだ背面の檜板と、壁のモザイクタイルが ンクやレンジを取り付けました。これで、味のあるオリジナル 簡便な食事はここで済まします。写真右手には大型収納を組み り、壁の上部は檜の板貼りと しています。隅部にガラス窓 せん。京都の清水焼の洗面器を野趣のある栃の一枚板の上に仕 清潔で明るいトイレ空間を演出しています。床はイタリアンタ なキッチントップが出来上がります。床はイタリアンタイルを 込み、手短に食事サービスが出来るレイアウトです。キッチン を設けて、庭を楽しむことが できます。ゆったりとした浴 込みました。壁の檜板とモザイクタイルの取り合わせが新鮮な イルを用い洗面器には磁器を用い、収納を手洗いの下部に設け 敷き、壁は白のモザイクタイルを貼っています。 のトップはタイルで仕上げています。 室は一日の疲れを癒します。 トイレ空間にしています。 てすっきりとさせています。 26 27 ●建築設計事務所クカニアの特徴 設計事務所クカニアは、建築の専門的な知識を必要とする 継ぐ家」 、「街の景観を創る 人の「建築の専門知識を持つ代理人」として、最も望ましい 家」の3要素を持った家づ 解を見出す役割を担います。我々は、 「木の家づくり」に特化 くりです。 した設計事務所です。100 軒以上の設計実例を持ち、大工職 「山の木を都市住民が使 人とコラボレーションし、素材に明るく、住み手に最も相応 う」これがこれからの日本 しい家づくりを設計の立場からお手伝いします。 の山と都市の関係です。石 京町家を 15 年以上に渡っ 油資源の無い日本では、山 て改修・再生を行ってきま のめぐみを家づくりに活用 した。日本の伝統的な木造 することが、最も必要なこ 様式から数多くの手法や技 とです。 術を学びました。京町家と ●クカニア電子出版本 言う伝統的な建物が如何に 生き生きとよみがえり、住 今までの出版本を電子出版化しました。アマゾンで販売し み手が新い生活を始めた時 ています。 が 我 々 の 最 高 の 喜 び で す。 京町家から学んだ日本の 打合せ風景 木造技術は、汲めども尽き < 書籍のタイトル > せ ぬ 技 と 知 恵 の 宝 庫 で す。 1-「京都北山の木でつくる癒しの家」 この技術を活かして、日本 2-「家づくりの DIY はどこまで可能か?」 の新しい木造の在り方に取 3-「レトロ感=素材感のある家づくり読本」 り組んでいます。「平成の新 町家」もこの流れから生ま 事務所の外観 4-「ちょいさんのレトロな家を古材とDIYでつくる奮戦記」 れてきました。平成の新町 家は、現代人にとって必要な「住みごたえのある家」、「住み 〒〒 604-0963 京都市中京区麩屋町通二条上る布袋屋町 516 番地 2 株式会社 クカニア 建築設計事務所 TEL:075-241-3454 FAX:075-253-2698 http://www.cucania.com クカニア地蔵 28 事務所の庭
© Copyright 2024 Paperzz