中国の「自動車交易市場」について 大阪商業大学 孫 飛舟 中国経営管理学会2003年度研究大会 2003年5月24日 椙山女学院大学 ・自動車生産と保有の状況 図表1 自動車の生産台数 350 300 250 200 150 100 50 0 総生産台数(万台) 乗用車(万台) 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 145 32 147 39 158 48 162 50 183 56 206 60 233 70 325 109 図表2 保有状況 総保有台数 年 2000 625 1997 1996 1609 534 1999 1998 個人保有台数 1453 423 358 290 1319 1219 万台 1100 2005年の自動車保有台数と需要予測台数 (単位:万台) 項 目 合 計 乗用車 バ ス トラック 保有台数 2,465∼ 2,545 830∼ 870 770∼ 790 865∼ 885 需要台数 310∼ 330 110∼ 120 105∼ 110 95∼100 ・中国自動車流通の現状及び自動車交易市場の位置付け 近年進出した 外資系メー カー:日系メー カーが中心 既存の国内大手 メーカー 中小メーカー メイン・ディーラー(3S 店か4S店へと移行中、 専売) ディーラー(す べて3S店か4S 店、専売) 横流し 販売拠点の設置 (1Sか2S) サブ・ディーラー (1Sか2S、殆ど 専売) 社会的な一般販売業者 (1Sか2S、殆ど併売) 出店 (1Sか 2S) 自動車交易市場 出店 (1Sか 2S) その結果:同一メーカー の同一車種を扱う店が 複数存在し、ブランド内 競争が起きている。 ユーザー 注:3S店:新車販売、部品販売、アフター・サービスの提供の三つの機能を持つ販売店 4S店:上記3機能に情報フィードバック機能を加える :交易市場以外の場所で店舗を持ち、ユーザーに販売を行う。 ・自動車交易市場の状況 ①一言で言えば、自動車の「自由市場」 多数の自動車販売業者が一ヶ所に集まって形成した自動車販売の商業集積、 来場者が個人ユーザーが中心 ②商業組織である メーカーのコントロールを受けない。各販売業者は独自のルートで車を仕入 れている(横流し、正規ディーラーの販売拠点か子会社、輸入車販売業者、中 小メーカーの販売代理店など様々) ③同一車種の販売業者は複数存在する ④共同展示、販売のみ、商談スペースは別々 ⑤集客効果が大きい 価格が安く、たくさんの車種が1箇所に集まっているため、消費者の来場が多 い。 ⑥ディベロッパーの殆どは地方政府傘下の企業 販売業者から賃貸料を取る=不動産業 ・自動車交易市場の発展経緯 ①計画経済時代から市場経済時代へと移行した段階に出現したもの ②これまで、政府の経済引き締め政策などによる販売不振の時期にメーカーの 在庫削減、販売拡大に一定の貢献をしてきた。 ③近年、個人消費の増加と共に多くの消費者を引き付けるようになった。 例:北京アジア村自動車交易市場の場合:国内外の80以上のブランドと500以上の車種を取り揃えて いる。乗用車の年間販売台数は北京全体の40%を占め、80%以上は個人ユーザー向けである。 地域におけるプライス・リーダー的な役割を果たしている。交易市場で取引されている車の値段は その地域の相場となって定期的にマスコミに公開されている。 ④メーカーから見れば、厄介な存在となってきている。しかし、その集客効果は 無視できない。最近、メーカーが傘下のディーラーによる交易市場内での店舗 開設を勧める動きも見られている。 ⑤輸入車の場合、現行の制度のもとではまだ販売業者に対する管理は難しい。 ⑥多くの下位メーカーは独自の販売網を構築する力を持っておらず、既存の商 業者による販売に頼っているところが多い。 ・消費者の立場から見る場合 ・どのような店で車を購入するつもりですか? 交易市場内 交易市場外 正規ディーラー その他の販売業者 正規ディーラー その他の販売業者 60% 20% 18% 2% 80% 20% 回答者比率 78% 22% ・店舗選択の理由: % 便利である 接客が良い 価格が安い 信用できる 比較できる アフター・サービ スが良い 市場内ディーラー 58 59 55 66 59 66 市場外ディーラー 15 22 18 19 9 20 市場内の他の業者 26 17 25 15 30 13 市場外の他の業者 1 2 2 1 2 1 計 100 100 100 100 100 100 ・自動車交易市場の新しい動き 正規ディーラーの取り込み、アフター・サービスの充実、交易市場の大規模化、 不正業者(ブローカー)の取り締まり 建設中の交易市場の例: 正規ディーラー出 店区域(3S、4S) レストラン 自動車スーパー・マーケット (多数の1S業者による展示、販売) ショッピング・ センター 交易市場自前のアフ ター・サービス提供区域 部品販売区域 試乗コース ・交易市場の問題点と今後発展方向 ・問題点 ①最大の問題点はブランド内競争 ディーラー体制か、それとも市場流通体制 メー カー主導のマーケティング・チャネル、或いは商業流通体制 ・先進国の経験:初期は商業流通体制 メーカーのマーケティング・チャネル(前提条件:生産の 集中、寡占体制の形成、総合的なマーケティング機能の提供) ・ディーラー体制は最善かどうか メーカーの立場から非常に有効、しかし、ディーラー体制の維持、リスクの共有、比較購買の提供など において問題も多い ②産業構造上の問題 多数の中小メーカーの存在 ③旧体制から完全に脱皮していない 国有の自動車流通企業は依然多数存在する、しかも、それらを温存させる動きもある。メーカーの販売 政策と拮抗 ・今後の発展方向 ①大手メーカー中心にディーラー体制へと移行していく ②産業レベルの集中、統合をさらに進めていく ③差別的優位性の持つ販売政策を打ち出す必要がある 価格政策(割賦販売の推進)、中古車下取り政策の実施、良質なアフター・ サービスの徹底、リコール制度の導入 ④交易市場について ・一定の期間(消費市場の成長期)にわたって存続していくと考えられる 地方政府による国有企業保護政策、消費者の支持を得ている ・オートモール化していくことによってメーカーのディーラーを取り込む ブランド内競争の解消、集客力を利用 ⑤政府として、法整備の面で自動車流通の健全化を積極にバック・アップして いく必要がある 不法な販売業者の取り締まり、メーカーの商標等を不当に使用するものへ の取り締まりなど
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