2012年度「CTセミナー2」講義概要

明日から役立つ CT セミナ-
明日から使える画像の見方~スイッチマンにならないために~
南ブロック 市立堺病院
1.はじめに
放射線技術科
大西国允
(3-1)鼠径部の腸管ヘルニア
昨今, 操作性に優れた CT 装置を用いて, 高精
鼠径ヘルニアの特徴を Table.1 に示す. 鼠径部
細で再現性の高い画像が得られるようになった.
の腸管ヘルニアには直接(内)鼠径ヘルニア,間接
これからの診療放射線技師にとっては, 単に撮影
(外)鼠径ヘルニア, 大腿ヘルニア,閉鎖孔ヘルニ
をするだけではなく,撮影をした画像の中身を理
アなどがある.ヘルニアが嵌頓することによりイ
解できるかが大切になってくる.そのため, これ
レウスを併発することがある.腹部 CT にてイレウ
まで以上に知識や経験を蓄積していくことが大切
スを呈している場合は恥骨の下まで撮影すること
と思われる.そこで本セミナーでは,「スイッチマ
で鼠径部の腸管ヘルニアの見落としを防ぐことが
ンにならないために」CT 検査で得られる代表的な
出来ると考える.また直接(内)鼠径ヘルニア,間接
症例の画像や特徴について解説を行った.
(外)鼠径ヘルニア,大腿ヘルニアは触知すること
が出来る.しかし,閉鎖孔ヘルニアは恥骨筋の内側
2.症例
にヘルニア部が入り込み触知することが出来ない
(1)頭部
ため恥骨下まで撮影することが診断には不可欠で
硬膜下血腫,硬膜外血腫,くも膜下出血,脳梗塞
ある.
(2)胸部
気胸,結核,気管支塞栓,大動脈解離,心筋梗塞
3.まとめ
(3)腹部
あらゆる病変において,CT 画像上の特徴を覚え
尿路結石,尿溢流・尿管破裂,腎梗塞,脾梗塞,脾損
ることは容易ではない.しかし, 正常画像と異常
傷,肝細胞癌,肝血管腫,転移性肝癌,急性胆嚢炎,
画像の違いが指摘できれば,病変を特定すること
慢性胆嚢炎,総胆管結石,急性膵炎,慢性膵炎,閉塞
が可能となる.そのため, 正常画像を正確に覚え
性動脈硬化症,虫垂炎,腹腔内遊離ガス,腸壁気腫
ることは, 病変のある画像を覚えることと同じく
症,腸重積,消化管出血,腹部異物,上腸間膜動脈血
らい意味はあると考える.
栓症
Table.1 鼠径ヘルニアの特徴
触知
画像所見
直接(内)鼠径ヘルニア
可能
下腹壁動静脈の内側を通り鼠径靱帯の上を通る
間接(外)鼠径ヘルニア
可能
下腹壁動静脈の外側を通り鼠径靱帯の上を通る
大腿ヘルニア
可能/不可能
閉鎖孔ヘルニア
不可能
大腿動静脈に沿って鼠径靱帯の下を通る
閉鎖管を通り閉鎖孔をくぐり恥骨筋の内側に出る